先に結論:膵癌の血管浸潤の評価とencasementの意味
- 膵癌で手術ができるかどうかは、主な動脈・静脈にがんがどれだけ接しているかで大きく決まります。動脈は腹腔動脈(CA)・総肝動脈(CHA)・上腸間膜動脈(SMA)、静脈は門脈(PV)・上腸間膜静脈(SMV)、ほかに脾静脈(SpV)などを確認します
- encasement(エンケースメント)とは「包み込む」という意味で、腫瘍が血管のまわりを取り囲んでいる状態を指します。一般に、動脈に半周(180度)以上接していれば浸潤ありと考え、切除が難しい(切除不能・切除可能境界)と判断されることが多くなります。静脈も半周以上の接触や狭窄・閉塞があれば浸潤を疑います。2017年の国際コンセンサスでは、SMA・CAへの180度未満の接触(狭窄・変形なし)、固有肝動脈・CAに及ばないCHAへの接触、十二指腸下縁を越えないSMV・PVの狭窄・閉塞を「切除可能境界(BR)」の解剖学的基準とし、CA19-9>500 U/mLなどの生物学的因子も加味するとされています。
- 評価は膵臓用のダイナミック造影CT(薄いスライス)で行い、遠隔転移(肝・腹膜・肺)や神経叢への浸潤もあわせて確認します
膵癌の病期診断
外科手術適応禁忌をまず確認。
- 他臓器転移(肝、腹膜、肺、骨、その他)
- 傍大動脈リンパ節転移
- SMA,CA,CHA,SPA根部周囲浸潤
- PV・SMVの閉塞や、十二指腸下縁を越えて広がる浸潤(再建困難なもの)
がないかをまず確認する。あれば、オペは禁忌。
膵癌の局所浸潤について
局所浸潤度因子(膵癌取り扱い規約)
- 膵内胆管浸潤(CH)
- 十二指腸浸潤(DU)
- 膵前方組織浸潤(S)
- 膵後方組織浸潤(RP)
- 門脈系浸潤(PV)
- 動脈系浸潤(A)
- 膵外神経叢浸潤(PL)
- 他臓器浸潤(OO)
の8つの局所浸潤因子について評価する。
膵癌取扱規約第7版から、癌の浸潤の有無を0,1で表記する(2023年の第8版でも、8つの局所浸潤因子とこの表記は引き継がれています)。
例)十二指腸浸潤 DU0:なし、DU1:あり。 という意味。判定不能はDUXと表記する。
実際の臨床で最も重要なのは切除可能か否かと術式選択に関する因子がわかればよいので、極論ではありますが、
- 動脈系浸潤(CA、CHA、SMA)
- 門脈系浸潤(PV、SMV)
の有無を正確に診断すればよいということになります。ただし、術前化学療法(化学放射線療法)の後は、腫瘍と血管の接触範囲で浸潤を判定する通常の基準はそのままでは当てはまらず、画像で断端陰性切除ができるかを予測する精度は十分でないとされています。
血管への局所浸潤(PV,A)
- 血管の高度狭窄や閉塞あれば浸潤ありとの診断可能。
- 明らかな狭窄がない場合は、
門脈系→「癌と血管の接触範囲が半周以上」(主要血管で半周を超える接触を切除不能の目安とした検討では、感度84%、特異度98%)
動脈系→「腫瘤がCAもしくはSMAと接している以上」(膵癌取扱規約のT4に相当。第8版でもT4はCA・SMAへの浸潤)
場合に、血管浸潤ありと診断する。
※動脈根部周囲には神経叢があり、これらへの浸潤は同時に神経浸潤を意味する。厳密には動脈浸潤と神経浸潤は別である。
症例 70歳代男性 膵鉤部癌

ダイナミックCTの第2相の横断像です。
SMAを全周性に取り囲む膵腫瘍を認めています。腫瘍は腹部大動脈にも接しています。
膵癌取扱規約のT4(CA・SMAへの浸潤)に相当します(第7版・第8版とも同じ)。
症例 80歳代男性 膵頭部癌(浸潤ありとは言えない症例)

膵頭部に低吸収腫瘤を認めています。
腫瘤はSMVに接していますが、半周以下です。
ですので、SMVへの浸潤ありとは言えない症例です。
症例 50歳代男性 膵頭部癌(GDAへの浸潤あり。CAはなし)

膵頭部にhypovascularな腫瘍性病変あり。
胃壁〜十二指腸への進展あり。
GDAは狭細化を認めており、全周性のencasementあり。ですので、GDAへの浸潤がありと言えます。
膵体部〜尾部にかけて主膵管の拡張あり。
参考文献
- Lu DS, Reber HA, Krasny RM, et al. Local staging of pancreatic cancer: criteria for unresectability of major vessels as revealed by pancreatic-phase, thin-section helical CT. AJR Am J Roentgenol. 1997;168(6):1439-43. PubMed
- Isaji S, Mizuno S, Windsor JA, et al. International consensus on definition and criteria of borderline resectable pancreatic ductal adenocarcinoma 2017. Pancreatology. 2018;18(1):2-11. PubMed
- Al-Hawary MM, Francis IR, Chari ST, et al. Pancreatic ductal adenocarcinoma radiology reporting template: consensus statement of the Society of Abdominal Radiology and the American Pancreatic Association. Radiology. 2014;270(1):248-60. PubMed
- Zins M, Matos C, Cassinotto C. Pancreatic Adenocarcinoma Staging in the Era of Preoperative Chemotherapy and Radiation Therapy. Radiology. 2018;287(2):374-390. PubMed
- Ishida M, Fujii T, Kishiwada M, et al. Japanese classification of pancreatic carcinoma by the Japan Pancreas Society: Eighth edition. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2024;31(11):755-768. PubMed
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はじめまして、いつもサイトを拝見させていただいております。
提案というか、お願いなのですが、
膵がんの典型的な形態、または二次的所見もサイトの方にのせて頂きたいのですが、、
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
今後余裕を見つけて更新していきたいと思います。
現状は厳しいです・・・。