先に結論:膵臓の悪性リンパ腫
- 膵臓の悪性リンパ腫はまれですが、大きな膵腫瘤なのに、膵管の拡張が軽く、血管を詰まらせないことが膵癌との大きな違いです
- CT・MRIでは均一な乏血性の腫瘤で、DWIで強い高信号、腎静脈より下の傍大動脈リンパ節腫大を伴うことが多いです
- 自己免疫性膵炎とも似るため、IgG4・LDH・可溶性IL-2受容体を確認し、EUS-FNAなどで診断します。手術ではなく化学療法で治療するため、区別がとても大切です
膵悪性リンパ腫(malignant lymphoma)
・主として非ホジキンリンパ腫で、乏血性の腫瘤。
・非常に稀。
・通常は巨大な膵腫瘤として発見され、大きさの割に内部構造が均一、血管浸潤がほとんどないことなどは、他臓器の悪性リンパ腫と類似。
・膵管狭窄はあっても軽度。・原発性膵リンパ腫14例のCT検討では、平均長径約8cmの大きな腫瘤で、遅延相にかけて均一に増強し、全例で膵周囲脂肪織の濃度上昇を伴った。血管の取り囲みはみられても血管浸潤はなく、膵管拡張は14例中5例にとどまった。
・膵悪性リンパ腫は膵癌や自己免疫性膵炎との鑑別が問題となる。
膵悪性リンパ腫の画像所見
・造影CTで膵実質より低吸収値を呈する。平衡相では膵実質とほぼ等吸収値。
・主膵管や周囲血管の構造は比較的保たれる。
・周囲所属リンパ節や大動脈周囲リンパ節に腫脹を伴うことあり。腎静脈レベルより尾側のリンパ節腫大は膵癌ではみられにくく、膵リンパ腫を示唆する所見とされる。また膵管浸潤があっても尾側膵管の著明な拡張を来しにくい。
・他の悪性リンパ腫と同様に、MRIではT1強調像にて低信号、T2強調像にて淡い高信号を呈し、DWIにて著明な高信号を呈する。
膵臓の乏血性腫瘤:膵癌と膵悪性リンパ腫の比較
膵臓で造影されにくい(乏血性の)腫瘤の代表は通常型の膵癌で、膵悪性リンパ腫もこれに似ます。見分けるポイントを表にまとめます。
| 所見 | 膵癌(通常型) | 膵悪性リンパ腫 |
|---|---|---|
| 主膵管 | 腫瘍より尾側の膵管が拡張しやすい | 膵管に浸潤しても著明な拡張は少ない |
| 周囲の血管 | 浸潤して狭窄・閉塞させやすい | 取り囲んでも浸潤はまれ |
| リンパ節 | 腎静脈より尾側の腫大はみられにくい | 腎静脈より尾側のリンパ節腫大を伴うことがある |
| 大きさ・造影 | 境界不明瞭な乏血性腫瘤 | 大きく均一で、遅延相にかけて均一に増強 |
| 治療 | 切除が中心 | 化学療法などが中心で、手術による病期診断は必要としない |
大きく均一な腫瘤なのに膵管や周囲の血管が保たれているときは、膵リンパ腫を考えて手術ではなく生検をすすめることが大切です(Merkle 2000、Boninsegna 2018)。
症例 60歳代男性 体重減少・腹痛

引用:Radiopaedia(Multifocal visceral lymphoma)
造影CT横断像(門脈相)です。膵頭部〜体部に大きく内部が均一な軟部組織腫瘤があり、腫瘤の中を走る血管は狭窄なく保たれています。報告では膵管・胆管の拡張はなく、肝・脾・腎にも病変を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫でした。
腹痛・体重減少・黄疸などが続くときは、早めに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:腎リンパ腫のCT・MRI
参考文献
- Merkle EM, Bender GN, Brambs HJ. Imaging findings in pancreatic lymphoma: differential aspects. AJR Am J Roentgenol. 2000;174(3):671-5. PubMed
- Boninsegna E, Zamboni GA, Facchinelli D, et al. CT imaging of primary pancreatic lymphoma: experience from three referral centres for pancreatic diseases. Insights Imaging. 2018;9(1):17-24. PubMed
- Fujinaga Y, Lall C, Patel A, et al. MR features of primary and secondary malignant lymphoma of the pancreas: a pictorial review. Insights Imaging. 2013;4(3):321-9. PubMed
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