神経因性膀胱
- 排尿は主に中枢神経の3部位により支配される。
①脳幹部にある橋の排尿中枢(協調)
②S2-4にある排尿中枢(反射)
③大脳皮質(抑制)
- 排尿障害のBors-Comarr分類では、S2-4より上位(橋と仙骨排尿中枢の間)での障害による上位運動ニューロンの障害と、S2-4以下の神経根の障害による下位運動ニューロン障害、およびその混合型に分類されている。
上位運動ニューロン障害(橋と仙骨排尿中枢の間)
- 橋より上位の病変は脳梗塞や多発性硬化症、動脈硬化などが原因となる。
- 橋から仙髄の間の病変としては、外傷、脊髄損傷、多発性硬化症などが原因となる。脊髄病変としては、腫瘍や髄膜瘤、外傷など。
- 上位運動ニューロン(橋と仙骨排尿中枢の間)が障害されると、痙攣性の排尿筋過反射による神経因性膀胱が起こる。排尿時に排尿筋と外尿道括約筋が同時に収縮(協調できなくなる)し、これを排尿筋外尿道括約筋協調不全(DESD:detrusor-external sphincter dyssynergia)と呼ぶ。膀胱内の尿は減少し、結果として収縮した膀胱になる。
- 膀胱造影を行なうと、膀胱は垂直方向に伸び、肉柱形成により輪郭は不整で、憩室や上部尿路の拡張が見られる。この膀胱の形態をクリスマスツリー様膀胱(Christomas tree,pine tree)と呼ぶ。
下位運動ニューロン障害(S2-4より下位の神経根の障害)
- 末梢神経病変としては、手術による神経損傷などが原因となる。
- 下位運動ニューロンが障害されると、弛緩性の排尿筋障害による神経因性膀胱が起こる。膀胱内の尿は増加して、結果として弛緩した膀胱となる。
- 膀胱造影を行なうと、大きく緊満感のない膀胱となる。排尿時に排尿筋の収縮の所見を認めず、残尿を認める。二次性の膀胱壁異常を来し、肉柱形成、壁肥厚、憩室、上部尿路の拡張、膀胱尿管逆流に加えて、クリスマスツリー様膀胱(Christomas tree,pine tree)となる。したがって、所見では、上位運動ニューロンとの区別はできない。
知覚神経障害
- 糖尿病や悪性貧血、脊髄癆などにより知覚神経が侵されると、大きくて平滑な無緊張の膀胱となる。
症例 40歳代男性 慢性的排尿障害、脊椎外傷の既往
引用:radiopedia
膀胱造影で、膀胱は垂直方向に伸び、肉柱形成により輪郭は不整で、憩室を多数認めている。左膀胱尿管逆流あり。
神経因性膀胱を疑う所見です。
症例 70歳代男性 腰髄損傷
両側上部尿路は拡張し、膀胱も著明に拡張しています。
神経因性膀胱を疑う所見です。