絞扼性イレウスの症状、原因からclosed loopをはじめとしたCT画像診断のポイントをわかりやすいシェーマや動画つきで解説しました
絞扼性イレウス(strangulation ileus)とは?
研修医
絞扼性イレウスについて教えてください。
指導医
まずイレウスとは、消化管の通過障害のことで、消化管が消化運動をできずに、ガスが溜まってしまいます。小腸が閉塞するのか、大腸が閉塞するのかに分けられます。
例えば、小腸イレウスの場合はこのように、レントゲンを撮影すると、小腸が拡張し、普段は見えないKerckringヒダやニボーが形成されます。
小腸のイレウスの場合、さらに癒着などが原因で、小腸が本当に詰まってしまう機械性のイレウスと、小腸自体は詰まっていないけど、麻痺して機能しない麻痺性イレウスに分けられます。
指導医
絞扼性イレウスとは、機械性イレウスのうち、血流障害(虚血)が起こってしまい、腸管が腐る=壊死してしまうイレウスで、緊急手術が必要な最重要のイレウスです。
研修医
なるほど!消化管に血流障害が起こるということは、消化管が壊死して、腹膜炎になるので、緊急手術が必要になるわけですね。
指導医
その通りです。ただし、この絞扼性イレウスの診断が、一筋縄ではいかないことがあります。次に診断する上でのヒントについてまとめてみましょう。
絞扼性(こうやくせい)イレウス:
- 血流障害を伴う機械的腸閉塞のこと。
- 血流障害→壊死→穿孔→腹膜炎→敗血症→全身臓器不全→死の転帰を取るため確実な診断をして外科医へ繋ぐことが重要。
絞扼性イレウスを診断するために知っておくこと
画像診断以外で絞扼性イレウスを示唆する所見
- 高度な腹痛、頻脈、冷汗、血圧低下などのショック症状、腹膜刺激症状、またこれらの症状や所見が時間とともに増悪すること。
- 原因を説明できない小腸拡張+ペンタジン無効な場合→絞扼性イレウスを疑う(痛みが強いのが特徴の一つ)。
- 血液検査としてLDH、CPKの上昇、代謝性アシドーシスの進行、白血球の20000以上の上昇、3000以下の低下など。
- 手術歴がなくても絞扼性イレウスになることがある。
画像診断で絞扼性イレウスを示唆する所見
- CTでの画像診断が診断の決め手となることが多い。造影CTで染まりの悪い腸管がないかをチェックする。その他特異な所見とclosed loopを探す。
- 認めればすぐに外科医をコールして、緊急手術。
腸管の絞扼を示唆する画像所見
- 腸管の離れた2点が1カ所で絞めつけられ一部の腸管が閉鎖腔になる(closed loop)。
- 閉塞している部分の腸管が鳥のくちばし状に見える(beak sign)。
- 捻転により腸管や腸間膜の血管が渦巻状に見える(whirl sign)。
- 腸間膜の浮腫や出血(dirty fat sign)。
- 腸管の浮腫(target sign)。
これらは絞扼に限らず、腸管の炎症や虚血においても見られる所見です。
- 腸間膜血管の異常走行や拡張。
腸管の壊死を示す画像所見
- 腸管の造影効果の低下あるいは持続。
- 大量の腹水。
- 腸管壁内の出血。(単純CTで腸管壁が高吸収)
- 腸管壁内、門脈内あるいは上腸間膜静脈内ガスなど。
絞扼性イレウスで重要なclosed loopとは?
研修医
closed loopという言葉をよく聞きますが、何ですか?
closed loopとは?
- 2か所以上で腸管が狭窄閉塞して形成される閉鎖腸管ループのこと。
- ヘルニア門、索状物、捻転部、結節部などで、灌流する血管が絞扼されるため、closed loopは壊死に陥りやすい。
- CTでは、液体で充満し一塊となった、造影効果の低い腸管ループ群として描出される。
- 癒着、索状物によることが多いが、その他、内・外ヘルニア、軸捻転などが原因となる。
closed loopの原因は?
①索状物による。
②腹腔窩ヘルニアによる。(生理的な穴に入り込むことによる。)
③腸間膜裂孔ヘルニアによる。(腸間膜にできた異常な穴に入り込むことによる)
④腸管が軸捻転を起こすことによる。
⑤腸管が結節を形成することによる。
シェーマはいずれもここまでわかる急性腹症第2版を引用改変。
指導医
実際のclosed loopはこちらです。単純CTの冠状断像で、ピンク色がclosed loop、水色が口側腸管、茶色が肛門側腸管です。なお上の③の腸間膜裂孔ヘルニアに相当します。closed loopについてよくわかる動画なので、チェックしてください。
症例:60歳代女性 小腸間膜欠損部への内ヘルニア(closed loop形成あり)
▶︎上の症例の腹部CTの画像をノーヒント(色なし)で見てみる。
▶︎解説動画(解説音声あり)を見る。
まとめ
- 絞扼性イレウスの見落としは命取り。
- 画像診断では、closed loopをはじめ、絞扼性イレウスで認められるCT所見を確実に捉えることが重要。