膵神経内分泌腫瘍(Neuroendcrine neoplasm,NET)とは?
- Langerhans島から発生(膵管壁の多機能幹細胞由来?)
- 膵腫瘍全体の1−2%と比較的稀。
- 平均発症年齢は57歳。男女比は1:1.6。
- 非機能性(incidentaloma)47%>機能性
- 機能性腫瘍はインスリノーマ(30%)>ガストリノーマ(9%)>グルカゴノーマ(5%)>ソマトスタチノーマ(2%)>VIPoma(1%)
- 散発性(24%、健診発見)>MEN typel(10%)、VHL病、NF-1、締節性硬化症
- 2010年にGrade分類が改訂された。3つに大きく分類される。(消化管の神経内分泌腫瘍と統一した新たな分類が示された。)
- Grade1,2とGrade3では治療法が異なるため(Grade3では小細胞癌の治療法に基づく)、組織を採取することが重要である。
- EUSによる生検(EUS-FNA)を行う。リアルタイムにドップラーで血管を避けながら生検できる。ただし1cm以下の腫瘍は生検が困難な事が多い。
- かといって、ERCPでのブラシでは診断能はやや低く、術後膵炎が5-10%で起こることも無視できない。
2010年WHO分類 | 核分裂像 | Ki-67指数 | 特徴 | |
神経内分泌腫瘍(NET) | NET grade1 | <2 | ≦2% | ・高分化型 ・正常細胞類似 ・以前のカルチノイド ・低〜中悪性度 ・機能性<非機能性 |
NET grade2 | 2-20 | 3-20% | ||
神経内分泌腫瘍(NET) | >20 | >20% | ・低分化型 ・未熟細胞 ・増殖能が高い。 ・高悪性度。 ・小細胞癌、大細胞癌。 |
膵NETの画像所見
▶典型例:
- 境界明瞭
- 多血性腫瘤(ダイナミックCT、MRIで)
- MRI T1WIで低信号、T2WIで高信号。
- 68GaDOTATOC-PET/CTにて集積。
症例 30歳代女性 膵NET(MEN1型)
膵尾部に境界明瞭な多血性腫瘤あり。T1WIにて低信号、T2WIにて高信号を呈している。手術により膵NETと診断された。
症例 60歳代男性
腹部エコーにおいて、膵頭部に境界明瞭な低エコー腫瘤あり。
ダイナミックCT動脈相において膵頭部に境界明瞭な多血性腫瘤あり。
68GaDOTATOC-PET/CTにおいて膵頭部に異常集積あり。
▶非典型例:
- 嚢胞変性(30%):大きいものほど嚢胞変性。機能性よりも非機能性が嚢胞変性する。隔壁が厚く、壁が濃染する。
- 石灰化(20%)
- 弱い造影効果(遷延性濃染の場合は、悪性度が高いという報告あり。多血性の部分と遷延性濃染の場合があれば、後者から生検する。)
- 主膵管進展
症例 60歳代 女性 エコーで膵頭部に腫瘤発見。非機能性。
膵内分泌腫瘍の画像所見まとめ
- 多血性。
- 3割で嚢胞変性。
- だからT2WIで高信号。
- 非機能性の方が、機能性よりもサイズが大きい。嚢胞変性しやすいという傾向がある。
治療
- 機能性腫瘍は症状のために全例が切除対象となる。インスリノーマは良性であることが多いため、核出術が第一選択。それ以外は悪性の頻度が高く、リンパ節郭清を伴う膵切除が必要。
- 非機能性腫瘍は小さくてもmalignant potentialを有しているものとして全例を切除対象とし、悪性が疑われる場合にはリンパ節郭清を付加する。
- 肝転移を伴う症例に対しても切除が勧められる。多発肝転移を有し、根治的切除困難症例でも減量手術が有効。
- 再発例も可能な限り切除し、切除不能例には集学的治療を行なう。