日常臨床や救急外来などで腹部CTで肝臓を観察するときに、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?

  • 肝腫大
  • 肝萎縮
  • 肝実質の吸収値の異常
  • 胆管拡張
  • 肝内ガス
  • 肝腫瘤

の有無についてまずは読影をしてみましょう。

以上の代表的な異常所見について、それぞれの鑑別診断と読影のポイントを詳しく解説します。

1. 肝腫大

肝臓が腫大しているかどうかを判断するには、以下のポイントを確認します:

  • 頭尾方向の長径が15~16cmを超える
  • 右葉の下縁が腎下縁より尾側に位置する
  • 肝辺縁が鈍化している

主な原因には以下が挙げられます:

詳しくはこちら→肝腫大とは?定義、基準、原因、エコー、CT画像診断まとめ!

2. 肝萎縮

肝萎縮の判断は明確な数値基準こそありませんが、以下の形態変化に注目します:

  • 右葉・左葉内側区域の萎縮
  • 左葉外側区域や尾状葉の腫大
  • 肝表面の凹凸不整

肝硬変では、上記の形態変化に加え、側副血行路(左胃静脈、食道静脈瘤)や腹水も確認されます。

詳しくはこちら→肝硬変のCT,MRI画像所見のポイントは?

3. 肝実質の吸収値異常

高吸収

低吸収

  • 脂肪肝:肝実質が脈管より低吸収化。中等度では脈管が見えにくく、高度では反転して見える
  • 限局性脂肪肝/非脂肪肝:third inflow(Sappey静脈、右胃静脈、胆嚢静脈)流入領域に一致した領域性低吸収

4. 胆管拡張

肝内胆管が描出される=胆管拡張。原因としては:

  • 肝細胞癌:腫瘍による閉塞性の部分拡張
  • 胆管癌:特に肝門部胆管癌では左右の胆管が“泣き別れ”状に、びまん性の拡張

また、periportal collar sign(門脈の両側に帯状低吸収域)との鑑別が重要です。

5. 肝内ガス

肝内にガス像が見られた場合は、以下を鑑別します:

6. 肝腫瘤

良性腫瘍

  • 肝嚢胞:水と同等の低吸収、造影効果なし
  • 肝血管腫:「fill-in pattern」‐動脈相辺縁濃染、平衡相で内部へ造影剤が広がる

悪性腫瘍

  • 肝細胞癌:早期濃染→washout、小偽被膜、動脈依存性の血流
  • 転移性肝癌:ring enhancement、中心低吸収・辺縁濃染

感染性病変

肝膿瘍:「double target sign」‐中心低吸収+周囲濃染+浮腫性の外層

まとめ

肝臓CTの読影では、

  • 形態的変化
  • 吸収値の異常
  • 造影パターン
  • 付随所見(腹水や側副血行路など)

を総合的に評価し、必要に応じて MRI や 超音波検査, 血液検査と併用することで、より精度の高い診断が可能となります。

参考になれば幸いです(^Д^)

関連記事:【保存版】肝臓の解剖まとめ!CT画像での区域の覚え方!

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