先に結論:脾臓の髄外造血
- 髄外造血(ずいがいぞうけつ、英語でextramedullary hematopoiesis:EMH)は、骨髄で十分に血液を作れないときに、骨髄以外(脾臓・肝臓・背骨の両わきなど)で血液を作る代わりの反応で、サラセミアなどの溶血性貧血・骨髄線維症などで起こります。腫瘍ではなく、体が足りない血液を補おうとする反応です
- 多くは脾腫として現れ、まれに腫瘤を作ります。MRIでは新しい造血巣はT2強調像で高信号・軽い造影、古い病変は鉄や脂肪によって信号が変わるのが特徴です
- 肝臓の髄外造血は多くが肝腫大として現れますが、まれな腫瘤型は肝細胞腺腫・肝細胞癌などに似ることがあります
- リンパ腫・転移と間違えないことが大切で、血液の病気の既往が診断の手がかりになります
髄外造血(extramedullary hematopoiesis)
・骨髄造血細胞の再生が不十分なときの代償性反応。
- 先天性溶血性貧血:サラセミア、鎌状赤血球症、遺伝性球状赤血球症などの慢性溶血性貧血
- 後天性骨髄置換性疾患:骨髄線維症、癌の骨転移・白血病・悪性リンパ腫による骨髄置換
・代表的な原因は骨髄線維症、骨髄を置き換えるびまん性の骨転移、白血病、鎌状赤血球症、サラセミアとされる(Roberts 2016)。
・肝、脾、胸部傍脊椎領域に多い。胸部では脂肪を含む傍椎体腫瘤として現れることが多く診断は比較的容易ですが、腹部では局所腫瘤を伴わない肝脾腫として現れることが多く、髄外造血と指摘するのは難しいとされます。
・通常、微視的なびまん性浸潤の形。肝、脾に限局性腫瘤としてみられることは稀。
・脾の限局的髄外造血巣は単発性のことも多発性のこともある。・髄外造血は肝・脾・リンパ節に起こり、最も多いのは傍椎体領域とされる。画像所見は非特異的なため、慢性溶血性貧血・サラセミア・骨髄線維症など造血不全の背景をもつ患者で腫瘤を見たときに、髄外造血を鑑別に挙げることが重要である。
髄外造血とは:ことばの意味
「髄外」は骨髄の外という意味で、髄外造血は骨髄以外の場所で赤血球・白血球・血小板のもとになる細胞が作られることを指します。胎児期には肝臓や脾臓が血液を作っており、骨髄の働きが足りなくなると、こうした場所や傍椎体などで造血が再び起こると考えられています。
部位ごとの見え方
| 部位 | よくある見え方 | 診断のポイント |
| 胸部の傍椎体 | 脂肪を含む傍椎体腫瘤 | 典型像なら診断に迷うことは少ない |
| 肝臓・脾臓 | 腫瘤を伴わない肝脾腫が多い | 非特異的で、指摘が難しい |
| 肝・脾・腎周囲・腹膜の軟部腫瘤 | 脂肪を含まないことが多い | リンパ腫・転移・肉腫との区別に生検が必要なことがあり、出血しやすいため計画が大切 |
(Roberts 2016)
肝臓の髄外造血
肝臓は胎児期に血液を作っていた臓器です。腹部の髄外造血は腫瘤を伴わない肝脾腫として現れることが最も多く(Roberts 2016)、肝臓では類洞に沿ったびまん性の浸潤が多く、腫瘤を作るのはまれです(Cardona-Rodriguez 2026)。まれな腫瘤型は、ほかの病気に似ることがあります。
| 似て見えた病気 | 報告された所見 |
| 肝細胞腺腫などの多血性腫瘍 | 骨髄線維症の例で、造影CT・MRIとも均一で持続する濃染を示した(Lee 2008) |
| 肝細胞癌・肝内胆管癌 | 動脈相の不均一な濃染と後期相の相対的な低吸収を示し、生検で髄外造血と判明した(Cardona-Rodriguez 2026) |
| 胆管を取り巻く病変 | 骨髄線維症の例で、肝内胆管のまわりを均一な低吸収の組織が取り囲んだ(La Fianza 2010) |
疑う手がかりは造血不全の背景と、脾腫・傍椎体腫瘤・骨髄信号の変化など他の部位の所見です。生検する場合は出血しやすさを踏まえた計画が必要です(Roberts 2016)。
髄外造血の画像所見
・限局性髄外造血巣は造血能と脂肪・鉄沈着量が画像に反映
▶CT所見:
・わずかに低吸収、軽度の造影効果
▶MRI所見:
・信号強度は造血能と脂肪・鉄沈着量に依存。
・活動性の新しい造血巣は、赤血球性および骨髄球性の未熟あるいは成熟細胞より成る。
- T1強調像:中間信号、T2強調像:高信号、造影MR:軽度濃染
・非活動性の古い病変は、脂肪組織と多量の鉄沈着を伴う。
- T1強調像およびT2強調像:低信号(鉄沈着)あるいは高信号(脂肪浸潤)
・chemical shift imagingで鉄あるいは脂肪を反映。
症例 70歳代男性

引用:Radiopaedia(Extramedullary hematopoiesis – spleen)
慢性貧血のある症例の造影MRI(冠状断)です。著明な脾腫があり、脾臓の中に周囲より造影の弱い腫瘤状の病変がみられます(上極)。骨髄の信号も不均一で、脾臓の髄外造血と診断されました。
参考文献
- Roberts AS, Shetty AS, Mellnick VM, et al. Extramedullary haematopoiesis: radiological imaging features. Clin Radiol. 2016;71(9):807-14. PubMed
- Georgiades CS, Neyman EG, Francis IR, et al. Typical and atypical presentations of extramedullary hemopoiesis. AJR Am J Roentgenol. 2002;179(5):1239-43. PubMed
- Orphanidou-Vlachou E, Tziakouri-Shiakalli C, Georgiades CS. Extramedullary hemopoiesis. Semin Ultrasound CT MR. 2014;35(3):255-62. PubMed
- Lee IJ, Kim SH, Kim DS, et al. Intrahepatic extramedullary hematopoiesis mimicking a hypervascular hepatic neoplasm on dynamic- and SPIO-enhanced MRI. Korean J Radiol. 2008;9 Suppl:S34-8. PubMed
- Cardona-Rodriguez LE, Ortiz-García MA, Gómez-Figueroa IO, et al. When Marrow Mimics Malignancy: Tumefactive Hepatic Extramedullary Hematopoiesis Presenting as a Hypervascular Liver Mass. Cureus. 2026;18(7):e112274. PubMed
- La Fianza A, van der Byl G, Maccabelli G, et al. CT and MR findings in extramedullary haematopoiesis with biliary system encasement: a case report. J Radiol Case Rep. 2010;4(11):1-8. PubMed
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