先に結論:脾血管腫のCT・MRI
- 脾血管腫は脾臓の良性腫瘍で最も多いもので、多くは無症状で偶然見つかり、小さなものは経過観察となります(Willcox 2000)
- CT・MRIではT2強調像で白く、造影で周りから中心へゆっくり染まっていき、遅い相まで染まりが続くのが典型で、肝血管腫に似ますが、脾臓自体がまだらに染まるため早い相の見え方は分かりにくいことがあります
- 大きなものはまれに破裂や血小板減少(Kasabach-Merritt症候群)を起こします。リンパ腫・転移・過誤腫・リンパ管腫などとの区別が必要な場合はMRIで評価します
脾血管腫(splenic hemangioma)とは?
- 原因ははっきりしていない。
- 脾血管腫は脾臓の良性腫瘍として最多。しかしまれ。
- 無症状で偶然発見されることが多い。
- 大きくなると腹部膨満、腹痛などの症状を起こすこともある。
- 単発のことも多発のこともある。
- Klippel-Trenaunay-Weber症候群などの全身性血管腫症では、脾に多発性あるいはびまん性に血管腫を伴うことがある(脾のびまん性血管腫症)。
- 無症候で偶然発見される例が多い(Mayo Clinicの32例では80%)(Willcox 2000)。
- 大きなものが腫瘤として触知されることもある。
- 合併症:大きなものでは特発性破裂のおそれがあり(Choi 2018)、まれに血小板減少などの凝固異常(Kasabach-Merritt症候群)を伴う。
脾血管腫の画像所見は?
典型的には肝血管腫に類似するが、変性などにより充実性、嚢胞性、あるいはそれらの混在したものと様々な像を呈しうる。
CT所見:
- 低〜等吸収。石灰化を伴うことあり。
- ダイナミックで典型的に辺縁域の早期濃染→求心性の濃染の広がり。遷延性濃染を示す。肝血管腫に類似する。
ただし肝血管腫よりも癒合していくような辺縁域の結節状濃染は不明瞭(背景の脾実質の強く不均一な濃染によりマスクされてしまうため)。後期あるいは遅延相では、肝血管腫より不均一な斑状濃染のことが多い。 - 嚢胞を伴う場合は嚢胞は造影されない。
MR所見:
- T1強調像では、低〜等信号。
- T2強調像で高信号。大きいものでは合併する変化を反映して様々な信号。ダイナミックはCTと同じ。
- ダイナミックで辺縁より求心性に造影される。CTと同じ。28病変のMRI検討では、脾血管腫22病変のうち19病変がT2強調像で高信号、19病変が漸増性の求心性濃染を示し、遅延相で均一に染まった。一方、過誤腫は早期にびまん性・不均一に染まり遅延相でより均一になるため、早期相の染まり方が両者の区別に役立つ。
脾臓の造影CTが「まだら」に見えるのは異常?
正常の脾臓は、ダイナミックCTの動脈相でまだら・縞模様(弓状)に不均一に染まり、門脈相になると均一に染まります。赤脾髄と白脾髄で血流の速さが違うためで、異常ではありません(Lee 2016)。
- 動脈相のまだらな染まりを腫瘤と見誤らないよう、門脈相・平衡相でも残る結節かどうかを確かめる。
- 逆に、リンパ腫の患者で動脈相の正常なまだら模様が消えて均一に見えるときは、脾臓へのびまん性のリンパ腫浸潤の手がかりになる(Lee 2016)。
症例 60歳代男性

脾臓にダイナミックCTの早期相において辺縁から著明に造影され、平衡相では均一に造影される腫瘤あり。
脾血管腫を疑う所見です。
その背側には嚢胞あり。

MRIではT1強調像では周囲脾臓実質と比較して等信号〜やや低信号、T2強調像では周囲脾臓実質よりも高信号を示しています。

ダイナミックMRIではCTと同じように早期より辺縁から造影され、平衡相では均一に造影されています。
脾血管腫を疑う所見です。
脾血管腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 脾血管腫疑いと言われました。経過観察で大丈夫ですか?
A. 画像で診断した4cm以下の11例は経過観察のみで、平均2.9年の間に合併症はありませんでした(Willcox 2000)。大きいもの、大きくなるもの、典型的でないものは主治医と相談してください。
Q. エコー(超音波)ではどう見えますか?
A. 無症状の人で見つかる高エコーの腫瘤として最も多いのが脾血管腫ですが、悪性との区別が難しいこともあり、造影CTやMRIで確かめます(Abbott 2004)。
参考文献
- Abbott RM, Levy AD, Aguilera NS, et al. From the archives of the AFIP: primary vascular neoplasms of the spleen: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2004;24(4):1137-63. PubMed
- Kim N, Auerbach A, Manning MA. Algorithmic Approach to the Splenic Lesion Based on Radiologic-Pathologic Correlation. Radiographics. 2022;42(3):683-701. PubMed
- Ramani M, Reinhold C, Semelka RC, et al. Splenic hemangiomas and hamartomas: MR imaging characteristics of 28 lesions. Radiology. 1997;202(1):166-72. PubMed
- Elsayes KM, Narra VR, Mukundan G, et al. MR imaging of the spleen: spectrum of abnormalities. Radiographics. 2005;25(4):967-82. PubMed
- Willcox TM, Speer RW, Schlinkert RT, et al. Hemangioma of the spleen: presentation, diagnosis, and management. J Gastrointest Surg. 2000;4(6):611-3. PubMed
- Lee JE, Cho JS, Shin KS, et al. Diffuse Infiltrative Splenic Lymphoma: Diagnostic Efficacy of Arterial-Phase CT. Korean J Radiol. 2016;17(5):734-41. PubMed
- Choi W, Choi YB. Splenic embolization for a giant splenic hemangioma in a child: a case report. BMC Pediatr. 2018;18(1):354. PubMed
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