日常臨床や救急外来で頸部CTを撮ったときに、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?
- 左右差(頸部の間隙の脂肪のゆがみ)
- リンパ節(大きさ・壊死・数)
- 唾液腺(耳下腺・顎下腺)の腫大・結石・腫瘤
- 咽頭・喉頭(壁の厚み・腫瘤・気道の狭さ)
- 感染(蜂窩織炎・膿瘍)
- 嚢胞性の腫瘤
- 甲状腺・血管など周りの構造
の有無についてまずは読影をしてみましょう。
頸部は小さな構造がぎっしり詰まった場所で、正常でも凹凸が多いため、「左右を比べる」「脂肪の面(間隙)がゆがんでいないか見る」のが基本です。以下、代表的な所見ごとに、鑑別診断と次に見るポイントを解説します。
先に結論:頸部CTを見るときの7つのチェックポイント
- 左右差:咽頭・喉頭・唾液腺・筋肉を左右で比べ、脂肪の面が押されたり消えたりしていないか
- リンパ節:短径(横断像での短い径)、内部の壊死、3個以上のかたまり、周囲への染み出し
- 唾液腺:びまん性の腫大(炎症)か、結石か、腫瘤か。導管の拡張をたどる
- 咽頭・喉頭:粘膜の厚み・腫瘤、気道の狭さ、声帯の左右差
- 感染:蜂窩織炎か膿瘍か、どの間隙に広がるか、縦隔まで下りていないか
- 嚢胞:場所と年齢で絞る。40歳以上の外側の嚢胞は転移を考える
- 甲状腺・血管:偶然見つかる甲状腺結節、内頸動脈の走行異常、静脈の血栓
1. 読み始めは「左右差」と「間隙」
頸部の構造は、筋膜で区切られた間隙(スペース)に分かれています。病変がどの間隙にあるかで鑑別が大きく変わるため、まず脂肪の面がどちらに押されているかを見ます。間隙と筋膜の考え方は頸部間隙と深頸筋膜、正常の見え方は頸部MRIの正常解剖ツールで確認できます。
- 頭側から尾側へ:上咽頭→中咽頭→口腔底・唾液腺→喉頭・下咽頭→甲状腺→上縦隔の順に、1枚ずつ左右を比べる
- 正常の左右差:咽頭のくぼみ(Rosenmüller窩)や扁桃の大きさ、静脈の太さは正常でも左右差がある。粘膜の厚みが「なめらかで脂肪の面が保たれている」なら、まず正常の範囲を考える
- 異常を疑う左右差:脂肪の面が消える、筋肉や血管が押される、造影される塊がある
2. リンパ節(大きさ・壊死・数)

右の上内深頸領域(レベルII)に腫れたリンパ節があり、右の画像では黄色で示しています。詳しくは頸部リンパ節のレベル分類と正常・転移の診断基準の記事へ。
リンパ節は場所(レベル)・大きさ・内部・数の順に見ます。
- 大きさ:頭頸部癌の頸部郭清標本2,719個のリンパ節を調べた研究では、横断面での最小径(短径)が転移を予測する最も正確な大きさの指標で、10mmが最も有効な基準、顎二腹筋の下(上内深頸)では11mmでした。境界域の大きさのリンパ節が3個以上まとまっていると感度が上がり、形(丸いか)は役に立たなかったとされています(van den Brekel 1990)
- 壊死:同じ研究で、画像で分かる3mm以上の壊死は腫瘍のあるリンパ節にだけ見られました(van den Brekel 1990)。CTによる壊死の検出は感度91%、特異度93%でしたが、3mm以下の壊死はどの検査でも描出できませんでした(King 2004)。大きさが基準以下でも、内部が低吸収なら要注意です
- 周囲への染み出し:リンパ節の輪郭が不明瞭で、周りの脂肪に毛羽立ちがあると、節外浸潤や炎症を考えます
| 見え方 | まず考えるもの | 次に見ること |
|---|---|---|
| 楕円形で脂肪の門(リンパ節門)が残り、左右に同じように多数 | 反応性腫大(感染・炎症) | 扁桃・歯・唾液腺など近くの炎症の元 |
| 内部が低吸収(壊死)、辺縁だけ造影される | 扁平上皮癌の転移、結核性リンパ節炎 | 咽頭・喉頭・口腔の原発、肺の結核の所見 |
| 大きく均一で、複数の領域にまたがる | 悪性リンパ腫 | 扁桃・ワルダイエル輪、腋窩・縦隔・腹部のリンパ節、脾腫 |
| 嚢胞状・石灰化を伴う | 甲状腺乳頭癌の転移、HPV関連の中咽頭癌の転移 | 甲状腺、口蓋扁桃・舌根 |
主な原因・鑑別:反応性腫大、扁平上皮癌・甲状腺癌などの転移、悪性リンパ腫、結核性リンパ節炎、猫ひっかき病など。壊死や造影効果からの鑑別は頸部リンパ節腫大の鑑別にまとめています。
次に見るもの:腫れたリンパ節のレベルから、流れ込む元(咽頭・喉頭・口腔・甲状腺など)を逆にたどります。原発が見当たらないときは、超音波と穿刺吸引細胞診、内視鏡、PET-CTなどを組み合わせます。
3. 唾液腺(耳下腺・顎下腺)

口腔底の後方、画像の右側(患者さんの左)に、円で囲んだ大きな高吸収の結石があります。詳しくは唾石症のCT画像診断の記事へ。
- 結石(唾石):唾石の80%以上は顎下腺にできます(Kim 2024)。CTでは導管(ワルトン管)に沿った高吸収として見え、上流の導管拡張や腺の腫大・濃度上昇(唾液腺炎)を伴うことがあります。単純CTの薄いスライスが見つけやすい
- びまん性の腫大:細菌・ウイルスによる唾液腺炎、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患(涙腺・顎下腺が左右とも腫れる)など
- 腫瘤:耳下腺の腫瘤は多形腺腫・ワルチン腫瘍などの良性が多いものの、悪性もあります。境界がはっきりしない・周りへ広がる・顔面神経に沿う、リンパ節が腫れているときは悪性を考えます。CTだけでは種類を決めにくく、MRIと穿刺で詰めます(耳下腺腫瘍の画像診断)。浅葉・深葉の区別は耳下腺間隙を参照してください
4. 咽頭・喉頭(壁の厚み・腫瘤・気道)
- 粘膜の厚み・腫瘤:左右差のある粘膜の厚み、造影される塊、周りの脂肪の消失は癌を疑う手がかりです。部位ごとの見方は上咽頭癌、中咽頭の画像解剖、下咽頭癌(梨状陥凹)の記事へ。表面だけの小さな癌はCTでは見えにくく、内視鏡が基本です
- 気道の狭さ:喉頭蓋の腫れ(急性喉頭蓋炎)、喉頭蓋嚢胞、腫瘍、膿瘍などで気道が狭くなっていないかは、救急では最優先で確認します
- 声帯麻痺のサイン:声帯麻痺40例を検討した研究では、麻痺側の梨状陥凹の拡張、披裂喉頭蓋ひだが内側に寄って厚く見えること、喉頭室の拡張が信頼できる所見でした(Chin 2003)。片側の左右差がこの形なら、反回神経の走行(頸部〜上縦隔、左は大動脈弓の下)に沿って、腫瘍やリンパ節がないかを探します
5. 感染(蜂窩織炎・膿瘍)

造影CTの横断像で左の口蓋扁桃の周囲に膿瘍(黄矢印)があり、矢状断・冠状断では喉頭蓋の腫れ(橙矢印)も見えます。詳しくは頸部膿瘍(扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍)のCT画像診断の記事へ。
- 蜂窩織炎か膿瘍か:膿瘍は辺縁が造影され、中が低吸収の液体として見えます。ただしCTの判断は手術所見と食い違うことがあります。副咽頭間隙・咽頭後間隙の手術例38例では、CTの読影が手術所見と一致したのは76.3%、膿瘍の検出の感度は87.9%でした(Lazor 1994)。CTで膿瘍を疑って手術した32例でも、はっきりした膿があったのは24例(75%)で、CT値(HU)では膿瘍と蜂窩織炎を区別できませんでした(Smith 2006)。ドレナージの判断は、画像に加えて診察で決めることになります
- 広がり:咽頭後間隙・危険間隙を伝って縦隔まで下りていないか、気道が押されていないか、内頸静脈の血栓(静脈が造影されない)がないかを確認します
- 繰り返す左側の頸部膿瘍・甲状腺炎:小児〜若年では梨状窩瘻を考えます
6. 嚢胞性の腫瘤
頸部の嚢胞は、場所(正中か外側か)と年齢で候補がかなり絞れます。正中なら甲状舌管嚢胞、外側なら鰓裂嚢胞やリンパ管腫などが代表です(頸部の嚢胞性腫瘤の鑑別)。
ただし大人では、外側の嚢胞が「癌のリンパ節転移」のことがあります。成人の外側頸部の嚢胞157例では25例が悪性で、最も若い人は42歳でした。40歳以上では男性の30%、女性の10%が悪性で、原発は同じ側の口蓋扁桃が最多(50%)、85%にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が確認されています(Jones 2023)。40歳以上で新しく出た外側の嚢胞は、壁の厚みやしこり(充実部分)がなくても、中咽頭(扁桃・舌根)を確認します。甲状腺乳頭癌の転移も嚢胞状になることがあります。
7. 甲状腺と血管

甲状腺の左葉に、周りより低吸収の結節(LDA)があります。詳しくは甲状腺の結節・LDAをCTで指摘されたらの記事へ。
頸部CTや胸部CTでは、甲状腺の結節が偶然見つかることがよくあります。38研究・195,959人をまとめた解析では、CTで偶然見つかる甲状腺結節は8.3%、頸部CTに限ると16.5%で、悪性の割合は全体で3.9%でした。1cm以上の結節では11.7%、1cm未満では0.1%と大きさで差がありました(Song 2024)。米国放射線学会(ACR)の偶発所見の委員会は、年齢と大きさ、リンパ節腫大や周りへの浸潤などの怪しい所見の有無で、超音波に回すかどうかを決める考え方を示しています(Hoang 2015)。甲状腺のびまん性疾患や正常のCT値は既存の甲状腺のCT画像診断に、ほかの臓器も含めたフォローの早見表は偶発所見のフォロー早見表にまとめています。
血管では、内頸動脈が咽頭の後ろに寄って走る走行異常(内頸動脈の走行異常)を、咽頭の腫瘤と取り違えないことが大切です。生検や手術の前に指摘しておくべき所見です。
頸部で見落としやすい場所と、確認のしかた
| 場所 | 見落としやすい理由 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 咽頭後リンパ節(ルビエールリンパ節) | 頸長筋の前の小さな軟部影で、筋肉や血管と紛れる | 上咽頭〜中咽頭の高さで、内頸動脈の内側を左右で比べる |
| 梨状陥凹・喉頭の左右差 | 息の吸い方で形が変わり、正常でも左右差がある | 粘膜の厚み、脂肪の面、軟骨の変化をセットで見る。声帯麻痺の所見(Chin 2003)も考える |
| 顎下・口腔底 | 歯の金属のアーチファクトで見えにくい | アーチファクトの少ない断面や冠状断で、導管・結石・膿瘍を探す |
| 甲状腺の下〜上縦隔 | 頸部CTの撮影範囲の端で、注意が薄れやすい | 撮影範囲の最後の数枚まで、気管・食道・リンパ節・肺尖を確認する |
| 撮影範囲に入った骨・肺尖・頭蓋底 | 目的の臓器以外は見落とされやすい | 骨条件・肺野条件に切り替えて一通り見る |
- 小さなリンパ節の壊死:3mm以下の壊死はCTでもMRIでも見えないことがあります(King 2004)。大きさだけで「問題なし」とせず、原発の部位と合わせて判断します。
- 以前の画像と比べる:リンパ節や嚢胞は、増大していれば重みが変わります。
腹部も含めた読み方の流れは腹部CTの読み方も参考にしてください。
頸部CTの読影でよくある疑問(Q&A)
Q. 「首のリンパ節が腫れている」と言われました。がんでしょうか?
A. 風邪や歯・のどの炎症でもリンパ節は腫れます。大きさ(短径)、内部の壊死、数、ほかに原因となる病変があるかで判断し、心配な所見があれば超音波や細胞診で確かめます。なかなか小さくならない、硬い、だんだん大きくなる場合は、耳鼻咽喉科などで相談してください。
Q. 頸部CTで甲状腺に結節があると言われました。
A. CTで偶然見つかる甲状腺結節の多くは良性で、悪性の割合は全体で3.9%という報告があります(Song 2024)。大きさや怪しい所見の有無で、超音波で詳しく見るかを決めます。
Q. 首の膿瘍(のうよう)は、CTで分かれば切開しますか?
A. CTで膿瘍が疑われても、手術で膿がはっきり見つからない例が一定の割合であります(Smith 2006)。抗菌薬で治るか、切開や穿刺が必要かは、のどの診察や全身の状態と合わせて決めます。
まとめ
頸部CTの読影では、
- 左右差と間隙(脂肪の面)のゆがみ
- リンパ節の短径・壊死・数
- 唾液腺の結石・腫大・腫瘤
- 咽頭・喉頭の粘膜と気道、声帯麻痺のサイン
- 膿瘍の有無と縦隔への広がり
- 嚢胞の場所と年齢(40歳以上の外側の嚢胞)
- 甲状腺の偶発結節と血管
を順に確認し、必要に応じて超音波・MRI・内視鏡・細胞診と組み合わせて判断します。首のしこりや腫れ、のどの痛み、声がれ、飲み込みにくさなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
参考文献
- van den Brekel MW, Stel HV, Castelijns JA, et al. Cervical lymph node metastasis: assessment of radiologic criteria. Radiology. 1990;177(2):379-84. PubMed
- King AD, Tse GM, Ahuja AT, et al. Necrosis in metastatic neck nodes: diagnostic accuracy of CT, MR imaging, and US. Radiology. 2004;230(3):720-6. PubMed
- Kim MJ, Milliren A, Gerold DJ Jr. Salivary Gland Disorders: Rapid Evidence Review. Am Fam Physician. 2024;109(6):550-559. PubMed
- Chin SC, Edelstein S, Chen CY, et al. Using CT to localize side and level of vocal cord paralysis. AJR Am J Roentgenol. 2003;180(4):1165-70. PubMed
- Lazor JB, Cunningham MJ, Eavey RD, et al. Comparison of computed tomography and surgical findings in deep neck infections. Otolaryngol Head Neck Surg. 1994;111(6):746-50. PubMed
- Smith JL 2nd, Hsu JM, Chang J. Predicting deep neck space abscess using computed tomography. Am J Otolaryngol. 2006;27(4):244-7. PubMed
- Jones GH, Chudek D, Davies K, et al. Lateral cystic neck masses in adults: a ten-year series and comparative analysis of diagnostic modalities. J Laryngol Otol. 2023;137(3):312-318. PubMed
- Song Z, Wu C, Kasmirski J, et al. Incidental Thyroid Nodules on Computed Tomography: A Systematic Review and Meta-Analysis Examining Prevalence, Follow-Up, and Risk of Malignancy. Thyroid. 2024;34(11):1389-1400. PubMed
- Hoang JK, Langer JE, Middleton WD, et al. Managing incidental thyroid nodules detected on imaging: white paper of the ACR Incidental Thyroid Findings Committee. J Am Coll Radiol. 2015;12(2):143-50. PubMed
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