腹部エコーやCTのレポートで、
「水腎症あり」
と書かれることがあります。
水腎症とは、簡単にいうと尿の通り道がどこかで流れにくくなり、その上流にある腎盂や腎杯が拡張している状態です。
尿は腎臓で作られ、腎盂、尿管、膀胱、尿道へと流れていきます。この流れのどこかで詰まりや狭窄が起こると、尿が上流側にたまり、腎盂や腎杯が広がります。これが水腎症です。
画像診断では、水腎症を見つけたときに、単に「水腎症があります」と書くだけでは不十分です。大切なのは、どこで尿が流れにくくなっているのか、原因は何か、緊急性があるかを確認することです。
この記事では、水腎症の原因、CTでの見え方、読影時に確認すべきポイントをわかりやすくまとめます。
水腎症とは?

水腎症とは、尿の通り道が何らかの原因で流れにくくなり、腎臓の中にある腎盂や腎杯が拡張した状態です。
腎臓で作られた尿は、通常であれば腎盂から尿管へ流れ、膀胱にたまります。しかし、尿管結石や腫瘍などで尿管が詰まると、尿が流れにくくなります。その結果、上流にあたる腎盂や腎杯がふくらみます。
軽い水腎症では腎盂が少し広く見える程度ですが、進行すると腎杯も丸く拡張します。さらに長期間続くと、腎臓の実質が薄くなり、腎機能が低下することがあります。
ポイント
- 水腎症は、尿の流れが悪くなって腎盂や腎杯が拡張した状態です。
- 原因として尿管結石、腫瘍、狭窄、前立腺肥大などがあります。
- CTでは、腎盂腎杯の拡張だけでなく、尿管をたどって原因を探すことが重要です。
- 感染を伴う場合は、閉塞性腎盂腎炎や膿腎症となり、緊急対応が必要になることがあります。
尿の流れと水腎症の関係
尿は次のような順番で流れます。
- 腎臓で尿が作られます。
- 腎杯から腎盂に集まります。
- 尿管を通って膀胱に流れます。
- 膀胱にたまった尿が尿道から排出されます。
この流れの途中で詰まりが起こると、その上流側が拡張します。
たとえば、尿管の途中に結石が詰まると、その結石より上流の尿管、腎盂、腎杯が拡張します。これが尿管結石による水腎症です。
つまり、水腎症を見たときには、腎臓だけを見るのではなく、尿管から膀胱まで順番に追うことが大切です。
水腎症の主な原因
水腎症の原因はいろいろありますが、画像診断で特に重要なのは以下です。
- 尿管結石
- 腎盂尿管移行部狭窄
- 尿管腫瘍・腎盂腫瘍
- 膀胱腫瘍
- 前立腺肥大・前立腺癌
- 子宮頸癌、卵巣癌、直腸癌などの骨盤内腫瘍
- リンパ節腫大による尿管圧排
- 後腹膜線維症
- 手術後や放射線治療後の尿管狭窄
- 神経因性膀胱などによる排尿障害
片側だけの水腎症では、尿管結石や尿管腫瘍、骨盤内腫瘍による片側尿管の閉塞を考えます。
両側の水腎症では、膀胱より下流の問題を考えることが重要です。たとえば、前立腺肥大、前立腺癌、膀胱腫瘍、神経因性膀胱、慢性尿閉などです。
CTで水腎症を見たときに確認すること
CTで水腎症を見つけたときは、次の順番で確認するとわかりやすいです。
- 左右どちらの腎臓に水腎症があるかを確認します。
- 腎盂や腎杯がどの程度広がっているかを見ます。
- 尿管が拡張しているかを確認します。
- 拡張した尿管を下の方へたどります。
- 尿管の途中に結石や腫瘍、狭窄がないかを探します。
- 膀胱や前立腺、骨盤内腫瘍がないかを確認します。
- 腎臓の周囲に炎症や急性閉塞を疑う所見がないかを見ます。
- 腎実質が薄くなっていないかを確認します。
この中で特に重要なのは、拡張した尿管を最後まで追うことです。
水腎症だけを指摘して終わってしまうと、尿管結石、尿管腫瘍、骨盤内腫瘍による圧排などを見落とすことがあります。
水腎症のCT所見
水腎症の基本的なCT所見は、腎盂と腎杯の拡張です。
軽度の水腎症では、腎盂が少し広く見える程度です。中等度になると腎杯も広がります。高度になると、腎盂腎杯が大きく拡張し、腎実質が薄くなります。
また、尿管が拡張しているかどうかも大切です。
尿管も拡張している場合は、腎盂より下流、つまり尿管や膀胱側に原因がある可能性が高くなります。
一方、腎盂腎杯は拡張しているのに尿管拡張が目立たない場合は、腎盂尿管移行部狭窄などを考えます。
尿管結石による水腎症
水腎症の原因として非常に多いのが尿管結石です。
尿管結石では、尿管の途中に石が詰まり、その上流側の尿管や腎盂腎杯が拡張します。
単純CTでは、多くの尿管結石が高吸収の小さな結節として見えます。水腎症がある場合は、拡張した尿管を下流へたどり、その先に高吸収の結石がないかを確認します。
尿管結石による急性閉塞では、以下のような所見を伴うことがあります。
- 患側腎の腫大
- 腎周囲脂肪織濃度上昇
- 尿管周囲脂肪織濃度上昇
- Gerota筋膜の肥厚
- 造影CTでの造影効果低下
- 造影剤排泄の遅れ
これらの所見がある場合は、比較的新しい急性閉塞を疑いやすくなります。
症例 60歳代女性

左腎杯〜腎杯の拡張を認めています。
左尿管を尾側に追うと、尿管膀胱移行部に結石を認めており、左尿管結石による水腎症と診断することができます。
急性の水腎症で注意する所見
急に尿管が詰まると、腎臓や腎臓の周囲に変化が出ることがあります。
CTでは、腎臓がやや腫大したり、腎周囲の脂肪織濃度が上昇したりします。造影CTでは、患側腎の造影が遅れたり、尿路への造影剤排泄が遅れたりすることがあります。
このような所見があると、急性尿路閉塞を疑う手がかりになります。
ただし、腎周囲脂肪織濃度上昇は水腎症だけに特異的な所見ではありません。腎盂腎炎などの感染でも見られるため、臨床症状や血液検査と合わせて判断する必要があります。
慢性の水腎症で注意する所見
水腎症が長く続くと、腎実質が少しずつ薄くなります。
CTでは、腎盂腎杯が大きく拡張し、その周囲の腎実質が菲薄化して見えます。さらに進行すると、腎臓自体が萎縮して見えることもあります。
このような慢性水腎症では、閉塞を解除しても腎機能が十分に回復しないことがあります。
そのため、レポートでは「水腎症」と書くだけでなく、腎実質の菲薄化や腎萎縮があるかも記載するとよいです。
感染を伴う水腎症に注意
水腎症に感染が加わると、閉塞性腎盂腎炎や膿腎症となることがあります。
これは重要な状態です。尿の流れが悪いところに感染が加わるため、抗菌薬だけでは不十分で、尿管ステントや腎瘻によるドレナージが必要になることがあります。
CTでは以下のような所見に注意します。
- 水腎症
- 腎盂壁や尿管壁の肥厚
- 腎盂壁の造影効果増強
- 腎周囲脂肪織濃度上昇
- 腎実質の造影不均一
- 腎盂内の液体濃度上昇
- ガスを伴う場合は気腫性変化
発熱、炎症反応高値、敗血症を疑う状態がある場合は、単なる水腎症ではなく、感染を伴う閉塞性尿路疾患として扱う必要があります。
水腎症と紛らわしいもの
腎盂が広く見えても、すべてが病的な水腎症とは限りません。
水腎症と紛らわしいものとして、以下があります。
- 腎外腎盂
- 傍腎盂嚢胞
- 巨大腎杯症
- 術後変化
腎外腎盂
腎外腎盂は、腎盂が腎臓の外側に少し目立って見える正常変異です。
腎盂が広く見えるため水腎症のように見えることがありますが、通常は腎杯の拡張を伴いません。
水腎症では腎盂だけでなく腎杯も拡張することが多いため、腎杯の形を見ることが鑑別に役立ちます。
傍腎盂嚢胞
傍腎盂嚢胞は、腎洞部にある嚢胞です。
腎盂の近くに嚢胞があるため、水腎症のように見えることがあります。
造影CTの排泄相では、腎盂腎杯には造影剤が入りますが、嚢胞には造影剤が入りません。そのため、排泄相を確認すると鑑別しやすくなります。
参考文献
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- Strother MC, et al. The Delayed Nephrogram: Point-of-Care Quantitative Analysis Using Contrast-Enhanced CT. 2022.
- Tamburrini S, et al. Pyonephrosis Ultrasound and Computed Tomography Features: A Pictorial Review. Diagnostics. 2021.
- 画像診断 Vol.32 No.5 2012, p410-413.
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