先に結論:脾臓のSANT
- SANT(硬化性血管腫様結節性形質転換)は、脾臓にできるまれな良性の血管性病変(非腫瘍性)で、多くは無症状で偶然見つかります。IgG4関連疾患との関係も指摘されています
- 画像ではT2強調像で低信号の腫瘤で、造影するとゆっくり、中心へ向かって車輪のスポークのように染まっていくのが特徴とされます
- リンパ腫・転移・血管肉腫・炎症性偽腫瘍などとの区別が画像だけでは難しく、脾臓摘出で診断されることが多い病変です
- SANTの意味は「Sclerosing(硬化性)・Angiomatoid(血管腫様)・Nodular(結節性)・Transformation(形質転換)」の頭文字で、がん(悪性腫瘍)ではありません
SANTの意味は?(日本語の名前)
「SANT」は脾臓の病変の英語名の頭文字をとった略語です。
| 頭文字 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| S | Sclerosing | 硬化性 |
| A | Angiomatoid | 血管腫様 |
| N | Nodular | 結節性 |
| T | Transformation | 形質転換(変化) |
2004年に25例の報告で名づけられた病変で、赤脾髄の組織が線維性の増殖に取り込まれた非腫瘍性の血管性病変と考えられています(Martel 2004)。
脾臓のSANTとは?
- Sclerosing angiomatoid nodular transformationの略。
- 脾臓赤色髄由来の非腫瘍性血管性病変。
- 肉眼的には多結節状の形態を示す。
- 年齢は幅広く、原著の25例では22〜74歳(平均48.4歳)で、女性に多かった(17例)。
- 原因は不明だが、反応性、IgG4、EBVなどの関与が考えられている。
- 症状は通常無症状。時に腹痛、腹部不快感や脾腫を伴う。SANTを提唱した25例の報告では、13例が無症状で偶然見つかり、摘脾後に再発した例はなかった。病理では赤脾髄の血管成分が線維性間質に取り込まれた非腫瘍性の変化と解釈されている。
- 通常は単発性だが、多発例の報告もある。
- 被膜を持たずに、周囲脾臓実質とは境界明瞭。
SANTの画像所見は?
- 画像所見の報告は少ないが、T2強調像低信号で、ダイナミックにおいて遷延性に造影されるパターンを呈するとされる。14例の検討では、CTで造影後に車輪状(spoke-wheel)の漸増性濃染がみられ、DWIでは多くが低信号を示し、PET-CTでは検査した全例にFDG集積(SUVmax 3.8〜5.1)を認めたと報告されています。
- 炎症性偽腫瘍と区別がつかないことがしばしばある。
- PET/CTで腫瘍は集積を認めるが、中心部に集積を認めないことがあり、prunes on bread と表現されることあり。
SANTのCT・MRI・PET所見のまとめ(文献の集計)
文献例をまとめたレビュー(Van den Eede 2022)では、各検査で次のような所見の頻度が報告されています。
| 検査 | 所見 | 頻度 |
|---|---|---|
| CT | 周囲の脾臓より低吸収の単発腫瘤 | 93.8%(45/48) |
| 造影CT | 動脈相で辺縁が染まり、遅い相で中へ向かって徐々に埋まる | 93%(27/29) |
| 造影CT | 車輪状(spoke-wheel)の造影 | 44%(13/29) |
| MRI T2強調像 | 低信号 | 65.6%(21/32) |
| MRI | 中心瘢痕 | 26%(6/23) |
| FDG-PET | 集積は軽度〜中等度(SUVmax中央値2.8、範囲2.0〜4.7) | 14例 |
SANTと区別が必要な脾臓の病変
| 病変 | SANTとの見分けの手がかり |
|---|---|
| リンパ腫 | 脾腫、腹腔内リンパ節腫大、FDGの強い集積、DWIでの拡散制限 |
| 血管腫 | T2強調像で目立つ高信号、多発 |
| 転移 | 原発巣と同様のFDGの強い集積 |
| 血管肉腫 | 遅い相での造影剤の洗い出し(washout)、浸潤性の発育 |
出典:Van den Eede 2022
参考)
症例 40歳代女性 超音波検査で偶然見つかった脾臓の腫瘤

引用:Radiopaedia(Sclerosing angiomatoid nodular transformation of the spleen)
MRI T2強調像の横断像です。脾臓に境界明瞭な円形の腫瘤があり、辺縁は低信号、中心部はやや高信号を示しています。この症例のダイナミックCTでは、中心部が遅れて造影される所見がみられ、摘脾でSANTと診断されました。
脾臓のSANTでよくある疑問(Q&A)
Q. SANTはがんですか?
A. がんではなく、良性の非腫瘍性病変と考えられています。最初の25例の報告では、摘脾後に再発した例はありませんでした(Martel 2004)。
Q. 脾臓をとる必要はありますか?
A. まれな病変で画像だけでは悪性との区別が難しいため、摘脾されることが多いのが現状です。一方で、典型的な画像所見(洗い出しがない、FDG集積が軽度、浸潤やリンパ節腫大がない)に針生検の結果がそろえば、摘脾せずに経過をみる選択肢も提案されています(Van den Eede 2022)。
あわせて読みたい:脾炎症性偽腫瘍の画像診断、脾血管腫のCT・MRI画像所見、原発性脾腫瘍の鑑別診断
参考文献
- Chen NX, Wang ML, Wang HX, et al. Sclerosing angiomatoid nodular transformation of the spleen: multimodality imaging features and literature review. BMC Med Imaging. 2023;23(1):50. PubMed
- Van den Eede S, Van de Voorde N, Vanhoenacker F, et al. Sclerosing Angiomatoid Nodular Transformation of the Spleen: A Diagnostic Conundrum. J Belg Soc Radiol. 2022;106(1):12. PubMed
- Martel M, Cheuk W, Lombardi L, et al. Sclerosing angiomatoid nodular transformation (SANT): report of 25 cases of a distinctive benign splenic lesion. Am J Surg Pathol. 2004;28(10):1268-79. PubMed
- Kuo TT, Chen TC, Lee LY. Sclerosing angiomatoid nodular transformation of the spleen (SANT): clinicopathological study of 10 cases with or without abdominal disseminated calcifying fibrous tumors, and the presence of a significant number of IgG4+ plasma cells. Pathol Int. 2009;59(12):844-50. PubMed
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