腎梗塞は側腹部の痛みや腰痛の原因となります。
ただし、頻度が少ないのもあり、尿管結石などと誤診されたり、診断に有効な造影CT検査が施行されないこともしばしばあります。
今回は腎梗塞の特徴と画像診断で見るべきポイントをまとめました。
先に結論:腎梗塞とは
- 腎梗塞は、腎臓の動脈が詰まって腎臓の一部(または全部)に血液が届かなくなり壊死する病気です。原因の多くは心房細動などで心臓にできた血栓が飛んで詰まる(心原性塞栓)もので、ほかに大動脈解離、血管炎、外傷、カテーテル操作などがあります
- 症状は突然のわき腹・腰の痛み、吐き気、発熱で、尿管結石と間違えられやすいのが特徴です。血液検査でLDHの上昇、尿検査で血尿が見られることがあります
- 単純CTではほとんど写らず、造影CTで初めてわかる病気です。造影CTでくさび形に造影されない部分が見え、腎臓の表面だけ薄く染まるcortical rim signが見られることもあります。治療は抗凝固療法が基本で、早期なら血栓溶解やカテーテル治療を行うこともあります
- 急性腎盂腎炎と似たくさび形の低吸収域を示しますが、cortical rim sign・腎周囲の炎症の変化がないこと・病変が腎杯と関係のない位置にあることが腎梗塞を考える手がかりです。ただしcortical rim signは半数前後でしか見られず、ないからといって除外はできません
- 後遺症として、約4人に1人が慢性腎臓病(CKD)になると報告されています(Nour Eldine 2026)
※突然の強いわき腹の痛みがあるときは、すぐに受診してください。
腎梗塞(renal infarction)とは?
腎動脈が急速に閉塞すると、腎組織は壊死に陥る。これを腎梗塞という。
腎梗塞の原因は?
原因は大きく、
- 塞栓性:血栓などが飛んできて動脈が詰まる。
- 血栓性:動脈硬化などで動脈が狭窄する。
- 外傷性
- 静脈閉塞
に分かれ、心房細動などによる塞栓性が最も多いが、腎動脈病変や凝固亢進状態、原因不明の特発性も少なくない。
34研究・12,727例をまとめた系統的レビューでは、原因の割合は次のとおりでした(Nour Eldine 2026)。
| 原因 | 割合 |
|---|---|
| 塞栓性(心房細動など) | 42% |
| 凝固亢進状態 | 12% |
| 腎動脈の病変 | 11% |
| 外傷 | 3% |
| その他・特発性 | 31% |
塞栓性では
- 心房細動
- 亜急性細菌性心内膜炎
- 弁膜症
などの心疾患に起因する心原性塞栓症が多い。
※血栓症としては動脈硬化症、大動脈解離、腹部大動脈瘤、結節性多発動脈炎、SLE、抗リン脂質抗体症候群などの基礎疾患に伴って生じる。
※その他、腎茎部損傷や血管造影時におけるカテーテル、ガイドワイヤー操作が原因となることもある。

腎梗塞の症状は?検査所見は?
- 突然発症の側腹部痛、腰痛、悪心、嘔吐、発熱などの症状を呈する。
- 血尿を認めることがあるが、認めないこともあるので注意。
- 血液生化学検査で白血球増多、LDH(約9割で上昇)・GOT、CRPの上昇を認める。ただし非特異的。94例の検討では、腹痛・側腹部痛が96.8%、LDH上昇が90.5%、CRP上昇が77.6%、腎機能低下が40.4%にみられた(Bourgault 2013)。
腎梗塞の治療は?
治療は、
- 血栓溶解療法
- 抗凝固療法
- 抗血小板療法
といった保存的治療が行われる。血栓溶解療法は、選択的に腎動脈へ注入する方法と全身療法がある。
腎梗塞はまれな病気で、これまでの研究は後ろ向きの観察研究に限られ(Nour Eldine 2026)、治療法どうしを比べた試験はありません。原因(心房細動・凝固異常・腎動脈の病変など)を調べ、再発予防も含めて治療を選びます。
腎梗塞の画像所見は?
- 単純CTではほとんど異常を認めない。
- 造影CTでは、閉塞した血管領域に一致する非造影領域として捉えられる。脾梗塞を合併することも多く(救急外来の38例の報告で34%、Antopolsky 2012)、腎だけでなく脾臓など他臓器の梗塞もあわせて確認します。
- 腎動脈のどこが閉塞するかで大きく、
腎動脈本幹レベルでの閉塞により腎臓全体(または大部分)が造影されないglobal infarction
腎動脈分枝レベルでの閉塞により皮質を底辺とする楔状の非造影域を示すfocal infarction
の2つの型に分けられる。
- エコーではドプラーエコーが有用。
症例 60歳代男性 背部痛、右下肢麻痺

cortical rim signとは?
- 被膜下皮質はさまざまな側副血行路があるため、腎皮質の外側縁のみに帯状の造影効果が残存することがある。これをcortical rim signと呼ぶ。
- 腎梗塞に特徴的な所見。
- ただし少なくとも発症から8時間を要する(外傷後の20例の検討、Kamel 1996)。
- 腎梗塞の約50%に見られ(Wong 1984では47%)、globalおよびfocal infarctionいずれでも出現するが、主に全体梗塞(global)で見られたとの報告もある(Suzer 2002)。
- ただし、腎梗塞に特異的ではなく、急性皮質壊死、腎静脈血栓症でも観察される(Hann 1982)。
- 1週間以降では全例認められたとの報告あり(Kamel 1996)。
症例 70歳代男性 左腎梗塞

cortical rim signの読み方:いつ見えて、いつ見えないか
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 見えるまでの時間 | 外傷後の腎梗塞20例では、cortical rim signが最も早く見えたのは8時間後(出現までの中央値は7日)で、見えなかった6例はすべて外傷から10時間以内のCTでした。1週間後以降のCTでは全例で見えました(Kamel 1996) |
| 見える頻度 | 12例の腎梗塞の検討では、梗塞の47%に見られました(Wong 1984)。見えないからといって腎梗塞を除外できません |
| 梗塞の型 | 37例41個の腎梗塞の検討では、くさび形の局所梗塞23例、全体梗塞9例、多発梗塞5例で、cortical rim signは主に全体梗塞で見られました(Suzer 2002) |
| ほかの原因 | 腎静脈血栓症、急性尿細管壊死、腎動脈塞栓術のあとにも、被膜下の薄い皮質だけが染まる像が報告されています(Hann 1982) |
被膜の下の皮質は、被膜まわりの細い側副血行路から血流を受けるため、梗塞でも薄く残って染まります(Hann 1982)。
腎梗塞と急性腎盂腎炎の見分け方
どちらも発熱とわき腹の痛みで始まり、造影CTでくさび形の低吸収域を示すため、最も混同されやすい組み合わせです。超音波では、早期の腎梗塞と合併症のない急性腎盂腎炎を区別できないとされています(Piccoli 2014)。
| 腎梗塞 | 急性腎盂腎炎 | |
|---|---|---|
| cortical rim sign | 見られることがある(薄い被膜下の染まり) | ふつう見られない |
| 腎周囲の炎症の変化 | 目立たない | 腎周囲の脂肪織の濃度上昇などを伴うことがある |
| 病変の位置 | 腎杯・腎盂の構造と無関係に、血管の支配域に一致する | 腎杯から皮質に向かって広がる |
| 血液・尿の所見 | LDHの上昇(94例の検討で90.5%、Bourgault 2013) | 膿尿・細菌尿など尿路感染の所見 |
発熱、わき腹痛、排尿時の症状があり、炎症反応が高い68歳女性では、急性腎盂腎炎が疑われましたが、造影CTでcortical rim signがあり、腎周囲の炎症の変化がなく、病変が腎杯とは関係のない位置にあったことから腎梗塞と診断され、のちに発作性の不整脈が見つかった報告があります(Piccoli 2014)。
間違えやすいポイント
- cortical rim signがない=腎梗塞ではない、ではない:発症から8時間以内では見えないことがあり、見える頻度も半数前後です(Kamel 1996、Wong 1984)
- くさび形の低吸収域=腎盂腎炎、と決めない:心房細動などの背景、LDHの上昇、腎周囲の炎症の有無を合わせて見ます
- 全体梗塞や腫瘤のように見える梗塞では、cortical rim signがなく診断が難しいことがあります。経過のCTで造影のされ方が入れ替わる「flip-flop enhancement」が診断の助けになった例が報告されています(Suzer 2002)
- 単純CTだけで終わらせない:結石が見つからない側腹部痛では、造影CTが診断に欠かせません(Antopolsky 2012)
腎梗塞の鑑別診断は?
- 急性腎盂腎炎→症状やlabo dataといった臨床情報が役立つ。画像では非常に似ているが、腎梗塞ではcortical rim signが参考になる。
- 多発性転移
- 浸潤性腫瘍
- 腎外傷
腎梗塞でよくある疑問(Q&A)
Q. 腎梗塞の後遺症はありますか?
系統的レビューでは、急性期の透析が4%、入院中の死亡が5%、その後の慢性腎臓病(CKD)が25%と報告されています(Nour Eldine 2026)。59例の追跡では、診断時に49.2%で腎機能低下があり、6か月後も50.8%で残っていました(García-García 2019)。退院後も腎機能の経過をみていきます。
Q. 尿管結石との違いは?
どちらも突然のわき腹の痛みで始まりますが、尿管結石は単純CTで石や水腎症が見えるのに対し、腎梗塞は単純CTではほとんど異常がなく、造影CTでくさび形の造影不良として見つかります。結石が見つからない側腹部痛で、心房細動などの背景やLDH上昇があれば、腎梗塞を考えて造影CTを検討します(Antopolsky 2012)。
Q. cortical rim signがないと、腎梗塞ではありませんか?
いいえ。cortical rim signは梗塞の半数前後でしか見られず(Wong 1984では47%)、外傷後の検討では、発症から8時間以内のCTでは見えないことがありました(Kamel 1996)。見えなくても、くさび形の造影不良域や臨床の情報から腎梗塞は診断されます。
Q. 腎盂腎炎とはどこで見分けますか?
どちらも発熱とわき腹痛で、造影CTのくさび形の低吸収域も似ています。cortical rim signがあること、腎周囲の炎症の変化がないこと、病変が腎杯と関係のない位置にあることが、腎梗塞を考える手がかりになります(Piccoli 2014)。わき腹の痛みと発熱が続くときは、早めに医療機関を受診してください。
Q. 原因がわからない(特発性の)腎梗塞もありますか?
あります。59例の検討では原因が見つかったのは59.3%で、特発性とされた人の一部はその後の経過で心房細動が見つかりました(García-García 2019)。
参考文献
- Bourgault M, Grimbert P, Verret C, et al. Acute renal infarction: a case series. Clin J Am Soc Nephrol. 2013;8(3):392-8. PubMed
- Antopolsky M, Simanovsky N, Stalnikowicz R, et al. Renal infarction in the ED: 10-year experience and review of the literature. Am J Emerg Med. 2012;30(7):1055-60. PubMed
- Kamel IR, Berkowitz JF. Assessment of the cortical rim sign in posttraumatic renal infarction. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(5):803-6. PubMed
- Wong WS, Moss AA, Federle MP, et al. Renal infarction: CT diagnosis and correlation between CT findings and etiologies. Radiology. 1984;150(1):201-5. PubMed
- Nour Eldine M, Kilan H, Hallak P, et al. Systematic Review of Renal Infarction Clinical Presentation, Causes, and Outcomes. Kidney Int Rep. 2026;11(11):107049. PubMed
- García-García A, Demelo-Rodríguez P, Ordieres-Ortega L, et al. Idiopathic versus Provoked Renal Infarction: Characteristics and Long-Term Follow-Up of a Cohort of Patients in a Tertiary Hospital. Kidney Blood Press Res. 2019;44(6):1432-1440. PubMed
- Hann L, Pfister RC. Renal subcapsular rim sign: new etiologies and pathogenesis. AJR Am J Roentgenol. 1982;138(1):51-54. PubMed
- Suzer O, Shirkhoda A, Jafri SZ, et al. CT features of renal infarction. Eur J Radiol. 2002;44(1):59-64. PubMed
- Piccoli GB, Priola AM, Vigotti FN, et al. Renal infarction versus pyelonephritis in a woman presenting with fever and flank pain. Am J Kidney Dis. 2014;64(2):311-314. PubMed
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