日常臨床や救急外来で腹部CTを読むとき、腎臓では基本的にどのようなことに着目すればよいのでしょうか?

  • 大きさ・形・位置(腫大・萎縮・奇形・偽腫瘍)
  • 実質の濃さと造影のムラ(腎盂腎炎・腎梗塞など)
  • 腎盂・尿管の拡張(水腎症)
  • 腎嚢胞
  • 充実性の腫瘤
  • 石灰化・ガス
  • 腎臓の周り(脂肪織・液体・血腫・血管)

の有無について、まずは順番に見てみましょう。

以下、それぞれの所見で考える主な原因・鑑別と、次に何を見るか・どの検査へ進むかを解説します。

先に結論:腹部CTで腎臓を見るときの7つのチェックポイント

  1. 大きさ・形・位置:左右差はあるか。両側が小さければ慢性腎臓病、片側だけ小さければ腎動脈狭窄・瘢痕・低形成などを考える。馬蹄腎・骨盤腎などの奇形、腫瘍に見える正常変異(Bertin柱など)にも注意
  2. 実質の濃さ・造影ムラ:くさび形の造影不良域は腎盂腎炎か腎梗塞か。単純CTで錐体が白い、造影剤が残るなどの所見も拾う
  3. 腎盂・尿管の拡張:あれば下流へたどり、結石・腫瘍・外からの圧迫・膀胱の問題かを探す
  4. 嚢胞:水に近い濃度で壁が薄ければ単純性嚢胞。壁・隔壁・濃い内容・造影される部分があればBosniak分類で評価
  5. 充実性腫瘤:脂肪があれば血管筋脂肪腫をまず考え、なければ腎細胞癌を中心に造影パターンで考える
  6. 石灰化・ガス:結石の場所と大きさ、実質の石灰化の分布。腎実質のガスは気腫性腎盂腎炎の緊急所見
  7. 周囲:腎周囲の脂肪織混濁・液体・血腫、腎静脈や下大静脈への腫瘍の広がり、血管の変異

1. 大きさ・形・位置の異常

腎臓の大きさは体格・年齢・性別で変わります。成人1,040人の64列CTの研究では、上極から下極までの長さは右108.5±12.2 mm、左111.3±12.6 mmで、体の大きさ・BMI・年齢・性別が大きさに影響していました(Glodny 2009)。数字だけで判断せず、左右差と、過去の画像との比較が役に立ちます。

次に見ること:片側の萎縮では腎動脈の起始部と、皮質の凹み(瘢痕)の有無を見ます。移植腎は腸骨窩にあるので、腸骨窩の移植腎の位置も知っておくと戸惑いません。

2. 実質の濃さと造影のムラ

くさび形・帯状の造影不良域

  • 腎盂腎炎:腎乳頭から皮質へ向かうくさび形・帯状の造影不良や、腎の腫大、周囲脂肪織の混濁。造影前・造影直後・遅れた相を組み合わせたCTが急性腎盂腎炎の評価に適しているとされます(Craig 2008)。膿のたまりを作るとAFBN・腎膿瘍へ進みます
  • 腎梗塞:境界のはっきりしたくさび形の造影欠損。被膜直下の皮質だけが細く染まる cortical rim sign が手がかりで、心房細動などの塞栓源や腎動脈を確認します

腎盂腎炎は症状と尿所見で診断されることが多く、画像は治療に反応しない場合や重症が疑われる場合に使われます(Craig 2008)。閉塞を伴う腎盂腎炎は尿の通り道を開ける処置が急がれるので、水腎症と結石の有無を同時に確認します。

単純CTでの濃さの変化

3. 腎盂・尿管の拡張(水腎症)

尿管結石のsoft tissue rim sign
尿管結石の周りに薄い軟部組織の輪が見える soft tissue rim sign(左)と、骨盤の静脈石に尾のような軟部影がつく comet sign(右)の模式図です。詳しくは尿管結石の腎尿管区分と生理的狭窄部の記事へ。

腎盂・腎杯が広がっていれば、どこで細くなっているかを下流へたどります。詳しくは水腎症とは?原因・グレードとCT画像診断。

  • 尿管結石:生理的狭窄部(腎盂尿管移行部・総腸骨動脈との交差部・尿管膀胱移行部)で止まりやすい。骨盤の静脈石との区別には rim sign が役立ち、感度77%・特異度92%でした(Heneghan 1997)
  • 腫瘍:腎盂癌・尿管癌は、壁の肥厚や腔内の軟部影として見え、排泄相(CTウログラフィ)で欠損像になります
  • 外からの圧迫・巻き込み:後腹膜線維症、リンパ節転移、婦人科腫瘍
  • 両側の拡張:膀胱の出口の問題(前立腺肥大など)や神経因性膀胱。水腎症・尿閉のCTのように、まず膀胱の張り具合を見ます

結石の大きさと場所は自然に出るかどうかの目安になります。CTでの直径ごとの自然排石率は、1 mmで87%、2〜4 mmで76%、5〜7 mmで60%、7〜9 mmで48%、9 mmを超えると25%でした(Coll 2002)。
水腎症と間違えやすいもの:腎外腎盂・傍腎盂嚢胞。傍腎盂嚢胞は腎杯とつながらず、排泄相で造影剤が入らないことで区別できます。

4. 腎嚢胞

高吸収腎嚢胞
引用:Radiopaedia(Hyperdense renal cyst)
CT冠状断で、左腎の中に周りの実質より白く均一な丸い病変が見える高吸収腎嚢胞の例です。詳しくは非定型腎嚢胞(複雑性腎嚢胞)の記事へ。

腎嚢胞はCTで最もよく出会う所見の一つです。基本は腎嚢胞とは?単純性腎嚢胞・複雑性嚢胞にまとめています。

  • 単純性嚢胞:水に近い濃度・薄い壁・造影されない。経過観察も不要なことが多い所見です
  • 高吸収の嚢胞:出血や濃い内容による。均一で単純CTで70 HU以上の腫瘤は、99.9%を超える確率で高吸収腎嚢胞と報告されています(Jonisch 2007)
  • 壁・隔壁・結節がある:Bosniak分類2019で評価。2019年版ではMRIが組み込まれ、あいまいだった用語が定義されました(Silverman 2019)。Ⅰ・Ⅱは良性、ⅡFは経過観察、Ⅲ・Ⅳは悪性の可能性を考えて泌尿器科と相談します
  • 多発・両側:ADPKD、透析患者のACDK、小児では多嚢胞性異形成腎

注意:小さな嚢胞では、造影CTでCT値が見かけ上上がる偽造影効果(pseudoenhancement)があります。わずかなCT値の上昇だけで充実性と決めず、MRIや超音波で確かめます。

5. 充実性の腫瘤

腎血管筋脂肪腫
引用:Radiopaedia
単純CTで、右腎から前へ大きく広がる腫瘤の中に、皮下脂肪と同じくらい黒い部分(脂肪)が見えます。詳しくは腎血管筋脂肪腫(AML)の記事へ。

淡明細胞型腎細胞癌
引用:Radiopaedia
ダイナミックCTの動脈相(冠状断)で、左腎の腫瘤が不均一に強く染まっています。詳しくは淡明細胞型腎細胞癌のCT・MRIの記事へ。

充実性の腫瘤を見つけたら、最初に肉眼的な脂肪があるかを単純CTで見ます。脂肪があれば血管筋脂肪腫がまず考えられます。ただし血管筋脂肪腫の中には脂肪がほとんどないタイプがあり、単純CTで実質より高吸収・MRI T2強調像で低信号の腫瘤ではこれも考えます(Jinzaki 2014)。

小さい腫瘤ほど良性の割合が高く、手術された充実性腎腫瘍2,770人の検討では、良性の割合は1 cm未満で46.3%、7 cm以上で6.3%でした(Frank 2003)。進め方は腎腫瘍の画像診断の進め方にまとめています。

腫瘤 CTで見分ける手がかり
血管筋脂肪腫 肉眼的な脂肪。脂肪の少ないタイプは単純CTで高吸収
淡明細胞型腎細胞癌 皮髄相で強く不均一に染まり、その後抜ける。壊死・出血を伴いやすい
乳頭状腎細胞癌 染まりが弱く(乏血性)、ゆっくり上がる。嚢胞と間違えやすい
嫌色素性腎細胞癌・オンコサイトーマ 中等度の染まり。中心瘢痕があっても両者の区別は画像だけでは難しい
腎リンパ腫 多発結節・びまん性腫大・腎周囲の軟部影。均一で染まりが弱い
腎盂癌 腎盂の中心から広がり、腎の形を保ったまま浸潤しやすい

次に見ること:腎細胞癌を疑ったら、腎静脈・下大静脈の中の腫瘍栓、リンパ節、副腎・肺・骨への転移を確認します(腎癌の病期分類(TNM))。多発・若年・家族歴があれば遺伝性腎腫瘍(VHL病など)も考えます。

6. 石灰化・ガス

気腫性腎盂腎炎
引用:Radiopaedia(Emphysematous pyelonephritis)
単純CTの冠状断で、左腎の周りから内側にかけて黒いガスが広がっています。詳しくは気腫性腎盂腎炎のCT画像診断の記事へ。

  • 腎盂・腎杯の中の石灰化:腎結石。サンゴ状に広がるものもあります
  • 実質の石灰化:髄質優位なら腎石灰化や海綿腎、腎全体が石灰化して萎縮していれば漆喰腎(腎結核の末期像)
  • 腫瘤や嚢胞の壁の石灰化:石灰化そのものより、造影される軟部成分があるかどうかで評価します
  • 腎実質のガス:気腫性腎盂腎炎。48例の検討では96%が糖尿病で、CTでのガスの広がり(集合系だけ・実質・腎周囲・両側)による分類が治療方針と関係していました(Huang 2000)
  • 集合系だけのガス:膀胱鏡・カテーテルなどの処置後、腸管との瘻孔も鑑別します

7. 腎臓の周り(脂肪織・液体・血腫・血管)

腎被膜下血腫
単純CTで、左腎(矢印)の周りに血腫と脂肪織の濃度上昇が見えます(被膜下血腫)。詳しくは特発性腎出血(Wunderlich症候群)の記事へ。

  • 脂肪織の混濁:腎盂腎炎・結石による閉塞・腎梗塞・外傷。どの腔に広がるかは腎周囲腔・前腎傍腔・後腎傍腔の解剖で考えます(膵炎の液体は前腎傍腔に広がりやすい)
  • 血腫:外傷なら腎損傷の分類、外傷がなければ血管筋脂肪腫・腎癌・抗凝固薬・腎動静脈奇形などを探します。造影剤の血管外漏出があれば緊急です
  • 血管:過剰腎動脈、大動脈後性左腎静脈・大動脈周囲左腎静脈は手術前に伝えたい変異です。門脈圧亢進では胃腎シャント・脾腎シャントが左腎静脈へ流れ込みます

腎臓の腫瘤が偶然見つかったときの扱い

CTで偶然見つかった腎腫瘤について、米国放射線科専門医会(ACR)の偶発所見委員会は白書を出しています。画像の特徴ごとに、追加の画像検査・経過観察・専門医への紹介のどれが必要かをフローチャートで示したものです(Herts 2018)。考え方の流れは次のとおりです。

  • 単純性嚢胞・脂肪のある血管筋脂肪腫など、良性と判断できるものはそこで終わる
  • 造影されているか分からない・小さすぎて性状が決められないものは、腎臓用のダイナミックCT・MRI・造影超音波で性状を決める
  • 造影される充実性腫瘤や、Bosniak Ⅲ・Ⅳは泌尿器科へ

他の臓器もまとめて見たいときは偶発所見のフォロー早見表(ACR white paper)が便利です。造影検査を考えるときは腎機能障害のある人への造影CTも参考にしてください。

腎臓で見落としやすい場所と、確認のしかた

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
上極・下極 横断像ではスライスの端にかかり、小さな腫瘤や外へ突き出す病変が輪郭に紛れる 冠状断で腎臓の輪郭を上から下までたどる
腎門部・腎洞 血管・腎盂・脂肪が入り組み、腎盂癌や小さな腫瘤、傍腎盂嚢胞が紛れる 排泄相や遅れた相で腎盂の欠損を見る
腎の外へ突き出す小腫瘤 実質と同じ濃さだと、腎周囲の脂肪との境だけでしか分からない 腎臓の輪郭が外にふくらんでいないかを左右で比べる
髄質に重なる腫瘤 皮髄相では髄質がまだ黒く、腫瘤と区別しにくい 実質が均一に染まる相(腎実質相・排泄相)でも見直す
尿管の全長 細く長いため、骨盤内の結石・腫瘍を途中で見失う 腎盂から膀胱まで連続して追う。冠状断が役立つ
  • 相ごとの見え方を知る:皮髄相は血管の多い腫瘍、腎実質相は小さな腫瘤、排泄相は腎盂・尿管の評価に向きます。
  • 単純CTを捨てない:脂肪・高吸収嚢胞・結石・出血は単純CTのほうが分かりやすいことがあります。

腎臓の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. 健診のCTで「腎嚢胞がある」と言われました。心配はいりませんか?
A. 水に近い濃度で壁が薄い単純性嚢胞であれば、多くは経過観察も要らない良性の所見です。壁が厚い・隔壁や結節がある・造影されるといった特徴があればBosniak分類で評価し、必要に応じてMRIなどで確かめます。気になる症状がある方や判断に迷う方は、医療機関で相談してください。

Q. 腎臓に脂肪のある腫瘤があると、良性と考えてよいのですか?
A. 肉眼的な脂肪があれば血管筋脂肪腫がまず考えられます。ただし脂肪の少ない血管筋脂肪腫もあり、逆に脂肪のない腫瘤がすべて悪性というわけでもありません。造影パターンやMRIを合わせて判断します。

Q. 水腎症と言われましたが、結石がない場合は何を調べますか?
A. 尿管の腫瘍、外からの圧迫(後腹膜線維症・リンパ節など)、膀胱の出口の問題を探します。腎外腎盂や傍腎盂嚢胞のように、水腎症に見えて実は心配の少ない形もあります。

まとめ

腎臓のCTでは、

  • 大きさ・形・位置と左右差
  • 実質の濃さ・造影のムラ
  • 腎盂・尿管の拡張と、その原因
  • 嚢胞と充実性腫瘤の見分け(脂肪・造影パターン)
  • 石灰化・ガス・周囲の変化

を順に確認し、必要に応じてダイナミックCT・MRI・超音波や尿・血液検査と合わせて判断します。

あわせて読みたい:腹部CTの読み方

あわせて読みたい:腹部CTの解剖|臓器・血管の場所をスライスの高さごとに解説

参考文献

  1. Glodny B, Unterholzner V, Taferner B, et al. Normal kidney size and its influencing factors – a 64-slice MDCT study of 1.040 asymptomatic patients. BMC Urol. 2009;9:19. PubMed
  2. Craig WD, Wagner BJ, Travis MD. Pyelonephritis: radiologic-pathologic review. Radiographics. 2008;28(1):255-77. PubMed
  3. Heneghan JP, Dalrymple NC, Verga M, et al. Soft-tissue “rim” sign in the diagnosis of ureteral calculi with use of unenhanced helical CT. Radiology. 1997;202(3):709-11. PubMed
  4. Coll DM, Varanelli MJ, Smith RC. Relationship of spontaneous passage of ureteral calculi to stone size and location as revealed by unenhanced helical CT. AJR Am J Roentgenol. 2002;178(1):101-3. PubMed
  5. Jonisch AI, Rubinowitz AN, Mutalik PG, et al. Can high-attenuation renal cysts be differentiated from renal cell carcinoma at unenhanced CT? Radiology. 2007;243(2):445-50. PubMed
  6. Silverman SG, Pedrosa I, Ellis JH, et al. Bosniak Classification of Cystic Renal Masses, Version 2019: An Update Proposal and Needs Assessment. Radiology. 2019;292(2):475-488. PubMed
  7. Jinzaki M, Silverman SG, Akita H, et al. Renal angiomyolipoma: a radiological classification and update on recent developments in diagnosis and management. Abdom Imaging. 2014;39(3):588-604. PubMed
  8. Frank I, Blute ML, Cheville JC, et al. Solid renal tumors: an analysis of pathological features related to tumor size. J Urol. 2003;170(6 Pt 1):2217-20. PubMed
  9. Huang JJ, Tseng CC. Emphysematous pyelonephritis: clinicoradiological classification, management, prognosis, and pathogenesis. Arch Intern Med. 2000;160(6):797-805. PubMed
  10. Herts BR, Silverman SG, Hindman NM, et al. Management of the Incidental Renal Mass on CT: A White Paper of the ACR Incidental Findings Committee. J Am Coll Radiol. 2018;15(2):264-273. PubMed

臓器・部位ごとの読影ポイント(シリーズ)

同じ形で、臓器・部位ごとに「何が起こりうるか、どう読むか」をまとめています。

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