「腸閉塞・イレウスがあるのか、ないのか。」

「緊急手術を要する腸閉塞・イレウスなのか、保存的に治療できる腸閉塞・イレウスなのか。」

 

医療の現場において、ここの判断は非常に難しいところです。

そこで今回は、放射線科専門医の立場から、腸閉塞・イレウスのCT画像診断について徹底的にまとめました。

腸閉塞・イレウスの分類は?

まず、腸閉塞・イレウスを細かく分類すると下のようになります。

小腸の腸閉塞はまず、

  • 機械性腸閉塞
  • 機能性腸閉塞

に大きく分けられます。

この違いは、簡単に言うと

  • 機械性腸閉塞:閉塞機転がある。→これを腸閉塞という。
  • 機能性腸閉塞:閉塞機転がない。→これのみをイレウスという。

ということです。

つまり、行き止まりがあるかないかで分けられるということです。

特に機械性腸閉塞が重要です。

機械性腸閉塞は上にあるように、

  • 単純性
  • 複雑性(絞扼性)

に分けられます。

この違いは、血流障害があるかどうかということです。

血流障害がある場合は、腸管虚血から腸管壊死へと進行し、敗血症から多臓器不全へとなり、最悪の場合、命に関わります。

ですので、腸閉塞のCT画像を読む上で何より大事なことは、複雑性(絞扼性)腸閉塞を見逃さないことです。

じゃあイレウスは何?

イレウスと腸閉塞は同義で使われることも過去にはありましたが、現在では、イレウスは上で見たように、閉塞機転を有さない機能性の腸閉塞にのみ用います。

その原因は、腹膜炎や膵炎などがあります。

実際の臨床でイレウスが見られる頻度は、閉塞機転を有する腸閉塞と比べるとかなり低いです。

腸閉塞のCT読影のチェックポイント・読み方は?

腸閉塞のCT画像を読影する上でのチェックポイントは以下のようになります。

step1 画像上、腸閉塞・イレウスを疑う所見はあるか?

CTやレントゲン画像を見て腸閉塞・イレウスを疑うような所見があるかをまずチェックします。

  • 小腸の2.5cm以上の拡張が連続している。(大腸の場合は6cm以上)
  • ニボー像を認めている。

これらいずれかの所見があれば腸閉塞・イレウスの可能性があります。

step2 その腸管拡張には閉塞機転はあるか?

腸管の拡張を認めたならば、その拡張を口側、肛門側に追っていき、閉塞機転があるかどうかをチェックします。

拡張した腸管が虚脱する境(これをtransition zoneとか、caliber changeと言います。)をくまなく探します。

復習ですが、

  • 閉塞機転がある=機械性腸閉塞
  • 閉塞機転がない=機能性腸閉塞

でした。

実際の症例を見てみましょう。

症例 50歳代女性 子宮全摘後

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こちらの症例も広汎な小腸腸閉塞を疑う所見を認めています。
上行・下行結腸には拡張を認めていません。

拡張した小腸を肛門側に追っていくと、閉塞機転を疑う部位があり、周囲には癒着所見を認めています。
術後の癒着性腸閉塞が疑われます。

少量の腹水貯留も見られます。腹水の分布も偏りがあり、これも癒着を示唆する所見です。

症例 20歳代男性 膵内分泌腫瘍術後

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続いての症例はいかがでしょうか?

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広範な小腸の拡張を認めており、結腸の拡張は見られませんでした。
この症例も小腸腸閉塞を疑う所見です。

拡張した腸管を肛門側に追っていくと、閉塞機転を認めました。
先ほどの症例と同様に、術後の癒着性腸閉塞が疑われました。

この症例の拡張した小腸の腸管の中が少し違うことはわかりますか?
黒い泡のようなものがたくさん見られます。

小腸内は通常は液貯留なのですが、小腸内に糞便が見られることがあり、これをsmall bowel feces signと言います。
これが見られると、その先に閉塞機転があることを示すサインとなります。
ここまで閉塞機転がある腸閉塞でした。続いての症例はいかがでしょうか?

症例 20歳代女性 腹痛

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こちらの症例は小腸の拡張に加えて、小腸の壁が肥厚して、造影効果が増強しています。

また腸間膜や大網の脂肪織濃度の混濁・上昇、さらには腹膜に一部肥厚所見を認めており、腹水の貯留を認めます。

腹膜炎による麻痺性イレウスを疑う所見です。

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虫垂に軽度腫大を認め、造影効果の増強を認めました。

虫垂炎があって、腹膜炎があるということは、まず穿孔を疑わなくてはなりません。

この症例も虫垂の先端で穿孔を伴っていました。

急性虫垂炎穿孔による腹膜炎、それに伴う麻痺性イレウスと診断されました。

イレウスの場合は、閉塞機転のある腸閉塞と比べると腸管の拡張がそれほど目立たないことが多い傾向にあります。

腸管の閉塞部位はどこか?

腸閉塞の多くは小腸腸閉塞なのですが、大腸にも腸閉塞を生じることがあります。

ですので、機械性腸閉塞を認めた場合、閉塞部位が小腸なのか、それとも大腸なのかもチェックが必要です。

そのチェックの方法は以下の通りです。

ポイントは、閉塞機転があれば、その口側の腸管が拡張するということです。

小腸(〜十二指腸、胃)のみに拡張があれば、小腸に閉塞機転があることになります。

大腸のみあるいは、小腸にも大腸にも拡張があれば、閉塞機転は大腸にあることになります。

その目で、閉塞機転を探しに行くことが重要です。

拡張しているのが大腸なのか小腸なのかの判断は?

小腸が拡張しているのか、大腸が拡張しているのか、両方拡張しているのか一見わかりにくい時があります。

その場合は、上行結腸、下行結腸、直腸は後腹膜に通常固定されているので、これらにヒントに全結腸は追うことが基本的にできます。

colon-ct-findings-doc2

ですので、直腸から口側に全結腸を追いかけて、拡張の有無をチェックします。

普段から全結腸を追うクセをつけておくことが大切です。

大腸腸閉塞の原因は?

大腸が狭窄、閉塞する原因は小腸と比べて限られており、

  • 大腸癌(最多)
  • 憩室炎
  • 軸捻転(S状結腸軸捻転など)
  • 糞便
  • 異物 など

が挙げられます。

大腸の場合、小腸と比べて、大腸の閉塞に血行障害をきたすことは少ないとされています。

また、大腸が閉塞を起こすと、口側の腸管が拡張することが多いが、時に虚血性腸炎様の3層構造を保った腸管浮腫をきたすことがあり、これを閉塞性腸炎と言います。

では、大腸腸閉塞の症例を見てみましょう。

症例 60歳代 男性

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結腸はS状結腸の一部を除き、全域にわたり拡張を認めています。
大腸イレウスを疑う所見です。

閉塞機転をS状結腸に認めており、S状結腸には不整な壁肥厚を認めています。
S状結腸癌による大腸腸閉塞が疑われ手術が施行されました。

手術の結果S状結腸癌と判明しました。

さて、ここまで長くなりましたが、本当に重要なのはこれからです。

 

step3 機械性腸閉塞の場合、複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見はあるか?

機械性腸閉塞の場合、先ほど述べたように複雑性(絞扼性)腸閉塞の拾い上げが最も重要でした。

ですので、複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見があるかどうかをチェックします。

複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見とは?

複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見は以下のようなものがあります。

特異度の高い所見
  • 腸管壁内ガスおよび門脈内ガス(嚢腫状腸管気腫症との区別が必要。)
  • 腸管壁の造影効果の減弱または欠損(単純CTとの比較が重要。)
  • 腸管の不整な嘴状所見(beak sign)
絞扼が示唆される所見
  • 大量の腹水
  • 腸間膜血管の異常走行(SMAとSMVの逆転や、whirl sign、1箇所への血管集中など)
  • 腸間膜血管のびまん性拡張
  • 腸間膜脂肪の浸潤像(dirty fat sign)
  • 局所的な腸管の造影効果持続
  • 単純CTでの腸管壁の高吸収
  • ヘルニア嚢内の液体貯留(ヘルニア水)
    (わかる! 役立つ! 消化管の画像診断 P207 絞扼性イレウスの診断より引用改変)

これらの所見を認めた場合は、複雑性(絞扼性)腸閉塞の可能性がありますので、消化器外科にコンサルトし、緊急手術をする必要があります。

これらの所見は必ずしも認めるわけではなく組み合わせ、前後の腸管の関係を見ながら判断する必要があります。

そこが腸閉塞の画像診断の難しいところでもあります。

症例 50歳代男性 腹痛

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腸管の一部が拡張して、著明な浮腫性変化、脂肪織濃度上昇を認めています。

そしてこれらが塊となり、前方で出ている様子がわかります。

冠状断像をだとその様子がさらによくわかります。

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大網裂孔ヘルニア(内ヘルニア)による絞扼性腸閉塞と診断され、手術となりました。

腸管壊死には至っておらず、内ヘルニアの解除のみで、腸切除は行われませんでした。

症例 80歳代女性 腹痛

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この症例でもclosed loopを疑う所見を認めています。

  • 腸間膜の著明な浮腫
  • beak sign
  • 単純CTなのに壁が高吸収に見える。

といった絞扼性腸閉塞を疑う所見が揃っています。

closed-loop-ct-findings7

手術の結果、右卵巣と小腸間膜がヒモ状に癒着しており、そこに1.5mほどの小腸が嵌頓しました。
索状物が入り込んだ内ヘルニアと診断されました。

腸管は壊死を認めており、腸管切除が行われました。

症例 50歳代女性 腹痛、嘔吐。虫垂炎の手術歴あり。

closed-loop-ct-findings8

回盲部に

  • beak sign

を認めています。またClosed loopの形成が見られ、絞扼性腸閉塞と診断されて、手術となりました。

手術にて、索状物が回腸末端に癒着し、それにより、回腸末端〜口側20cmまでの小腸が絞扼していました。腸管切除が行われました。

症例 30歳代男性 Hirshusprung病で手術歴あり。

whirl-sign

この症例においてもclosed loopを形成していました。

また、典型的な渦巻きのような

  • Whirl sign

を認めています。

絞扼性腸閉塞と診断され、手術となりました。

手術の結果、腸間膜が180度回転しており、腸間膜捻転を認めていました。

こちらの症例も、腸管壊死には至っておらず、捻転が解除され、癒着を剥離し、腸切除は行われませんでした。

複雑性(絞扼性)腸閉塞を診断する上で重要なclosed loopとは?

複雑性(絞扼性)腸閉塞を診断する上で、絶対に押さえておかないといけないのがこのclosed loopです。

closed loopには以下のような特徴があります。

  • 2か所以上で腸管が狭窄閉塞して形成されるU字あるいはC字型に放射状に広がる閉鎖腸管ループ。
  • 閉塞部位では、くちばし状所見(beak sign)、渦巻き状所見(whirl sign)などを認めることがある。
  • 小腸は液体で満たされた腸管loopとしてCT上描出される。(大腸のclosed loopはcoffee bean状に拡張することが多い。)

文字で見るより、イラストで見た方がわかりやすいと思います。

ここでは索状物によりclosed loopがつくられる様子を表してみました。

closed-loop-figure

左のイラスト:手術歴などでできた索状物があります。

真ん中のイラスト:ここを何らかの理由で腸管がくぐります。

右のイラスト:すると、腸管と腸間膜は出られなくなります。closed loopの完成です。

締め付けられることにより、静脈が戻れなくなり、腸管や腸間膜には浮腫をきたします。

できたclosed loopを詳しく見てみましょう。

まず索状物から肛門側の腸管は拡張する理由がありませんので、虚脱したままです。

逸脱した腸管及び腸間膜(closed loop)の部分は腸管の拡張、壁肥厚、浮腫性変化を示し、索状物との境界ではbeak signを作ります。

また索状物より口側の腸管は、索状物が行き止まりとなり、拡張します。
この部位にもbeak signが作られることになります。

このように、closed loopを作る場合には、3つのbeak signができることになります。

closed loopの原因は?

どのようにしてclosed loopができるのか、またclosed loopはどのようなものかはご理解いただけたと思います。

先ほどは索状物が原因となるclosed loopをイラストで示しました。

closed loopができてしまう原因には以下のものがあります。

closed-loop1

さらに細かく見ていくと次のようになります。

closed-loop-figure1

 

シェーマはいずれもここまでわかる急性腹症第2版を引用改変。

これだけ見ると気が滅入ると思いますが、術前にはclosed loopの原因がはっきりしないことは多々あります。

大事なのはclosed loopの原因よりも、closed loopが存在することを診断することです。

症例 60歳代 女性

腹部単純CT 冠状断像

ちょっと見慣れない冠状断像ですが、closed loopがこちらの方が見やすいので冠状断像を提示します。

closed-loop-ct-findings1

  • closed loop
  • 拡張した口側腸管
  • 虚脱した肛門側腸管

に色をつけると下のようになります。

closed-loop-ct-findings3

この症例を色つきで実際のCT画像を見てみる。

この冠状断像を動画で見ると次のようになります。

この症例を横断像含めて解説しました。

手術の結果、小腸間膜に穴(異常裂孔)が空いており、ここに腸管が入り込みありました。

腸管は壊死には陥っておらず、ヘルニアの解除のみを施行しました。

小腸の小腸間膜欠損部への内ヘルニアと診断されました。

この症例で、closed loopをご理解いただけたと思います。
またその原因を当てるのは難しいことが多いこともご理解いただけたと思います。

最後に

腸閉塞・イレウスのCT画像診断について現時点での知識とパワーを全てつぎ込んで、イラストレーターにもご協力いただき、徹底的にまとめてみました。

マニアックな内ヘルニアの細かい名称を術前に画像で診断できることよりも、絞扼性腸閉塞を見逃さないことが大事です。(と自分にも言い聞かせています。)

医療の現場において、

  • やばい腸閉塞(手術が必要)か
  • やばくない腸閉塞(保存的に加療が可能)か

を見極めることはしばしば困難なこともあります。

拡張した腸管を丁寧に追っていく習慣をつけて、やばい腸閉塞に特徴的な所見を見落とさないように典型的な症例を目に焼き付けておくことが大事です。

この記事がそのお役に立てられれば幸いです。

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