
先に結論:偽性腸閉塞(pseudo-obstruction)は「詰まりがないのに腸閉塞の症状が出る」腸の運動障害。画像の役割は機械的な閉塞を除外し、合併症を探すこと
| 偽性腸閉塞 | 機械的腸閉塞 | |
|---|---|---|
| 原因 | 腸の神経・筋肉の働きの障害(強皮症など)、重い病気や手術のあと | 腸の内腔をふさぐ病変がある |
| 画像 | 腸が広がるが、ふさいでいる原因が見つからない | 拡張した腸と細い腸の境目(閉塞部)に原因がある |
| 治療の基本 | 手術は避け、栄養管理・減圧・原因への対応 | 原因に応じて治療 |
| 次にすること | 消化器内科・外科で、CTなどで閉塞部や合併症(虚血・穿孔)を確認 | |
偽性腸閉塞とは:2つのタイプ
慢性偽性腸閉塞(CIPO)
慢性偽性腸閉塞(chronic intestinal pseudo-obstruction:CIPO)は、内腔をふさぐ病変がないのに、腸閉塞の症状が続く、またはくり返す病気です(El-Chammas 2018)。腸の神経や平滑筋の病気、自律神経の障害などが原因になり(El-Chammas 2018)、原因不明の一次性と、全身の病気に伴う二次性があります。消化管の運動障害の中で最も重い型とされます(Downes 2018)。
急性大腸偽性腸閉塞(Ogilvie症候群)
急性大腸偽性腸閉塞(acute colonic pseudo-obstruction:ACPO、Ogilvie症候群)は、入院中の重い病気や手術のあとに、機械的な閉塞がないまま大腸が大きく広がる状態です(Saunders 2007)。
原因:強皮症など
強皮症(全身性強皮症:皮膚や内臓が硬くなる膠原病)では、消化管のどこにでも病変が起こり、腸の運動障害、吸収障害、細菌の異常増殖、偽性腸閉塞、まれに腸管気腫症などがみられます(Vischio 2010)。
オーストラリアの強皮症1,969人の研究では、偽性腸閉塞は70人(3.56%)に起こり、罹病期間が長いこと、腸の運動障害、小腸の細菌異常増殖などと関連していました(Ross 2025)。
ほかに、アミロイドーシスや腫瘍に伴う神経の障害(傍腫瘍症候群)も原因になります(Pamarthy 2020)。
CT・X線所見:機械的腸閉塞との違い
偽性腸閉塞の診断では、まず機械的な閉塞を除外することが出発点です(Downes 2018)。腸閉塞のレントゲンの基本はイレウス・腸閉塞のレントゲン所見、CTで閉塞部を探す考え方は小腸閉塞のCT画像所見とキャリバーチェンジで解説しています。
どこが広がるかは原因で違う
偽性腸閉塞100例(強皮症55例、アミロイドーシス27例、傍腫瘍症候群18例)の比較では、拡張の分布に差がありました(Pamarthy 2020)。
| 原因 | 小腸だけ拡張 | 大腸だけ拡張 |
|---|---|---|
| 強皮症 | 79% | 2% |
| アミロイドーシス | 40% | 44% |
| 傍腫瘍症候群 | 44% | 44% |
強皮症では小腸の拡張が主体で、女性に多く(71%)、嘔吐・下痢・体重減少が目立ちました(Pamarthy 2020)。
強皮症の腸管気腫とフリーエアー
強皮症では、腸の壁の中にガスがたまる腸管気腫症や、穿孔がないのに腹腔内にガスが出る良性の気腹がみられることがあり、腹膜炎の症状がなければ消化管穿孔と区別することが重要です(Vischio 2010)。詳しくは腸管気腫症のCT画像診断、フリーエアーの消化管穿孔以外の原因を参考にしてください。
Ogilvie症候群では「境目」があっても油断しない
Ogilvie症候群のCTでは、拡張した腸とつぶれた腸の間にくっきりした境目(cut-off)が見えることが多く、そのため大腸の器質的な閉塞を除外する必要があるとされています(Pereira 2015)。
症例 50歳代男性 Ogilvie症候群(急性大腸偽性腸閉塞)

引用:Radiopaedia(Ogilvie syndrome)
大腸が全体に拡張しており、右下腹部の盲腸がとくに大きく膨らんでいます。症例ページでは盲腸の径は約12.5cmで、口腔がんの手術後2日目に腹痛と腹部膨満で見つかり、内視鏡による減圧とネオスチグミンで改善したと記載されています。
心配な場合:盲腸の径と期間
Ogilvie症候群では、盲腸の径が12cmを超え、拡張が6日以上続くと穿孔の危険が高まり、虚血や穿孔を起こした場合の死亡率は約40%と報告されています(Saunders 2007)。そのため評価では虚血や穿孔のサインを探すことが求められます(Saunders 2007)。手術は、内科的な治療が効かない場合や穿孔が疑われる場合の最後の選択肢とされています(Pereira 2015)。大腸が急に拡張する別の病気として中毒性巨大結腸症も区別が必要です(Saunders 2007)。
治療と次にすること
CIPOの診断では、機械的閉塞の除外に加えて、二次性の原因を探すことと、栄養障害や小腸の細菌異常増殖などの合併症を早く見つけて治療することが求められます。治療は特別な方法が限られ、栄養と電解質の維持、腸の動きを助けることが中心で、手術は慎重に選んだ人に限るとされます(Downes 2018)。多くの人が経腸栄養や静脈栄養の支援を必要とし、診断には画像に加えて消化管内圧検査(マノメトリー)、ときに腸の全層生検が必要になります(El-Chammas 2018)。Ogilvie症候群では、支持療法と、必要に応じて薬や大腸内視鏡による減圧が行われます(Saunders 2007)。
気になる症状があれば医療機関を受診してください。治療方針は主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 偽性腸閉塞は手術で治りますか?
詰まっている場所がないため、手術で原因を取り除くことはできません。CIPOでは手術は避け、慎重に選んだ人に限るとされています(Downes 2018)。
Q2. 強皮症の人はみんな偽性腸閉塞になりますか?
いいえ。大規模な研究で偽性腸閉塞が起こったのは3.56%でした(Ross 2025)。お腹の張りや嘔吐が続くときは早めに相談してください。
Q3. CTで閉塞部がはっきりしないと言われました。
偽性腸閉塞では閉塞の原因が見つからないことが特徴ですが、逆にOgilvie症候群では境目が見えることもあります(Pereira 2015)。臨床経過と合わせて判断されます。
参考文献
- Downes TJ, Cheruvu MS, Karunaratne TB, et al. Pathophysiology, Diagnosis, and Management of Chronic Intestinal Pseudo-Obstruction. J Clin Gastroenterol. 2018;52(6):477-489. PubMed
- El-Chammas K, Sood MR. Chronic Intestinal Pseudo-obstruction. Clin Colon Rectal Surg. 2018;31(2):99-107. PubMed
- Pamarthy R, Berumen A, Breen-Lyles M, et al. Comparing Clinical, Imaging, and Physiological Correlates of Intestinal Pseudo-Obstruction: Systemic Sclerosis vs Amyloidosis and Paraneoplastic Syndrome. Clin Transl Gastroenterol. 2020;11(8):e00206. PubMed
- Ross L, Lin L, Hansen D, et al. Prevalence, clinical characteristics, and hospital course of systemic sclerosis-associated pseudo-obstruction. Clin Rheumatol. 2025;44(11):4541-4551. PubMed
- Vischio J, Matlyuk-Urman Z, Lakshminarayanan S. Benign spontaneous pneumoperitoneum in systemic sclerosis. J Clin Rheumatol. 2010;16(8):379-81. PubMed
- Saunders MD. Acute colonic pseudo-obstruction. Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2007;21(4):671-87. PubMed
- Pereira P, Djeudji F, Leduc P, et al. Ogilvie’s syndrome-acute colonic pseudo-obstruction. J Visc Surg. 2015;152(2):99-105. PubMed
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