脾臓でT2WIで低信号を来す鑑別診断

  • siderotic nodules / Gamna–Gandy bodies(鉄沈着結節)
  • littoral cell angioma
  • Sclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)
  • inflammatory pseudotumor(炎症性偽腫瘍)/ IgG4関連脾病変
  • 肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、結核、真菌症など)
  • lymphoma(脾リンパ腫)
  • 転移性腫瘍
  • 血栓化・陳旧性出血を伴う血管腫/血管性病変
  • 脾梗塞(腫瘤様に見える場合)
  • 血管構造・フローボイド(偽病変)

1) 鉄沈着系(最重要)

脾 siderotic nodules(Gamna–Gandy bodies)

  • 門脈圧亢進やうっ血、慢性微小出血の反復で生じる鉄沈着結節である。
  • MRIでT2WIで多発点状〜小結節の低信号。T1WIでも低信号となり得る。T2*/SWIでbloomingが最も目立つ。造影では多くは明らかな増強に乏しい。
  • CTでは石灰化を伴う場合もあるが、石灰化なしでも成立する。小結節が低吸収〜目立ちにくいこともある。
  • 門脈圧亢進のサイン(脾腫、側副血行、静脈瘤、血小板低下)+SWIでの多発bloomingである。

症例 60歳代女性 肝硬変および門脈圧亢進

引用:radiopedia

脾腫を認め、脾臓内にT1WIおよびT2WIで低信号を示す多数の小病変を認め、Gamna-Gandy小体を疑う所見です。

背景に肝硬変および脾門部には側副血行路の発達も認めます。

Littoral cell angioma(脾洞内皮由来腫瘍)

  • 多発結節として出現し得る血管系病変である。
  • MRIで鉄沈着を伴う場合にT1/T2低信号になりやすい。大きさ・数は様々である。造影では低~中等度の増強、遅延で不均一などパターンは一定しにくい。CTでは等~低吸収で早期は造影乏しいことがある。
  • 多発+T2WI低+SWIで鉄、さらに脾腫や貧血などの併存所見があれば疑う。

2) 線維性・硬化性病変

Sclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)

  • まれな良性脾病変であるが、画像上は悪性に見えることがある。
  • T2WI低信号が比較的典型で、中心瘢痕や線維成分を反映する。造影では早期は周辺優位→遅延で中心へ向かう進行性増強、spoke-wheel様のパターンが示唆的である(常に出るわけではない)。
  • 単発が多いが、T2低+遅延相の進行性増強が揃えば強く疑う。

関連:脾臓のSANTとは?画像所見は?

炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor / IPT)・IgG4関連病変など

  • 線維成分が多いとT2WI低となり得る。遅延増強を示すことがある。
  • 脾単発腫瘤+遅延増強+全身のIgG4関連所見など、臨床情報とのセットで考える。

3) 肉芽腫性疾患(小結節・低信号寄り)

サルコイドーシス / 結核 / 真菌などの肉芽腫性病変

  • 多発小結節として出現し、T2低信号寄りになることがある。造影で目立たない〜淡いこともある。
  • 脾以外(肺・縦隔/肺門リンパ節、肝、骨髄など)の所見が決め手になりやすい。

4) 悪性腫瘍

リンパ腫

  • 脾の多発結節やびまん性浸潤を取り得る。T2WIは等~やや高信号が多いが、病変によっては相対的に低く見えることがある。
  • DWIで強い制限、脾門・腹部リンパ節腫大、全身所見(発熱・体重減少など)を重視する。

転移

  • 一般にT2WI高~等が多い。T2WI低のみで転移を強く疑う状況は限定的である。
  • 既知の原発、増大傾向、DWI、PET/CTなど総合判断が必要である。

5) その他

  • 脾梗塞・被膜下血腫:楔状・地図状の形態で“腫瘤”とは分ける。造影不良域として捉える。
  • フロー・ボイド/血管構造:T2低信号の結節様に見えることがある。連続スライスで追い、MRA/造影で確認する。
  • 部分容積:脾門部の血管、胃腸管ガス、横隔膜脚などで偽病変が生じ得る。

実戦アルゴリズム

  1. T2低信号の結節が多発したら、まずSWI/T2*で鉄沈着を確認する。
  2. SWIで多発bloomingが明瞭なら、siderotic nodules(Gamna–Gandy)を第一に、背景の門脈圧亢進を評価する。
  3. SWIが弱い/陰性で、遅延相で進行性増強があればSANTや線維性病変を上げる。
  4. DWIで強い制限があれば感染(微小膿瘍)やリンパ腫などを再評価し、臨床情報と突き合わせる。
  5. 脾外所見(肺門リンパ節、肝病変、骨髄、既知悪性腫瘍)を必ず拾い、単独所見で決め打ちしない。

参考文献

  • Elsayes KM, Narra VR, Mukundan G, Lewis JS Jr, Menias CO, Heiken JP. MR imaging of the spleen: spectrum of abnormalities. Radiographics. 2005;25(4):967-982. doi:10.1148/rg.254045154.
  • Kim N, Auerbach A, Manning MA. Algorithmic Approach to the Splenic Lesion Based on Radiologic-Pathologic Correlation. Radiographics. 2022;42(3):683-701. doi:10.1148/rg.210071.
  • Sagoh T, Itoh K, Togashi K, et al. Gamna-Gandy bodies of the spleen: evaluation with MR imaging. Radiology. 1989;172(3). doi:10.1148/radiology.172.3.2672093.
  • Kinoshita LL, Yee J, Nash SR. Littoral cell angioma of the spleen: imaging features. AJR Am J Roentgenol. 2000;174(2):467-469. doi:10.2214/ajr.174.2.1740467.
  • Lewis RB, Lattin GE Jr, Nandedkar M, Aguilera NS. Sclerosing angiomatoid nodular transformation of the spleen: CT and MRI features with pathologic correlation. AJR Am J Roentgenol. 2013;200(4):W353-W360. doi:10.2214/AJR.12.9522.

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