神経因性膀胱(neurogenic bladder)は、中枢または末梢神経系の障害により膀胱機能が異常をきたす状態です。

画像診断は、病態の評価や治療方針の決定において重要な役割を果たします。

先に結論:神経因性膀胱とは・画像での見え方

  • 脳・脊髄・末梢神経の病気で膀胱にためる・出す働きがうまくいかなくなる状態です。原因は脊髄損傷・多発性硬化症・脳梗塞・パーキンソン病・糖尿病・骨盤内の手術後などさまざまです
  • 脊髄の障害(橋と仙髄の間)では、膀胱が縮むときに尿道の括約筋がゆるまない(協調不全)ため膀胱の圧が高くなり、膀胱壁が厚くでこぼこ(肉柱形成)・憩室・縦長の「クリスマスツリー型(松笠様)」膀胱、さらに水腎症が起こります
  • 仙髄・末梢神経の障害や糖尿病では膀胱が縮まず、大きくふくらんだ壁の薄い膀胱(弛緩性膀胱)と多量の残尿が見られます
  • 膀胱造影・CT・超音波で膀胱の形・残尿・腎臓への影響(水腎症)を評価し、腎機能を守ることが治療の大きな目標です

排尿機能の神経支配

排尿は以下の神経中枢によって制御されています:

  • 橋排尿中枢(Pontine micturition center):排尿筋と括約筋の協調を制御
  • 仙髄排尿中枢(S2–S4):排尿反射の中枢
  • 大脳皮質:排尿の抑制と意識的な制御

これらの中枢の障害により、神経因性膀胱が発症します。

神経因性膀胱の分類と画像所見

上位運動ニューロン障害(橋と仙髄の間)

脊髄損傷、多発性硬化症などの脊髄病変が原因で、排尿筋と外尿道括約筋の協調が失われる(橋より上の脳梗塞などでは協調は保たれ、主に排尿筋過活動となる)「排尿筋外尿道括約筋協調不全(DSD)」が生じます。これにより、膀胱内圧が上昇し、以下のような画像所見が認められます:

  • 膀胱壁の肥厚と肉柱形成:膀胱壁が不整で網目状の構造を呈します。
  • 膀胱憩室:膀胱壁の突出が見られます。
  • 上部尿路の拡張:水腎症や水尿管症が伴うことがあります。
  • クリスマスツリー様膀胱(松笠様膀胱):垂直方向に伸びた膀胱で、特徴的な形状を示します(Hirshberg 2018)。

これらの所見は、膀胱造影やCTで明瞭に描出されます。二分脊椎患者の検討では、尿漏出時の膀胱内圧(排尿筋漏出時圧)が40cmH2Oを超える群で膀胱尿管逆流(68%)や尿管拡張(81%)が高率にみられ、上部尿路障害の危険の指標とされています(McGuire 1981)。

二分脊椎の小児417例の膀胱造影では、肉柱形成のある膀胱やクリスマスツリー型の膀胱は、なめらかな膀胱より充満時の圧が高い傾向がありました。ただし膀胱の形だけでは、水腎症・膀胱尿管逆流・協調不全の有無までは見分けられませんでした(Gan 2025)。

関連記事:膀胱の肉柱形成とは?慢性尿路閉塞や神経因性膀胱に伴うCT画像所見と臨床的意義

下位運動ニューロン障害(S2–S4以下)

末梢神経の障害により、排尿筋の収縮が起こらず、弛緩性の膀胱が形成されます。画像所見としては:

  • 膀胱の過度な拡張:大容量で緊満感のない膀胱が見られます。
  • 排尿時の排出不全:排尿筋の収縮が認められず、残尿が多くなります。
  • 膀胱壁の変化:排尿筋が収縮しなくても、膀胱が硬くなって尿をためるほど圧が上がる例があります。二分脊椎42例の検討では、30例がこのタイプでした(McGuire 1981)。このような例では上部尿路の拡張に注意が必要です。

これらの所見も、膀胱造影やCTで確認できます。

知覚神経障害

糖尿病や悪性貧血、脊髄癆などによる知覚神経の障害では、膀胱の感覚が低下し、無緊張で大容量の膀胱が形成されます。画像所見としては:

  • 平滑で拡張した膀胱:膀胱壁は薄く、内部に尿が大量に貯留しています。

画像診断の役割

神経因性膀胱の評価には、以下の画像診断が有用です:

  • 膀胱造影(VCUG):膀胱の形態や排尿時の動態を評価できます。DSDの診断にも有用です。
  • CT:膀胱壁の肥厚や憩室、上部尿路の拡張を詳細に描出できます。
  • 超音波検査:非侵襲的に膀胱の容量・残尿や壁の状態、水腎症を評価できます。ただし膀胱壁の厚さは尿のたまり具合で変わり、二分脊椎の小児33例では壁の厚さで排尿筋の機能異常を見分けられず、尿流動態検査の代わりにはならないとされています(Togo 2021)。

これらの検査を組み合わせることで、神経因性膀胱の病態を正確に把握し、適切な治療方針を立てることが可能です。ただし画像検査は主に形の評価で、膀胱内圧などの機能の評価には尿流動態検査が必要です。欧州泌尿器科学会(EAU)の神経泌尿器ガイドラインでも、評価には通常尿流動態検査を含め、上部尿路障害を防ぐために生涯にわたる経過観察が必要とされています(Groen 2016)。

症例 40歳代男性 慢性的排尿障害、脊椎外傷の既往

引用:Radiopaedia

膀胱造影で、膀胱は垂直方向に伸び、肉柱形成により輪郭は不整で、憩室を多数認めている。左膀胱尿管逆流あり。

神経因性膀胱を疑う所見です。

症例 70歳代男性 腰髄損傷

Neurogenic bladder1

両側上部尿路は拡張し、膀胱も著明に拡張しています。

神経因性膀胱を疑う所見です。

神経因性膀胱でよくある疑問(Q&A)

Q. 弛緩性膀胱とは何ですか?
A. 排尿筋が縮まず、膀胱がゆるんで大きくふくらんだ状態です。仙髄より下の神経(下位運動ニューロン)や知覚神経の障害で起こり、画像では壁の薄い大きな膀胱と多量の残尿が見られます。反対に、脊髄損傷などで膀胱が勝手に縮み、壁が厚くなるタイプは痙性(けいせい)膀胱と呼ばれます。

Q. 膀胱緊満とは何ですか?
A. 尿が出せずに膀胱がパンパンにはった状態です。CTや超音波では、骨盤からおなかの方へ大きく張り出した膀胱として見えます。下腹部が張って尿が出ないときは、早めに医療機関を受診してください。

Q. 神経因性膀胱の略語は?
A. 英語でneurogenic bladderといい、NBと略されることがあります。協調不全はDSD(detrusor sphincter dyssynergia)と略されます(Stoffel 2016)。

参考文献・出典

  1. Hirshberg BV, Myers DT, Williams TR. The “Christmas tree” bladder. Abdom Radiol. 2018;43(12):3525–3526. doi:10.1007/s00261-018-1648-3. PubMed
  2. Stoffel JT. Detrusor sphincter dyssynergia: a review of physiology, diagnosis, and treatment strategies. Transl Androl Urol. 2016;5(1):127-135. doi:10.3978/j.issn.2223-4683.2016.01.08. PubMed
  3. Fernbach SK, Feinstein KA, Schmidt MB. Pediatric voiding cystourethrography: a pictorial guide. Radiographics. 2000;20(1):155-168. doi:10.1148/radiographics.20.1.g00ja12155. PubMed
  4. McGuire EJ, Woodside JR, Borden TA, et al. Prognostic value of urodynamic testing in myelodysplastic patients. J Urol. 1981;126(2):205-209. PubMed
  5. Groen J, Pannek J, Castro Diaz D, et al. Summary of European Association of Urology (EAU) Guidelines on Neuro-Urology. Eur Urol. 2016;69(2):324-333. PubMed
  6. Fotter R. Neurogenic bladder in infants and children–a new challenge for the radiologist. Abdom Imaging. 1996;21(6):534-540. PubMed
  7. Gan ZS, Logan J, Smith AL, et al. Evaluation of Bladder Dysfunction Outcomes Among Standardized Bladder Shapes in Children With Spina Bifida. Neurourol Urodyn. 2025;44(8):1560-1568. PubMed
  8. Togo M, Kitta T, Chiba H, et al. Can ultrasound measurement of bladder wall thickness be a useful adjunct for regular urodynamics in children with spina bifida? J Pediatr Urol. 2021;17(5):734.e1-734.e8. PubMed

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