日常臨床や救急外来で腹部CTの小腸を観察するときに、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?

  • 小腸の拡張(腸閉塞・イレウス)
  • 小腸の壁肥厚
  • 虚血のサイン(壁の造影不良・壁内ガス)
  • 腸重積
  • 小腸の腫瘤
  • 腸間膜(脂肪織・液体・血管)と遊離ガス

の有無についてまずは読影をしてみましょう。

小腸は長く、骨盤から上腹部まで折りたたまれて入っているため、1枚の横断像だけでは全体がつかめません。「拡張しているか」「壁が厚いか」「壁がきちんと造影されているか」の3つを軸に、冠状断も使って追いかけるのが基本です。以下、代表的な所見ごとに、鑑別診断と次に見るポイントを解説します。

先に結論:腹部CTで小腸を見るときの6つのチェックポイント

  1. 拡張:拡張した腸と虚脱した腸の境目(移行部・caliber change)を探し、閉塞の原因(癒着・ヘルニア・腫瘍・異物など)を考える。拡張が全体に及び移行部がなければ麻痺性イレウスも考える
  2. 絞扼のサイン:壁の造影不良、腸間膜のけば立ち(濃度上昇)・液体、closed loopがあれば緊急度が高い
  3. 壁肥厚:範囲(限局・区域・びまん)と層構造(ターゲット状か、均一か)で、炎症・浮腫・虚血・腫瘍を分ける
  4. 虚血:上腸間膜動脈(SMA)・上腸間膜静脈(SMV)の閉塞、壁内ガス・門脈ガスを確認する
  5. 腸重積・腫瘤:成人の腸重積は先進部(腫瘍)の有無を見る。腫瘤は腺癌・リンパ腫・GIST・神経内分泌腫瘍などを形と造影で考える
  6. 腸間膜・周囲:腸間膜のねじれ(whirl)、液体、遊離ガス、リンパ節腫大

1. 小腸の拡張(腸閉塞・イレウス)

拡張しているかの見方

小腸が拡張しているかは、腸の径と拡張した腸と虚脱した腸が混在しているかで判断します。60人の検討では、2.5cmを拡張の目安にしたときに感度と特異度のバランスが最もよく、手術で確かめられた小腸閉塞30人のうち27人(90%)をCTで正しく診断できました(Fukuya 1992)。

  • 拡張した腸の中に便のような内容物(small bowel feces sign)が見えると、その近くに移行部があることが多い
  • 拡張が小腸だけか、大腸まで及ぶかで、小腸閉塞・大腸閉塞・麻痺性イレウスを分ける

移行部(caliber change)と原因

拡張した腸を肛門側へたどり、急に細くなる場所(移行部)を探します。CTは閉塞の有無だけでなく、場所・程度・原因・絞扼の有無を答えることが求められます(Silva 2009)。

原因 CTの手がかり
癒着(術後) 移行部に腫瘤がなく、腸がくちばし状に細くなる。手術歴がある
ヘルニア 鼠径部・大腿・閉鎖孔・臍部・術創に腸が出ている。内ヘルニアでは腸が袋状に集まり、腸間膜の血管が引き込まれる
腫瘍 移行部に壁肥厚や腫瘤がある。小腸腫瘍だけでなく、腹膜播種による閉塞もある
腸管内の詰まり 食餌性イレウス(餅・こんにゃくなど)、胆石イレウス(胆道気腫+小腸閉塞+腸管内の胆石)、異物
腸重積 腸の中に腸が入り込んだ層状の像(後述)

詳しくはこちら→小腸閉塞の分類とCT画像所見(キャリバーチェンジとは)、腸閉塞・イレウスのCT画像診断まとめ

絞扼を疑うサイン

閉塞を見つけたら、次に血流障害(絞扼)があるかを判断します。ここが治療方針を大きく変えるポイントです。
closed loopとbeak sign
closed loopの模式図とCTです。1か所で腸の入口と出口が締めつけられ、間の腸(赤)が閉じたループになり、締めつけ部が鳥のくちばし状(beak sign)に見えます。詳しくは絞扼性腸閉塞(closed loop・beak sign)の記事へ。

所見 意味
腸管壁の造影不良 9研究768人のメタ解析で、絞扼に対する特異度が最も高く(95%)、あれば絞扼の可能性が大きく上がる(Millet 2015)
腸間膜の液体 同じメタ解析で感度が最も高い(89%)。液体がないことは絞扼を否定する手がかりになる(Millet 2015)
closed loop・腸間膜のびまん性の濃度上昇 癒着性小腸閉塞256人の検討で、造影不良・腸間膜のびまん性の濃度上昇・closed loopの3つが絞扼と関連し、3つを組み合わせたモデルはAUC 0.91、陰性的中率97%だった(Millet 2017)
単純CTで腸管壁が高吸収 壁内出血を示し、絞扼性の腸管壊死で見られやすい(Calame 2020)

単純CTしかない場合は造影不良が評価できないため、壁の高吸収・腸間膜の液体やけば立ち・closed loopの形を手がかりにし、可能なら造影CTを追加します。

機械的な閉塞ではない拡張

小腸から大腸まで全体に拡張し、はっきりした移行部がないときは、術後・電解質異常・薬剤・腹膜炎などによる麻痺性イレウスを考えます。強皮症などで慢性的に拡張する偽性腸閉塞もあります。

2. 小腸の壁肥厚

小腸の壁肥厚は原因が多いため、範囲・層構造・造影のされ方の3点で整理します(Macari 2001)。拡張していない腸は厚く見えるため、腸が十分に広がっている場所で判断します。

パターン 考える病気
長い範囲・層構造が保たれる(ターゲット状) 粘膜下の浮腫や炎症。感染性腸炎(小腸型)、ループス腸炎・アニサキスなどの小腸炎、IgA血管炎、低アルブミン血症・肝硬変による浮腫、静脈性の虚血
回腸末端中心・飛び石状 クローン病(腸間膜側優位の壁肥厚、直血管の増生=comb sign、狭窄・瘻孔・膿瘍)
短い範囲・層構造が消える・均一に厚い 腫瘍(腺癌・リンパ腫・GISTなど)。辺縁が不整、リンパ節腫大を伴えば腫瘍を考える
壁が薄く造影されない 動脈性の虚血(後述)

クローン病の回腸末端の壁肥厚
クローン病の造影CTです。左は回腸末端、右はS状結腸に壁肥厚と造影効果の増強があり、病変が飛び石状に分布しています。詳しくはクローン病のCT・MRI画像所見の記事へ。

次に見るポイントは、病変の分布(空腸か回腸か、大腸にも及ぶか)、腸間膜の血管(静脈血栓はないか)、周囲の液体・リンパ節です。生魚を食べたあとの限局した強い浮腫では小腸アニサキス症も考え、食事歴を確認します。

3. 虚血(腸間膜虚血)

腸間膜虚血は症状に比べて身体所見が乏しく、見逃すと命にかかわる病気です。動脈相を含む造影CT(CT血管造影)が診断の中心で、メタ解析ではCT血管造影の感度92.0%・特異度98.8%でした。一方、血管以外の所見では腸管壁の造影不良・欠如が最も役に立ちましたが、感度は57.9%にとどまり、1つの所見だけで決めないことが勧められています(Reintam Blaser 2025)。
上腸間膜動脈血栓症と塞栓症
上腸間膜動脈(SMA)の血栓症(左:動脈硬化で根元から徐々に細くなる)と塞栓症(右:心臓などからの血栓が先のほうに詰まる)の模式図です。詳しくは上腸間膜動脈閉塞症(SMA塞栓症・SMA血栓症)の記事へ。

  • 動脈閉塞(塞栓・血栓):SMA内の造影欠損。腸管壁は薄く、造影されないことが多い。SMA解離も原因になる
  • 非閉塞性腸管虚血(NOMI):血管は開いているが細い。NOMIでは腸管壊死の例で壁内ガスが59%、門脈ガスが48%に見られ、動脈閉塞(29%・10%)や絞扼性小腸閉塞(7%・0%)より多かった(Calame 2020)
  • 静脈性(SMV血栓):静脈内の造影欠損、壁の強い浮腫と腸間膜の液体

壁内ガス(腸管気腫)と門脈内ガスは虚血を疑う重要な所見ですが、208人の手術例の検討では、両方がそろっても貫壁性壊死に対する感度は17%と低く、これだけで壊死の深さを決めることはできませんでした(Milone 2013)。

4. 腸重積

腸重積は、腸の一部が肛門側の腸の中に入り込んだ状態で、CTでは層が重なった丸い像(ターゲット状)や、縦方向ではソーセージ状に見えます。
成人の腸重積(回腸結腸型)
回腸が結腸の中に入り込んだ成人の腸重積のCTです。入り込んだ先端(右の画像)に腫瘍があり、これが先進部になっています。詳しくは腸重積の子どもと大人の違いとCT・エコー所見の記事へ。

  • 成人では原因(先進部)があることが多い:成人の腸重積は腸重積全体の5%、腸閉塞の1〜5%ほどで、先進部のない特発性は8〜20%とされます(Marinis 2009)。腫瘍のほか、メッケル憩室、術後の癒着、チューブなども原因になります
  • 短い一過性の小腸重積:CTで偶然見つかる小腸の腸重積の多くは自然に戻ります。37例の検討では、手術が必要だった6例はすべて先進部に腫瘍があり、長さ3.5cm以下の20例はすべて自然に改善しました(Lvoff 2003)

次に見るポイントは、先進部に腫瘤があるか、腸閉塞を伴うか、重積した腸の造影が保たれているかです。

5. 小腸の腫瘤

小腸の腫瘍はまれですが、腸閉塞・腸重積・出血・貧血のきっかけで見つかります。形と造影のされ方で、おおまかに見当をつけます。

腫瘍 CTの手がかり
腺癌 空腸の近位に多い。短い範囲の全周性壁肥厚・狭窄で、口側が拡張しやすい
悪性リンパ腫 長い範囲の壁肥厚の割に閉塞しにくく、内腔がかえって広がる(aneurysmal dilatation)。腸間膜リンパ節の腫大
GIST 腸の外へ張り出す多血性の腫瘤。大きいと内部に壊死や出血
神経内分泌腫瘍(NET) 回腸に多い。小さな原発巣より、腸間膜の石灰化を伴う腫瘤と周囲の線維化(放射状の索状影)で気づかれることがある
脂肪腫など 脂肪の濃度で診断しやすい。腸重積の先進部になることがある

詳しくはこちら→小腸腫瘍の鑑別診断と小腸癌のCT画像所見、小腸悪性リンパ腫のCT所見(aneurysmal dilatation)

腫瘤が疑われたら、造影の各相、リンパ節、肝転移、腹膜播種を確認し、必要に応じてCT/MRエンテログラフィー、カプセル内視鏡・小腸内視鏡へ進みます。

6. 腸間膜・周囲(脂肪織・液体・血管・ガス)

  • 腸間膜の液体・けば立ち:絞扼・虚血・炎症で見られる。閉塞と組み合わさると緊急度が上がる
  • 腸間膜のねじれ(whirl sign):血管が渦巻き状に巻き込まれる。中腸軸捻転・内ヘルニア・closed loopを考える
  • SMAと大動脈の間の狭さ:十二指腸水平脚が挟まれて口側が拡張するSMA症候群
  • 遊離ガス・腸管外のガス:小腸の穿孔は胃・十二指腸より遊離ガスが少ないことがある。168人の検討では、区域的な腸管壁肥厚が小腸穿孔の部位を示す強い手がかりでした(Kim 2014)

魚骨による小腸穿孔
引用:Radiopaedia
魚骨による小腸穿孔の単純CTです。右下腹部の小腸の中に、細い線状の高吸収(魚の骨)が見え、周囲の脂肪織が濃くなっています。詳しくは小腸穿孔の原因とCT画像所見の記事へ。

小腸で見落としやすい場所と、確認のしかた

場所・所見 見落としやすい理由 確認のしかた
骨盤内の回腸 腸が密に折りたたまれ、膀胱や子宮・直腸と重なる 冠状断で回腸末端から逆にたどる
鼠径部・大腿・閉鎖孔 撮影範囲の下端にあり、腸の出口として意識されにくい 腸閉塞を見たら、範囲の下端まで両側を左右比較する
左上腹部・十二指腸空腸曲(トライツ靱帯付近) 内ヘルニアでは腸が袋状に集まるだけで、移行部が分かりにくい 腸の集まり方と、腸間膜の血管の引き込み・渦巻きを見る
細い異物・腸管内の高吸収 魚骨やPTP包装は小さく、腸の内容物や造影剤に紛れる 単純CTを見て、ウィンドウを広げて線状の高吸収を探す
腸管壁の造影不良 周りの腸と比べないと分かりにくい 同じ高さの正常な腸と見比べる。単純CTがあれば壁の高吸収も確認する
  • 偶然見つかった所見の扱い:ACRの偶発所見white paperを更新・補う総説では、腸重積やmisty mesentery(腸間膜の脂肪織の淡い濃度上昇)が、偶然見つかることの多い所見として取り上げられています(Govardhan 2026)。症状がなく短い小腸の腸重積なら、先進部の腫瘤や閉塞がないことを確かめたうえで、臨床経過とあわせて判断します。

小腸の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. 小腸が少し太いだけでも腸閉塞ですか?
A. 太さだけでは決まりません。拡張した腸と虚脱した腸の境目(移行部)があるか、拡張が大腸まで及ぶかを見て、機械的な閉塞か麻痺性イレウスかを考えます。症状や腹部所見とあわせて判断します。

Q. 腸閉塞で一番気をつけるべき所見は何ですか?
A. 血流が悪くなっているサイン(壁の造影不良・腸間膜の液体やけば立ち・closed loop)です。これらがあれば絞扼性腸閉塞を疑い、早めに外科と相談します。

Q. CTで偶然「腸重積」と言われました。すぐ手術が必要ですか?
A. 成人でも、短い小腸の腸重積は自然に戻ることが多いとされます。一方、腫瘍などの先進部がある場合や腸閉塞を伴う場合は治療が必要になるため、主治医の説明を受けてください。

まとめ

小腸CTの読影では、

  • 拡張と移行部(閉塞の原因)
  • 絞扼・虚血のサイン(造影不良・腸間膜の液体・closed loop)
  • 壁肥厚の範囲と層構造
  • 腸重積の先進部・腫瘤
  • 腸間膜・遊離ガス

を順に確認し、必要に応じてCT血管造影、CT/MRエンテログラフィー、内視鏡へつなげます。腹痛や嘔吐、お腹の張りなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

参考になれば幸いです(^Д^)

あわせて読みたい:腹部CTの読み方

参考文献

  1. Fukuya T, Hawes DR, Lu CC, et al. CT diagnosis of small-bowel obstruction: efficacy in 60 patients. AJR Am J Roentgenol. 1992;158(4):765-9. PubMed
  2. Silva AC, Pimenta M, Guimarães LS. Small bowel obstruction: what to look for. Radiographics. 2009;29(2):423-39. PubMed
  3. Millet I, Taourel P, Ruyer A, et al. Value of CT findings to predict surgical ischemia in small bowel obstruction: A systematic review and meta-analysis. Eur Radiol. 2015;25(6):1823-35. PubMed
  4. Millet I, Boutot D, Faget C, et al. Assessment of Strangulation in Adhesive Small Bowel Obstruction on the Basis of Combined CT Findings: Implications for Clinical Care. Radiology. 2017;285(3):798-808. PubMed
  5. Calame P, Malakhia A, Turco C, et al. Transmural Bowel Necrosis From Acute Mesenteric Ischemia and Strangulated Small-Bowel Obstruction: Distinctive CT Features. AJR Am J Roentgenol. 2020;214(1):90-95. PubMed
  6. Macari M, Balthazar EJ. CT of bowel wall thickening: significance and pitfalls of interpretation. AJR Am J Roentgenol. 2001;176(5):1105-16. PubMed
  7. Reintam Blaser A, Koitmäe M, Laisaar KT, et al. Radiological diagnosis of acute mesenteric ischemia in adult patients: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2025;15(1):9875. PubMed
  8. Milone M, Di Minno MN, Musella M, et al. Computed tomography findings of pneumatosis and portomesenteric venous gas in acute bowel ischemia. World J Gastroenterol. 2013;19(39):6579-84. PubMed
  9. Marinis A, Yiallourou A, Samanides L, et al. Intussusception of the bowel in adults: a review. World J Gastroenterol. 2009;15(4):407-11. PubMed
  10. Lvoff N, Breiman RS, Coakley FV, et al. Distinguishing features of self-limiting adult small-bowel intussusception identified at CT. Radiology. 2003;227(1):68-72. PubMed
  11. Kim HC, Yang DM, Kim SW, et al. Gastrointestinal tract perforation: evaluation of MDCT according to perforation site and elapsed time. Eur Radiol. 2014;24(6):1386-93. PubMed
  12. Govardhan C, Carney BW, Larson MC, et al. Update on Management of Incidental Findings Seen on Imaging Studies of the Abdomen and Pelvis. Radiographics. 2026;46(4):e250104. PubMed

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