先に結論:脾臓のT2強調像で低信号の腫瘤

  • 脾臓でT2強調像で低信号の病変を見たら、まず鉄沈着(Gamna-Gandy小体:門脈圧亢進症)を考え、ほかに線維性病変(SANT・炎症性偽腫瘍)・肉芽腫(サルコイドーシスなど)を考えます
  • Gamna-Gandy小体はT2*・SWIでさらに黒く(blooming)見えるのが特徴です
  • リンパ腫・転移もT2で低め〜中間の信号を示すことがあるため、造影パターン・拡散強調像・経過とあわせて判断します
  • SANTは脾臓のまれな良性病変で、T2強調像で低信号・中心の線維性瘢痕・辺縁から中心へゆっくり染まる造影(spoke-wheel様)が手がかりです

脾臓でT2WIで低信号を来す鑑別診断

  • siderotic nodules / Gamna–Gandy bodies(鉄沈着結節)
  • littoral cell angioma
  • Sclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)
  • inflammatory pseudotumor(炎症性偽腫瘍)/ IgG4関連脾病変
  • 肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、結核、真菌症など)
  • lymphoma(脾リンパ腫)
  • 転移性腫瘍
  • 血栓化・陳旧性出血を伴う血管腫/血管性病変
  • 脾梗塞(腫瘤様に見える場合)
  • 血管構造・フローボイド(偽病変)

1) 鉄沈着系(最重要)

脾 siderotic nodules(Gamna–Gandy bodies、ガムナ ・ ガンディ結節(小体))

  • 門脈圧亢進やうっ血、慢性微小出血の反復で生じる鉄沈着結節である。
  • 門脈圧亢進症64例のMRI検討では8例にみられた(Sagoh 1989)。鎌状赤血球症やヘモクロマトーシスなどでも見られることがある。
  • MRIでT2WIで多発点状〜小結節の低信号。T1WIでも低信号となり得る。T2*/SWIでbloomingが最も目立つ。造影では多くは明らかな増強に乏しい。通常1cm以下。

症例 60歳代女性 肝硬変および門脈圧亢進

引用:Radiopaedia

脾腫を認め、脾臓内にT1WIおよびT2WIで低信号を示す多数の小病変を認め、Gamna-Gandy小体を疑う所見です。

背景に肝硬変および脾門部には側副血行路の発達も認めます。

関連記事:Gamna–Gandy小体(結節)のMRI画像診断のポイント

Littoral cell angioma(脾洞内皮由来腫瘍)

  • 多発結節として出現し得る血管系病変である。
  • MRIで鉄沈着を伴う場合にT1/T2低信号になりやすい。大きさ・数は様々である。造影では低~中等度の増強、遅延で不均一などパターンは一定しにくい。CTでは等~低吸収で早期は造影乏しいことがある。
  • 多発+T2WI低+SWIで鉄、さらに脾腫や貧血などの併存所見があれば疑う。

2) 線維性・硬化性病変

Sclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)

  • まれな良性脾病変であるが、画像上は悪性に見えることがある。
  • T2WI低信号が比較的典型で、中心瘢痕や線維成分を反映する。造影では早期は周辺優位→遅延で中心へ向かう進行性増強、spoke-wheel様のパターンが示唆的である(常に出るわけではない)。
  • 単発が多いが、T2低+遅延相の進行性増強が揃えば強く疑う。

SANTの病理・頻度・CT所見

  • 病理では、多数の血管腫様の結節が放射状に並び、中心に星形の線維性瘢痕とヘモジデリン(鉄)の沈着を伴います。T2強調像やDWIでの低信号は、このヘモジデリン沈着と線維成分を反映します(Wu 2024)。
  • 文献230例のまとめでは、女性が52.1%、年齢の中央値46歳で、56%は症状がなく偶然見つかっていました。報告例の多くは摘脾で診断されています(Aziret 2020)。
  • 手術で確認された10例のCT・MRIでは、境界の分葉状な単発腫瘤が多く、単純CTで脾臓よりやや低吸収が10例中8例でした。造影では10例全例で辺縁から中心へ向かう進行性の増強を示し、spoke-wheel様は3例、遅延相での中心瘢痕は8例で確認されました(Wu 2024)。
  • 画像だけでは血管肉腫・転移・リンパ腫などと区別しきれないことがあり、経過や病理での確認が必要になります。

関連:脾臓のSANTとは?画像所見は?

炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor / IPT)・IgG4関連病変など

  • 線維成分が多いとT2WI低となり得る。遅延増強を示すことがある。
  • 脾単発腫瘤+遅延増強+全身のIgG4関連所見など、臨床情報とのセットで考える。

3) 肉芽腫性疾患(小結節・低信号寄り)

サルコイドーシス / 結核 / 真菌などの肉芽腫性病変

  • 多発小結節として出現し、T2低信号寄りになることがある。造影で目立たない〜淡いこともある。
  • 脾以外(肺・縦隔/肺門リンパ節、肝、骨髄など)の所見が決め手になりやすい。

4) 悪性腫瘍

リンパ腫

  • 脾の多発結節やびまん性浸潤を取り得る。T2WIは等~やや高信号が多いが、病変によっては相対的に低く見えることがある。
  • DWIで強い制限、脾門・腹部リンパ節腫大、全身所見(発熱・体重減少など)を重視する。

転移

  • 一般にT2WI高~等が多い。T2WI低のみで転移を強く疑う状況は限定的である。
  • 既知の原発、増大傾向、DWI、PET/CTなど総合判断が必要である。

5) その他

  • 脾梗塞・被膜下血腫:楔状・地図状の形態で“腫瘤”とは分ける。造影不良域として捉える。
  • フロー・ボイド/血管構造:T2低信号の結節様に見えることがある。連続スライスで追い、MRA/造影で確認する。
  • 部分容積:脾門部の血管、胃腸管ガス、横隔膜脚などで偽病変が生じ得る。

脾臓MRIの基本と、脾門部腫瘤・低吸収域の考え方

  • 正常の脾臓のMRI:T1強調像では肝臓より低信号、T2強調像では肝臓より高信号です。造影の早い時相では縞模様・まだらに染まり、時間がたつと均一になります。早期相のまだらな濃染は正常の血流パターンなので、病変と間違えないようにします。
  • 脾門部の腫瘤:副脾(どの撮像法でも脾臓と同じ信号・同じ造影)、膵尾部の腫瘍、脾動脈瘤、リンパ節腫大、脾門近くにできたSANTなどの脾病変を考えます。まず脾臓と同じ性状かどうかを確認します。
  • CTでの脾臓の低吸収域:嚢胞、梗塞(楔状)、膿瘍、リンパ腫、転移、血管腫などがあり、形・造影パターン・臨床情報で絞り込みます。T2強調像で低信号なら、上に挙げた鉄沈着・線維性病変・肉芽腫を考えます。

実戦アルゴリズム

  1. T2低信号の結節が多発したら、まずSWI/T2*で鉄沈着を確認する。
  2. SWIで多発bloomingが明瞭なら、siderotic nodules(Gamna–Gandy)を第一に、背景の門脈圧亢進を評価する。
  3. SWIが弱い/陰性で、遅延相で進行性増強があればSANTや線維性病変を上げる。
  4. DWIで強い制限があれば感染(微小膿瘍)やリンパ腫などを再評価し、臨床情報と突き合わせる。免疫不全患者で脾臓に多発する小病変は、播種性真菌症や微小膿瘍であることが多い。また脾臓への転移はまれで、脾転移がある患者では通常ほかの部位にも病変を伴う。
  5. 脾外所見(肺門リンパ節、肝病変、骨髄、既知悪性腫瘍)を必ず拾い、単独所見で決め打ちしない。

あわせて読みたい:脾炎症性偽腫瘍の画像診断、脾臓の髄外造血の画像診断、原発性脾腫瘍の鑑別診断

参考文献

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  3. Sagoh T, Itoh K, Togashi K, et al. Gamna-Gandy bodies of the spleen: evaluation with MR imaging. Radiology. 1989;172(3):685-687. doi:10.1148/radiology.172.3.2672093.
  4. Kinoshita LL, Yee J, Nash SR. Littoral cell angioma of the spleen: imaging features. AJR Am J Roentgenol. 2000;174(2):467-469. doi:10.2214/ajr.174.2.1740467.
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  6. Abbott RM, Levy AD, Aguilera NS, et al. From the archives of the AFIP: primary vascular neoplasms of the spleen: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2004;24(4):1137-1163. PubMed
  7. Kamaya A, Weinstein S, Desser TS. Multiple lesions of the spleen: differential diagnosis of cystic and solid lesions. Semin Ultrasound CT MR. 2006;27(5):389-403. PubMed
  8. Aziret M, Yılmaz F, Kalpakçı Y, et al. Sclerosing angiomatoid nodular transformation presenting with thrombocytopenia after laparoscopic splenectomy – Case report and systematic review of 230 patients. Ann Med Surg (Lond). 2020;60:201-210. PubMed
  9. Wu Q, Wang M, Zhou M, et al. Sclerosing Angiomatoid Nodular Transformation of the Spleen: Radiological Findings and Radiological-pathological Correlation. Curr Med Imaging. 2024;20:e260423216201. PubMed

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