日常臨床や救急外来、健診の腹部CTで膵臓を観察するときに、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?

  • 膵臓の大きさ・形(萎縮・腫大)
  • 膵実質の濃さ(脂肪置換・造影不良)
  • 主膵管の拡張
  • 膵嚢胞
  • 膵腫瘤
  • 石灰化・ガス
  • 膵臓の周囲(脂肪織・液体・血管)

の有無についてまずは読影をしてみましょう。

膵臓は胃や十二指腸、血管に囲まれた細長い臓器で、小さな膵癌は腫瘤そのものより「膵管の拡張」や「部分的なやせ」で気づかれることがあります。以下、代表的な所見ごとに、鑑別診断と次に見るポイントを解説します。

先に結論:腹部CTで膵臓を見るときの7つのチェックポイント

  1. 大きさ・形:びまん性の腫大は急性膵炎・自己免疫性膵炎、部分的な萎縮は膵癌の手がかりのことがある。分葉などの正常変異と区別する
  2. 濃さ:脂肪置換はよくある変化。造影されない部分は膵壊死、周りと同じ濃さの膵癌(等吸収膵癌)もある
  3. 主膵管:拡張があれば、途切れる場所(狭窄・腫瘤)を下流へたどる。胆管も同時に拡張していないか
  4. 嚢胞:仮性嚢胞・IPMN・MCN・SCNなどを形・場所・膵管との交通で見分け、偶発的なら大きさと危険な所見で経過観察を決める
  5. 腫瘤:乏血性(膵癌)か多血性(膵神経内分泌腫瘍など)か。血管との関係も見る
  6. 石灰化・ガス:膵管に沿う石灰化は慢性膵炎。膵内・周囲のガスは感染や処置後を考える
  7. 周囲:脂肪織の濃度上昇・液体貯留(膵炎)、脾静脈・門脈の閉塞、仮性動脈瘤、リンパ節

1. 大きさ・形の変化(萎縮・腫大)

膵臓の大きさは年齢や体格で大きく変わるため、一つの数字だけで判断せず、頭部・体部・尾部のバランスと以前のCTとの比較で見るのが実際的です。部位の境界は膵頭部・膵体部・膵尾部・膵鉤部の見分け方を参考にしてください。

びまん性の腫大

  • 急性膵炎:膵臓全体のむくみに加え、周囲の脂肪織の濃度上昇や液体貯留を伴う
  • 自己免疫性膵炎(AIP):ソーセージ様の腫大、病変を取り囲む被膜様の縁(capsule-like rim)、遅れて均一に染まる造影パターンが典型です(Ogawa 2021)。IgG4関連疾患として胆管・腎・後腹膜などに病変がないかも確認します
  • 膵悪性リンパ腫やびまん性に広がる膵癌もまれに同じように見える

部分的な腫大・萎縮

  • 部分的な腫大:腫瘤そのもののことが多い。ただし膵頭部の外側への張り出しなどの形の正常変異や、輪状膵・膵管癒合不全などの形成異常もある
  • 部分的な萎縮:膵管の拡張とセットで見られると要注意。膵癌と診断される前のCT・MRIを振り返った研究では、膵管の拡張・膵管の途絶・限局性の萎縮が膵癌と強く関連し、見逃されたり重視されなかったりすることが多い所見でした(Hoogenboom 2022)。前がん病変との関係はPanIN(膵上皮内腫瘍性病変)の記事にまとめています
  • 全体の萎縮:加齢、慢性膵炎、糖尿病など。膵管拡張や石灰化を伴うかで見分ける

2. 膵実質の濃さの変化(脂肪置換・造影不良)

膵臓の脂肪置換
上段では膵体尾部の実質がしっかり見え、下段では膵頭部・膵鉤部が脂肪に置き換わって黒っぽく見えています。詳しくは膵臓の脂肪置換・脂肪浸潤のCT画像所見の記事へ。

  • 脂肪置換(脂肪浸潤):高齢者や肥満でよく見られ、膵臓が「すかすか」に見える。膵頭部の前方だけ・後方だけなど不均一に起こると腫瘤や萎縮に見えることがあります
  • 造影されない部分:急性膵炎では膵壊死を考えます。壊死の有無で重症度や合併症の見通しが変わるため、改訂アトランタ分類の言葉で記載します(Banks 2013)
  • 周りと同じ濃さの腫瘍:膵癌は造影CTで周囲より低く見えるのが典型ですが、膵癌644例のうち5.4%(35例)は動脈相・門脈相とも周囲と同じ濃さで、MRIの感度は79.2%、PET/CTは73.7%でした(Kim 2010)。膵管の途絶や形のゆがみなど間接所見があれば、MRIなどへ進みます

壊死性膵炎
壊死性膵炎の模式図です。膵臓がむくみ、周囲に液体貯留や炎症が広がり、実質の一部が造影されない壊死(黒い部分)になります。詳しくは急性膵炎のWON・ANC・APFC・仮性嚢胞の違いの記事へ。

3. 主膵管の拡張

膵癌に伴う主膵管拡張と膵萎縮
引用:Radiopaedia(Pancreatic adenocarcinoma)
造影CT横断像で、膵体部〜尾部の主膵管が拡張し、まわりの膵実質が薄くなっています。詳しくは見逃されやすい膵臓がんのサインの記事へ。

主膵管が目立つときは、どこで太さが変わるかをたどるのが基本です。

  • 途中でぷつっと途切れ、その上流(尾部側)が拡張:膵癌をまず考える。途切れた場所に淡い腫瘤がないか、造影の各相と冠状断で見直す
  • 膵管と胆管がそろって拡張(double duct sign):膵頭部癌、膵頭部の腫瘍、乳頭部の病変など
  • 不規則な拡張+膵石:慢性膵炎
  • 膵管全体の拡張や、膵管とつながる嚢胞:IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)
  • なだらかで軽い拡張:加齢による変化のこともある。基準や考え方は主膵管拡張とは?へ

次に何をするか:膵癌を疑うときは、膵臓用の多相造影CT(膵ダイナミックCT)やMRI・MRCP、超音波内視鏡(EUS)で、途切れた場所に腫瘤がないかを確認します。MRIでの見え方は膵癌のMRI画像所見の記事にまとめています。

4. 膵嚢胞

膵嚢胞は偶然見つかることが多い所見です。症状のない外来患者2,832人の造影CTでは2.6%に見つかり、40歳未満にはなく、80〜89歳では8.7%と年齢とともに増えていました(Laffan 2008)。17研究のまとめでは、見つかる割合は全体で8%、MRCPでは24.8%、CTでは2.7%でした(Zerboni 2019)。

嚢胞 見分ける手がかり
膵仮性嚢胞 膵炎のあとにできる。壁が均一で、膵炎の病歴や周囲の炎症の名残がある
IPMN(分枝型) ぶどうの房のような多房性。膵管との交通があり、MRCPで確認しやすい
MCN(粘液性嚢胞性腫瘍) 中年女性の膵体尾部に多い。厚い被膜を持つ球形の嚢胞で、内部に隔壁
SCN(漿液性嚢胞腫瘍) 小さな嚢胞が集まった蜂の巣状。中心の瘢痕や石灰化を伴うことがある
SPN(充実性偽乳頭状腫瘍) 若い女性に多い。充実部分と嚢胞・出血が混在する
リンパ上皮嚢胞・類上皮嚢胞 まれ。膵の外へ突出する嚢胞、膵内副脾に伴う嚢胞など

膵漿液性嚢胞腫瘍(SCN)の蜂の巣状の嚢胞
SCNの模式図です。膵臓の中に小さな嚢胞が蜂の巣のように集まった腫瘤が見えます。詳しくは膵漿液性嚢胞腫瘍(SCN)のCT・MRI画像診断の記事へ。

偶然見つかったときの扱い:米国放射線学会(ACR)の偶発所見委員会は、患者さんの背景と画像所見から順に分類し、良性で経過観察を終えてよいものと、追加の検査が必要なものを分ける流れを示しています(Megibow 2017)。IPMNについては国際ガイドラインが、主膵管の太さ、造影される壁在結節、嚢胞の増大などを「注意すべき所見」として整理しています(Tanaka 2017; Ohtsuka 2024)。こうした所見があれば、MRI・MRCPやEUSでの精査を考えます。各所見のフォローの目安は偶発所見のフォロー早見表にまとめています。

5. 膵腫瘤

造影CTで腫瘤を見つけたら、まわりの膵臓より染まりが弱いか(乏血性)、強いか(多血性)でまず大きく分けます。

腫瘤 造影パターンと手がかり
膵癌(浸潤性膵管癌) 乏血性で境界が不明瞭。上流の膵管拡張・膵萎縮を伴いやすい。周囲の動脈・門脈への浸潤を確認
膵神経内分泌腫瘍(膵NET) 動脈相で強く染まる多血性腫瘤が典型。大きいと内部が不均一になる
膵内副脾 膵尾部にあり、どの相でも脾臓と同じ濃さ。膵NETとの見分けが大事
腫瘤形成性の自己免疫性膵炎 被膜様の縁、遅れて均一に染まる、腫瘤の中を膵管が通る(duct-penetrating sign)(Ogawa 2021)
groove膵炎 膵頭部と十二指腸の間の線維化、十二指腸壁の肥厚や小嚢胞。膵頭部癌との見分けが難しい(Addeo 2019)
膵悪性リンパ腫 大きいわりに膵管拡張が軽い、血管を巻き込んでも細くしにくい

膵癌を疑ったときに見ること:腹腔動脈・総肝動脈・上腸間膜動脈(SMA)・門脈との接し方(膵癌の血管浸潤)、膵外神経叢浸潤、肝転移や腹膜播種、リンパ節転移を順に確認します。場所ごとの特徴は膵頭部癌・膵体部癌・膵尾部癌の記事にあります。

6. 石灰化・ガス

慢性膵炎の膵石(石灰化)
引用:Radiopaedia(Chronic calcific pancreatitis)
膵臓に沿って切った曲面再構成像(CPR)で、膵頭部から尾部まで膵管に沿う多数の石灰化(膵石)が連なって見えます。詳しくは慢性膵炎のCT画像診断の記事へ。

  • 膵管に沿う点状〜粗大な石灰化:慢性膵炎。膵管の不規則な拡張や萎縮を伴う
  • 腫瘤の中の石灰化:SCNの中心瘢痕、SPN、膵NETなど。慢性膵炎以外の原因は膵臓の石灰化は慢性膵炎?へ
  • 膵臓の近くの石灰化:脾動脈の動脈硬化、リンパ節の石灰化、胆石など。腹部CTの石灰化の鑑別で場所ごとに整理しています
  • 膵臓や周囲の液体の中のガス:膵炎のあとの壊死に感染が起きた可能性を考える。ただし内視鏡的な処置やドレナージのあとにも見られるので、処置歴を確認します

7. 膵臓の周囲(脂肪織・液体・血管)

  • 脂肪織の濃度上昇・液体貯留:急性膵炎では前腎傍腔を中心に広がる。改訂アトランタ分類では、膵周囲の液体貯留、膵・膵周囲の壊死、仮性嚢胞、被包化壊死(WON)を局所合併症としています(Banks 2013)
  • 静脈:脾静脈・門脈の閉塞や狭窄。膵炎や膵癌で起こり、胃のまわりの側副血行路が発達することがある。膵頭部癌では胃結腸静脈幹(Henle trunk)の拡張にも注目
  • 動脈:膵炎や手術のあとの仮性動脈瘤は出血の原因になる。膵管から出血する膵管出血(hemosuccus pancreaticus)もある。腹腔動脈の起始部が狭い正中弓状靱帯圧迫症候群では膵アーケードの動脈瘤を伴うことがある
  • 膵臓と胆管の合流:膵・胆管合流異常は胆道癌との関係があり、MRCPで確認します

膵臓の血管の位置関係は膵臓の血管(動脈)の解剖まとめを参考にしてください。

膵で見落としやすい場所と、確認のしかた

膵臓は細長く、まわりを胃・十二指腸・血管に囲まれているため、場所によっては小さな病変が紛れやすいことがあります。切除された膵癌70例のうち10例(14%)は、多相造影CTで膵管拡張などの間接所見がなく、その半数(5例)は鉤部にありました(Tamada 2016)。

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
膵鉤部 上腸間膜静脈の後ろに回り込み、十二指腸と接する。膵管・胆管から離れていて、拡張が起こりにくい SMA・SMVの右後ろの軟部影を、横断と冠状断で左右差を見ながら確認する。膵鉤部の記事参照
膵頭部と十二指腸の間(groove) 十二指腸の壁と区別しにくい 十二指腸を内腔ごと追い、膵頭部との間の脂肪の線を確かめる
膵頸部 門脈の前で薄く、部分容積効果で病変がぼやける 薄いスライスと冠状断・矢状断で、門脈の前の厚みを見る
膵尾部の脾門部 脾臓や脾静脈、腸管と接し、膵臓のはじまりが分かりにくい 脾静脈に沿って尾部の先端まで追う。膵内副脾は脾臓と濃さを比べる
膵管の途切れ 腫瘤が周囲と同じ濃さだと、膵管の変化だけが手がかりになる 膵管の太さが変わる場所で止まり、上流の萎縮と合わせて評価する
  • 以前のCTと比べる:膵癌と診断される前のCTを振り返ると、半数ほどで腫瘤が疑える所見がありました(Hoogenboom 2022)。わずかな膵管拡張や部分的な萎縮も、前回と比べて変化があれば重みが増します。
  • ウィンドウを狭くする:膵臓と腫瘤の濃さの差が小さいときは、ウィンドウ幅を狭くしてコントラストを上げて見直します。

腹部全体の見方の流れは腹部CTの読み方にまとめています。

膵臓の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. 健診のCTで「膵嚢胞」と言われました。すぐに手術が必要ですか?
A. 多くの膵嚢胞は小さく、すぐに治療が必要なものではありません。ただし種類によっては将来がん化することがあるため、大きさや膵管の太さ、壁のしこりの有無を見て、MRIなどで経過を見ることが一般的です。詳しくは膵嚢胞とは?の記事へ。

Q. 「膵管が少し太い」とだけ言われた場合は?
A. 加齢でも膵管は太くなりますが、膵管の途切れや膵臓の部分的なやせを伴う場合は、膵癌の手がかりのことがあります。MRCPや超音波内視鏡など、膵臓を詳しく見る検査を相談するきっかけになります。

Q. 膵臓に脂肪がまじっている(脂肪置換)と言われました。
A. 脂肪置換(脂肪がまじること)で、高齢の方や体重の多い方によく見られます。それ自体は病気でないことが多いですが、一部だけ目立つと腫瘤のように見えることがあり、必要に応じて別の検査で確かめます。

まとめ

膵臓CTの読影では、

  • 大きさ・形(びまん性の腫大か、部分的な萎縮か)
  • 主膵管の太さと途切れる場所
  • 嚢胞の形と膵管との関係
  • 腫瘤の造影パターン(乏血性か多血性か)と血管との関係
  • 周囲の炎症・液体・血管

を順に確認し、必要に応じてMRI・MRCP、超音波内視鏡、血液検査と組み合わせて判断します。腹痛や背中の痛み、黄疸、急な体重減少など気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

参考になれば幸いです(^Д^)

あわせて読みたい:腹部CTの肝臓の読影ポイント

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参考文献

  1. Megibow AJ, Baker ME, Morgan DE, et al. Management of Incidental Pancreatic Cysts: A White Paper of the ACR Incidental Findings Committee. J Am Coll Radiol. 2017;14(7):911-923. PubMed
  2. Laffan TA, Horton KM, Klein AP, et al. Prevalence of unsuspected pancreatic cysts on MDCT. AJR Am J Roentgenol. 2008;191(3):802-7. PubMed
  3. Zerboni G, Signoretti M, Crippa S, et al. Systematic review and meta-analysis: Prevalence of incidentally detected pancreatic cystic lesions in asymptomatic individuals. Pancreatology. 2019;19(1):2-9. PubMed
  4. Kim JH, Park SH, Yu ES, et al. Visually isoattenuating pancreatic adenocarcinoma at dynamic-enhanced CT: frequency, clinical and pathologic characteristics, and diagnosis at imaging examinations. Radiology. 2010;257(1):87-96. PubMed
  5. Tamada T, Ito K, Kanomata N, et al. Pancreatic adenocarcinomas without secondary signs on multiphasic multidetector CT: association with clinical and histopathologic features. Eur Radiol. 2016;26(3):646-55. PubMed
  6. Hoogenboom SA, Engels MML, Chuprin AV, et al. Prevalence, features, and explanations of missed and misinterpreted pancreatic cancer on imaging: a matched case-control study. Abdom Radiol (NY). 2022;47(12):4160-4172. PubMed
  7. Banks PA, Bollen TL, Dervenis C, et al. Classification of acute pancreatitis–2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus. Gut. 2013;62(1):102-11. PubMed
  8. Ogawa H, Takehara Y, Naganawa S. Imaging diagnosis of autoimmune pancreatitis: computed tomography and magnetic resonance imaging. J Med Ultrason (2001). 2021;48(4):565-571. PubMed
  9. Addeo G, Beccani D, Cozzi D, et al. Groove pancreatitis: a challenging imaging diagnosis. Gland Surg. 2019;8(Suppl 3):S178-S187. PubMed
  10. Tanaka M, Fernández-Del Castillo C, Kamisawa T, et al. Revisions of international consensus Fukuoka guidelines for the management of IPMN of the pancreas. Pancreatology. 2017;17(5):738-753. PubMed
  11. Ohtsuka T, Fernandez-Del Castillo C, Furukawa T, et al. International evidence-based Kyoto guidelines for the management of intraductal papillary mucinous neoplasm of the pancreas. Pancreatology. 2024;24(2):255-270. PubMed

臓器・部位ごとの読影ポイント(シリーズ)

同じ形で、臓器・部位ごとに「何が起こりうるか、どう読むか」をまとめています。

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