
先に結論:アニサキス症のCTは「胃や腸の壁の強いむくみ+周りの脂肪のにごり+腹水」
| 項目 | 胃アニサキス症 | 小腸アニサキス症 |
|---|---|---|
| 生の魚介を食べてから痛みまで | 平均5.2時間(0.5〜24時間) | 平均39時間(12〜120時間) |
| CTの主な所見 | 胃壁の粘膜下層の強いむくみ(100%)、周囲脂肪の濃度上昇(95%)、腹水(70%) | 小腸壁の粘膜下層の強いむくみ(100%)、腹水(100%)、周囲脂肪の濃度上昇(90%) |
| 腸閉塞 | — | よく起こる(19例中16例) |
| 診断・治療 | 内視鏡で虫体を確認・摘出 | 多くは保存的治療で改善 |
時間・所見の数値はShibata 2014、腸閉塞と経過はLee 2014、診断・治療はHochberg 2010による。食事歴(何をいつ食べたか)が診断の大きな手がかりです。
アニサキス症とは
アニサキス症は、魚やイカなどの魚介を生や加熱不十分で食べたときに、寄生虫(アニサキス属の幼虫)が胃や腸の壁にもぐりこんで起こる病気です。胃では強いみぞおちの痛みが特徴で、診断と治療は食事歴と内視鏡での虫体の確認・摘出で行われるのが一般的です。小腸などの病変では、抗体検査が診断の助けになります(Hochberg 2010)。
胃に比べて小腸アニサキス症は、食べてから症状が出るまでの時間が長く、食事との関係に気づきにくいことがあります。そのため、CTで最初に疑われることが少なくありません(Shibata 2014)。
胃アニサキス症のCT
内視鏡で確認された胃アニサキス症20例のCTでは、次の所見がみられました(Shibata 2014)。
- 胃壁の粘膜下層の強いむくみ(浮腫):20例全例(100%)
- 胃の周りの脂肪の濃度上昇(にごり):95%
- 腹水:70%
救急でCTを受けた胃アニサキス症34例の別の研究でも、壁の層構造が見える肥厚(100%)、壁肥厚(97%)、脂肪のにごり(91%)、腹水(82%)が中心でした(Fornell-Perez 2023)。
胃壁の肥厚はAGML(急性胃粘膜病変)などでも起こります。むくみが強く、周りの脂肪のにごりや腹水を伴い、生の魚介を食べた直後なら、アニサキス症を考えます。胃壁肥厚の鑑別はAGML(急性胃粘膜病変)とは?にまとめています。
小腸アニサキス症のCT(腸閉塞として見つかることも)
小腸アニサキス症は、腸閉塞や虫垂炎と間違えられやすい病気です。47例の研究では、画像検査の前の臨床的な見立ては腸閉塞(29.8%)や虫垂炎(21.3%)が多く、アニサキス症を疑われていたのは2例だけでした(Chen Zhou 2023)。
| CT所見 | Lee 2014(19例) | Chen Zhou 2023(47例) |
|---|---|---|
| 部位 | 回腸84%、空腸16% | 回腸91.5% |
| 壁肥厚の長さ | 平均7.9cm | 平均17.5cm(10〜30cm) |
| 腸閉塞 | 84% | 70.2% |
| 腹水 | 84%(病変の周りに多い) | 95.7% |
| その他 | target sign 89%、腸間膜のむくみ79% | 腸間膜の脂肪のにごり68.1%、複数の場所の病変34% |
Shibata 2014の21例では、腸管は強くむくんでいても内腔が全部ふさがる形ではなく、狭くなった部分より先(肛門側)の腸に液体がたまる像が62%にみられました。救急CT95例の研究では、壁肥厚(100%)、脂肪のにごり(92%)、腸間膜の血管の張り(83%)がよくみられました(Fornell-Perez 2023)。
超音波(エコー)での見え方
エコーを受けた小腸アニサキス症40例では、腹水と腸の壁肥厚がそれぞれ70%にみられました。CTのような所見の組み合わせがそろったのは、CTの約8割(胃82%、腸80%)に対し、エコーでは50%でした(Fornell-Perez 2023)。エコーで腹水や腸の壁肥厚が見つかり、そこからCTで全体を確かめる流れもあります。
ほかの「食べ物が関係する腸閉塞」との違い
食べ物が関係する腸閉塞には、餅やこんにゃくなどが詰まる食餌性腸閉塞もあります。小腸アニサキス症で目立つのは、ここまで見てきた腸の壁の強いむくみと腹水です(Shibata 2014)。食餌性腸閉塞については餅やこんにゃくが原因の食餌性腸閉塞とは?で解説しています。
小腸の壁肥厚・浮腫の鑑別は小腸炎の原因と鑑別診断、小腸閉塞の見方は小腸閉塞のCT画像所見|キャリバーチェンジをご覧ください。
症例 50代男性 小腸アニサキス症

引用:Ikejima et al. Jpn J Radiol 2025(Figure 4)(CC BY 4.0)
前日からの腹痛で救急受診した56歳男性。横断像で小腸の浮腫状の壁肥厚(矢印)と、その口側の小腸の拡張(矢頭)、周囲脂肪の濃度上昇が見られます。冠状断・矢状断では、口径が変わる部位で壁肥厚が強くなっていく様子(clamp sign、b・cの矢印)があり、骨盤内に腹水(dの矢印)を伴っています。(出典:Ikejima et al. Jpn J Radiol 2025, Figure 4, CC BY 4.0)
症例 50代男性 胃・小腸アニサキス症

引用:Ikejima et al. Jpn J Radiol 2025(Figure 3)(CC BY 4.0)
前日からの腹痛で救急受診した55歳男性。冠状断で胃の浮腫状の壁肥厚と周囲脂肪の濃度上昇(aの矢印)があり、回盲部の小腸・大腸にも同じような浮腫状の壁肥厚と脂肪濃度上昇が見られます(b・cの矢印)。上部消化管内視鏡でアニサキス虫体が見つかり、摘出されました(dの矢印)。(出典:Ikejima et al. Jpn J Radiol 2025, Figure 3, CC BY 4.0)
治療と経過
- 胃アニサキス症:内視鏡で虫体を確認し、取り除くのが基本です(Hochberg 2010)。
- 小腸アニサキス症:19例中18例が保存的治療で、入院後7日以内に症状がおさまりました。手術になったのは腸の虚血が疑われた1例でした(Lee 2014)。
CTでアニサキス症を示唆できれば、不要な手術を避けることにつながるとされています(Lee 2014)。
医療者向け:読影のチェックポイント
- 急性腹症で、限局した胃または回腸の強い粘膜下浮腫+腹水+脂肪濃度上昇(Shibata 2014)。
- 小腸では閉塞を伴うが、内腔は保たれ、遠位側の液体貯留がヒント(Shibata 2014)。
- 胃と腸に同時に病変があることもある(複数部位:Fornell-Perez 2023で28%)。
- 所見があれば、レポートに「生の魚介の摂取歴の確認」を添える。
心配なとき、次にすること
生の魚介を食べたあとに強い腹痛、吐き気、嘔吐が出た場合は、医療機関を受診してください。受診の際は、何を・いつ食べたかを伝えると診断の助けになります。治療の方針は主治医と相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. CTでアニサキスの虫そのものは見えますか?
A. CTで分かるのは主に虫がもぐりこんだ壁のむくみや腹水で、診断は食事歴や内視鏡、抗体検査と合わせて行います(Shibata 2014、Hochberg 2010)。
Q. 食べてから2日後に痛くなりました。アニサキスの可能性はありますか?
A. 小腸アニサキス症では、食べてから症状まで平均39時間(12〜120時間)でした(Shibata 2014)。時間がたっていても可能性はあるので、受診時に食事歴を伝えてください。
Q. 小腸アニサキスで腸閉塞になったら手術ですか?
A. 研究では多くが手術をせずに改善しています(Lee 2014)。ただし状態によって判断が変わるため、主治医の説明を聞いてください。
参考文献
- Shibata E, Ueda T, Akaike G, et al. CT findings of gastric and intestinal anisakiasis. Abdom Imaging. 2014;39(2):257-61. PubMed
- Lee JS, Kim BS, Kim SH, et al. Acute invasive small-bowel Anisakiasis: clinical and CT findings in 19 patients. Abdom Imaging. 2014;39(3):452-8. PubMed
- Chen Zhou ZH, Ayala Calvo G, Martínez Chamorro E, et al. Intestinal anisakiasis: CT imaging findings-a 10-year descriptive study in a single center. Emerg Radiol. 2023;30(5):621-627. PubMed
- Fornell-Perez R, Urizar-Gorosarri M, Martinez-Urabayen U, et al. Evaluation of imaging findings in gastrointestinal anisakiasis in emergency CT and ultrasound. Insights Imaging. 2023;14(1):187. PubMed
- Hochberg NS, Hamer DH. Anisakidosis: Perils of the deep. Clin Infect Dis. 2010;51(7):806-12. PubMed
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