
先に結論:原発性アルドステロン症の画像診断(副腎CT・AVS)
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 副腎CTの役割 | 腺腫・過形成の有無、副腎癌の除外、AVSのための副腎静脈の位置確認 |
| CTの限界 | CT/MRIの左右判定はAVSと約38%で不一致(Kempers 2009) |
| AVSの位置づけ | 手術を希望する患者で片側性か両側性かを決める検査。日本内分泌学会ガイドライン2021では、手術前のAVSを推奨しつつ、対象は選ぶとされる |
| 次にすること | 手術希望の有無を確認し、AVS実施施設(内分泌内科)で方針を相談 |

原発性アルドステロン症の病型診断とは
原発性アルドステロン症(PA)は、副腎からアルドステロンが自律的に過剰分泌される病気です。治療は病型で分かれ、片側性(アルドステロン産生腺腫など)なら副腎摘出、両側性なら鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)が基本です(Naruse 2022)。そのため、スクリーニング・確定診断のあとに「左右どちらか、両側か」を決める局在(病型)診断が必要になります。
この局在診断で画像診断医が関わるのが副腎CTと副腎静脈サンプリング(AVS)です。
副腎CTで見るもの
- 副腎腫瘤の有無と大きさ:単純CTの吸収値や造影後のwashoutなど、一般的な副腎腺腫の評価は副腎腺腫のCT・MRIの記事、副腎腫瘍(副腎腺腫)の記事を参照してください。
- 大きな腫瘤では副腎癌の除外:大きな腫瘤や形の不整な腫瘤では、副腎癌も鑑別に入れます。
- コルチゾール同時産生:日本内分泌学会ガイドライン2021は、大きな副腎腺腫(macroadenoma)ではコルチゾールの同時分泌を評価するよう推奨しています(Naruse 2022)。米国内分泌学会2025年ガイドラインも、PAに副腎腺腫がある全例で1mgデキサメタゾン抑制試験を提案しています(Adler 2025)。
- 副腎静脈の解剖:特に右副腎静脈は同定が難しいことがあり、AVSの成否を左右します。術前CTで下大静脈への流入部を確認しておくと手技に役立ちます。→副腎静脈サンプリング(AVS)の記事
症例 60歳代女性 高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、低レニン

引用:Radiopaedia(Adrenal adenoma – Conn syndrome)
単純CTで、左副腎に小さな境界明瞭で均一な低吸収の結節があり、関心領域の平均CT値は約2HUです。10HU未満で脂肪に富む腺腫に合う所見で、臨床所見とあわせて原発性アルドステロン症(Conn症候群)と考えられた症例です。報告では右副腎は正常とされています。
CTで腺腫が見えても機能側と一致しない頻度
系統的レビュー:約38%で不一致
CT/MRIとAVSの両方を受けた950例を集めた系統的レビューでは、37.8%でCT/MRIの判定がAVSと一致しませんでした(Kempers 2009)。CT/MRIだけで治療を決めていたら、次のようなことが起こりえたと計算されています。
| CT/MRIだけで決めた場合の誤り | 割合 |
|---|---|
| AVSで両側性なのに副腎摘出(不要な手術) | 14.6% |
| AVSで片側性なのに手術の対象から外れる | 19.1% |
| 反対側の副腎を摘出 | 3.9% |
結節の大きさ別(Mayo Clinic 194例)
AVSに成功した194例の検討では、AVSで片側性分泌を示した割合は、CT正常で41.4%、片側の小結節(10mm以下)で51.1%、片側の大結節(10mm超)で65.6%でした。片側小結節の例では7例が反対側からの分泌でした。CTだけで判断すると、21.7%が手術の候補から誤って外れ、24.7%が不要または不適切な副腎摘出を受けた可能性があるとされています(Young 2004)。
そのほかの報告
- SPARTACUS試験の画像の再解析では、通常のCT判定とAVSの一致率は51.8%、副腎の体積測定を使っても58.8%で、有意な改善はありませんでした(Velema 2021)。
- 明らかな副腎腫瘤があるのにAVSと一致しない例では、腫瘤側からの潜在的なコルチゾール過剰がAVSの判定をゆがめていることがあると報告されています(Grundy 2025)。AVSも万能ではない点は知っておきたいところです。
AVSの位置づけ
日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」
日本内分泌学会が監修した「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」(診断と治療社、2021年発行)の英文版(Naruse 2022)では、AVSについて次のように述べられています。
- 副腎摘出の前にAVSで局在を確認することを推奨。ただし全例ではなく対象を慎重に選ぶ。
- 典型的なPA所見をもつ若年者ではAVSを省略することを提案。
- ACTH負荷後のselectivity index(SI)≧5でカテーテル挿入成功、lateralization index(LI)>4で片側性と判定。
米国内分泌学会ガイドライン(2025年)
片側性の可能性が高く手術を希望する患者では、治療方針(内科か外科か)を決める前にCTとAVSによる局在診断を提案しています。手術を望まない、または手術の候補でない場合はPAに特異的な薬物療法を始めることを提案しています(Adler 2025)。
CTだけで決めてはいけないのか?
CT主導とAVS主導で治療を割り付けたランダム化試験(SPARTACUS、184例が追跡完了)では、1年後の降圧薬の量や目標血圧の達成率(42% vs 45%)に差がありませんでした(Dekkers 2016)。一方で前述のとおりCTとAVSの不一致は多く、主要なガイドラインはいずれも手術前の局在診断としてAVSを位置づけています(Naruse 2022、Adler 2025)。
読影レポートでのポイント
- 腺腫の有無だけでなく、「CT所見だけでは機能側は決められない」ことを前提に、左右副腎の形態(結節・肥厚)を両側とも記載する。
- 大きな腫瘤では悪性やコルチゾール同時産生も考慮する。
- AVS予定があれば右副腎静脈の位置(流入部の高さ・方向)にも触れる。
よくある疑問(Q&A)
Q1. CTで片側に大きな腺腫があれば、AVSなしで手術できますか?
大きな結節ほど同側の片側性分泌の割合は高いものの、10mm超の片側結節でも片側性と確認されたのは65.6%で、反対側からの分泌例もありました(Young 2004)。AVSを省略するかどうかは年齢などを含めて主治医チームが判断します。
Q2. CTで副腎に異常がなければ、手術の対象外ですか?
CT正常でも41.4%はAVSで片側性分泌を示しました(Young 2004)。CTが正常でも片側性の可能性は残ります。
Q3. AVSでうまく採血できなかったときは?
AVSの成否はSI(≧5)で判定されます(Naruse 2022)。不成功のときの方針(再検査など)は施設ごとに異なるため、主治医にご相談ください。
参考文献
- Naruse M, Katabami T, Shibata H, et al. Japan Endocrine Society clinical practice guideline for the diagnosis and management of primary aldosteronism 2021. Endocr J. 2022;69(4):327-359. PubMed
- Adler GK, Stowasser M, Correa RR, et al. Primary Aldosteronism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2025;110(9):2453-2495. PubMed
- Kempers MJ, Lenders JW, van Outheusden L, et al. Systematic review: diagnostic procedures to differentiate unilateral from bilateral adrenal abnormality in primary aldosteronism. Ann Intern Med. 2009;151(5):329-37. PubMed
- Young WF, Stanson AW, Thompson GB, et al. Role for adrenal venous sampling in primary aldosteronism. Surgery. 2004;136(6):1227-35. PubMed
- Dekkers T, Prejbisz A, Kool LJS, et al. Adrenal vein sampling versus CT scan to determine treatment in primary aldosteronism: an outcome-based randomised diagnostic trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4(9):739-746. PubMed
- Velema MS, Canu L, Dekkers T, et al. Volumetric evaluation of CT images of adrenal glands in primary aldosteronism. J Endocrinol Invest. 2021;44(11):2359-2366. PubMed
- Grundy M, Leung AA, Hyrcza M, et al. Discordance between adrenal vein sampling and imaging: the role of unilateral cortisol excess. Eur J Endocrinol. 2025;192(3):191-201. PubMed
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