日常臨床や救急外来で腹部CTを読むとき、脾臓は肝臓や膵臓に比べて「さっと見て終わり」になりやすい臓器です。けれども脾臓には、門脈圧亢進のサインとしての脾腫、外傷での脾損傷、血流が途絶える脾梗塞、偶然見つかる嚢胞や腫瘤など、読影で拾うべき所見がいくつもあります。

  • 大きさ(脾腫・小さい脾臓)
  • 形と位置(副脾・脾症・脾臓の位置異常)
  • 濃さと造影のされ方(梗塞・びまん性の異常・動脈相のまだら模様)
  • 嚢胞
  • 腫瘤(血管腫・過誤腫・リンパ管腫・リンパ腫・転移など)
  • 石灰化
  • 周囲と血管(脾動脈・脾静脈・脾周囲の液体や出血)

の有無を、順番に確認していきます。この記事では、それぞれの所見で考える病気と、次に何を見るか・どの検査へ進むかを整理します。腹部CT全体の見る順番は腹部CTの読み方でまとめています。

先に結論:腹部CTで脾臓を見るときの7つのチェックポイント

  1. 大きさ:脾腫があれば、肝硬変・門脈圧亢進(側副血行路・腹水)、血液疾患、感染症をたどる
  2. 形と位置:脾門部の小さな丸い結節は副脾のことが多い。脾臓と同じ濃さ・同じ染まり方かを見る
  3. 造影のされ方:動脈相のまだら模様は正常のことが多い。門脈相でも残るくさび形の低吸収域は脾梗塞を疑う
  4. 嚢胞:水の濃さで壁が薄く、造影されなければ多くは良性。厚い壁や隔壁の造影があれば膿瘍・腫瘍も考える
  5. 腫瘤:多くは良性だが、がんの既往や発熱・体重減少があればリンパ腫・転移を考える
  6. 石灰化:多発する点状の石灰化は過去の肉芽腫性感染の名残が多い。脾門部の輪状石灰化は脾動脈瘤を考える
  7. 周囲:外傷では脾周囲の血腫・造影剤の漏れ。脾静脈の閉塞や脾門部の側副血行路も確認する

1. 大きさ:脾腫と小さい脾臓

脾腫 造影CT 横断像
造影CTの横断像で、脾臓が前後に大きく伸び、左上腹部の広い範囲を占めています(白い線は長径の計測)。詳しくは脾腫の原因と大きさの基準の記事で解説しています。

脾臓の大きさは、横断像で前後に長く伸びていないか、冠状断で下端がどこまで下がっているかを見ます。CTで脾臓の長さ・幅・厚みと体積の関係を調べた249例の研究では、長さと体積がよく相関し、長さ9.76cmが正常上限として示されました。また、脾臓の下端が左腎の下1/3に達する、またはそれより下に出る場合も脾腫の手がかりになりましたが、感度は低い結果でした(Bezerra 2005)。基準値は研究によって違うため、1つの数字だけで決めず、過去の画像との比較や、ほかの所見とあわせて判断します。

脾腫の主な原因

  • 門脈圧亢進:肝硬変など。肝臓の形の変化、側副血行路(食道・胃静脈瘤、脾腎シャントなど)、腹水を一緒に確認します
  • 血液疾患:リンパ腫、白血病、骨髄増殖性腫瘍など。骨髄線維症などでは脾臓の髄外造血を伴うことがあります
  • 感染症:伝染性単核球症などのウイルス感染、敗血症など
  • うっ血:右心不全、脾静脈・門脈の閉塞

次に何を見るか:肝臓の表面の凹凸と尾状葉の腫大(肝硬変)、脾門部や胃のまわりの太い静脈(側副血行路)、腹部のリンパ節腫大(リンパ腫)を確認します。脾腫がある人では、軽い外傷でも脾損傷を起こしやすい点にも注意します。

小さい脾臓

脾臓が小さい・見当たらない場合は、脾摘後、くり返す梗塞による萎縮(鎌状赤血球症など)を考えます。脾摘後に腹膜や左上腹部に脾臓と同じ濃さの結節が散らばっていれば、脾症(splenosis)を考えます。

2. 形と位置:副脾・脾症・膵内副脾

副脾 CT 横断像
脾臓の内側前方、左腎の前外側に、脾臓と同じ濃さの小さな丸い結節(副脾)が見えます。詳しくは副脾とはの記事で解説しています。

副脾は生まれつきの小さな脾臓の組織で、病気ではありません。造影CTを受けた人の16%にみられ、多くは2cm未満の境界明瞭な丸い結節で、均一に造影されます。1cm未満では部分容積効果で脾臓より低い濃さに見えることがあり、最も多い場所(22%)は脾臓の後内側(左腎上極の前外側、膵尾部の外側・後方・上方)でした(Mortelé 2004)。

  • 見分けのポイント:すべての時相で脾臓と同じ濃さ・同じ染まり方をしているか。動脈相で脾臓と同じまだら模様になっていれば、副脾らしさが増します
  • 膵尾部の中にある場合:膵内副脾は、膵神経内分泌腫瘍(NET)と見分けにくいことがあります。MRIや、脾臓組織に集まる核医学検査で確かめます
  • 脾摘後に増えた結節:脾症と腹膜播種の見分けが問題になります

3. 濃さと造影のされ方:梗塞・びまん性の異常

動脈相のまだら模様は正常のことが多い

造影CTの動脈相では、脾臓がしま模様やまだら模様に染まることがよくあります。これは脾臓の中の血流の速さの違いによるもので、門脈相で均一になれば病変ではありません。このまだら模様の程度は、門脈圧の変化と関係するという報告もあります(McCormick 2019)。動脈相だけで「多発する腫瘤」と判断しないことが大切です。

脾梗塞

脾梗塞 模式図
脾動脈の枝が血栓などでふさがれ、その先の脾臓が被膜側を底辺とするくさび形に梗塞を起こす模式図です。詳しくは脾梗塞とはの記事で解説しています。

  • 典型像:門脈相でも造影されない、被膜に接するくさび形の低吸収域。広い範囲や多発することもあります
  • 主な原因:心房細動や心内膜炎などからの塞栓、血液疾患、脾腫、膵炎や膵がんによる脾動静脈の障害
  • 次に何を見るか:腎臓や腸などほかの臓器の梗塞、心臓内の血栓、脾動脈・脾静脈の閉塞。梗塞の中にガスや液体がたまっていれば、感染や膿瘍化を考えます

びまん性の異常

脾臓全体の濃さが下がる、まだらなまま門脈相でも均一にならない場合は、リンパ腫などの浸潤、感染、うっ血を考えます。鉄沈着では単純CTで脾臓が高くなることがあり、MRIで確かめます。

4. 嚢胞・低吸収域

脾嚢胞 造影CT
造影CTで、脾臓の内側に造影されない小さな低吸収域があり、嚢胞を疑う所見です。詳しくは脾臓の腫瘍を指摘されたらの記事で解説しています。

見え方 考える病気と見分けるポイント
水の濃さ・壁が薄い・造影なし 脾嚢胞(真性嚢胞・外傷後の偽嚢胞)。壁に石灰化を伴うこともあります
多房性・細い隔壁 脾リンパ管腫。被膜下に多いのが特徴です
壁が厚く造影・内部が不均一 脾膿瘍(発熱・左上腹部痛)。ガスがあれば強く疑います
被膜に接するくさび形 脾梗塞(腫瘤のふくらみがない)
多数の小さな低吸収結節 リンパ腫、真菌などの感染、サルコイドーシス、転移

次に何を見るか:単純CTと造影CTの濃さの差(造影されているか)、壁の厚さ、隔壁や充実成分の有無です。CTで判断がつかないときはMRI(T2強調像・造影)や超音波で確かめます。

5. 腫瘤:良性と悪性の見分け

脾血管腫 ダイナミックCT
ダイナミックCTの早期相で脾臓の中に濃く染まる結節があり(矢印)、平衡相でも脾臓よりやや高い濃さで残っています。詳しくは脾血管腫のCT・MRI画像所見の記事で解説しています。

脾臓の病変は多くが偶然見つかり、その大部分は良性で、画像の特徴から診断できるものが少なくありません。組織の確認が必要なのは一部で、その場合も脾摘より画像ガイド下の生検が優先されます(Krähling 2024)。

病気 CT・MRIでの手がかり
脾血管腫 脾臓で多い良性腫瘍。辺縁から染まる、または早期から均一に染まり、遅い相でも抜けにくい
脾過誤腫 脾臓と似た組織の結節。遅い相で脾臓に近い濃さになり、ふくらみ(輪郭の変形)で気づくことがある
SANT 中心から放射状の線維と、遅い相で辺縁から内部へ広がる染まり方(spoke-wheel)。MRIのT2強調像で低信号が目立つ
炎症性偽腫瘍 境界が比較的明瞭な充実性腫瘤。リンパ腫との区別が難しいことがある
リンパ腫 脾臓で多い悪性腫瘍。びまん性の腫大、多発結節、大きな腫瘤のいずれもあり、リンパ節腫大を伴いやすい
転移 悪性黒色腫、肺がん、乳がんなど進行がんで。ほかの臓器にも転移があることが多い
血管肉腫 まれだが悪性度が高い。不均一な腫瘤、出血、肝臓などへの転移
  • 悪性を考える手がかり:がんの既往、発熱・体重減少、リンパ節腫大、境界が不整、過去の画像より大きくなっている、ほかの臓器にも病変がある
  • 次の検査:MRI(T2強調像・拡散強調像・造影)、PET-CT、過去の画像との比較。T2強調像で低信号になる腫瘤の見分けは脾臓でT2WI低信号を来す腫瘤の鑑別、原発性腫瘍の一覧は原発性脾腫瘍の鑑別診断にまとめています

6. 石灰化

脾臓の肉芽腫 石灰化 単純CT
引用:Radiopaedia(Splenic granulomas)
単純CTの横断像で、脾臓の中に小さな点状の石灰化が多発しています(過去の肉芽腫性感染の名残)。詳しくは脾臓の石灰化の原因の記事で解説しています。

  • 多発する点状の石灰化:結核やヒストプラズマ症など、過去の肉芽腫性感染の名残。多くは治療の必要がありません
  • 輪状・曲線状の石灰化(脾門部):脾動脈瘤。造影CTで瘤の中が造影されるか、大きさと形を確認します。治療の目安は腹部内臓動脈瘤の記事にまとめています
  • 嚢胞の壁の石灰化・古い梗塞や血腫の跡:輪郭や形から判断します
  • MRIでの小さな低信号の点:門脈圧亢進でみられるGamna-Gandy小体(鉄の沈着)

7. 周囲と血管:脾門部・脾動静脈・外傷

脾損傷

外傷のCTでは、脾臓の裂け目(裂傷)、被膜下や実質内の血腫、脾周囲の血液、造影剤の漏れ(活動性出血)、仮性動脈瘤を確認します。重症度は米国外傷外科学会(AAST)の臓器損傷分類で表され、2018年に脾臓・肝臓・腎臓の分類が改訂されました(Kozar 2018)。詳しくは脾損傷のCT画像診断、超音波での初期評価はFASTの記事にまとめています。

  • 脾周囲の液体の濃さ:血液は水より高い濃さで、凝血塊(sentinel clot)が出血源の近くに集まります
  • 時相を比べる:動脈相で見えた高吸収が門脈相で広がれば活動性出血、形が変わらなければ仮性動脈瘤を考えます

脾動脈・脾静脈

偶然見つかった脾臓の病変の扱い

ほかの目的で撮ったCTやMRIで脾臓の病変が見つかることは珍しくありません。米国放射線学会(ACR)の偶発所見委員会の白書は、脾臓とリンパ節の偶発所見について、病変の見え方ごとの扱いを流れ図にまとめています(Heller 2013)。実際の読影では、次のように考えます。

  • 良性と判断できる特徴(水の濃さで壁が薄い嚢胞、均一な小さな結節、典型的な血管腫など)がそろっていれば、追加の検査は不要か、経過観察にとどめることが多い
  • 判断がつかない場合は、MRIや過去の画像との比較で確かめる
  • がんの既往・発熱・体重減少などがあれば、転移・リンパ腫・感染を考えて、主治医と相談のうえ精密検査へ進む

健診や別の病気の検査で「脾臓に何かある」と言われ、左上腹部の痛みや発熱など気になる症状がある場合は、医療機関で相談してください。

脾臓で見落としやすい場所と確認のしかた

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
脾臓の上端(横隔膜の下) 横隔膜や肺底部に接し、スライスの端で輪郭がぼやける(部分容積効果) 冠状断で横隔膜の下まで追う
脾門部 脾動静脈・膵尾部・副脾・リンパ節が集まり、小さな結節が血管に紛れる 連続するスライスで管か結節かを追い、各時相で脾臓と同じ染まり方か比べる
脾臓の外側の被膜下 薄い被膜下血腫や少量の液体が、肋骨や腹壁の影に溶け込む ウィンドウ幅を狭めてコントラストを上げ、脾臓の輪郭を一周たどる
動脈相だけの所見 まだら模様が多発腫瘤や梗塞に見える 門脈相・遅い相で均一になるかを確認する
膵尾部との境 膵内副脾や膵尾部の腫瘍が、脾臓の一部に見える 冠状断・斜めの断面で、病変が膵臓の中か外かを確かめる

脾臓の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. 「副脾がある」と言われました。治療は必要ですか?
A. 副脾は生まれつきの小さな脾臓の組織で、多くは治療も経過観察も要りません。ただし膵臓の中にある場合や、脾摘後に増えてきた場合は、ほかの病気との見分けが必要になることがあります。

Q. 造影CTの動脈相で脾臓がまだらに見えるのは異常ですか?
A. 動脈相では、脾臓の中の血流の違いで正常でもまだら模様に見えることがよくあります。門脈相で均一になれば病変ではありません。門脈相でも残るくさび形の低吸収域は脾梗塞を考えます。

Q. 脾腫はCTのどこで判断しますか?
A. 横断像での長さや前後への伸び、冠状断で下端が左腎の下のほうまで下がっているかを見ます。基準値は研究によって異なるため、過去の画像との比較や、肝硬変・血液疾患などほかの所見とあわせて判断します。

関連記事:脾臓の腫瘍を指摘されたら?良性と悪性の見分け方

あわせて読みたい:腹部CTの読み方

参考文献

  1. Bezerra AS, D’Ippolito G, Faintuch S, et al. Determination of splenomegaly by CT: is there a place for a single measurement? AJR Am J Roentgenol. 2005;184(5):1510-3. PubMed
  2. Mortelé KJ, Mortelé B, Silverman SG. CT features of the accessory spleen. AJR Am J Roentgenol. 2004;183(6):1653-7. PubMed
  3. McCormick PA, Malone DE, Docherty JR, et al. Patterns of splenic arterial enhancement on computed tomography are related to changes in portal venous pressure. Eur J Gastroenterol Hepatol. 2019;31(3):352-356. PubMed
  4. Krähling H, Seidensticker M, Heindel WL, et al. Diagnostic approach to splenic lesions. Rofo. 2024;196(6):573-581. PubMed
  5. Kozar RA, Crandall M, Shanmuganathan K, et al. Organ injury scaling 2018 update: Spleen, liver, and kidney. J Trauma Acute Care Surg. 2018;85(6):1119-1122. PubMed
  6. Heller MT, Harisinghani M, Neitlich JD, et al. Managing incidental findings on abdominal and pelvic CT and MRI, part 3: white paper of the ACR Incidental Findings Committee II on splenic and nodal findings. J Am Coll Radiol. 2013;10(11):833-9. PubMed

臓器・部位ごとの読影ポイント(シリーズ)

同じ形で、臓器・部位ごとに「何が起こりうるか、どう読むか」をまとめています。

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