腹部CTを読むとき、副腎は小さく細い臓器なので、意識して探さないと見過ごしがちです。副腎では基本的にどのようなことに着目すればよいのでしょうか?

  • 形と太さ(萎縮・びまん性の腫大・過形成)
  • 結節・腫瘤の濃さ(単純CTのCT値・脂肪)
  • 造影のされ方(洗い出し・強い濃染)
  • 大きさ・形・増大のスピード
  • 嚢胞
  • 出血・梗塞
  • 石灰化

の有無について、まずは順番に見てみましょう。

以下、それぞれの所見で考える主な原因・鑑別と、次に何を見るか・どの検査へ進むかを解説します。

先に結論:腹部CTで副腎を見るときの6つのチェックポイント

  1. まず左右の副腎を見つける:右は下大静脈の後ろ、左は大動脈の左外側で膵体尾部の後ろ。逆Y字・V字・線状の細い構造
  2. 形と太さ:全体が細い→萎縮、脚が太く結節状→過形成
  3. 結節があれば単純CTのCT値:均一で10 HU以下なら腺腫と考えてよい。脂肪がはっきりあれば骨髄脂肪腫
  4. 造影CTだけのとき:単純CTや遅れた相を追加して洗い出し(washout)を評価する。動脈相で強く染まる・不均一なら褐色細胞腫も考える
  5. 大きさと増大:4 cmを超える・不均一・境界不整・増大が速ければ副腎皮質癌や転移を考える
  6. 出血・嚢胞・石灰化:ショック・外傷・抗凝固薬の使用歴、過去の結核などを確認する

1. 正常の副腎を見つける・形と太さを見る

正常副腎のCTでの位置
造影CT横断像で、左右の副腎(矢印)が逆Y字・V字の形に見えます。詳しくは腹部CTにおける正常副腎の見つけ方の記事へ。

副腎は腎周囲腔の中、腎臓の上内側にあります。右副腎は肝右葉と横隔膜脚の間で下大静脈のすぐ後ろ、左副腎は大動脈の左外側で膵体尾部・脾静脈の後ろに見えます。正常例の画像は副腎腫瘍とは?健診で指摘されたときにもあります。

次に見ること:形の変化だけで機能は分かりません。両側の異常では、電解質・血圧・ホルモン検査の結果と合わせて考えます。

2. 結節・腫瘤の濃さ(単純CTのCT値と脂肪)

副腎腺腫
引用:Radiopaedia(Adrenal adenoma – Conn syndrome)
単純CTで、左副腎の小さな結節にROIを置くと平均約2 HUと低い値です(原発性アルドステロン症の腺腫)。詳しくは原発性アルドステロン症の画像診断の記事へ。

副腎の結節を見つけたら、まず単純CTのCT値を測ります。副腎腺腫の多くは細胞内に脂質を含むため、単純CTで低い値になります。

  • 10 HUという目安:文献をまとめた解析では、良性と判定する感度は閾値2 HUで47%、20 HUで88%、特異度は2 HUで100%、20 HUで84%でした(Boland 1998)。閾値を下げるほど良性の判定は確かになりますが、拾える腺腫は減ります
  • 欧州内分泌学会の指針:均一で単純CT 10 HU以下の病変は良性で、大きさにかかわらず追加の画像検査は要らないとしています(Fassnacht 2023)
  • 肉眼的な脂肪:副腎骨髄脂肪腫。脂肪とそれ以外の成分が混ざる良性の腫瘍です

腺腫の詳しい見分け方は副腎腺腫のCT・MRIによる画像診断の要点にまとめています。単純CTで10 HUを超える腺腫(脂質の少ない腺腫)もあり、その場合は次の造影の評価やMRIの化学シフト画像へ進みます。

副腎骨髄脂肪腫
単純CTで、左副腎に脂肪と同じ黒さの成分を含む腫瘤(赤丸)が見えます。詳しくは副腎骨髄脂肪腫のCT・MRI画像所見の記事へ。

3. 造影のされ方(洗い出しと強い濃染)

単純CTで10 HUを超える結節では、造影後の相と、時間を遅らせた相を撮り、造影剤がどれだけ抜けるか(洗い出し、washout)を計算する副腎用のCTが使われます。単純CT 10 HU以下、または洗い出し率60%以上を腺腫とした166病変の検討では、感度98%・特異度92%で、96%の病変が正しく分類されました(Caoili 2002)。

MRIの化学シフト画像も、脂質を含む腺腫を見分ける方法です。同じ位置で撮った in-phase と opposed-phase の画像を比べ、opposed-phase で信号が落ちれば細胞内の脂質を示し、腺腫を考えます。単純CTで10 HUをわずかに超える腺腫で役立つことがあり、造影剤を使わずに評価できるのも利点です。一方、転移・褐色細胞腫・副腎皮質癌では信号の低下がはっきりしないことが多く、腫瘍の中の一部だけが落ちる場合もあるので、全体の形・大きさと合わせて判断します。

褐色細胞腫に注意します。動脈相・門脈相の2相CTで、腺腫の平均の増強は動脈相37 HU・門脈相60 HU、褐色細胞腫は104 HU・119 HUでした。動脈相で110 HUを超える増強、動脈相のほうが強い染まり、不均一さは褐色細胞腫を考える手がかりとされています(Northcutt 2013)。褐色細胞腫は洗い出しで腺腫のような値を示すこともあるので、血液・尿のメタネフリンの確認が大切です。VHL病などの遺伝性腫瘍では、腎の病変と合わせて副腎も見ます。

4. 大きさ・形・増大のスピード(悪性を考えるとき)

転移性副腎腫瘍
引用:Radiopaedia(Unilateral adrenal metastasis from lung cancer)
造影CTで、下大静脈の後ろ、肝臓と接する位置に右副腎の腫瘤が見えます。詳しくは転移性副腎腫瘍(副腎転移)の画像診断の記事へ。

  • 転移:肺癌・乳癌・腎癌・悪性黒色腫などで起こります。がんの治療中・既往がある人の新しい結節や増大は転移を考えます。PET/CTでの集積はPETの画像診断(腹部)も参考になります
  • 副腎皮質癌:大きく不均一で、壊死・出血・石灰化を伴いやすく、腎静脈・下大静脈への進展を確認します
  • リンパ腫:両側性で均一な軟部腫瘤のことがあります

欧州内分泌学会の指針では、4 cmを超え、不均一または単純CT 20 HUを超える病変は悪性の危険が十分に高く、通常は手術が選ばれるとしています(Fassnacht 2023)。過去の画像があれば、大きさが変わっているかを比べることが最も役に立つ情報の一つです。

5. 副腎嚢胞

副腎嚢胞
引用:Radiopaedia(Adrenal cyst)
造影CT門脈相の冠状断で、右腎の上、肝臓の下に水に近い濃さの境界明瞭な丸い病変が見えます。詳しくは副腎嚢胞とは?健診のCTで言われたらの記事へ。

水に近い濃さで壁が薄く、造影される部分がなければ嚢胞と考えます。古い出血が嚢胞のように見える偽嚢胞もあります。壁が厚い・造影される結節がある場合は、嚢胞変性した腫瘍(褐色細胞腫など)も鑑別に入ります。

6. 出血・梗塞

ショック副腎
引用:Radiopaedia(CT hypoperfusion complex from pyelonephritis)
重いショック状態の人の造影CT横断像(ショック副腎の例)です。副腎の染まり方を、腸管・肝臓など他の臓器の所見と合わせて評価します。詳しくはショック副腎の画像診断の記事へ。

  • 外傷:右に多く、副腎の腫大や周囲の脂肪織混濁・血腫として見えます。詳しくは外傷による副腎損傷
  • 外傷のない出血:ストレス下・出血傾向(抗凝固薬の使用を含む)のある人で、副腎の形を保った造影されない腫瘤が急に現れたり変化したりする場合は急性の副腎出血を考えます。慢性期には薄い壁の偽嚢胞や萎縮になります。病変内の石灰化・造影効果・PETでの集積は、下に腫瘍がある可能性を示します(Jordan 2012)
  • ショック副腎:重いショックの人で、両側副腎が強く染まって見える所見。出血や梗塞とは区別して考えます

両側の出血は副腎不全につながることがあるため、見つけたら臨床側にすぐ伝えます。

7. 石灰化

副腎の石灰化は、過去の結核・出血のあと、新生児期の出血、小児の神経芽腫、腫瘍(副腎皮質癌・褐色細胞腫など)の中の石灰化で見られます。石灰化だけか、軟部の腫瘤を伴うかで考え方が変わります。詳しくは腹部CTで副腎に石灰化を認めたときの鑑別診断へ。

ホルモンの働き(機能)の評価

副腎の結節は、画像で良性に見えてもホルモンを出しているかどうかは別に考える必要があります。欧州内分泌学会の指針では、すべての人に、症状の確認と、メタネフリンの測定やデキサメタゾン抑制試験などのホルモン検査を行うよう勧めています(Fassnacht 2023)。

  • 高血圧・低カリウム:原発性アルドステロン症。CTで見える腺腫と、実際にホルモンを出している側が一致しないことがあり、左右の判定には副腎静脈サンプリング(AVS)が使われます。副腎皮質シンチ(アドステロールシンチ)も参考になります
  • クッシング症候群の徴候:コルチゾールを出す腺腫、両側の過形成
  • 発作性の高血圧・動悸・頭痛:褐色細胞腫

副腎の結節が偶然見つかったときの扱い

副腎の結節は、他の目的で撮ったCTで偶然見つかることがよくあります。肺癌検診で胸部CTを受けた55〜82歳の520人では、副腎の病変が4.4%に見つかり、その多くは腺腫でした(Bovio 2006)。

米国放射線科専門医会(ACR)の偶発所見委員会の白書では、患者の背景(がんの既往など)と画像の特徴で偶発副腎腫瘤を分け、良性と判断して経過観察を終えてよいもの、追加検査や対応が必要なものを示しています(Mayo-Smith 2017)。一般的な流れは次のとおりです。

  • 脂肪のある骨髄脂肪腫・均一で10 HU以下の腺腫・単純な嚢胞など良性と言えるものはそこで終える
  • 判断がつかないものは、単純CT・洗い出しを見る副腎用CT・MRIで性状を決める。過去の画像があれば大きさの変化を比べる
  • 大きい・不均一・増大する・がんの既往があるものは、内分泌内科・泌尿器科・腫瘍内科と相談する

両側に結節がある場合は、左右それぞれを同じ考え方で評価したうえで、両側の過形成・転移・出血・感染などの両側に起こる病気も考えます。
他の臓器と合わせた早見表は偶発所見のフォロー早見表(ACR white paper)にまとめています。

副腎で見落としやすい場所と、確認のしかた

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
右副腎(下大静脈の後ろ) 肝右葉・横隔膜脚・下大静脈に囲まれ、小さな結節が肝臓や血管と重なる 冠状断で肝臓と右腎上極の間をたどる
左副腎と周りの構造 膵体尾部・脾静脈・胃の後ろの部分・左腎静脈に近く、胃憩室や静脈瘤(脾腎シャントなどの側副血行路)が結節に見えることがある 連続するスライスで、管としてつながるか(血管・消化管)を確認する。造影の相を見比べる
横隔膜脚との境 脚が太い人では副腎の脚と見分けにくい 上下に追って、脚は椎体へ、副腎は腎の上へ向かうことを確かめる
腎上極との境 大きな腫瘤では、腎臓・副腎・肝臓のどこから出たか分かりにくい 冠状断・矢状断で、どの臓器と鋭角に接しているか、臓器が押されているか食い込んでいるかを見る
  • 体の中心を見て終わりにしない:腹部CTでは、肝臓・腎臓を見たあとに副腎を左右とも意識して探す習慣が役立ちます。胸部CTの下の端に副腎が写っていることもあります。
  • 過去画像との比較:小さな副腎結節は、大きさが変わらないことが良性を支える大事な情報になります。

外傷や手術のあとの評価、AVSの前の血管の確認なども含め、解剖は腹部CTの解剖で確認できます。

副腎の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. 健診のCTで「副腎腫瘍」と言われました。がんの心配はありますか?
A. 偶然見つかる副腎の結節の多くは良性の腺腫です。単純CTで均一に低い濃さなら腺腫と判断できることが多い一方、ホルモンを出しているかどうかは血液・尿の検査で別に確かめます。気になる症状がある方や、指摘されたまま受診していない方は、医療機関で相談してください。

Q. 「CT値10 HU」とは何の数字ですか?
A. 単純CTでの濃さの値で、水が0、脂肪がマイナスの値になります。脂質を多く含む腺腫は低い値になるため、10 HU以下で均一なら腺腫と考える目安として使われています。

Q. 造影CTしか撮っていない場合はどうしますか?
A. 造影CTだけでは濃さで腺腫と判断しにくいので、単純CTと遅れた相を含む副腎用のCTや、MRIの化学シフト画像で性状を確かめます。過去の画像で大きさが変わっていないかを見ることも役立ちます。

まとめ

副腎のCTでは、

  • 左右の副腎を探し、形と太さを見る
  • 結節があれば単純CTのCT値と脂肪の有無
  • 洗い出しや強い濃染などの造影パターン
  • 大きさ・不均一さ・増大のスピード
  • 出血・嚢胞・石灰化と、ホルモンの働き

を順に確認し、画像だけで決めずに臨床症状やホルモン検査と合わせて判断します。

あわせて読みたい:腹部CTの読み方

参考文献

  1. Boland GW, Lee MJ, Gazelle GS, et al. Characterization of adrenal masses using unenhanced CT: an analysis of the CT literature. AJR Am J Roentgenol. 1998;171(1):201-4. PubMed
  2. Fassnacht M, Tsagarakis S, Terzolo M, et al. European Society of Endocrinology clinical practice guidelines on the management of adrenal incidentalomas, in collaboration with the European Network for the Study of Adrenal Tumors. Eur J Endocrinol. 2023;189(1):G1-G42. PubMed
  3. Caoili EM, Korobkin M, Francis IR, et al. Adrenal masses: characterization with combined unenhanced and delayed enhanced CT. Radiology. 2002;222(3):629-33. PubMed
  4. Northcutt BG, Raman SP, Long C, et al. MDCT of adrenal masses: Can dual-phase enhancement patterns be used to differentiate adenoma and pheochromocytoma? AJR Am J Roentgenol. 2013;201(4):834-9. PubMed
  5. Jordan E, Poder L, Courtier J, et al. Imaging of nontraumatic adrenal hemorrhage. AJR Am J Roentgenol. 2012;199(1):W91-8. PubMed
  6. Bovio S, Cataldi A, Reimondo G, et al. Prevalence of adrenal incidentaloma in a contemporary computerized tomography series. J Endocrinol Invest. 2006;29(4):298-302. PubMed
  7. Mayo-Smith WW, Song JH, Boland GL, et al. Management of Incidental Adrenal Masses: A White Paper of the ACR Incidental Findings Committee. J Am Coll Radiol. 2017;14(8):1038-1044. PubMed

臓器・部位ごとの読影ポイント(シリーズ)

同じ形で、臓器・部位ごとに「何が起こりうるか、どう読むか」をまとめています。

あわせて読みたい:腹腔神経節のCT・MRI所見|左副腎の内側の帯状構造、リンパ節・副腎腫瘤との見分け方とPSMA PET

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