先に結論:膵癌のCT診断
- 膵癌は造影剤で染まりにくい(乏血性)腫瘍なので、膵ダイナミックCTの膵実質相で、よく染まる正常の膵臓の中に黒っぽい(低吸収の)腫瘤として見えるのが典型です
- 約1割は膵臓と同じ濃さで見えにくい等吸収膵癌で、遅い相(平衡相)で白っぽくなったり、主膵管の急な途絶とその先の拡張、膵臓の部分的な萎縮などの間接所見が手がかりになります
- 小さな膵癌の発見にはMRI(MRCP・拡散強調像)や超音波内視鏡(EUS)も役立ちます。主膵管の拡張や膵嚢胞は、膵癌のリスクとして経過観察が勧められます
※健診で主膵管拡張・膵嚢胞を指摘された・急な糖尿病の悪化や黄疸があるときは、消化器内科で相談してください。
症例 80歳代男性 腹痛と体重減少(CA19-9上昇)

引用:Radiopaedia(Pancreatic ductal adenocarcinoma)
造影CT動脈相で、膵頭部〜鉤部に、周囲よりも染まりの乏しい大きな低吸収の腫瘤がみられます(画像の左側が患者の右)。報告では腫瘤は約68mmで、十二指腸壁に浸潤し、胆管と膵管を拡張させていましたが、血管の巻き込みはありませんでした。病理で膵管癌と確定しています。
膵癌のCT診断
- 早期相(膵実質相)、門脈相、遅延相(平衡相)の3相を基本とする膵ダイナミックCTにて診断する。
- 膵癌は乏血性のため、増強効果は乏しい。従って、膵実質相において、高吸収を示す膵実質を背景に、低吸収の腫瘤として描出される。(遅延性に濃染される。ずっと低吸収ではない。)
- 門脈相は、肝転移の評価に最も適している。
- 膵実質相では困難な小膵癌(等吸収膵癌)が遅延相で高吸収の腫瘤として描出されることも少なくない。
- 2cm以下の膵癌をTS1膵癌という。旧来の定義(膵癌取扱い規約第7版まで)ではT1膵癌は2cm以下で膵内に限局したものとされていたが、UICC/AJCC第8版では膵内限局の条件が外れ、腫瘍径2cm以下であればT1とされる。
- 時間濃度曲線(TDC:time density curve)において、膵は動脈支配のみなので肝より実質相が早い。
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非典型的膵癌
- 膵癌の多くは低吸収であるが、5〜11%程度(報告により異なる)は等吸収膵癌である。その場合、平衡相が有用で、平衡相で高吸収を呈する。
- 等吸収膵癌は低吸収膵癌に比べてサイズが小さい傾向にある。2cm以下の膵癌では27%が等吸収で(21〜30mmでは13%)、高分化型に多かった。一方、2cm以下の等吸収膵癌の88%に主膵管の途絶・拡張などの間接所見がみられたと報告されており、小さな膵癌ほど間接所見の拾い上げが重要である。
- ただし、切除された等吸収膵癌の大きさは1.5〜4cm(中央値3cm)とする報告もあり、等吸収だから小さいとは限らない。
- 等吸収膵癌は高分化〜中分化である事が多い。等吸収膵癌は通常型に比べ腫瘍細胞密度が低く、腫瘍内に腺房組織やラ氏島が残りやすいとされ、MRIでの検出感度は約79%と報告されています。
嚢胞を伴う膵癌を見たときに考えること
- 膵癌+貯留嚢胞が最多。
- 他には、腫瘍壊死・出血、IPMN由来の膵癌、IPMNの併存膵癌、浸潤性腺癌の嚢胞状拡張もあるので注意が必要。
典型的な膵癌はもちろん、平衡相でしか認識できない膵癌が、約5〜10%という無視できない頻度であることを覚えておきましょう。
従って膵癌の検出にはダイナミックCTが必須であり、平衡相をきちんと撮影することが重要です。
参考)画像診断2006年1月膵癌のCT/MRIによる検出、鑑別、病期診断 九州大学 入江裕之先生
参考文献
- Prokesch RW, Chow LC, Beaulieu CF, et al. Isoattenuating pancreatic adenocarcinoma at multi-detector row CT: secondary signs. Radiology. 2002;224(3):764-8. PubMed
- Kim JH, Park SH, Yu ES, et al. Visually isoattenuating pancreatic adenocarcinoma at dynamic-enhanced CT: frequency, clinical and pathologic characteristics, and diagnosis at imaging examinations. Radiology. 2010;257(1):87-96. PubMed
- Egawa S, Takeda K, Fukuyama S, et al. Clinicopathological aspects of small pancreatic cancer. Pancreas. 2004;28(3):235-40. PubMed
- Yoon SH, Lee JM, Cho JY, et al. Small (≤ 20 mm) pancreatic adenocarcinomas: analysis of enhancement patterns and secondary signs with multiphasic multidetector CT. Radiology. 2011;259(2):442-52. PubMed
- Al-Hawary MM, Francis IR, Chari ST, et al. Pancreatic ductal adenocarcinoma radiology reporting template: consensus statement of the Society of Abdominal Radiology and the American Pancreatic Association. Radiology. 2014;270(1):248-60. PubMed
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CTの遅延濃染で質問です。
膵臓がんと膵炎の切り分けは通常はどのように行いますか?
遅延濃染で信号が出ている場合、現状では炎症か膵がんかの切り分けが出来ないと考えています。
遅延濃染だけでは切り分けはできません。
・早期膵実質相での低濃染の目立ち方、
・主膵管の“途絶”か“貫通”か、
・被膜様rimや均一化(AIP)、
・血管巻き込み・末梢萎縮(癌)、
・DWI/ADC・MRCP所見、
・IgG4・CA19-9・臨床経過、
・EUS-FNB
を総合して判断します。