膵管癒合不全(pancreas divisum/unfused pancreatic duct system)とは?
- 膵の発生異常の一つで腹側膵原基と背側膵原基の癒合不全。主膵管がVater乳頭に開口せず、副乳頭に開口する変異。
- 背側膵管と腹側膵管との間に完全に交通がない完全型と細い交通枝を有する不完全型がある。腹側膵管は細く短い。不完全型にはvariationが多い。
- 膵胆管合流異常や先天性胆道拡張症を合併することがある。
- 約3-10%(1%)の頻度で見られる。
- 大部分は無症状だが、腹痛や膵炎(40-60%)の原因となる。
- 特発性再発性膵炎の12-26%。
- 小児の膵炎では考慮する。
- 飲酒により膵炎発症率が上昇する。
- 背側膵管を流れる膵液を小さな副乳頭が処理しきれないため特に背側膵領域に膵炎を起こしやすい。一方の膵管系のみに膵炎(Isolated pancreatitis)。
- divisumやdominant dorsal ductの場合、膵頭部の腫瘍によって腹側膵管が閉塞していも主膵管の拡張が見られないことがある。
- 治療法としては内視鏡的な副乳頭切開・形成術を考慮。
膵の発生の過程で膵管の解剖は次のようになります。
この後、副膵管は退縮します。
その結果膵液は主膵管からVater乳頭へ流れます。
ところが腹膵管の退縮がうまくいかなかったり、副膵管と主膵管が癒合しなかったとき、膵管癒合不全が起こります。
特に、副膵管と主膵管が癒合しない場合、膵液の流れは次のようになります。副膵管は細いのにたくさんの膵液が流れてしまうと、膵液がうっ滞してしまいますね。
その結果、閉塞性膵炎を引き起こすことになります。
divisumの画像診断
- CT所見は、主膵管、副膵管の非連続性を再構成像も含めて確認するか、dominant dorsal duct sign(副膵管の径>主膵管の径)を見つければよい。
- MRCPでも確認でき、ERCPと同等の診断率と言われる。
- 腹側膵と背側膵の間に存在する脂肪層の裂隙(fat cleft)が診断に有用とされるが、確定診断には至らない。
- 太い背側膵管が総胆管の腹側を走行し、小乳頭に向かう。背側膵管の遠位末端に嚢状の拡張を認めることがあり、santoriniceleと呼ばれる。
症例 66歳男性 アルコール性肝障害 スクリーニング
MRIのT2強調像において、主膵管のほか、副膵管の描出を認めています。
MIP像において、背側膵管(副膵管)と腹側膵管(主膵管)との間に細い交通枝を認めています。
不完全型の膵管癒合不全(divisum)を疑う所見です。
膵炎を疑う所見などは認めません。
この症例を動画で連続性を見てみる(解説はなし)
症例 60歳代男性 スクリーニング
MRIのT2強調像です。
副膵管が副乳頭に開口しております。
主膵管との連続性は認めず、完全型の膵管癒合不全(divisum)です。
MRCPのMIP像においても同様です。
副膵管と主膵管の連続性を認めません。
完全型の膵管癒合不全(divisum)です。
この症例を動画でチェックする。
膵管”癒合”不全 が正しいと思われます。
輪状膵のページでは 十二指腸下”行”脚が正しいと思われますが、いかがでしょうか?
良くまとまっており、いつも参考にさせていただいております。ありがとうございます。
らくだ様
ご指摘いただきありがとうございます。
おっしゃるとおりでした。
いずれも修正しました。
またおかしなところがありましたらご指摘いただけると助かります。