先に結論:膵頭部外側縁の突出(正常変異)

  • 膵頭部の外側縁や膵尾部がこぶのように突出するのはよくある正常変異で、CT・MRIで膵腫瘍と間違えやすい所見です
  • 周りの膵臓と同じ濃度・信号・造影パターンで、主膵管や胆管の拡張・周囲への浸潤がないことが正常変異と判断するポイントです
  • 迷う場合はダイナミックCT・MRIの複数の相で膵実質と同じ染まり方かを確認します
  • 正常な膵臓はCTで頭部から尾部まで均一に造影され、輪郭のでこぼこ(分葉)は正常でもよく見られます(病気のない119例の34.5%に膵頭部・頸部の外側縁の突出:Ross 1996)

膵臓には加齢や発育過程による形状の個人差があり、特に膵頭部外側縁や尾部に突出(lobulation)が認められることがあります。

これらは正常変異の範囲であり、CTやMRIで膵腫瘍と誤認されることもあるため、正しい知識が重要です。

膵頭部外側縁突出(protrusion of the lateral contour)

「膵頭部の側縁が突出し、あたかも腫瘍が存在するかのように見える」現象は、画像診断でしばしば報告されます。膵頭部・頸部の輪郭、特に外側は分葉状になることがあり、膵腫瘍や膵周囲の転移、リンパ節腫大と紛らわしいものの、単純・動脈相・門脈相などすべての相で正常膵と同じ濃度・信号を示します(Türkvatan 2013)。

Rossらの造影CTの検討1)では胃十二指腸動脈(GDA)や前上膵十二指腸動脈(ASPDA)より1cm以上外方への膵組織突出の頻度は34.5%で、以下の様なバリエーションがあると報告しています。

  • type1:前方型
  • type2:後方型
  • type3:水平型

の3つのタイプが報告されており、後方型が最多です(119例中、前方型10%・後方型19%・水平型5%:Ross 1996)。

症例 20歳代男性 スクリーニング

膵頭部の外側縁が凸状に前方に突出しています。

膵実質と類似した形状および濃度であり、膵頭部外側縁突出を疑う所見です。

こちらの症例を動画で見てみましょう。

膵頭部だけではなくて、膵尾部にもやや分葉亜型がありますね。

症例 50歳代女性

膵頭部の外側縁が凸状に前方に突出しています。

膵実質と類似した形状および濃度であり、こちらも膵頭部外側縁突出を疑う所見です。

 膵尾部の突出・形状バリエーション

膵体尾部にも、前方または後方に突出するタイプが認められます。Omeriらの報告(Jpn J Radiol 2017)では、尾部・体部ではType Ia(前方突出)とIb(後方突出)という分類が提唱されています

  • Type Ia:正常組織が前方に1 cm以上突出
  • Type Ib:同様に後方に突出
  • Type II:尾部形状異型として、globular(IIa)、lobulated(IIb)、tapered(IIc)、bifid(二叉、IId)などが存在 。

日本放射線学会誌に掲載された大規模なMDCT調査(449例)では、体尾部の変異全体が8.5%(38/449例)で、Type I(突出)は約5.1%(23例)、尾部の形状異型(Type II)は約3.3%(15例)に認められ、特に前方突出(Ia)が最も多かったと報告されています 。

さらにGülerらの報告(945例)では、膵頭頸部の変異は後方型(Type II)24.6%、水平型(Type III)10.2%が多く、膵体尾では前方突出8.8%、後方突出1.5%、globular 6.6%、lobulated 5.3%の頻度が示されています 。

症例 70歳代男性

膵尾部が二つに分かれているような形態をしていますが腫瘤ではなく、膵実質と同様な形状および濃度であり膵尾部のバリエーションであることがわかります。

用語:外側縁・ASPDA・腹側膵と背側膵

  • 外側縁:膵頭部・頸部の右外側(十二指腸側)の輪郭のことです。Rossらは、胃十二指腸動脈(GDA)または前上膵十二指腸動脈(ASPDA)より1cm以上外側に出た膵組織を外側縁の突出として調べています(Ross 1996)。
  • ASPDA(前上膵十二指腸動脈):胃十二指腸動脈から分かれて膵頭部の前面を走る動脈です。CTで膵頭部の外側縁を判断するときの目印になります。
  • 腹側膵と背側膵:膵臓は胎生期に腹側と背側の2つの膵原基から発生し、腹側膵は膵頭部の後方と鉤状突起に、背側膵は膵頭部の前方・体部・尾部になります(Türkvatan 2013)。

膵臓の形でよくある疑問(Q&A)

Q. 膵臓のCTの正常像はどう見えますか?
A. 膵頭部・体部・尾部が均一に造影され、主膵管の拡張がないのが基本です。輪郭の変異は珍しくなく、945例の検討では膵頭頸部・体尾部の輪郭変異が63.1%にみられました(Guler 2023)。

Q. bifid pancreas(膵尾部の二分)とは何ですか?
A. 膵尾部が二股に分かれたように見える形の変異で、Omeriらの分類ではType IId(bifid)にあたり、449例中3例でした(Omeri 2017)。膵実質と同じ濃度であれば腫瘤ではありません。

Q. 外側縁の突出があれば精査が必要ですか?
A. 周りの膵と同じ濃度・信号で、主膵管や胆管の拡張がなければ正常変異として扱います。迷うときはダイナミックCTやMRIの複数の相で膵実質と比べます。

関連:

参考文献:

  1. Ross BA, Jeffrey RB Jr, Mindelzun RE. Normal variations in the lateral contour of the head and neck of the pancreas mimicking neoplasm: evaluation with dual-phase helical CT. AJR Am J Roentgenol. 1996;166(4):799-801. PubMed
  2. Guler I, Kavak RP. Pancreatic morphology/contour variations should be recognized and remembered. Niger J Clin Pract. 2023;26(6):749-755. PubMed
  3. Omeri AK, Matsumoto S, Kiyonaga M, et al. Contour variations of the body and tail of the pancreas: evaluation with MDCT. Jpn J Radiol. 2017;35(6):310-318. PubMed
  4. Borghei P, Sokhandon F, Shirkhoda A, et al. Anomalies, anatomic variants, and sources of diagnostic pitfalls in pancreatic imaging. Radiology. 2013;266(1):28-36. PubMed
  5. Türkvatan A, Erden A, Türkoğlu MA, et al. Congenital variants and anomalies of the pancreas and pancreatic duct: imaging by magnetic resonance cholangiopancreaticography and multidetector computed tomography. Korean J Radiol. 2013;14(6):905-13. PubMed

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