門脈内には通常ガスを認めません。

CT画像などで門脈内にガスを認めた場合、門脈ガス(門脈気腫)と表現されます。

この門脈ガス(門脈気腫)にはどのような原因があるのでしょうか?

またどのような画像所見になるのでしょうか?

今回は門脈ガスの原因・画像所見についてまとました。

門脈内ガス(portalvenous gas)の原因

  • 腸管虚血(動脈塞栓,静脈血栓)
  • 新生児壊死性腸炎
  • 臍動脈カテーテリゼーション
  • 消化管のガスによる膨隆(胃,小腸,大腸)
  • 消化管壁内ガス(気腫性胃炎,腸管気腫)
  • 腐食剤の誤飲(塩酸,不凍液)
  • 炎症性腸疾患患者の注腸,大腸ファイバー
  • 腸管への炎症の波及(胃腸炎,憩室炎,炎症性腸疾患,静脈炎を伴う腹部膿瘍)
  • ガス産生菌による敗血症 

門脈内ガスを見たら

まず、それって本当に門脈内ガス?胆管内ガス(pneumobilia)ではないかチェック。これらを間違えてはいけない。

  • 胆管内ガスは一次分枝など肝門部を中心に認められる。
  • 門脈内ガス肝臓の辺縁に細かい樹枝状に認められる。肝周囲から1−2cm以内にまでガスがあれば、門脈内ガスをまず考える。

流れる方向を考えると想像できる。つまり門脈内のガスは門脈の流れにそって奥へと運ばれるために肝の末梢にまで到達することである。ただし末梢に認められる肝内胆管ガスもあるので注意。

※ガスの枝分かれにも特徴があり、門脈内ガスは各枝が比較的スムーズにtaperingし、その角度が鋭角であるのに対し、胆管内ガスは各枝の径が不均一になりやすく、直角に近い枝分かれを示す。

次に、門脈内であれば、

  • IMV内ガス
  • 小腸壁内ガス

をチェックすると同時に、腸管虚血の可能性を考える。

症例 90歳代女性 小腸炎→壁内ガス→門脈内ガス

portalvenous gas

肝臓の門脈内ガスあり。

小腸炎を疑う所見および小腸壁内ガスあり。

造影不良な腸管は認めず。

小腸炎に伴う門脈内ガスをうたがう所見。


参考症例)70歳代男性 胆管癌術後(胆管内ガス(pneumobilia))

pneumobilia

 

胆管内ガス(pneumobilia)でも以下の症例のように肝のかなり末梢まで認められることもありますので、末梢=門脈ガスと判断しないようにしましょう。
参考症例② 80歳代男性 乳頭切開術の既往あり。

pneumobilia1

参考症例③ 70歳代男性 胆摘後

pneumobilia2

血管内ガスをみたら

  • 右心系ガス
  • 門脈ガス

なのかをチェック。

右心系ガスは、輸液ルートからや造影剤投与時の空気の混入胸骨圧迫などよって認められる。

輸液ルートからもしくは造影剤投与時の空気の混入の場合は、

  • ルート確保した同側の鎖骨下静脈から上大静脈、右心系や肺動脈に空気を認める。

ただし下肢から確保した場合は、腸骨静脈や下大静脈など。

胸骨圧迫の場合は、

  • 右心→内頸静脈→静脈洞→後頭蓋窩
  • 右心→下大静脈→肝静脈 へとガスの迷入が認められる。

輸液ルートから混入した静脈内の空気は肺動脈へ運ばれ、その大半は血管内で血液に溶解するか、肺胞内に排泄されるため、臨床的に問題となることは非常に少ない。

症例 60歳代男性

intravenousair

左腕頭静脈内にairを認めています。

ルート確保時もしくは造影剤投与時に混入した空気と考えられます。

 

参考文献:画像診断 Vol.39 No.11増刊号 2019 P59

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