重複腎盂尿管とは、片側の腎臓に対して腎盂や尿管が2系統存在する先天的な尿路奇形です。
日常診療では、腹部CTで偶然見つかることもあれば、水腎症、尿路感染、尿管瘤、尿管結石などをきっかけに指摘されることもあります。
この記事では、重複腎盂尿管の基本、完全型・不完全型の違い、Weigert-Meyer則、CTでの読影ポイント、鑑別診断についてわかりやすく解説します。
重複腎盂尿管とは?

通常、1つの腎臓には1つの腎盂があり、そこから1本の尿管が膀胱へ向かいます。
一方で、重複腎盂尿管では、1つの腎臓の中に上腎盂・下腎盂のように2つの集尿系が存在し、それぞれから尿管が出ます。
腎盂のみが2つに分かれている場合は「重複腎盂」と呼ばれます。尿管まで2系統になっている場合は「重複腎盂尿管」または「重複尿管」と呼ばれます。
重複腎盂尿管は、先天的な尿路奇形の中では比較的よくみられる所見です。多くは無症状で、治療を必要としないことも少なくありません。ただし、尿流障害や膀胱尿管逆流、尿管瘤、異所開口などを伴う場合には、尿路感染や水腎症の原因となることがあります。
重複腎盂尿管の分類
重複腎盂尿管は、大きく分けて「完全型」と「不完全型」に分類されます。
| 分類 | 特徴 | CTでのポイント |
|---|---|---|
| 不完全型 | 腎盂から近位尿管は2本ですが、途中で合流し、膀胱への開口部は1つになります。 | 冠状断像やMPRで、2本の尿管が途中で合流する部位を確認します。 |
| 完全型 | 腎盂から膀胱開口部まで尿管が完全に2本存在します。 | 2本の尿管が別々に膀胱へ向かうかを確認します。尿管瘤や異所開口の有無も重要です。 |
不完全型重複腎盂尿管
不完全型では、腎臓から出た2本の尿管が途中で合流します。そのため、膀胱への開口部は通常1つです。
腹部CTでは、横断像だけで判断しようとすると見落としやすいため、冠状断像や矢状断像、MPR画像で尿管を連続的に追うことが重要です。
特に尿管拡張を伴わない場合、単純CTだけでは分かりにくいことがあります。造影CTの排泄相があると、2系統の集尿系や尿管の走行を把握しやすくなります。
完全型重複腎盂尿管
完全型では、上腎盂からの尿管と下腎盂からの尿管が、それぞれ別々に膀胱へ開口します。
完全型では、Weigert-Meyer則に従う典型例が多く、上腎盂由来の尿管はより尾側・内側に開口しやすく、下腎盂由来の尿管はより頭側・外側に開口しやすいとされます。
そのため、上腎盂側は異所開口や尿管瘤による閉塞、水腎症を来しやすく、下腎盂側は膀胱尿管逆流を来しやすいという特徴があります。
Weigert-Meyer則とは?
Weigert-Meyer則とは、完全型重複腎盂尿管における2本の尿管の膀胱開口部の位置関係を説明する法則です。
- 上腎盂由来の尿管は、膀胱内でより尾側・内側に開口しやすいです。
- 下腎盂由来の尿管は、膀胱内でより頭側・外側に開口しやすいです。
- 上腎盂側は、異所開口や尿管瘤を伴いやすく、閉塞・水腎症の原因となることがあります。
- 下腎盂側は、膀胱壁内尿管の走行が短くなりやすく、膀胱尿管逆流を来しやすいとされます。
ただし、Weigert-Meyer則には例外も報告されています。したがって、実際の読影では「上腎盂側だから閉塞」「下腎盂側だから逆流」と決めつけるのではなく、尿管の走行、開口部、尿管瘤、水腎症、腎実質萎縮などを総合して判断することが大切です。
CT画像診断のポイント
1. 腎盂が2系統あるかを見る
まず確認するのは、同側腎内に2つの集尿系があるかどうかです。
腎門部付近で腎盂が2つに分かれて見える場合や、上極・下極で別々の腎杯腎盂構造を認める場合は、重複腎盂尿管を疑います。
腎臓が一側性にやや大きく見える場合にも、重複腎盂が背景にあることがあります。
2. 尿管を末梢まで追う
重複腎盂尿管の診断で重要なのは、腎盂だけでなく尿管を追うことです。
不完全型では、2本の尿管が途中で合流します。完全型では、2本の尿管が別々に膀胱へ向かいます。
横断像だけでは尿管の走行を把握しにくいため、冠状断像やMPR画像を用いて、腎盂から膀胱まで連続的に確認することが重要です。
3. 水腎症・尿管拡張の有無を見る
重複腎盂尿管そのものは無症状でも、合併症を伴う場合があります。
特に上腎盂側に水腎症や尿管拡張がある場合は、異所開口や尿管瘤による閉塞を考えます。
尿管が著明に拡張している場合、末梢側まで追跡し、膀胱内尿管瘤、異所開口、結石、狭窄などの有無を確認します。
4. 尿管瘤の有無を見る
尿管瘤とは、尿管の膀胱内開口部付近が嚢状に拡張したものです。
重複腎盂尿管では、特に完全型の上腎盂側尿管に尿管瘤を伴うことがあります。尿管瘤があると、上腎盂側の尿流障害や水腎症の原因となります。
CTでは、膀胱内に突出する嚢胞状構造として見えることがあります。造影排泄相では、膀胱内の造影尿と尿管瘤の関係を確認しやすくなります。
5. 腎実質の萎縮や機能低下を評価する
長期の閉塞や逆流を伴う場合、片方の腎区域、特に上腎盂側の腎実質が菲薄化・萎縮していることがあります。
造影CTでは、左右差だけでなく、同じ腎臓内の上極・下極で造影効果や実質厚に差がないかを確認します。
機能低下の強い腎区域では、排泄相で造影尿の排泄が遅れる、あるいは十分に描出されないことがあります。このような場合、通常の排泄相だけでは尿管の全走行が分かりにくいことがあります。
症例 50歳代男性

単純CT横断像にて前後に重複した2つの腎盂および尿管を認める。
冠状断像においては、これらの重複した尿管が合流する部位が明瞭である。
不完全型の重複腎盂尿管の所見。
単純CTで見つけるコツ
単純CTでは、造影排泄相がないため、重複腎盂尿管を明瞭に診断できないことがあります。
ただし、以下のような所見がある場合は、重複腎盂尿管を疑うきっかけになります。
- 片側腎がやや大きい
- 腎洞が上下で分かれているように見える
- 腎盂が2つあるように見える
- 近位尿管が2本見える
- 上極または下極だけに限局した水腎症がある
- 骨盤内で同側尿管が2本走行しているように見える
- 膀胱内に尿管瘤を疑う嚢胞状構造がある
単純CTで疑った場合は、必要に応じて造影CT、CT urography、MR urography、超音波検査などを追加し、尿管の走行や合併症を評価します。
重複腎盂尿管に関連する合併症
重複腎盂尿管は無症状のことも多いですが、以下の合併症を伴うことがあります。
- 水腎症
- 尿管拡張
- 尿管瘤
- 異所性尿管開口
- 膀胱尿管逆流
- 反復性尿路感染
- 腎盂腎炎
- 尿路結石
- 尿失禁
特に小児では、反復性尿路感染や水腎症の精査で見つかることがあります。成人では、腹部CTで偶然見つかることもありますが、結石、感染、閉塞を契機に診断されることもあります。
一側性の辺縁平滑な腎腫大を見たときの鑑別
重複腎盂尿管では、腎実質量が多く見えたり、腎洞構造が通常と異なって見えたりするため、一側腎がやや大きく見えることがあります。
一側性の辺縁平滑な腎腫大を見た場合、以下を鑑別に挙げます。
- 水腎症
- 代償性腎腫大
- 重複腎盂・重複腎盂尿管
- 急性腎盂腎炎
- 多嚢胞性腎疾患
- 腎静脈血栓症などの血管性病変
- 外傷後変化
- 腎腫瘍や腎周囲病変
重複腎盂尿管を疑う場合は、腎盂・腎杯の形態だけでなく、尿管の数、尿管の合流部、膀胱開口部、尿管瘤の有無まで確認することが大切です。
腎洞嚢胞・腎盂傍嚢胞との鑑別
重複腎盂尿管は、腎洞嚢胞や腎盂傍嚢胞と紛らわしいことがあります。
腎洞嚢胞や腎盂傍嚢胞は、腎洞部に水濃度の構造として見えますが、尿管とは連続しません。一方、重複腎盂尿管では、腎盂・尿管と連続する集尿系として追うことができます。
造影CTの排泄相では、集尿系であれば造影尿が入り、嚢胞であれば造影されません。このため、鑑別に迷う場合は排泄相が有用です。
参考文献
- 腹部CT診断120ステップ P293-294、イラストはP294 図10を引用改変し作図。
- Cleveland Clinic. Duplex Kidney (Duplicated Ureters). Last reviewed February 12, 2024.
- Ghanem K, Leslie SW, Badreldin AM. Ureterocele. StatPearls. Last update October 12, 2023.
- Gong H, Gao L, Dai X, et al. Prolonged CT urography in duplex kidney. BMC Urology. 2016;16:21.
- Hulnick DH, Bosniak MA. “Faceless kidney”: CT sign of renal duplicity. Journal of Computer Assisted Tomography. 1986;10(5):771-772.
- Zissin R, Apter S, Yaffe D, et al. Renal duplication with associated complications in adults: CT findings in 26 cases. Clinical Radiology. 2001;56(1):58-63.
- Xie N, Li X, Zhou J, et al. CTU findings of duplex kidney in kidney: A rare duplicated renal malformation. BMC Medical Imaging / case report available on PubMed Central. 2021.
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