後腹膜線維症 CT・MRI所見と水腎症・悪性との鑑別

CTで「後腹膜線維症の疑い」と言われ、水腎症もあると指摘されました。悪性腫瘍とは違うのでしょうか。
後腹膜線維症は、大動脈や尿管の周囲に線維性の組織が増える稀な病気で、原因不明(特発性)のものが多く、IgG4関連疾患の一部のこともあります。悪性腫瘍との区別が必要なので、画像と臨床所見をあわせて評価します。

先に結論:後腹膜線維症(Retroperitoneal fibrosis;RPF)は、大動脈周囲の線維炎症性病変で、水腎症が主要な合併症

項目 内容
何か 稀な線維炎症性疾患。特発性が多く、IgG4関連疾患などの関与や、悪性腫瘍・放射線治療などによる二次性もある(Czerniak 2025)
画像の典型像 L4レベルを中心とした、大動脈周囲をほぼ全周性に取り巻き、大動脈を前方に偏位させない軟部組織(Cohan 2018)
合併症 水腎症、静脈の狭窄・血栓(Czerniak 2025)
診断の確定 画像で典型的でも、非典型例では生検が必要(Czerniak 2025)

「大動脈周囲の軟部組織=悪性」とは限りません。一方で、すべての症例が典型像をとるわけでもありません。


後腹膜線維症のポイントの表

後腹膜線維症とは(特発性・IgG4関連・Ormond病)

後腹膜線維症は、腹部大動脈や腸骨動脈の周囲を中心に線維性の組織が増殖する稀な線維炎症性疾患です。原因のはっきりしない特発性のほうが二次性より多く、免疫が関与すると考えられています。自己免疫疾患や、IgG4関連疾患などの炎症性疾患との合併もしばしばみられます(Czerniak 2025)。特発性のものは「Ormond病」の名でも呼ばれます。

二次性の原因として、ギリシャの特発性RPF 67例の報告では薬剤・悪性腫瘍・感染症に加えIgG4関連疾患の一部として発症しうることが述べられています(Zampeli 2022)。大学病院26例の報告では、特発性が17例、残り9例の二次性の背景は悪性腫瘍(19%)、放射線治療(8%)、急性膵炎(4%)、IgG4関連疾患(4%)でした(Loricera 2026)。

IgG4関連疾患としての後腹膜線維症は、IgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化を特徴とし、膵臓が最多の罹患臓器ですが、膵外病変としてのRPFもみられます(Kurowecki 2019)。全身の病変の画像はIgG4関連疾患まとめも参照してください。

臨床像では、ギリシャの報告(特発性RPF 67例)で男性73%、診断時平均年齢56.0±9.2歳、腰背部痛63%、全身症状57%、急性期反応物質上昇78%、腎機能低下41%でした(Zampeli 2022)。大学病院26例の報告でも、腹痛65%、腰背部痛42%、急性期反応物質上昇75%、腎機能悪化40%と、非特異的な症状と炎症所見が中心でした(Loricera 2026)。

CT・MRIでどう見えるか

画像は診断の要です。症状が非特異的なため、画像が診断のきっかけになり、特発性か二次性か、活動期か慢性期かの推定にも役立ちます。病期の評価・経過観察にはMRIが推奨され、CTやPET/CTも有用とされています(Czerniak 2025)。

典型像として、「L4を中心とする大動脈周囲のほぼ全周性の腫瘤で、腹部大動脈や総腸骨動脈近位部を偏位させない」ことが報告されてきました。Cohanらは、RPFが疑われて紹介された92例のCT・MRIを検討し、最終的にRPFと診断された68例のうち大動脈周囲腫瘤を認めたのは47例、そのうち大動脈が前方へ偏位していたのは18例でした。典型的な腫瘤を示したのは68例中34例にとどまり、血管・泌尿器疾患に関連する線維化(12例)では6例、悪性腫瘍(12例)では1例でした。したがって「大動脈の偏位がないことはRPFの全例ではみられず、がんの一部でも偏位はない」と結論されています(Cohan 2018)。

群(Cohan 2018) 症例数 大動脈周囲の腫瘤 典型的な腫瘤
RPFと最終診断 68 47例(うち18例で大動脈が前方偏位) 34例
血管・泌尿器疾患関連の線維化 12 6例(偏位なし) 6例
悪性腫瘍 12 6例(うち2例で偏位) 1例

それでも、大動脈を偏位させず浸潤性に広がる大動脈周囲軟部組織がCT・MRIで見つかった場合は、高い確信度でRPFと診断でき、生検を避けられる可能性があるとされています(Cohan 2018)。典型像を欠くとき、大動脈の偏位や傍大動脈外の病変があるときは、悪性腫瘍を考えて生検や追加検査を検討します。

診断に用いる画像は、文献レビューでは9つの後ろ向きシリーズ(各45例超)でCT 92%、超音波61%、PET/CT 23%、MRI 8%でした。病変の主な分布は大動脈周囲〜腸骨動脈周囲が50%、水腎症は50%でした(Loricera 2026)。

症例 40歳代男性 家族性地中海熱で腹痛・背部痛

後腹膜線維症 造影CT 軸位断
引用:Radiopaedia(Retroperitoneal fibrosis)

造影CTの軸位断です。腹部大動脈とその分岐部の周囲を、シート状の軟部組織が取り巻いています。この症例では大動脈と両側総腸骨動脈を包み込む傍大動脈の軟部組織として報告され、狭窄は軽度でした。

水腎症とそのほかの合併症

RPFは尿管を巻き込み、尿管閉塞による水腎症を来します。腎機能が悪化していれば、尿管ステントなどの減圧処置と並行して治療を考えます。文献レビューでは薬物療法としてグルココルチコイドが69%で最も多く、処置として尿管ステントが38%で最多でした(Loricera 2026)。水腎症の程度の見方は水腎症のグレード分類とCT診断を参照してください。静脈の狭窄や血栓も合併症として挙げられています(Czerniak 2025)。

悪性との鑑別とIgG4

鑑別は主に悪性腫瘍(Cohan 2018では悪性腫瘍群が比較対象)、血管・泌尿器疾患に伴う線維化(炎症性大動脈瘤周囲の線維化など)です。画像所見には重なりがあり、診断の確定には生検が必要とされています(Czerniak 2025)。

血清IgG4は、ギリシャの報告で測定された36例のうち36%で上昇していました。IgG4が上昇している群と正常な群で、臨床・検査・画像所見に差はありませんでしたが、治療後の再発率はIgG4上昇群で高く(75% vs 25%、p=0.005)、全体の再発は28.6%(平均43.1か月後)でした(Zampeli 2022)。IgG4関連疾患が疑われるときは、他臓器(膵、涙腺・唾液腺、腎など)の病変も確認します(Krombach 2016)。

悪性腫瘍に伴う後腹膜線維症を疑う手がかり

悪性腫瘍に伴う後腹膜線維症を、特発性のものと画像で見分ける試みがあります。MRIで後腹膜線維症と診断された50例の検討では、悪性に伴うものは、大動脈に沿って腎動脈より上から大動脈分岐部の下まで広がる例が多く(47%対0%)、大動脈の後ろへの広がりも厚い傾向でした。尿管が内側に引き寄せられる所見は、悪性に伴うもので少なくなりました(24%対83%)。「腎動脈より上から分岐部の下までの広がり」と「尿管の内側偏位がない」の2つを組み合わせると、悪性に伴うものを感度82%・特異度83%で拾えました(Mirault 2012)。

FDG-PET/CTで特発性71例と後腹膜の悪性腫瘍21例(リンパ腫15例、転移6例)を比べた研究では、悪性腫瘍の方がSUVmaxが高く、腋窩・鎖骨上・鼠径などのリンパ節病変を伴うことが多い結果でした。形態ではリンパ腫とは差がありましたが、転移性腫瘍とは差がありませんでした(Wang 2018)。

これらの手がかりがあるときは、胃・肺・大腸などの原発巣を含めた全身の検索と生検を考えます。

次にすること

  • 水腎症・腎機能低下があれば、泌尿器科との連携で閉塞の解除を優先する
  • 造影CTまたはMRIで、範囲・血管・尿管への影響を評価する
  • 非典型像(大動脈偏位、傍大動脈外の病変、腫瘍の既往)があれば、生検や追加の全身検索を検討する
  • IgG4関連疾患の可能性を、血清IgG4と他臓器病変で確認する

よくある疑問(Q&A)

Q. 後腹膜線維症は悪性腫瘍ですか。
A. 腫瘍ではなく線維炎症性の病気です。ただし、二次性の背景に悪性腫瘍が含まれる場合があり(Loricera 2026)、悪性腫瘍が大動脈周囲に似た像を作ることもあるため、画像と臨床で慎重に区別します。

Q. MRIとCTのどちらが良いですか。
A. 病期の評価と経過観察にはMRIが推奨され、CTやPET/CTも補助的に有用とされています(Czerniak 2025)。実際の診断には、文献レビューでCTが最も使われていました(Loricera 2026)。

Q. 治療後に再発しますか。
A. ギリシャの報告では、ステロイドを初期治療として98%で使い、28.6%が再発しました(Zampeli 2022)。具体的な治療・経過は、主治医とご相談ください。

本記事は一般的な情報です。個別の診断・治療については、主治医にご相談ください。

あわせて読みたい:水腎症・尿閉のCT画像所見

参考文献

  1. Czerniak S, Mathur M. Multimodality imaging review of retroperitoneal fibrosis. Abdom Radiol (NY). 2025;50(9):4450-4468. PubMed
  2. Cohan RH, Shampain KL, Francis IR, et al. Imaging appearance of fibrosing diseases of the retroperitoneum: can a definitive diagnosis be made? Abdom Radiol (NY). 2018;43(5):1204-1214. PubMed
  3. Loricera J, Secada-Gómez C, Martín-Gutiérrez A, et al. Clinical features, diagnosis, and management of retroperitoneal fibrosis in a university referral hospital and literature review. Intern Emerg Med. 2026;21(4):1247-1258. PubMed
  4. Zampeli E, Venetsanopoulou AI, Christaki S, et al. Idiopathic retroperitoneal fibrosis: clinical features, treatment modalities, relapse rate in Greek patients and a review of the literature. Clin Exp Rheumatol. 2022;40(9):1642-1649. PubMed
  5. Kurowecki D, Patlas MN, Haider EA, et al. Cross-sectional pictorial review of IgG4-related disease. Br J Radiol. 2019;92(1103):20190448. PubMed
  6. Krombach GA. [Diseases of connective tissue in IgG4-associated autoimmune diseases]. Radiologe. 2016;56(12):1061-1068. PubMed
  7. Mirault T, Lambert M, Puech P, et al. Malignant retroperitoneal fibrosis: MRI characteristics in 50 patients. Medicine (Baltimore). 2012;91(5):242-250. PubMed
  8. Wang Y, Guan Z, Gao D, et al. The value of (18)F-FDG PET/CT in the distinction between retroperitoneal fibrosis and its malignant mimics. Semin Arthritis Rheum. 2018;47(4):593-600. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →