先に結論:脾梗塞

  • 脾梗塞は脾動脈やその枝が詰まって脾臓の一部が壊死する病気で、突然の左上腹部痛・発熱で見つかります。心房細動などによる心原性塞栓が最も多い原因です
  • 造影CTでは脾臓の辺縁に向かって広がる楔状の造影不良域が典型で、腎梗塞を合併することもあります
  • 血液疾患(白血病・骨髄線維症など)も原因として多く、多くは保存的に治療しますが、膿瘍・破裂を起こしたら処置が必要です
  • 心房細動などの塞栓が原因なら、再発予防に抗凝固療法(ヘパリンなど)が行われることが多く、治療は原因となる病気に合わせて決まります

梗塞(こうそく)といえば、脳梗塞や心筋梗塞が有名ですね。

梗塞とは、血流が途絶えて組織が壊死に陥ることを言います。

ですので、脳や心臓に限ったことではありません。

例えば、臓器●●が梗塞になることを●●梗塞と言います。
左腹部にある脾臓(ひぞう)への血流が少なくなったり、途絶えると脾臓は梗塞に陥り、脾梗塞(ひこうそく)と言います。
今回は、この脾梗塞について

  • そもそも脾梗塞とは?
  • 脾梗塞の原因
  • 脾梗塞の症状
  • 脾梗塞の画像診断
  • 脾梗塞の治療

などについて図(イラスト)と実際のCT画像を用いてわかりやすく解説します。

脾梗塞って、脾臓にも梗塞が起こるの?

はい。脾臓の動脈は詰まると血液が届かなくなる終動脈なので、血のかたまりなどが詰まると梗塞が起こります。左のわき腹が痛むことがあるんですよ。

脾梗塞とは?

脾臓への血流が途絶えて、脾臓の全体もしくは一部が壊死に陥ってしまうことを脾梗塞と言います。

脾動脈は終動脈であり、脾臓に血流を送る脾動脈以外からの血流がないため、梗塞を起こしやすい臓器と言えます。

通常は脾臓の一部が梗塞に陥ります。

脾梗塞の原因は?

脾梗塞の原因としては、脾臓を栄養する血管が血栓などで詰まったり、血液疾患により生じることが有名です。
原因としては大きく、

  • 血液疾患
  • 塞栓症
  • 血栓症
  • その他

に分けられます。

原因の割合は報告によって異なります。手術や病理で確認された59例では血液疾患が35例と最多でした(Nores 1998)。一方、急性脾梗塞32例(年齢中央値64歳)の検討では、心房細動などによる心原性塞栓が62.5%で最多でした(Schattner 2015)。
心房細動などの心臓病がある人では塞栓症を、白血病などの血液疾患がある人では血液疾患によるものを、まず考えます。
1つ1つ見ていきましょう。

血液疾患

血液疾患としては、

  • 骨髄線維症(髄外造血が循環不全を起こすため)
  • 自己免疫性溶血性貧血
  • 悪性リンパ腫
  • 白血病
  • 骨髄腫

などが原因となります。

塞栓症

血管が何かで詰まってしまう原因としては、

  • 血栓
  • 敗血症性塞栓(septic emboli)
  • 動脈瘤・動脈硬化

などがあります。

血栓による塞栓症が原因として最多で、心内膜炎、心房細動、左室血栓などの心原性血栓が中でも最多です。

また肝硬変や白血病などで脾臓が大きくなりすぎて(脾腫(ひしゅ)という)、脾臓の機能を抑えたいときに治療としてあえて脾梗塞を起こすことがあります。

脾動脈にコイルや塞栓物質を留置して部分的な脾梗塞を作る治療で、部分的脾動脈塞栓術(Partial splenic embolization:PSE)と言います。

このPSE(読み方はそのまま「ピーエスイー」)もこの塞栓の範疇に分類されます。

血栓症

血栓ができてしまうことにより血管が細くなり脾梗塞になる原因としては

  • 血管炎
  • 膵炎
  • 腫瘍浸潤(膵癌が多い)
  • 脾捻転

が挙げられます。

その他

そのほか、Gaucher病という代謝性疾患が原因になることがあります。
また原因が特定できない特発性のケースもあります。

脾梗塞の症状は?


脾梗塞の症状には

  • 突然の持続する左側腹部痛・左上腹部痛といった痛み
  • 発熱
  • 呼吸困難
  • 悪心・嘔吐

などがあります。
ただし、慢性的な血液疾患の場合、無症状のことも多いです。

脾梗塞のCT画像診断は?

脾梗塞の画像所見は梗塞が起こっている急性期と、瘢痕・線維化した慢性期で異なります。

診断が重要となるのは急性期です。

急性期の画像所見

脾梗塞では、造影剤を用いたCT検査、MRI検査が診断に有用です。

造影CTやMRIでは、典型的には、単発もしくは複数の楔状の造影不良域として描出されますが、円形や不整形の場合もあります。

楔状の辺縁には薄い被膜の造影効果が残ることがありますが、被膜からの血流と考えられています。

造影剤を用いない単純CTでは、周囲の正常脾臓よりも低吸収域として描出されます。

ただし、梗塞部位に出血を生じることがあり(出血性梗塞と言います)、その場合は低吸収域の内部に高吸収域を認めることがあります。

エコー(腹部超音波検査)でも楔状もしくは地図状の低エコー域として描出されますが、早期には描出困難なことが多いです。CTで確定した脾梗塞49例の検討では、超音波で診断できたのは18%にとどまりました。主な症状は腹痛・左側腹部痛(80%)で、脾梗塞が背景疾患の最初の症状だった例も16.6%ありました(Antopolsky 2009)。

症例 80歳代男性 発熱・左側腹部痛


腹部造影CTの横断像です。
脾臓に楔状の造影不良域を認めています。
典型的な脾梗塞のCT画像所見です。
精査の結果、心原性血栓が原因と診断されました。

症例 80歳代女性 左腰部痛

腹部造影CTの横断像です。
先ほどの症例と同じように、脾臓に楔状の造影不良域を認めています。
典型的な脾梗塞のCT画像所見です。

冠状断像では脾臓の他に左腎臓にも造影不良域が見られ、脾梗塞+腎梗塞と診断されました。
こちらの症例も精査の結果、心原性血栓が原因と診断されました。

症例 60歳代男性 白血病

造影剤を用いていない腹部単純CTの横断像です。
著明な脾臓の腫大(脾腫)を認めており、その内部に楔状の周囲脾実質よりも低吸収域を認めています。
脾腫+脾梗塞と診断されました。
白血病が背景にあり、血液疾患が原因となり脾梗塞が起こったことがわかります。

慢性期の画像所見

発症から時間が経過したものは、線維化による収縮により、凹みを残して治癒します。
そして、代償性に周囲の脾臓が肥大を認めます。
稀に石灰化を伴うことがあります。

症例 80歳代男性 発熱・左側腹部痛 最初の症例と同様

急性期と比べると慢性期は梗塞部位は凹み、周りに肥大を認めています。

脾梗塞の治療は?

脾梗塞単独の場合は、治療を要することは少なく、厳重に経過観察される(保存的療法)ことが多いです。

むしろ原因となっている病気に対する治療を優先するべきとされています。

脾梗塞だけを対象とした治療の決まりごとは少なく、原因となる病気の治療方針に沿って進めます。

原因 主な治療の考え方
心房細動・心内血栓などの心原性塞栓 痛みの治療と経過観察に加え、再発予防の抗凝固療法(ヘパリンなど)を検討。急性脾梗塞32例では多くが抗凝固療法を受けて退院し、合併症はまれでした(Schattner 2015)
感染性心内膜炎(敗血症性塞栓) 抗菌薬による感染症の治療が中心。脾膿瘍の形成に注意
血液疾患(白血病・骨髄線維症など) 背景の血液疾患の治療が中心
脾膿瘍・脾破裂を合併 ドレナージや脾摘などの処置

ただし、脾梗塞の結果、梗塞部位に破裂して遅発性の出血(脾破裂)を生じたり、膿瘍(のうよう)を形成した場合はドレナージ術や外科手術など治療を要することがあります。

予後は脾破裂や脾膿瘍を生じなければ良いとされています。

脾梗塞と鑑別すべき疾患は?

脾梗塞は腫瘍ではなく、壊死病変なのですが症状がない場合などは充実性病変と鑑別が必要になることもあります。
鑑別するべき疾患としては、

  • 転移性脾腫瘍
  • 悪性リンパ腫
  • 血管肉腫
  • 過誤腫
  • 血管腫
  • リンパ管腫
  • 脾膿瘍

などが挙げられます。

最後に

脾梗塞についてまとめました。
ポイントをまとめると

  • 脾臓を栄養する動脈は終末動脈であり、何らかの原因で詰まったり狭窄が起こると脾梗塞を起こしやすい。
  • 脾梗塞の原因は大きく4つに分けられる。
  • その中でも心原性による血栓が脾動脈に飛んで塞栓されることが原因として最多。
  • ただし報告によっては血液疾患が原因として最多である。
  • 症状としては、左腹痛や腰痛といった痛みのほか、発熱、悪心嘔吐、呼吸苦などがある。
  • CTによる画像診断では楔状の造影効果不良域が典型的だが、円形や不整形の場合もある
  • 治療は、通常保存的に経過観察されることが多いが、脾破裂や脾膿瘍を伴った場合は、外科治療やドレナージ術などが必要となることがある。

となります。
脾梗塞は、左腹痛や腰痛の原因となり、また早期の場合はエコーや単純CTといった画像検査では検出できないこともありますので、造影剤を用いた検査が必要となります。

脾梗塞でよくある疑問(Q&A)

脾梗塞は何科を受診すればよいですか?

急な左上腹部や左わき腹の痛みは、まず内科・消化器内科、強い痛みや発熱があれば救急外来が窓口です。原因に応じて循環器内科や血液内科と連携して治療します。

エコーで脾梗塞はわかりますか?

楔状や地図状の低エコー域として見えることがありますが、早期にはわかりにくく、CTで確定した49例のうち超音波で診断できたのは18%でした(Antopolsky 2009)。疑わしいときは造影CTで確認します。

脾梗塞の予後はどうですか?

脾膿瘍や脾破裂などの合併症がなければ予後は良好とされます。一方で、脾梗塞が心臓病や血液疾患など背景の病気の最初のサインのこともあるため、原因を調べることが大切です。

左上腹部やわき腹の急な痛み、発熱など気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

あわせて読みたい:脾膿瘍とは(CTの低吸収域と脾梗塞・脾嚢胞との違い)

参考文献:
1)肝胆膵の画像診断―CT・MRIを中心に (『画像診断』別冊KEY BOOKシリーズ) P489

  1. Nores M, Phillips EH, Morgenstern L, et al. The clinical spectrum of splenic infarction. Am Surg. 1998;64(2):182-188. PubMed
  2. Antopolsky M, Hiller N, Salameh S, et al. Splenic infarction: 10 years of experience. Am J Emerg Med. 2009;27(3):262-265. PubMed
  3. Schattner A, Adi M, Kitroser E, et al. Acute Splenic Infarction at an Academic General Hospital Over 10 Years: Presentation, Etiology, and Outcome. Medicine (Baltimore). 2015;94(36):e1363. PubMed

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