日常臨床や救急外来、健診の腹部CTで大腸と虫垂を観察するときに、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?
- 大腸の壁肥厚(腸炎の分布)
- 憩室と憩室炎
- 虫垂(虫垂炎・虫垂の腫瘤)
- 大腸の腫瘤
- 大腸の拡張・閉塞・捻転
- 周囲(脂肪織・膿瘍・腸管外のガス)
の有無についてまずは読影をしてみましょう。
大腸は盲腸から直腸まで、お腹の周りをぐるりと一周しています。盲腸(右下腹部)から順に、上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸と1本の管としてたどるのが基本で、どこに・どれくらいの長さで異常があるかが、そのまま鑑別につながります。以下、代表的な所見ごとに、鑑別診断と次に見るポイントを解説します。
先に結論:腹部CTで大腸・虫垂を見るときの6つのチェックポイント
- 壁肥厚:場所(右側・左側・直腸から連続・全体)と長さで、感染性腸炎・虚血性腸炎・潰瘍性大腸炎・偽膜性腸炎などを考える。短く不整なら腫瘍を疑う
- 憩室炎:憩室の周りの脂肪織の濃度上昇と壁肥厚。膿瘍・穿孔・瘻孔がないかを見る
- 虫垂:まず虫垂を見つける。腫大・壁の造影増強・周囲の脂肪織濃度上昇・糞石、穿孔のサインを確認する
- 腫瘤:限局した不整な壁肥厚、内腔の狭窄、リンパ節や肝転移。偶然の壁肥厚でも腫瘤があれば内視鏡へ
- 拡張・捻転:拡張した大腸の肛門側に閉塞の原因(大腸癌が多い)があるか、腸間膜のねじれ(S状結腸・盲腸の捻転)があるか
- 周囲:膿瘍、腸管外のガス(穿孔)、腹膜垂炎など大腸の外側の病気
1. 大腸の壁肥厚と腸炎の分布
大腸の壁肥厚は、どこに(分布)、どのくらいの長さで、どんな厚くなり方か(層構造が保たれるか)で整理します(Macari 2001)。分布ごとの代表的な病気は次の通りです。
| 分布 | 考える病気 |
|---|---|
| 右側結腸・回盲部 | 感染性腸炎(カンピロバクター・サルモネラ・腸管出血性大腸菌など)、エルシニア、腸結核、クローン病、アメーバ腸炎 |
| 左側結腸(下行〜S状結腸) | 虚血性腸炎(区域性で、直腸は保たれやすい)、憩室炎 |
| 直腸から口側へ連続 | 潰瘍性大腸炎 |
| 大腸全体・高度の浮腫 | 偽膜性腸炎(抗菌薬使用後)、高度の潰瘍性大腸炎、サイトメガロウイルス腸炎 |
分布と原因の関係は腸炎の分布と原因の相関の図が便利です。

潰瘍性大腸炎の造影CTです。直腸からS状結腸にかけて、全周性の壁肥厚と造影効果の増強があります(矢印)。詳しくは潰瘍性大腸炎のCT画像診断の記事へ。

虚血性腸炎の造影CTです。下行結腸(黄色の円)に粘膜下層の浮腫による壁肥厚があり、周囲の脂肪織も軽く濃くなっています。詳しくは左側結腸の腸炎の鑑別(虚血性腸炎)の記事へ。
偶然見つかった大腸の壁肥厚
症状と関係なく大腸の壁肥厚を指摘されることはよくあります。救急のCT 2,850件の検討では322人に偶然の壁肥厚があり、大腸内視鏡を受けた150人の64%で何らかの異常が見つかりました。多くは非特異的な腸炎でしたが、壁肥厚に加えて腫瘤があった12人は全員が腺腫か癌でした(Eskaros 2009)。別の35人の検討では8人(23%)に腫瘍があり、5人(14%)が浸潤癌でした(Moraitis 2006)。
- 限局した不整な壁肥厚・腫瘤状の形・リンパ節腫大があれば、大腸内視鏡をすすめる理由になります
- 便がなく縮んだ直腸やS状結腸は、壁が厚く見えます。排便後や便秘時のCTで直腸壁が厚く見える理由も参考にしてください
2. 憩室と憩室炎
大腸憩室は、腸の壁の弱い所が外に袋状に飛び出したもので、ガスや便を含む小さな袋として見えます。憩室だけなら病気ではありませんが、炎症を起こすと憩室炎になります。
- CT所見:憩室の周りの脂肪織の濃度上昇、区域性の壁肥厚。炎症の中心に憩室がある
- CTの精度:メタ解析で、憩室炎に対するCTの感度は94%、特異度は99%で、超音波との差ははっきりしませんでしたが、CTのほうが憩室炎以外の病気を見つけやすいとされています(Laméris 2008)
- 次に見るポイント:膿瘍(液体がたまり辺縁が造影される)、腸管外のガス(穿孔)、膀胱との瘻孔(膀胱内のガス)、肝臓の膿瘍や門脈のガス
- 大腸癌との区別:壁肥厚が短く、内腔に突出する肩があり、リンパ節腫大を伴うときは癌も考え、炎症が落ち着いてから内視鏡で確かめます
詳しくはこちら→大腸憩室炎のCT画像所見(重症度・膿瘍・穿孔・結腸膀胱瘻)、結腸憩室炎と虫垂炎との鑑別
憩室からの出血では、造影CTで腸の中に造影剤が漏れ出る像(extravasation)が出血源の手がかりになります(→下部消化管出血の原因と造影CT)。
憩室炎とまちがえやすい腹膜垂炎

腹膜垂炎のCTです。下行結腸のそば(矢印)に、高吸収の縁どりをもつ卵円形の脂肪の塊が見えます。詳しくは腹膜垂炎のCT画像所見と憩室炎との違いの記事へ。
腹膜垂炎は、大腸の外側にぶら下がる脂肪の袋(腹膜垂)がねじれたり血流が悪くなったりするもので、縁が白い小さな脂肪の楕円(ring sign)と中心の点(dot sign)が特徴です。多くは鎮痛薬と経過観察で治り、憩室炎や虫垂炎と見分けることで不要な治療を避けられます(El-Sawaf 2025)。
3. 虫垂(虫垂炎・虫垂の腫瘤)

虫垂の位置の模式図です。回腸末端が大腸に合流する所(バウヒン弁)より下が盲腸で、虫垂はその盲腸から出る先の閉じた細い管です。詳しくは急性虫垂炎のCT所見のポイント(虫垂の見つけ方)の記事へ。
まず虫垂を見つけることが出発点です。回腸末端と盲腸を探し、その下から出る盲端の管を冠状断も使って追います。虫垂の先は骨盤内や盲腸の後ろに向かうこともあります。
- 太さ:外傷でCTを受けた50人の正常な虫垂の径は平均4.9mm(範囲4〜7mm)、手術で虫垂炎と確かめられた592人では平均12.6mmで、この研究では9mmを超える径を異常とすべきと提案されています(Cho 2023)。太さだけでなく、次の所見を組み合わせます
- 壁の肥厚と造影増強、周囲の脂肪織の濃度上昇、糞石
- 穿孔のサイン:壁の造影の途切れ、虫垂の外のガス、膿瘍
詳しくはこちら→急性虫垂炎のCT画像診断(穿孔・膿瘍の所見)、虫垂の糞石・バリウム糞石
虫垂がはっきり見えないときは、右下腹部の痛みの原因として回腸末端炎(回盲部炎)、憩室炎、卵巣の病気なども考えます。
虫垂の腫瘤・嚢胞状の拡張
虫垂が液体で風船のように膨らみ、周囲の炎症が乏しいときや壁に石灰化があるときは、虫垂粘液腫(LAMNなどの粘液性腫瘍)を考えます。破れると腹膜偽粘液腫の原因になるため、炎症だけで説明できない形のときは指摘して精査につなげます。
4. 大腸の腫瘤
大腸癌は、短い範囲の不整な壁肥厚や、内腔を狭くするりんごの芯のような形で見られます。炎症による壁肥厚に比べて、範囲が短く、層構造が消え、境目が急(肩がある)なのが手がかりです。
- 次に見るポイント:周りの脂肪への広がり(壁外浸潤)、所属リンパ節、肝転移・肺転移、腹膜播種
- 口側の拡張:腫瘍で狭くなると、口側の大腸が拡張して大腸閉塞になる
- まぎらわしいもの:便の塊、縮んだ腸、憩室炎による壁肥厚。造影の有無や連続するスライスで確かめる
詳しくはこちら→大腸癌の壁外浸潤のCT画像診断、CTコロノグラフィ(大腸CT)とは
5. 大腸の拡張・閉塞・捻転
大腸閉塞
大腸が拡張しているときは、肛門側へたどって細くなる場所を探し、腫瘍・憩室炎による狭窄・捻転などの原因を考えます。回盲弁が閉じていると、盲腸が強く拡張することがあります。詳しくは大腸閉塞のCT画像診断の記事へ。
捻転(S状結腸・盲腸)

S状結腸軸捻転の造影CTです。大きく拡張したS状結腸(赤)の両端が、ねじれた部分に向かってくちばし状に細くなっています(beak sign)。詳しくはS状結腸軸捻転のCT・レントゲン所見の記事へ。
捻転では、ねじれた腸間膜の渦巻き(whirl sign)、ねじれた部分のくちばし状の先細り、拡張した腸のループが手がかりになります(Peterson 2009)。盲腸捻転では、拡張した盲腸が左上腹部へ移動して見えることがあります。腸管壁の造影不良や壁内ガスは、血流障害を示す所見です。
中毒性巨大結腸症・偽性腸閉塞
腸炎がある人で横行結腸などが大きく拡張し、全身状態が悪いときは中毒性巨大結腸症を考えます。閉塞の原因がないのに大腸が拡張する場合は、急性の偽性腸閉塞(Ogilvie症候群)も鑑別になります。
6. 周囲(脂肪織・膿瘍・腸管外のガス)
- 脂肪織の濃度上昇:壁肥厚の程度に比べて脂肪織の炎症が強いときは、憩室炎・虫垂炎・腹膜垂炎・穿孔など、腸の外に広がる病気を考える
- 腸管外のガス(穿孔):168人の検討では、右側結腸の穿孔では腸の外の泡状のガス、左側結腸の穿孔では腸管壁の途切れが、穿孔の場所を示す強い手がかりでした(Kim 2014)。便が腸の外に出た塊状の像(dirty mass sign)にも注意します(→大腸穿孔のCT画像診断)
- 膿瘍:憩室炎や虫垂炎の周りに、辺縁が造影される液体のたまり
大腸・虫垂で見落としやすい場所と、確認のしかた
| 場所 | 見落としやすい理由 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 虫垂の先端(骨盤内・盲腸の後ろ) | 虫垂の根元だけを見て、炎症がある先端を見逃す | 冠状断・矢状断で盲端まで追いかける |
| 肝弯曲・脾弯曲 | 大腸が急に曲がり、横断像では輪切りの位置がずれる。肝臓・脾臓・胃と重なる | 冠状断で曲がり角を連続して追う |
| S状結腸 | 長くくねっていて、小腸や膀胱・子宮と重なる | 冠状断・矢状断で1本の管としてたどる |
| 直腸 | 縮んでいると壁が厚く見え、腫瘍と区別しにくい。撮影範囲の下端にかかる | 以前のCTと比べ、肛門近くまで範囲に入っているか確認する |
| 便の中の腫瘤 | 便と腫瘍の濃さが近く、内腔に紛れる | 造影されるか(腫瘍は造影される)、壁から出ているかを見る |
大腸・虫垂の読影でよくある疑問(Q&A)
Q. CTで「大腸の壁が厚い」と言われました。がんですか?
A. 多くは腸炎や、腸が縮んでいるための見かけの肥厚です。ただし、腫瘤のような形や短く不整な肥厚、リンパ節の腫れを伴うときは大腸癌の可能性があるため、大腸内視鏡で確かめることがすすめられます。主治医と相談してください。
Q. 虫垂炎は何mm以上が目安ですか?
A. 研究によって基準が異なり、正常でも7mm程度まで見られることがあります。太さだけでなく、壁の造影増強・周囲の脂肪織の濃度上昇・糞石などを組み合わせて判断します。
Q. 憩室があると言われました。治療が必要ですか?
A. 憩室があるだけなら病気ではなく、多くは治療を必要としません。腹痛や発熱(憩室炎)、出血などの症状が出たときに医療機関を受診してください。
まとめ
大腸・虫垂CTの読影では、
- 壁肥厚の分布と長さ(腸炎の種類・腫瘍)
- 憩室炎と合併症(膿瘍・穿孔・瘻孔)
- 虫垂の同定と虫垂炎のサイン
- 拡張の原因(腫瘍・捻転)
- 周囲の脂肪織・腸管外のガス
を順に確認し、必要に応じて大腸内視鏡や注腸、CTコロノグラフィへつなげます。腹痛・発熱・血便・便通の変化など気になる症状があれば、医療機関を受診してください。
参考になれば幸いです(^Д^)
あわせて読みたい:消化管疾患の画像診断まとめ
参考文献
- Macari M, Balthazar EJ. CT of bowel wall thickening: significance and pitfalls of interpretation. AJR Am J Roentgenol. 2001;176(5):1105-16. PubMed
- Eskaros S, Ghevariya V, Diamond I, et al. Correlation of incidental colorectal wall thickening at CT compared to colonoscopy. Emerg Radiol. 2009;16(6):473-6. PubMed
- Moraitis D, Singh P, Jayadevan R, et al. Colonic wall thickening on computed tomography scan and clinical correlation. Does it suggest the presence of an underlying neoplasia? Am Surg. 2006;72(3):269-71. PubMed
- Laméris W, van Randen A, Bipat S, et al. Graded compression ultrasonography and computed tomography in acute colonic diverticulitis: meta-analysis of test accuracy. Eur Radiol. 2008;18(11):2498-511. PubMed
- El-Sawaf Y, Alzayani S, Saeed NK, et al. Epiploic appendagitis: An overlooked cause of acute abdominal pain. World J Gastroenterol. 2025;31(32):109897. PubMed
- Cho JH, Akers MJ, Siavoshi M, et al. Features on Computed Tomography That Correlate With Acute Appendicitis. Am Surg. 2023;89(6):2876-2879. PubMed
- Peterson CM, Anderson JS, Hara AK, et al. Volvulus of the gastrointestinal tract: appearances at multimodality imaging. Radiographics. 2009;29(5):1281-93. PubMed
- Kim HC, Yang DM, Kim SW, et al. Gastrointestinal tract perforation: evaluation of MDCT according to perforation site and elapsed time. Eur Radiol. 2014;24(6):1386-93. PubMed
臓器・部位ごとの読影ポイント(シリーズ)
同じ形で、臓器・部位ごとに「何が起こりうるか、どう読むか」をまとめています。
- 腹部CT:肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓・副腎・胃・十二指腸・小腸・大腸・虫垂・腹膜・腸間膜・腹水・後腹膜・大血管・膀胱・前立腺・子宮・卵巣・腹壁・ヘルニア
- 胸部CT:縦隔・胸膜・胸水・胸壁・気管・気管支・肺門・心臓・大血管
- 頭頸部・骨:頭部CTの脳実質・頸部CT・脊椎・骨盤の骨
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
