先に結論:膵臓の脂肪置換(脂肪浸潤)
- 脂肪膵(膵臓の脂肪沈着)とは膵臓に脂肪がたまった状態で、膵臓は年齢・肥満・糖尿病などで脂肪に置きかわり、CTで霜降り状・分葉状や黒っぽく(低吸収に)見えることがあり、多くは病気ではありません
- 脂肪の入り方はまだらなことがあり、膵頭部の前側だけが脂肪化して後ろ側(腹側膵由来)が残るなどの不均一さが、膵がんなどの腫瘤と紛らわしく見えることがあります(総胆管のまわりは保たれやすい)
- 見分けのポイントは膵管や胆管の拡張がない・周りの血管を巻き込まない・形が保たれていることで、迷うときはMRI(化学シフト)や造影の各相で確認します。限局性の脂肪置換は、化学シフトMRIの逆位相で信号が低下することで真の膵腫瘍と区別でき、不要な侵襲的検査や手術を避けられると報告されています。
膵臓の脂肪置換・変性・浸潤とは?
- 膵の形状、大きさ、実質の濃度パターンは年齢による変化を含めて個人差が大きい。
- 高齢者では、霜降り状を呈し、分葉状構造が目立つ。
- 病理組織学的には、小葉内に数個の脂肪細胞が散在する程度のものから、小葉全体がほぼ脂肪組織に置き換わり、内部にわずかな小実質塊あるいはLangerhans島が残存しているような高度なものもあり。
- 膵の脂肪沈着は、加齢あるいは肥満とともに高頻度に出現する。
- また、糖尿病・メタボリックシンドローム、膵炎、アルコール性肝炎、嚢胞性線維症、ステロイド使用、膵管閉塞などとの関連が報告されている(Coulier 2016)。膵の脂肪置換(lipomatosis)は成人膵で最も頻度の高い良性変化とされる一方、膵管内結石や膵腫瘍など膵管の通過を障害する病態に伴う例も多いと報告されています。不均一な脂肪置換を見たときは、膵管拡張やその原因となる腫瘤が隠れていないかもあわせて確認します。
- 通常はびまん性に脂肪沈着が見られるが、背側膵と腹側膵の一方だけ脂肪沈着が見られることがある。(※腹側膵:膵鉤部と膵頭下部、背側膵:膵頭上部から頚部、体部、尾部と発生部が異なる。)
- 膵脂肪置換・変性は下の4つのパターン
- 総胆管周囲は脂肪置換を免れやすい(保たれる傾向がある)。
膵臓の脂肪置換・浸潤の4つのパターンとは?
膵臓の脂肪置換・浸潤は以下の4つのパターンに分けられると報告されています。80例のCTでは1a 35%、1b 36%、2a 11%、2b 18%でした(Matsumoto 1995)。

(Radiology 1995;194:453より引用改変)
症例 60歳代男性

膵体尾部は膵実質がしっかり見えますが、膵頭部・膵鉤部は脂肪に置き換わっています。
Type2aに相当する膵臓の脂肪置換です。
症例 80歳代男性

膵体尾部は膵実質がしっかり見えますが、膵頭部は脂肪に置き換わっています。
膵鉤部も割と実質が残っています。
Type1aに相当する膵臓の脂肪置換です。
症例 50歳代男性

膵臓は、膵鉤部と膵尾部の一部を残し、ほぼ全域にわたり脂肪に置き換わっています。
Type2b(もしくは膵鉤部は残っていると考えて1b)に相当する膵臓の脂肪置換です。
脂肪膵(膵臓の脂肪沈着)とは?体への影響
- アルコールによらない脂肪膵は、11研究・12,675人のまとめで33%にみられ、高血圧(リスク比1.67)、糖尿病(2.08)、メタボリックシンドローム(2.37)と関連していました(Singh 2017)。
脂肪膵でよくある疑問(Q&A)
Q. 健診で「膵臓に脂肪」と言われました。治療は必要ですか?
A. 脂肪膵そのものに確立した治療はなく(Vujasinovic 2026)、肥満や糖尿病の管理が中心です。2型糖尿病の人では減量で膵臓の脂肪が減った(6.6%→5.4%)という報告があります(Steven 2016)。
※気になる症状(体重減少・黄疸・腹痛など)があれば医療機関で相談してください。
参考文献
- Matsumoto S, Mori H, Miyake H, et al. Uneven fatty replacement of the pancreas: evaluation with CT. Radiology. 1995;194(2):453-8. PubMed
- Kim HJ, Byun JH, Park SH, et al. Focal fatty replacement of the pancreas: usefulness of chemical shift MRI. AJR Am J Roentgenol. 2007;188(2):429-32. PubMed
- Coulier B. Pancreatic Lipomatosis: An Extensive Pictorial Review. J Belg Soc Radiol. 2016;100(1):39. PubMed
- Elbanna KY, Jang HJ, Kim TK. Imaging diagnosis and staging of pancreatic ductal adenocarcinoma: a comprehensive review. Insights Imaging. 2020;11(1):58. PubMed
- Singh RG, Yoon HD, Wu LM, et al. Ectopic fat accumulation in the pancreas and its clinical relevance: A systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Metabolism. 2017;69:1-13. PubMed
- Steven S, Hollingsworth KG, Small PK, et al. Weight Loss Decreases Excess Pancreatic Triacylglycerol Specifically in Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2016;39(1):158-65. PubMed
- Vujasinovic M, Demir IE, Marchegiani G, et al. International Multidisciplinary Consensus Report on Definitions, Diagnostic Criteria, and Management of Fatty Pancreas: A Joint Statement Endorsed by EPC, APA, EASD, EASL, ESGAR, ESGE, ESP, ESPCG, ESPEN, ESPGHAN, IAP, JPS, KPBA, LAPSG, and UEG. United European Gastroenterol J. 2026;14(1):e70185. PubMed
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いつもありがとうございます。
今回のCTで気になったのが、6-9枚目なのですが、胸骨骨折のためか、心外膜にそって混濁が認められると思うのですが、一部は血液の貯留なのでしょうか?また、大動脈の前にも脂肪識の混濁が認められますが、これは心外膜の変化のに対して炎症が惹起されたと考えたらいいのでしょうか?ご教授よろしくお願いいたします。