腹部のエコーやCTにおいて、
「水腎症あり。」
と報告されることがありますが、この水腎症(hydropnephrosis)とは一体どういった状態なのでしょうか?
また、どんなことが原因で水腎症が起こるのでしょうか?
今回は水腎症についてまとめてみました。
水腎症とは?
何らかの原因で、腎盂の尿流がうっ滞して、中枢側の内圧が上昇した状態を水腎症と言います。
尿路通過障害のため、腎盂〜腎杯が拡張して、その内圧により
- 腎血流低下
- 尿産生低下
- 腎実質の萎縮
が起こり、慢性例では機能的・形態的に異常を来します。
ただし、小児で見られる巨大尿管・巨大腎杯症は、腎機能は基本的に保たれており水腎症とは言わない。
水腎症の原因は?
- 機械的閉塞
- 機能的閉塞
に大きく分けられます。
機械的閉塞とは、何らかの原因で物理的に狭窄〜閉塞を来すもので、
- 尿路内の占拠性病変(結石、尿路腫瘍など)
- 周辺臓器からの浸潤(子宮頚癌、結腸癌、後腹膜線維症など)
- 先天奇形(先天性水腎症、馬蹄腎、腎盂尿管移行部狭窄、尿管位置の異常、下大静脈後尿管など)
- 泌尿生殖器結核
といった原因があります。
一方で、機能的閉塞では、
- 尿管膀胱逆流
- 神経因性膀胱
が主な原因となります。
水腎症の画像所見は?
水腎症の画像所見は、急性期と慢性期で異なります。
急性期では、
- 腎実質の造影効果の低下
- 尿路への造影剤排泄遅延
- 腎周囲の脂肪織濃度上昇
- 腎周囲筋膜(Gerota筋膜)の肥厚
といった所見を認めます。
一方、亜急性期から慢性期になると、腎盂腎杯が拡張し、慢性期には、腎実質が萎縮します。
症例 60歳代女性
左腎杯〜腎杯の拡張を認めています。
左尿管を尾側に追うと、尿管膀胱移行部に結石を認めており、左尿管結石による水腎症と診断することができます。
参考文献:
画像診断 Vol.32 No.5 2012 P410-413