小腸腫瘍
小腸腫瘍は原発性消化管腫瘍の6%未満。悪性腫瘍は1−2%と報告されてきましたが、近年、カプセル内視鏡(VCE:video-capsule endoscopy)やダブルバルーン内視鏡(DBE:double-balloon enteroscopy)の普及により頻度はより高いと言われています。
小腸に見られることがある腫瘍としては、
悪性腫瘍
- 小腸癌(腺癌)30-40%
- 悪性リンパ腫 15-20%
- 消化管間葉系腫瘍(GIST:gastrointestinal stromal tumor) 15-20%
- カルチノイド 3-4%
良性腫瘍
- 腺腫 6%
- 脂肪腫 17%
- 血管腫 0.05%以下
と報告されています1)2)。
小腸癌
小腸癌には原発性と転移性がある。
▶発生部位:
・空腸が57%、Treitz靭帯から60cm以内が83%。
・回腸が43%、Bauhin弁より40cm以内が72%。
▶臨床症状:内視鏡で原因不明の消化管出血、貧血、原因不明のイレウス、原因不明の腹痛。
▶予後:
・5年生存率は39%。
・平均生存期間は45ヶ月。
・最長生存期間は9年。
動画で学ぶ小腸癌の画像診断
悪性リンパ腫
- 悪性腫瘍では小腸癌に次いで多い。
- 大半は非ホジキンリンパ腫。
- 大部分は回腸、とくに回腸遠位に発生する。
- CTでは全周性の壁肥厚と腸管の拡張像を認めるが、腫瘍のサイズの割には通過障害を来しにくいのが特徴。
消化管間葉系腫瘍(GIST)
- 全消化管のGISTのうち小腸原発は3割程度。
- 空腸発生が多い。
- サイズは1−10cm程度。
- CTでは多血性腫瘍として描出される。サイズが4cm程度以上と大きなものには中心部に潰瘍や壊死を伴うことがある。
- サイズが大きいもの、管外発育するもの、壊死を伴うものは悪性も考慮。
カルチノイド
- 神経内分泌腫瘍(NET:neuroendocrine tumor)の一つ。
- 粘膜下層を主座に腫瘤を形成するため、粘膜下腫瘍の形態を取る。
- 好発部位は回腸、とくに遠位回腸。
- 20-40%で多発病変を認め、悪性腫瘍の合併も多いと報告されている。
- CTでは結節や限局性の小腸壁肥厚として描出され、比較的造影効果は良好なことが多い。
転移性小腸腫瘍
- 小腸悪性腫瘍では原発よりも転移が多い。空腸に多い。
- 原発巣は肺>食道、腎、悪性黒色腫、乳腺など。
- 出血源の不明な下血や血便症状に対する小腸精査で見つかることが多い。
- CTでは粘膜下の結節や不整形の腫瘍、腸管壁肥厚などで描出される。
血管腫
- 増殖した血管からなる良性腫瘍。
- 日本では海綿状血管腫が最も多い。
- サイズはほとんどが2cm以下と小さいが、大出血を起こすことがあるので注意が必要。
- CTでは造影効果の強い結節として描出される。
脂肪腫
- 小腸原発の良性腫瘍では、GISTに次いで多い。
- サイズが2.5cmを超えると腸重積を起こしやすくなる。
- 空腸に発生することが多い。
参考文献:
1)胃と腸 36:871-881,2001
2)Gastrointest Endosc 70:498-504,2009