「腸閉塞・イレウスがあるのか、ないのか。」

「緊急手術を要する腸閉塞・イレウスなのか、保存的に治療できる腸閉塞・イレウスなのか。」

 

医療の現場において、ここの判断は非常に難しいところです。

そこで今回は、放射線科専門医の立場から、腸閉塞・イレウスのCT画像診断について詳しくまとめました。

先に結論:腸閉塞(イレウス)のCTで見るポイント

  • 言葉の整理:腸が詰まる原因(閉塞機転)があるものが腸閉塞(機械性)、原因がなく腸の動きが止まるものがイレウス(機能性:腹膜炎・術後など)です
  • 小腸の腸閉塞は手術後の癒着が最多、大腸の腸閉塞は大腸がんが最多です。CTでは拡張した腸を肛門側へたどり、太さが急に変わる場所(閉塞部位)と原因を探します
  • 最も大事なのは、血流障害を伴う絞扼性腸閉塞を見逃さないことです。closed loop(2か所でしめつけられた腸)・beak sign・whirl sign・腸間膜の浮腫や腹水・腸の壁の造影不良があれば、緊急手術を考えます
  • CTを読む順序は①閉塞があるか → ②小腸か大腸か(部位) → ③原因(癒着・ヘルニア・腫瘍・軸捻転) → ④絞扼がないかです。外ヘルニアの嵌頓、内ヘルニア、軸捻転は、癒着では説明のつかないときに疑い、いずれも絞扼になりやすいため、最後に④を確認する、という流れで整理できます(下の節)
  • 拡張した腸と虚脱した腸の境目をcaliber change(transition zone)と呼びます。小腸の中に便のような内容物が見えるsmall bowel feces signは、この境目の近くに見られやすく、閉塞部位を探す手がかりになります

※お腹が張って吐く・強い腹痛が続くときは、すぐに受診してください。

腸閉塞・イレウスの分類は?

まず、腸閉塞・イレウスを細かく分類すると下のようになります。

小腸の腸閉塞はまず、

  • 機械性腸閉塞
  • 機能性腸閉塞

に大きく分けられます。

この違いは、簡単に言うと

  • 機械性腸閉塞:閉塞機転がある。→これを腸閉塞という。
  • 機能性腸閉塞:閉塞機転がない。→これのみをイレウスという。

ということです。

つまり、行き止まりがあるかないかで分けられるということです。

特に機械性腸閉塞が重要です。

機械性腸閉塞は上にあるように、

  • 単純性
  • 複雑性(絞扼性)

に分けられます。

この違いは、血流障害があるかどうかということです。

血流障害がある場合は、腸管虚血から腸管壊死へと進行し、敗血症から多臓器不全へとなり、最悪の場合、命に関わります。

ですので、腸閉塞のCT画像を読む上で何より大事なことは、複雑性(絞扼性)腸閉塞を見逃さないことです。

じゃあイレウスは何?

イレウスと腸閉塞は同義で使われることも過去にはありましたが、現在では、イレウスは上で見たように、閉塞機転を有さない機能性の腸閉塞にのみ用います。

その原因は、腹膜炎や膵炎などがあります。

実際の臨床でイレウスが見られる頻度は、閉塞機転を有する腸閉塞と比べるとかなり低いです。

正しいものを一つ選べ。

  • 閉塞機転を有する腸管拡張をイレウスという
  • 腸管が拡張していたらイレウスと診断する
  • イレウスは閉塞機転を有さない機能性の腸閉塞にのみ用いる用語である。

正解!

不正解...

正解はイレウスは閉塞機転を有さない機能性の腸閉塞にのみ用いる用語である。です。

腸管拡張を見たらすぐにイレウスとしてはNGです。

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腸閉塞のCT読影のチェックポイント・読み方は?

腸閉塞のCT画像を読影する上でのチェックポイントは以下のようになります。

step1 画像上、腸閉塞・イレウスを疑う所見はあるか?

CTやレントゲン画像を見て腸閉塞・イレウスを疑うような所見があるかをまずチェックします。

  • 小腸の2.5cm以上の拡張が連続している(Fukuya 1992)。(大腸はより太い径で拡張と判断します)
  • ニボー像を認めている。

これらいずれかの所見があれば腸閉塞・イレウスの可能性があります。

step2 その腸管拡張には閉塞機転はあるか?

腸管の拡張を認めたならば、その拡張を口側、肛門側に追っていき、閉塞機転があるかどうかをチェックします。

拡張した腸管が虚脱する境(これをtransition zoneとか、caliber changeと言います。)をくまなく探します。

caliber change(transition zone)とは?見つけ方のコツ

caliber changeは、口側の拡張した腸管と、肛門側の虚脱した腸管が切り替わる場所です。ここに閉塞の原因(癒着・ヘルニア・腫瘍・closed loopなど)があります。

  • 横断像だけでなく冠状断・矢状断も使って、拡張した腸管を1本ずつ肛門側へたどる
  • 小腸内の便のような内容物(small bowel feces sign)を見つけたら、その先を重点的に探す。小腸閉塞34例のうち19例(55.9%)にみられ、すべて閉塞部までたどることができたと報告されています(Lazarus 2004)。癒着性小腸閉塞のCTでも37.1%にみられ、多くはtransition zoneに位置していました(Khaled 2018)
  • 境目に腫瘤がなく、腸管がくちばし状に細くなるだけなら癒着(索状物)を、壁肥厚や腫瘤があれば腫瘍や炎症を考える
  • 境目が2か所あり、その間の腸管が拡張しているときはclosed loopを疑い、step3の所見を確認する
  • はっきりした境目がなく、小腸も大腸もびまん性に拡張しているときは、麻痺性イレウスを考える

復習ですが、

  • 閉塞機転がある=機械性腸閉塞
  • 閉塞機転がない=機能性腸閉塞

でした。

正しいものを一つ選べ。

  • 閉塞機転がある腸閉塞を機械性腸閉塞という
  • 閉塞機転がある腸閉塞をイレウスという
  • 閉塞機転がある腸閉塞を機能性腸閉塞という

正解!

不正解...

正解は閉塞機転がある腸閉塞を機械性腸閉塞というです。

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実際の症例を見てみましょう。
症例 50歳代女性 子宮全摘後

ileus-ct-findings4

こちらの症例も広汎な小腸腸閉塞を疑う所見を認めています。
上行・下行結腸には拡張を認めていません。

拡張した小腸を肛門側に追っていくと、閉塞機転を疑う部位があり、周囲には癒着所見を認めています。
術後の癒着性腸閉塞が疑われます。

少量の腹水貯留も見られます。腹水の分布も偏りがあり、これも癒着を示唆する所見です。

症例 20歳代男性 膵内分泌腫瘍術後

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続いての症例はいかがでしょうか?

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広範な小腸の拡張を認めており、結腸の拡張は見られませんでした。
この症例も小腸腸閉塞を疑う所見です。

拡張した腸管を肛門側に追っていくと、閉塞機転を認めました。
先ほどの症例と同様に、術後の癒着性腸閉塞が疑われました。

この症例の拡張した小腸の腸管の中が少し違うことはわかりますか?
黒い泡のようなものがたくさん見られます。

小腸内は通常は液貯留なのですが、小腸内に糞便が見られることがあり、これをsmall bowel feces signと言います。
これが見られると、その先に閉塞機転があることを示すサインとなります。

その先に閉塞機転があることを示唆する小腸内に残渣を認める重要なサインの名前は?

  • dirty mass sign
  • beak sign
  • small bowel feces sign

正解!

不正解...

正解はsmall bowel feces signです。

beak signも閉塞機転を示唆する所見ですが、小腸内に残渣があることを意味するわけではありません。dirty mass signは下部消化管穿孔で糞便が腸管外に出ている時に使う用語です。

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ここまで閉塞機転がある腸閉塞でした。続いての症例はいかがでしょうか?
症例 20歳代女性 腹痛

ileus-ct-findings5

こちらの症例は小腸の拡張に加えて、小腸の壁が肥厚して、造影効果が増強しています。

また腸間膜や大網の脂肪織濃度の混濁・上昇、さらには腹膜に一部肥厚所見を認めており、腹水の貯留を認めます。

腹膜炎による麻痺性イレウスを疑う所見です。

ileus-ct-findings6

虫垂に軽度腫大を認め、造影効果の増強を認めました。

虫垂炎があって、腹膜炎があるということは、まず穿孔を疑わなくてはなりません。

この症例も虫垂の先端で穿孔を伴っていました。

急性虫垂炎穿孔による腹膜炎、それに伴う麻痺性イレウスと診断されました。

イレウスの場合は、閉塞機転のある腸閉塞と比べると腸管の拡張がそれほど目立たないことが多い傾向にあります。

腸管の閉塞部位はどこか?

腸閉塞の多くは小腸腸閉塞なのですが、大腸にも腸閉塞を生じることがあります。

ですので、機械性腸閉塞を認めた場合、閉塞部位が小腸なのか、それとも大腸なのかもチェックが必要です。

そのチェックの方法は以下の通りです。

ポイントは、閉塞機転があれば、その口側の腸管が拡張するということです。

小腸(〜十二指腸、胃)のみに拡張があれば、小腸に閉塞機転があることになります。

大腸のみあるいは、小腸にも大腸にも拡張があれば、閉塞機転は大腸にあることになります。

その目で、閉塞機転を探しに行くことが重要です。

拡張しているのが大腸なのか小腸なのかの判断は?

小腸が拡張しているのか、大腸が拡張しているのか、両方拡張しているのか一見わかりにくい時があります。

その場合は、上行結腸、下行結腸、直腸は後腹膜に通常固定されているので、これらをヒントに全結腸を追うことが基本的にできます。

colon-ct-findings-doc2

ですので、直腸から口側に全結腸を追いかけて、拡張の有無をチェックします。

普段から全結腸を追うクセをつけておくことが大切です。

大腸腸閉塞の原因は?

大腸が狭窄、閉塞する原因は小腸と比べて限られており、

  • 大腸癌(最多)
  • 憩室炎
  • 軸捻転(S状結腸軸捻転など)
  • 糞便
  • 異物 など

が挙げられます。

大腸の場合、小腸と比べて、大腸の閉塞に血行障害をきたすことは少ないとされています。

また、大腸が閉塞を起こすと、口側の腸管が拡張することが多いが、時に虚血性腸炎様の3層構造を保った腸管浮腫をきたすことがあり、これを閉塞性腸炎と言います。

大腸の腸閉塞で最も多い原因は?

  • 軸捻転
  • 大腸癌
  • 癒着
  • 憩室炎

正解!

不正解...

正解は大腸癌です。

小腸の腸閉塞と異なり、大腸の腸閉塞の原因で最も多いのは大腸癌です。大腸の腸閉塞をみたら腫瘍があるのではないか?と探すようにしましょう。

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では、大腸腸閉塞の症例を見てみましょう。
症例 60歳代 男性

colon-ileus-due-to-sigmoid-cancer-ct-findings

結腸はS状結腸の一部を除き、全域にわたり拡張を認めています。
大腸の腸閉塞を疑う所見です。

閉塞機転をS状結腸に認めており、S状結腸には不整な壁肥厚を認めています。
S状結腸癌による大腸腸閉塞が疑われ手術が施行されました。

手術の結果S状結腸癌と判明しました。

さて、ここまで長くなりましたが、本当に重要なのはこれからです。

 

step3 機械性腸閉塞の場合、複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見はあるか?

機械性腸閉塞の場合、先ほど述べたように複雑性(絞扼性)腸閉塞の拾い上げが最も重要でした。

ですので、複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見があるかどうかをチェックします。

複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見とは?

複雑性(絞扼性)腸閉塞を疑う所見は以下のようなものがあります。

特異度の高い所見
  • 腸管壁内ガスおよび門脈内ガス(嚢腫状腸管気腫症との区別が必要。)
  • 腸管壁の造影効果の減弱または欠損(単純CTとの比較が重要。)
  • 腸管の不整な嘴状所見(beak sign)
絞扼が示唆される所見
  • 大量の腹水
  • 腸間膜血管の異常走行(SMAとSMVの逆転や、whirl sign、1箇所への血管集中など)
  • 腸間膜血管のびまん性拡張
  • 腸間膜脂肪の浸潤像(dirty fat sign)
  • 局所的な腸管の造影効果持続
  • 単純CTでの腸管壁の高吸収
  • ヘルニア嚢内の液体貯留(ヘルニア水)
    (わかる! 役立つ! 消化管の画像診断 P207 絞扼性腸閉塞の診断より引用改変)

これらの所見を認めた場合は、複雑性(絞扼性)腸閉塞の可能性がありますので、消化器外科にコンサルトし、緊急手術をする必要があります。世界救急外科学会のBolognaガイドライン(2017年改訂)では、癒着性小腸閉塞の多くは保存的治療が有効である一方、腹膜炎・絞扼・虚血は保存的治療の禁忌とされています。癒着が原因か確かでないときや、これらの禁忌が疑われるときは、CTが第一選択の検査です。

これらの所見はすべてそろうわけではなく、組み合わせ、前後の腸管の関係を見ながら判断する必要があります。メタ解析では、腸管壁の造影効果低下が絞扼(虚血)に対して最も特異度が高く(約95%)、逆に腸間膜の液体貯留がなければ絞扼の可能性はかなり下がると報告されています。

そこが腸閉塞の画像診断の難しいところでもあります。

症例 50歳代男性 腹痛

closed-loop-ct-findings4

腸管の一部が拡張して、著明な浮腫性変化、脂肪織濃度上昇を認めています。

そしてこれらが塊となり、前方で出ている様子がわかります。

冠状断像だとその様子がさらによくわかります。

closed-loop-ct-findings5

大網裂孔ヘルニア(内ヘルニア)による絞扼性腸閉塞と診断され、手術となりました。

腸管壊死には至っておらず、内ヘルニアの解除のみで、腸切除は行われませんでした。

症例 80歳代女性 腹痛

closed-loop-ct-findings6

この症例でもclosed loopを疑う所見を認めています。

  • 腸間膜の著明な浮腫
  • beak sign
  • 単純CTなのに壁が高吸収に見える。

といった絞扼性腸閉塞を疑う所見が揃っています。

closed-loop-ct-findings7

手術の結果、右卵巣と小腸間膜がヒモ状に癒着しており、そこに1.5mほどの小腸が嵌頓していました。
索状物が入り込んだ内ヘルニアと診断されました。

腸管は壊死を認めており、腸管切除が行われました。

症例 50歳代女性 腹痛、嘔吐。虫垂炎の手術歴あり。

closed-loop-ct-findings8

回盲部に

  • beak sign

を認めています。またClosed loopの形成が見られ、絞扼性腸閉塞と診断されて、手術となりました。

手術にて、索状物が回腸末端に癒着し、それにより、回腸末端〜口側20cmまでの小腸が絞扼していました。腸管切除が行われました。

症例 30歳代男性 Hirschsprung病で手術歴あり。

whirl-sign

この症例においてもclosed loopを形成していました。

また、典型的な渦巻きのような

  • Whirl sign

を認めています。

絞扼性腸閉塞と診断され、手術となりました。

手術の結果、腸間膜が180度回転しており、腸間膜捻転を認めていました。

こちらの症例も、腸管壊死には至っておらず、捻転が解除され、癒着を剥離し、腸切除は行われませんでした。

複雑性(絞扼性)腸閉塞を診断する上で重要なclosed loopとは?

複雑性(絞扼性)腸閉塞を診断する上で、絶対に押さえておかないといけないのがこのclosed loopです。

closed loopには以下のような特徴があります。

  • 2か所以上で腸管が狭窄閉塞して形成されるU字あるいはC字型に放射状に広がる閉鎖腸管ループ。
  • 閉塞部位では、くちばし状所見(beak sign)、渦巻き状所見(whirl sign)などを認めることがある。
  • 小腸は液体で満たされた腸管loopとしてCT上描出される。(大腸のclosed loopはcoffee bean状に拡張することが多い。)

文字で見るより、イラストで見た方がわかりやすいと思います。

ここでは索状物によりclosed loopがつくられる様子を表してみました。

closed-loop-figure

左のイラスト:手術歴などでできた索状物があります。

真ん中のイラスト:ここを何らかの理由で腸管がくぐります。

右のイラスト:すると、腸管と腸間膜は出られなくなります。closed loopの完成です。

締め付けられることにより、静脈が戻れなくなり、腸管や腸間膜には浮腫をきたします。

できたclosed loopを詳しく見てみましょう。

まず索状物から肛門側の腸管は拡張する理由がありませんので、虚脱したままです。

逸脱した腸管及び腸間膜(closed loop)の部分は腸管の拡張、壁肥厚、浮腫性変化を示し、索状物との境界ではbeak signを作ります。

また索状物より口側の腸管は、索状物が行き止まりとなり、拡張します。
この部位にもbeak signが作られることになります。

このように、closed loopを作る場合には、3つのbeak signができることになります。

closed loopの原因は?

どのようにしてclosed loopができるのか、またclosed loopはどのようなものかはご理解いただけたと思います。

先ほどは索状物が原因となるclosed loopをイラストで示しました。

closed loopができてしまう原因には以下のものがあります。

closed-loop1

さらに細かく見ていくと次のようになります。

closed-loop-figure1

 

シェーマはいずれもここまでわかる急性腹症第2版を引用改変。

これだけ見ると気が滅入ると思いますが、術前にはclosed loopの原因がはっきりしないことは多々あります。

大事なのはclosed loopの原因よりも、closed loopが存在することを診断することです。

症例 60歳代 女性

腹部単純CT 冠状断像

ちょっと見慣れない冠状断像ですが、closed loopがこちらの方が見やすいので冠状断像を提示します。

closed-loop-ct-findings1

  • closed loop
  • 拡張した口側腸管
  • 虚脱した肛門側腸管

に色をつけると下のようになります。

closed-loop-ct-findings3

この症例を色つきで実際のCT画像を見てみる。

この冠状断像を動画で見ると次のようになります。

この症例を横断像含めて解説しました。

手術の結果、小腸間膜に穴(異常裂孔)が開いており、ここに腸管が入り込んでいました。

腸管は壊死には陥っておらず、ヘルニアの解除のみを施行しました。

小腸の小腸間膜欠損部への内ヘルニアと診断されました。

この症例で、closed loopをご理解いただけたと思います。
またその原因を当てるのは難しいことが多いこともご理解いただけたと思います。

腸閉塞のCT診断の順序と、原因の絞り込み

ここまでの内容を、診断の順序にまとめ直します。

  1. 閉塞があるか:連続する小腸の拡張(2.5cm以上を拡張の目安とした報告)とその先の虚脱をさがします。手術で確かめた閉塞30例のうち、CTは27例(90%)で閉塞があると正しく診断できました(Fukuya 1992)。
  2. どこで閉塞しているか:拡張した腸を肛門側へたどり、拡張から虚脱へ変わる場所(transition zone)を探します。小腸の拡張だけなら小腸、大腸の拡張を伴うなら大腸に閉塞があります。
  3. 何が原因か:下の表の順に探します。
  4. 絞扼していないか:造影効果の低下、腸間膜の混濁・液体、closed loopを確認します。癒着性小腸閉塞256人の検討では、腸壁の造影低下(オッズ比7.8)、びまん性の腸間膜の混濁(6.1)、closed loop(6.5)の3つが絞扼と関係し、3つを合わせたモデルの陰性的中率は97%でした(Millet 2017)。
原因 CTの手がかり
癒着 手術歴がある。transition zoneに腫瘤がなく、腸が急に細くなる。小腸閉塞34例では癒着が20例で最多、ヘルニアが4例、Crohn病が4例、腫瘍が3例でした(Lazarus 2004)。原因がCTでわからなかった15例のうち13例は癒着でした(Fukuya 1992)
外ヘルニアの嵌頓 鼠径部・大腿部・臍・閉鎖孔など、腹壁の弱い所へ腸が入り込んでいる。拡張した腸を腹壁の外まで追うことが大切で、冠状断・矢状断を使います。CTではヘルニアの内容と、絞扼や嵌頓などの合併症を評価できます(Aguirre 2005)
内ヘルニア 腹部の手術歴(特にRoux-en-Y再建)がある例が多い。内ヘルニア54例では腸間膜の欠損部を通る型(経腸間膜ヘルニア)が45例で最多、十二指腸傍ヘルニアが6例、大網のヘルニアが3例でした。CTで診断できる例が多いとされます(Blachar 2002)。胃バイパス術後は、手術でつくられた腸間膜の欠損部が原因になります(Wood 2025)
小腸の軸捻転 腸と腸間膜血管が渦を巻くwhirl signがヒントですが、whirl signがあっても軸捻転とは限りません。小腸閉塞が疑われた1,213人(CT 1,493件)のうち、手術で小腸軸捻転とわかったのは11人でした。whirl signを見つけられたのは読影者1が11人中7人、読影者2が3人で、whirl signのあった例の中で軸捻転だった割合(陽性的中率)は21〜23%でした(Gollub 2006)
大腸の閉塞(腫瘍・軸捻転) 大腸癌が最多。S状結腸や盲腸の軸捻転では、transition zoneが2か所になる、whirl signと腸間膜血管のねじれがある、が手がかりです(Verheyden 2020)

癒着性小腸閉塞では、腹膜炎、絞扼、虚血がなければ多くの場合、保存的治療が有効です。癒着が原因か確かでないときや、これらの禁忌が疑われるときは、CTが第一選択の検査とされています(Ten Broek 2018)。

腸閉塞・イレウスのタイプ別CT所見のまとめ

タイプ caliber change CTの主な所見 対応の目安
単純性(癒着性)小腸閉塞 あり(1か所) 口側小腸の拡張と肛門側の虚脱、small bowel feces sign、壁の造影は保たれる 保存的治療が多い
絞扼性(複雑性)腸閉塞 あり(closed loopでは2か所) beak sign・whirl sign、腸間膜の浮腫・液体、腹水、壁の造影不良、単純CTで壁が高吸収 緊急手術を考える
麻痺性イレウス はっきりしない 小腸・大腸がびまん性に拡張(拡張は軽いことが多い)、腹膜炎・膵炎など原因の所見 原因の治療
大腸閉塞 大腸にあり 閉塞部より口側の大腸(と小腸)が拡張、閉塞部に壁肥厚や腫瘤 原因(大腸癌が最多)に応じて治療

大腸閉塞の原因として最も多いのは大腸癌で、CTでは閉塞部の腫瘍の性状やリンパ節も確認します(Verheyden 2020)。

腸閉塞のCTでよくある疑問(Q&A)

Q. 腸閉塞は単純CTだけでわかりますか?造影CTは必要?

腸管の拡張や閉塞部位は単純CTでもわかりますが、絞扼で最も特異度が高い腸管壁の造影効果の低下は造影CTでないと評価できません。腎機能などに問題がなければ、造影CTで評価するのが基本です。単純CTしか撮れないときは、壁の高吸収や腸間膜の浮腫・腹水に注意します。

Q. レントゲンとCTでは何が違いますか?

レントゲンでは腸管の拡張やニボー像がわかりますが、閉塞の原因や血流障害の評価はCTが得意です。小腸閉塞を手術で確かめた30例のうち、CTで27例(90%)を正しく診断できたと報告されています(Fukuya 1992)。レントゲンの見方は関連記事で解説しています。

Q. 腸管壊死はCTでどう見えますか?

腸管壁の造影不良、腸管壁内ガス、門脈内ガスが代表的な所見です。腸間膜の浮腫や液体貯留、腹水が組み合わさるときも注意が必要です。

Q. 診断の順序はどうなりますか。

閉塞があるか、小腸か大腸か、原因は何か、絞扼していないか、の順に考えます。最後の「絞扼していないか」は、治療方針(緊急手術か保存的治療か)を決めるうえで、もっとも重要です。

Q. 外ヘルニアの嵌頓は、どう見つけますか。

拡張した小腸を肛門側へ追っていき、腹壁の外側へ出ていくところまでたどります。鼠径部、大腿部、臍、閉鎖孔など、腹壁の弱い場所を冠状断・矢状断で確認します(Aguirre 2005)。

Q. whirl signがあれば軸捻転ですか。

whirl signは手がかりですが、それだけで軸捻転と決まるわけではありません。小腸閉塞が疑われた1,213人のCTの検討では、whirl signのあった例の中で実際に小腸軸捻転だった割合(陽性的中率)は21〜23%にとどまりました(Gollub 2006)。closed loopや腸間膜の混濁、壁の造影低下も合わせて判断します。

※お腹が張って吐く・強い腹痛が続くときは、自己判断せずにすぐに医療機関を受診してください。

 

最後に

腸閉塞・イレウスのCT画像診断について現時点での知識とパワーを全てつぎ込んで、イラストレーターにもご協力いただき、詳しくまとめてみました。

マニアックな内ヘルニアの細かい名称を術前に画像で診断できることよりも、絞扼性腸閉塞を見逃さないことが大事です。(と自分にも言い聞かせています。)

医療の現場において、

  • やばい腸閉塞(手術が必要)か
  • やばくない腸閉塞(保存的に加療が可能)か

を見極めることはしばしば困難なこともあります。

拡張した腸管を丁寧に追っていく習慣をつけて、やばい腸閉塞に特徴的な所見を見落とさないように典型的な症例を目に焼き付けておくことが大事です。

この記事がそのお役に立てられれば幸いです。

腸閉塞の画像診断で最も重要なことは?

  • まずは内科入院の手続きを始めることである。
  • 常に絞扼性腸閉塞の可能性を考慮してくまなく読影することである
  • 腸管拡張をみたらイレウスと診断して外科にコンサルトすることである

正解!

不正解...

正解は常に絞扼性腸閉塞の可能性を考慮してくまなく読影することであるです。

不正解の人はもう一度この記事を一番上から見直してください(T-T)。

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関連記事:腸閉塞・イレウスの原因とレントゲンの見方|ニボー像(鏡面像)とは?小腸と大腸の拡張の区別(ケルクリングひだ・ハウストラ)

あわせて読みたい:偽性腸閉塞とは?原因(強皮症など)・症状とCT・X線所見

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