
先に結論:胆石イレウスは「胆石が胆嚢から腸へ移動して詰まる腸閉塞」。CTで三徴(胆道内ガス・小腸閉塞・異所性胆石)を探し、胆石が見えにくい場合も想定して読む
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 胆嚢と腸の間に瘻孔ができ、胆石が腸管内へ入って閉塞を起こす。高齢の女性に多い |
| 詰まる場所 | 小腸の末端に近い回腸が多い。十二指腸に詰まって胃の出口をふさぐものはBouveret(ブーブレ)症候群 |
| CTの所見 | Riglerの三徴(胆道内ガス・小腸閉塞・異所性胆石)。腹部X線より、CTのほうが三徴をそろって捉えやすい |
| 注意点 | 胆石が周囲と同じ濃さで見えにくいことがある。胆道内ガスは、ほかの原因でも見られる |
| 受診の目安 | 吐き気・嘔吐・おなかの張り・痛みが続くときは、早めに医療機関へ。高齢者では症状が目立たないこともある |
胆石イレウスとは
胆石イレウスは、胆石が小腸などの腸管の中で詰まり、腸の流れが止まる病気です。イレウスは腸閉塞のことで、「胆石で腸が詰まる」というのが名前の由来です。胆嚢の中にある胆石が、そのまま腸へ出ていくわけではありません。胆嚢と腸の壁がつながる異常な通り道ができて、はじめて胆石が腸の中へ入れます。
まれな病気ですが、高齢者の腸閉塞では無視できない原因です。過去に報告された1,001例の総説では、65歳を超える人の「絞扼(血流障害)を伴わない小腸閉塞」の25%を胆石イレウスが占めるとされています。死亡率は15〜18%と報告されていますが、これは病気そのものの重さだけでなく、持病のある高齢者に多いことが大きいと著者らは述べています(Reisner 1994)。古い集計である点には注意が必要です。
胆石をもつ人の大多数は一生、腸に落ちることなく過ごします。腸閉塞の一般的な画像診断は小腸閉塞(小腸イレウス)のCT所見で整理しています。
なぜ胆石が腸に落ちるのか:胆嚢十二指腸瘻ができる仕組み
胆石が長く胆嚢にとどまって炎症をくり返すと、胆嚢の壁が傷み、隣にある十二指腸などの壁と癒着します。そこに石の圧迫が加わると壁が少しずつ傷んで穴があき、胆嚢と腸が直接つながります。これが胆嚢腸瘻(胆嚢十二指腸瘻・胆嚢結腸瘻など)です。通り道ができると、胆石は胆汁といっしょに腸へ落ちていきます。
腸への出口ができたこと自体は、症状が乏しいことが多く、画像で見つかる前に気づかれないことが少なくありません。胆嚢腸瘻に関する総説でも、この瘻孔は症状に表れにくく、術前に診断するのは今でも難しいとされています(Liu 2022)。
| 段階 | 起こること | 画像で見えること |
|---|---|---|
| 1. 胆石と胆嚢炎 | 胆嚢の壁が炎症をくり返して傷む | 胆石、胆嚢壁の肥厚(急性胆嚢炎) |
| 2. 瘻孔の形成 | 胆嚢と十二指腸などの腸が癒着し、壁に穴があく | 胆嚢が小さく縮む、胆嚢と腸の境界がはっきりしない |
| 3. 胆石が腸へ移動 | 胆石と胆汁が腸の中へ入る。腸の空気が胆道へ逆流する | 胆道内ガス(胆道気腫)、胆嚢内のガス |
| 4. 腸で詰まる | 腸の細い場所で胆石が止まり、手前の腸が拡張する | 小腸の拡張、腸内の胆石(異所性胆石) |
どんな人に多いか:高齢の女性
胆石イレウスは高齢の女性に多い病気です。外科的に確かめられた27人のCT・X線・エコーを比べた報告では、23人が女性、年齢は58〜96歳(平均71.5歳)でした(Lassandro 2004)。再発した胆石イレウスのまとめ(56例)でも、87.3%が女性で、年齢の中央値は70歳でした(Alzerwi 2021)。ただし、これらは症例報告を集めた研究であり、集め方の偏りがある点は割り引いて読む必要があります。
高齢者では、腹痛や発熱が目立たず、吐き気や食欲低下だけで受診することもあります。胆石があると指摘されたことのある高齢の方が腸閉塞をきたしたら、この病気を思い出すことが大切です。
どこで詰まるか:回腸が多く、十二指腸ならBouveret症候群
胆石は、腸の細い場所で止まります。小腸の中でも、終わりに近い回腸の末端(回盲弁の手前)で詰まることが多いとされています。再発例のメタ解析では、最初に詰まった場所が回腸だった人は、再発時にも回腸で詰まる確率が高いという結果でした(Alzerwi 2021)。
| 詰まる場所 | 特徴 |
|---|---|
| 回腸(末端に近い所) | 典型的な胆石イレウス。小腸が手前で広がり、閉塞の手前までガスと液体がたまる |
| 空腸 | やや上流で詰まる。閉塞の位置で、拡張する小腸の長さが変わる |
| 十二指腸・胃の出口 | Bouveret症候群。胃から先へ食べ物が通らず、非胆汁性の嘔吐や上腹部痛が目立つ |
| 大腸(S状結腸など) | きわめてまれ。胆嚢と大腸がつながった場合 |
Bouveret症候群は、胆石が十二指腸に詰まって胃の出口をふさぐ、胆石イレウスのまれな型です。CTで、異所性の胆石・胃の出口の閉塞・胆嚢腸瘻を確認し、内視鏡検査も併せて診断します。31例をまとめた報告では、年齢は31〜92歳と幅広く、女性が多くを占めていました(Reese 2026)。
症例 回盲弁に嵌まった胆石による小腸閉塞のCT

引用:Orama Segarra CG et al. Cureus 2026;18(7):e112038 (Figure 2). CC BY 4.0 原典(PMC)
症例報告の図です。腹部CT(冠状断)で、回盲弁に嵌まった腸管内の胆石(赤矢印)と、その手前の胃・小腸の拡張(黄矢印)が示されています。胆石は、回腸末端で詰まる典型的な位置にあります。
CTの所見:Riglerの三徴と、腹部X線の限界
胆石イレウスの診断のカギは、Riglerの三徴です。
- 胆道内ガス(胆道気腫):本来は空気のない胆管や胆嚢の中に、腸の空気が入り込んでいる
- 小腸閉塞:小腸が拡張し、閉塞部で急に細くなる(移行帯)
- 異所性胆石:胆嚢以外の腸管内に見える胆石。多くは閉塞の先端にある
27人の胆石イレウスについて検査ごとの所見を比べた報告では、三徴がそろったのは、腹部X線で4人(14.8%)、エコーで3人(11.1%)、CTで21人(77.8%)でした。CTでは、小腸拡張が92.6%、胆道気腫が88.9%、異所性胆石が81.5%の人で見られたのに対し、X線では、異所性胆石は33.3%、胆道気腫は37.0%にとどまっています。X線は、小腸の拡張(88.9%)やニボー像(77.8%)など閉塞のサインを見つける検査として働き、原因の胆石まで示すのは難しいと報告されています(Lassandro 2004)。ニボー像などの見方は腹部X線の腸閉塞所見を参照してください。
| 検査 | 得意なこと | 限界 |
|---|---|---|
| 腹部X線 | 小腸の拡張とニボー像を見つける | 胆石や胆道気腫を示せないことが多い(三徴14.8%) |
| エコー | 胆嚢と胆道内ガスの評価(胆道内ガス55.6%) | 腸管ガスで腸内の胆石を捉えにくい(異所性胆石14.8%) |
| CT | 三徴を1回でそろって捉える(77.8%)。閉塞部位と原因を示す | 胆石が周囲と同じ濃さだと見えにくい |
数字は1施設の少数例(27人)の検討で、検査の施行条件も一定ではありません。それでも、この検討ではCTが最も多くの所見を示しました。腸閉塞の診断では、まず閉塞の有無、次に移行帯の位置と原因を順に探します。絞扼を伴う閉塞を見逃さないための見方は絞扼性腸閉塞のCTが参考になります。
症例 胆道気腫と小腸閉塞を示したCT

引用:Ji J et al. Clin Case Rep 2026;14(10):e73641 (Figure 1). CC BY 4.0 原典(PMC)
症例報告の図です。単純CT(横断像)で、(b)は左肝管内の斑状のガス(胆道気腫、白矢印)、(d)は小腸の拡張と液体貯留・ニボー像(赤丸、小腸閉塞)を示しています。(c)の総胆管の結石は別の所見で、この症例では腸内の胆石もCT冠状断で確認されています。
見えない胆石:等吸収の胆石に注意
異所性胆石が見えやすいのは、周囲の腸内容と濃さが違うときです。同じ報告では、CTで異所性胆石が見えたのは81.5%で、残りの約2割は指摘できませんでした(Lassandro 2004)。胆石は、成分によってCTの濃さが異なります。石灰化が強いものは白く見えますが、コレステロールが主体の胆石は、胆汁や腸内の液体と同じ濃さになることがあります。胆石の種類とCTの見え方は胆石の種類とCTで見える胆石・見えない胆石で解説しています。
そのため、小腸の閉塞部に石が見えなくても、次の点に注目します。
- 胆嚢が小さく縮んでいないか、胆嚢と十二指腸の間に瘻孔らしい連続がないか
- 胆道内ガスや胆嚢内ガスがないか
- 閉塞部の先端に、周囲の腸内容と少し違う濃さの丸い構造(外周が石灰化した石や、中央に低吸収の部分をもつ石)がないか
逆に、胆石に見える石のような構造が、胆石でない場合もあります。果物の種が回腸末端で詰まり、胆石イレウスに似た画像になった症例が報告されています。この症例では、胆道気腫も瘻孔もなく、内視鏡で種と確認されました(Pegoraro 2026)。胆道内ガスや瘻孔を伴わない場合は、食事歴の確認も欠かせません。
胆道気腫の他の原因との区別
胆道気腫は、胆石イレウスだけの所見ではありません。胆道内ガスがあるからといって、胆石イレウスと決めつけることはできません。
| 胆道内ガスの原因 | 区別のポイント |
|---|---|
| 胆嚢腸瘻(胆石イレウス) | 小腸閉塞と異所性胆石を伴う。胆嚢が縮んで腸と癒着していることが多い |
| 内視鏡的な乳頭の処置後 | 乳頭括約筋の処置(切開や拡張)を受けた人で見られる。乳頭の傷害が大きいほど胆道気腫が見られたとの報告がある(Chen 2026) |
| 胆道と腸をつなぐ手術後 | 手術歴で説明できる。腸閉塞を伴わなければ病的意味は乏しい |
| 気腫性胆嚢炎 | ガスは胆嚢の壁や内腔にあり、胆管の末梢に広がらない。急性の炎症を伴う(気腫性胆嚢炎) |
手術歴・内視鏡処置の既往を聞くことが、区別の第一歩です。胆石イレウスでは、腸閉塞があって、そこに異所性胆石か胆嚢腸瘻を認めることが診断の決め手になります。
治療の考え方(概略)
治療の中心は、腸の通過障害を解消することで、通常は手術で腸を切開して胆石を取り出します。ただし、持病のある高齢者が多いので、何をどこまで行うかは、全身状態を見て判断されます。
- 腸を切開して石だけを取り出す方法:手術の負担が小さい。再発はまれだが、胆嚢と瘻孔は残る
- 石の摘出に加えて胆嚢の切除と瘻孔の閉鎖を同時に行う方法:胆石の再発源を絶てるが、手術の負担が大きい
過去の報告をまとめた総説では、石の摘出だけの死亡率は11.7%、同時に胆嚢と瘻孔の処置も行う手術では16.9%で、石の摘出だけの再発は5%未満、胆道症状で再手術が必要になった人は約10%でした(Reisner 1994)。2000年以降の10研究・293人のメタ解析でも、術式の優劣についての見解は一致していないと整理されています(Vadher 2024)。Bouveret症候群では、専門家の間で、まず内視鏡による石の摘出が勧められていますが、31例のまとめでは内視鏡で摘出を試みた21例のうち摘出できたのは7例で、残りの14例は開腹手術になりました(Reese 2026)。どの方法を選ぶかは、患者さんの状態によって異なります。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 胆石があると、胆石イレウスになりますか?
多くの胆石は腸に落ちることなく、一生を過ごします。胆石イレウスは、胆嚢に炎症をくり返して腸と癒着し、瘻孔ができるというまれな経過をたどった場合にだけ起こります。胆石があると指摘されても、むやみに心配する必要はありません。気になる症状があれば、医療機関へ相談してください。
Q2. 腹部X線だけで診断できますか?
X線は小腸の拡張を見つけるのには役立ちますが、三徴がそろうのは27人中4人(14.8%)でした(Lassandro 2004)。胆石イレウスを疑うときは、CTが診断の中心になります。
Q3. CTで胆石が見えなければ、胆石イレウスではありませんか?
そうとは限りません。胆石の成分によっては、CTで周囲と同じ濃さになり、見えないことがあります。胆道気腫や胆嚢の変化など、ほかの手がかりも合わせて判断します。
Q4. 手術のあと、再発することはありますか?
石の摘出だけを行った場合の再発は5%未満と報告されています(Reisner 1994)。再発した例のまとめでは、再発までの期間の中央値は20.5日で、最初と同じ回腸で詰まる傾向がありました(Alzerwi 2021)。腹痛や嘔吐が戻ったときは、早めに受診してください。
あわせて読みたい:小腸閉塞(小腸イレウス)のCT所見
あわせて読みたい:妊娠中の腹痛・虫垂炎の画像検査、症状別・最初に受ける画像検査の早見表
参考文献
- Reisner RM, Cohen JR. Gallstone ileus: a review of 1001 reported cases. Am Surg. 1994;60(6):441-446. PubMed
- Lassandro F, Gagliardi N, Scuderi M, et al. Gallstone ileus analysis of radiological findings in 27 patients. Eur J Radiol. 2004;50(1):23-29. PubMed
- Alzerwi NAN, Idrees B, Alsareii S, et al. The Regularity of the Site of Impaction in Recurrent Gallstone Ileus: A Systematic Review and Meta-Analysis of Reported Cases. Can J Gastroenterol Hepatol. 2021;2021:5539789. PubMed
- Liu YY, Bi SY, He QR, et al. Developments in the Diagnosis and Management of Cholecystoenteric Fistula. J Invest Surg. 2022;35(11-12):1841-1846. PubMed
- Vadher D, Zacken A, Shah V, et al. The Rolling Stones: A Systematic Review and Meta-Analysis of the Management of Gallstone Ileus. Chirurgia (Bucur). 2024;119(5):483-514. PubMed
- Reese MS, Alkhatib S, Haynos PJ, et al. Bouveret Syndrome: A Systematic Review of Clinical Factors Associated With Surgical Management. Cureus. 2026;18(5):e108109. PubMed
- Pegoraro N, Bisi R, Cossu A, et al. Fruit pit mimicking gallstone ileus: A diagnostic pitfall on CT-Case report. Radiol Case Rep. 2026;21(8):3413-3418. PubMed
- Chen D, Li C, Peng Y, et al. Papillary Balloon Dilation Versus Sphincterotomy for Small Common Bile Duct Stones: Recurrence and Pneumobilia in a Retrospective Cohort. Dig Dis Sci. 2026 Oct 16 (Online ahead of print). PubMed
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