先に結論:常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)

  • ADPKDは両方の腎臓に嚢胞がたくさんでき、腎臓が大きくなりながら腎機能がゆっくり低下する遺伝性の病気(PKD1・PKD2遺伝子)で、末期腎不全になる年齢は遺伝子のタイプなどにより大きく異なります
  • 肝嚢胞の合併が多く、脳動脈瘤(くも膜下出血の原因)にも注意が必要で、脳動脈瘤やくも膜下出血の家族歴があればMRAでの確認が勧められます
  • 画像では両側の腫大した腎臓に大小多数の嚢胞、出血した嚢胞(高吸収)や感染した嚢胞(壁の肥厚)を評価します。腎容積の増加が速い人にはトルバプタンが使われます
  • 病気が進むと腎臓や肝臓が大きくなってお腹がふくらむことがあり、進み方の目安にはCT・MRIで測る腎容積が使われます

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD:autosomal dominant polycystic kidney disease、成人型)

  • 多発嚢胞腎といえば通常はこれを指す。
  • 常染色体優性遺伝で、多くはPKD1(第16染色体短腕)、残りの多くはPKD2(第4染色体長腕)の遺伝子変異。
  • 集合管と尿細管に嚢胞を生じる。腎機能が低下して行く。
  • 高血圧や腎の腫大、肝嚢胞などがみられる。
  • 尿路感染症を合併しやすい。
  • 腎機能は年単位でゆっくり低下する。末期腎不全になる年齢の中央値は、リスクの高い群で49歳、低い群で70.6歳と幅がある(Cornec-Le Gall 2016)。
  • 透析患者にみられる後天性腎嚢胞(ARCD)とは別の病気である。
  • 腎以外に他の臓器にも、嚢胞を生じる。肝嚢胞が多く、膵嚢胞もMRIでADPKDの36%にみられた(対照23%、PKD2変異で多い;Kim 2016)。
  • 約10%に脳動脈瘤の合併があり(メタ解析:10%、95%信頼区間7〜13%;Zhou 2017)、脳動脈瘤・くも膜下出血の家族歴がある人ではスクリーニングが勧められる。詳しくは下の「ADPKDと脳動脈瘤」を参照。
  • 他、心臓弁膜症(Cornec-Le Gall 2019)や大腸憩室(Duarte-Chavez 2021)の合併が多いと報告されている。

常染色体優性多発性嚢胞腎の画像診断

  • 肉眼的には、腎に嚢胞が多数あるため、スイスチーズ様と表現される。
  • 両側に多発する境界明瞭で円形あるいは卵円形の嚢胞を認める。
  • 初期には、腎の大きさや形態は正常。家族歴があり遺伝子型が不明な人の超音波診断基準(Pei基準)では、15〜39歳は片側または両側で計3個以上、40〜59歳は両側にそれぞれ2個以上、60歳以上は両側にそれぞれ4個以上の嚢胞で診断できる。逆に40歳以上で嚢胞が2個未満なら、ADPKDはほぼ否定できる。
  • 進行すると多発した嚢胞により両側腎は腫大する。辺縁は凹凸著明となる。
  • 嚢胞に出血や感染を合併することあり。
  • 嚢胞内に出血を合併すると高吸収嚢胞となる。
  • 感染を合併すると嚢胞壁が厚く不整になる。

腎容積(TKV)とCT・MRIでの評価

  • 両側腎の体積(総腎容積:TKV)は、腎機能低下を予測する目安としてCT・MRIで測定する(Magistroni 2018)。
  • 身長で補正したTKVと年齢でクラス1A〜1Eに分ける分類(Mayo分類)では、10年間で末期腎不全に至る割合が1Aの2.4%から1Eの66.9%まで増えた(Irazabal 2015)。

ADPKDと脳動脈瘤:腎に嚢胞を見たら頭の血管も考える

ADPKDは腎臓の病気ですが、頭蓋内の脳動脈瘤(破れるとくも膜下出血になります)を合併しやすいことが知られています。腹部の画像でADPKDに気づいたときは、頭の血管の話もあわせて思い出すと役に立ちます。

  • 頻度:ADPKD 1,490人を集めたメタ解析で脳動脈瘤は10%(95%信頼区間7〜13%)、そのうち23%は複数でした。多くは小さく(6mm未満)、前方循環(内頸動脈系)にありました(Zhou 2017)。Mayo Clinicでは、症状のない時期にMRAで調べた812人中75人(9%)に動脈瘤が見つかっています(Sanchis 2019)。
  • 見つかりやすい人:くも膜下出血の家族歴がある人です。動脈瘤のあった人の29%、なかった人の11%に家族歴がありました。高血圧と喫煙も動脈瘤のある群で多くみられました(Sanchis 2019)。
  • 破れたときの特徴:ADPKDのくも膜下出血は年齢が低い傾向で、フィンランドの集団研究では発症の中央値が42.8歳と、一般の動脈瘤の患者より約10歳若く、破裂した動脈瘤の大きさの中央値は6mm(一般は8mm)と小さめでした(Nurmonen 2017)。小さめの動脈瘤からも出血が起こりうる点が、一般の動脈瘤と少し違います。
  • 逆の方向:くも膜下出血で治療を受けた1,147人のうちADPKDは5人(0.44%)で、くも膜下出血の患者全体に占める割合は小さいものでした(Gieteling 2003)。「腎の嚢胞から頭を調べる」流れが主で、頭の出血から腎を調べる場面は多くありません。
  • 調べ方:造影剤を使わない頭部MRAが推奨される検査として紹介されています。代わりにCT血管撮影も使われます。ADPKD全員を調べるか、リスクの高い人に絞るかは、現在も議論が続いています(Borghol 2025)。
  • 繰り返し調べるか:最初のMRAで動脈瘤がなかった場合、5年ごとの再検査が費用対効果の面で有利という解析があります(Malhotra 2019)。一方、メタ解析では、これまでのデータからは定期的な画像追跡を支持する根拠は限られるとされています(Zhou 2017)。医療機関ごとに方針が異なるため、主治医と相談してください。

突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)はくも膜下出血のサインの1つです(Borghol 2025)。ADPKDの方でこのような頭痛があるときは、すぐに救急受診が必要です。

多発性嚢胞腎でお腹が出るのはなぜ?

腫大した腎臓や、肝嚢胞で大きくなった肝臓がお腹を占めるためです。画像では腎・肝の大きさに加え臍ヘルニアも確認します。145件の画像報告書の見直しでは、臍ヘルニア44件が記載漏れでした(Hu 2025)。

※お腹の張り・血尿・わき腹の痛みなどが気になる場合は、医療機関を受診してください。

症例70歳代 女性

ADPKD

両側腎の腫大および多数の嚢胞を認めています。

ADPKD1

冠状断像においても同様です。
肝嚢胞も認めています。

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)を疑う所見です。

動画で学ぶADPKD

ADPKDでよくある疑問(Q&A)

Q. 腎臓の嚢胞が見つかったら、頭のMRIも必要ですか。
A. 嚢胞がたくさんあって画像からADPKDが疑われる場合でも、頭の検査を全員に行うかは決まっていません。くも膜下出血や脳動脈瘤の家族歴があるときは、MRAでの確認が勧められています(Zhou 2017)。検査の要否は主治医と相談してください。

Q. 脳動脈瘤があるとわかったらどうなりますか。
A. 動脈瘤は小さいことが多く、中央値は4mmでした。MRAで見つかった75人のうち、予防的な治療を受けたのは7人で、経過観察中に破れた動脈瘤はありませんでした(Sanchis 2019)。大きさや形、増大の有無をみて、経過観察か治療かを決めます。

参考文献

  1. Cornec-Le Gall E, Alam A, Perrone RD. Autosomal dominant polycystic kidney disease. Lancet. 2019;393(10174):919-935. PubMed
  2. Zhou Z, Xu Y, Delcourt C, et al. Is Regular Screening for Intracranial Aneurysm Necessary in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease? A Systematic Review and Meta-analysis. Cerebrovasc Dis. 2017;44(1-2):75-82. PubMed
  3. Pei Y, Obaji J, Dupuis A, et al. Unified criteria for ultrasonographic diagnosis of ADPKD. J Am Soc Nephrol. 2009;20(1):205-12. PubMed
  4. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) ADPKD Work Group. KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Evaluation, Management, and Treatment of Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease (ADPKD). Kidney Int. 2025;107(2S):S1-S239. PubMed
  5. Cornec-Le Gall E, Audrézet MP, Rousseau A, et al. The PROPKD Score: A New Algorithm to Predict Renal Survival in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease. J Am Soc Nephrol. 2016;27(3):942-51. PubMed
  6. Kim JA, Blumenfeld JD, Chhabra S, et al. Pancreatic Cysts in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease: Prevalence and Association with PKD2 Gene Mutations. Radiology. 2016;280(3):762-70. PubMed
  7. Duarte-Chavez R, Stoltzfus J, Yellapu V, et al. Colonic diverticular disease in autosomal dominant polycystic kidney disease: is there really an association? A nationwide analysis. Int J Colorectal Dis. 2021;36(1):83-91. PubMed
  8. Magistroni R, Corsi C, Martí T, et al. A Review of the Imaging Techniques for Measuring Kidney and Cyst Volume in Establishing Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease Progression. Am J Nephrol. 2018;48(1):67-78. PubMed
  9. Irazabal MV, Rangel LJ, Bergstralh EJ, et al. Imaging classification of autosomal dominant polycystic kidney disease: a simple model for selecting patients for clinical trials. J Am Soc Nephrol. 2015;26(1):160-72. PubMed
  10. Hu Z, Lane EG, Lo GC, et al. Reporting ADPK Disease Phenotypes on Abdominal Scans. Kidney Int Rep. 2025;10(9):2967-2976. PubMed
  11. Sanchis IM, Shukoor S, Irazabal MV, et al. Presymptomatic Screening for Intracranial Aneurysms in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease. Clin J Am Soc Nephrol. 2019;14(8):1151-1160. PubMed
  12. Nurmonen HJ, Huttunen T, Huttunen J, et al. Polycystic kidney disease among 4,436 intracranial aneurysm patients from a defined population. Neurology. 2017;89(18):1852-1859. PubMed
  13. Gieteling EW, Rinkel GJ. Characteristics of intracranial aneurysms and subarachnoid haemorrhage in patients with polycystic kidney disease. J Neurol. 2003;250(4):418-23. PubMed
  14. Borghol AH, Alkhatib B, Zayat R, et al. Intracranial Aneurysms in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease: A Practical Approach to Screening and Management. Mayo Clin Proc. 2025;100(6):1030-1050. PubMed
  15. Malhotra A, Wu X, Matouk CC, et al. MR Angiography Screening and Surveillance for Intracranial Aneurysms in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease: A Cost-effectiveness Analysis. Radiology. 2019;291(2):400-408. PubMed

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