人間ドックなどの腹部超音波検査(エコー)やCT、MRI検査などの画像検査を受けると
「副脾(ふくひ)あり。」
「副脾(ふくひ)の疑い。」
などと診断されることがあります。
脾臓という臓器を聞いたことある人は多いかもしれませんが、
この副脾とは一体何者なのでしょうか?
そこで今回は、副脾(英語ではaccessory spleen)について
- そもそも副脾とは何なのか
- その頻度や原因
- 画像ではどのように見えるのか
などについて、図(イラスト)と実際のCT画像を用いてわかりやすくまとめました。
先に結論:副脾とは
- 脾臓のそばにある、脾臓と同じ組織の小さなかたまり。生まれつきの正常変異で、病気ではありません
- 10〜25%の人にあるとされる、よくある所見です
- 多くは脾臓の付け根(脾門部)の近くにあり、大きさは数mm〜2.5cm程度の丸い形
- 症状はなく、治療は不要です
- 副脾は脾臓と同じ働きをもつ組織です。ふだん困ることはほとんどありませんが、脾臓を取る手術のあとに病気が再発する原因になったり、まれにねじれて痛むことがあります(メリット・デメリットは下で解説)
- 注意: すい臓(膵尾部)の中にある「膵内副脾」は、すい臓の腫瘍と見分けが必要になることがあり、MRIなどで確かめます
副脾とは?

副脾とは、左の上腹部にある脾臓(ひぞう)にしばしば見られる正常変異です。
脾臓のすぐ近くに少し離れて存在し、画像検査では脾臓と同じ信号パターン(色)を示します。
脾臓に血流を送る脾動脈の分枝から血流を受け取ります(栄養されています)。
正常変異ですので、異常ではなく病気ではありませんし、治療の必要もありません。
ただし、脾臓を摘出する脾摘術を行う場合、術後に副脾は代償性にサイズが大きくなることがあります。
ですので、この手術を行う前にはその存在を確認しておくことは重要です。
副脾の頻度は?
剖検例では10-25%の人に認められるとされています1)。造影CTを受けた患者を調べた報告では約16%に副脾が見られ、多くは2cm未満の境界明瞭な球形で、脾臓と同じように均一に造影されました(Mortelé 2004)。
副脾の原因は?
脾臓の形成期に、中胚葉の原基が完全に癒合しなかったために生じると考えられています。
副脾の形は?サイズは?
ほぼ球状を示し、大きさは数mm〜2.5cm程度で、単発のこともあれば複数認めることもあります。
副脾の症状は?
通常症状はありません。
副脾の存在する場所は?
多くは脾門部と呼ばれる部位の付近に存在し、残りは膵の尾部に接して存在することもあります。
稀に副脾が膵尾部に入り込んで膵内副脾を形成し、膵腫瘍との鑑別が問題になることがあります。膵内副脾105例をまとめたシステマティックレビューでは、73%が偶然見つかり、55%が手術を受けていて、その多く(87%)は術前に膵神経内分泌腫瘍が疑われていました。1つの検査だけで確定するのは難しいため、複数の検査を組み合わせて不要な手術を避けることが大切です。
副脾の画像診断は?

副脾の画像診断のポイントは、超音波検査(腹部エコー)でもCTでもMRIでも造影剤を用いた検査であっても、脾臓と同じ信号パターン(色)を示すことです。
造影剤を用いた検査の場合、染まり方も脾臓と似たパターンを示します。
では実際の症例を見ていきましょう。
症例 50歳代 女性

腹部単純CTの横断像です。
脾臓の前内側(脾門部側)に脾臓と似た吸収値を示す球状の結節を認めています。
典型的な副脾の所見です。
症例 60歳代 男性

今度は造影剤を用いた腹部造影CTの横断像です。
脾臓の前内側(脾門部側)に脾臓と似た吸収値(造影パターン)を示す球状の結節を認めています。
典型的な副脾の所見です。
副脾の右背側には膵臓を認めています。
症例 50歳代 男性

腹部ダイナミックCTです。
左側が早期相で右側が平衡相です。
ともに脾臓と同じような造影パターンを示しているのがわかります。
すなわち早期相ではややまだらであり、平衡相ではほぼ均一に染まっています。
典型的な副脾の所見です。
ちなみにこの症例では副脾が見えているだけで2つありますね。
副脾のメリット・デメリット(役割)は?
副脾は小さいながら脾臓と同じ組織なので、古くなった赤血球を処理したり、免疫に関わったりする脾臓と同じ働きをもっています。
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 脾臓を摘出したあと、副脾が大きくなって脾臓の働きの一部を補うことがある |
| デメリット① | 免疫性血小板減少症(ITP)などで脾臓を取ったのに、残った副脾が働いて病気が再発することがある。再発した患者で副脾を見つけて切除すると、出血症状が消えたと報告されています(Facon 1992) |
| デメリット② | ごくまれに副脾がねじれて(捻転)血流が止まり、腹痛の原因になることがある(Pérez Fontán 2001) |
多くの人にとっては、副脾があることで生活上困ることはありません。
「副脾疑い」と言われたら?
健診の腹部エコーで「副脾疑い」とされたもののほとんどは、脾臓のそばにある脾臓と同じ見え方の丸い結節で、経過をみるだけで問題ありません。脾臓と見え方が違う、大きくなっている、膵臓の中にあるといった場合は、CTやMRIで詳しく調べます。膵内副脾のように診断が難しいときは、熱処理した赤血球を使う核医学検査(シンチグラフィ)で脾臓の組織かどうかを確かめることがあります(Ota 1997)。気になる症状や心配があれば、結果を持って医療機関で相談してください。
複数の脾臓を認める場合の鑑別疾患は?
複数の脾臓を認める場合、以下の状態を考える必要があります。
- 副脾
- 脾症(splenosis)
- 多脾症候群(polysplenia)
このうち副脾は上で説明したように、病的な意義はなくしばしば見られる正常変異です。
脾症(splenosis)
外傷や外科手術により脾臓が破裂して、腹腔内に逸脱した脾臓の組織が他の部位へ自己移植することで生じます。異所性の脾組織です。
小腸の漿膜面や肝臓、大網、腹膜や横隔膜面、胸腔などで起こることがあります。肝実質や胃壁に迷入することもあります。
外傷後5-10年後に発見されることが多いとされます2)。
関連記事:脾症(splenosis)のCT,MRI画像診断のポイント
多脾症候群(polysplenia)
文字通り、複数の脾臓が存在する疾患です。
先天的疾患であり、肝部の下大静脈の形成不全や消化管の回転異常などの他の奇形を伴うことがあります2)。
最後に
副脾についてまとめました。
- 副脾は脾臓の正常変異であり、症状もなく治療も必要ない。
- 副脾のサイズは数mm~2.5cm程度と小さく、脾臓の近くに存在する。
- 画像検査では脾臓と同じ信号のパターンとなる点が重要。
という点がポイントです。
参考になれば幸いです( ^ω^ )
1)臨床画像 SPECIAL 超音波診断の盲点(株式会社メジカルビュー社) P26
2)フィルムリーディング 4 肝・胆・膵・脾 P145
副脾でよくある疑問(Q&A)
Q. 副脾は何と読みますか?
「ふくひ」と読みます。英語ではaccessory spleenです。
Q. 「副膵」とは違うものですか?
違うものです。「副膵」は一般に、胃や十二指腸の壁など本来とは別の場所にある膵臓の組織(異所性膵)を指すことが多く、脾臓の組織である副脾とは別のものです。
▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧
あわせて読みたい:膵類上皮嚢胞と膵内副脾のCT・MRI画像診断
参考文献
- Mortelé KJ, Mortelé B, Silverman SG. CT features of the accessory spleen. AJR Am J Roentgenol. 2004;183(6):1653-7. PubMed
- Lake ST, Johnson PT, Kawamoto S, et al. CT of splenosis: patterns and pitfalls. AJR Am J Roentgenol. 2012;199(6):W686-93. PubMed
- Li BQ, Xu XQ, Guo JC. Intrapancreatic accessory spleen: a diagnostic dilemma. HPB (Oxford). 2018;20(11):1004-1011. PubMed
- Wong A, Fung KFK, Wong WC, et al. Multimodality imaging of developmental splenic anomalies: tips and pitfalls. Clin Radiol. 2022;77(5):319-325. PubMed
- Yildiz AE, Ariyurek MO, Karcaaltincaba M. Splenic anomalies of shape, size, and location: pictorial essay. ScientificWorldJournal. 2013;2013:321810. PubMed
- Facon T, Caulier MT, Fenaux P, et al. Accessory spleen in recurrent chronic immune thrombocytopenic purpura. Am J Hematol. 1992;41(3):184-9. PubMed
- Pérez Fontán FJ, Soler R, Santos M, et al. Accessory spleen torsion: US, CT and MR findings. Eur Radiol. 2001;11(3):509-12. PubMed
- Ota T, Tei M, Yoshioka A, et al. Intrapancreatic accessory spleen diagnosed by technetium-99m heat-damaged red blood cell SPECT. J Nucl Med. 1997;38(3):494-5. PubMed
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