胸部・腹部・骨盤のCTには、いつも脊椎と骨盤の骨が写っています。臓器を見終わったあとに骨条件(骨が見やすいウィンドウ)に切り替えて、基本的にどのようなことに着目して読影するべきなのでしょうか?
- 骨の濃さ(骨密度)
- 骨折(椎体の高さ・後壁、骨盤輪)
- 溶骨性の病変(骨が溶けて黒く抜ける)
- 造骨性・硬化性の病変(骨が白く濃くなる)
- 変性(椎間板・骨棘・終板)
- 炎症・感染(終板の破壊)
- 骨の周囲(脊柱管・傍椎体の軟部・腸腰筋)
の有無についてまずは読影をしてみましょう。
骨の所見は、目的の臓器ではないために写っていても報告されないことが多いのが落とし穴です。以下、代表的な所見ごとに、鑑別診断と次に見るポイントを解説します。
先に結論:CTの骨条件で脊椎・骨盤を見るときの7つのチェックポイント
- 骨の濃さ:椎体の海綿骨が黒っぽければ骨粗鬆症を疑う。CT値を測ると目安になる
- 骨折:矢状断で椎体の高さを1つずつ比べる。後壁が壊れていれば破裂骨折。骨盤は輪として左右を見る
- 溶骨性病変:骨転移・骨髄腫が代表。骨皮質の途切れ、椎弓根の消失、軟部の塊を見る
- 造骨性病変:造骨性転移か、骨島などの良性か。辺縁の形とCT値で見当をつける
- 変性:骨棘・椎間板の変性・シュモール結節・DISH。骨折や感染と取り違えない
- 炎症・感染:椎間板をはさむ上下の終板が壊れていれば化膿性脊椎炎を考える
- 周囲:脊柱管に骨片や腫瘍がはみ出していないか、傍椎体・腸腰筋に膿瘍や腫瘤がないか
1. 骨の濃さ(骨密度・骨粗鬆症)
椎体の海綿骨は、骨粗鬆症では網目が粗くなり、全体に黒っぽく見えます。目で見た印象だけでなく、腰椎(第1腰椎)の海綿骨のCT値が目安になります。CTと骨密度検査(DXA)を受けた1,867人の検討では、第1腰椎のCT値が160HU以下で骨粗鬆症の感度90%、110HUを基準にすると特異度90%超でした。造影剤の有無で成績は変わらず、中等度以上の椎体骨折があった119人のうち52.1%は、DXAでは骨粗鬆症の範囲に入っていませんでした(Pickhardt 2013)。
- 測り方:第1腰椎の椎体の中央の海綿骨に関心領域を置き、皮質や骨島を避ける。椎体の数え方は椎体の数え方と移行椎を参照
- 主な原因・鑑別:閉経後・加齢の骨粗鬆症、ステロイドの長期使用、副甲状腺機能亢進症など。骨がびまん性に黒く、まだらな場合は多発性骨髄腫も考えます
- 次に見るもの:椎体骨折がないか(次の節)、骨密度検査(DXA)で確かめるかを主治医と相談します
2. 骨折(脊椎・骨盤)

腰椎CTの骨条件の矢状断像で、第1腰椎に水平方向の骨折線(矢印)があり、椎体の後ろ側(後壁)まで及んでいます。詳しくは圧迫骨折と破裂骨折の違いの記事へ。
椎体の骨折
- 見落としが多い:腹部CTとDXAを受けた2,041人を見直すと、中等度以上の椎体圧迫骨折が97人にあり、そのうち81人(84%)は撮影時の報告に書かれていませんでした(Carberry 2013)。60歳以上で腹部CTを受けた1,112人の検討でも、16.8%に椎体骨折があり、新しく出た骨折や知られていなかった骨折の報告率は30%でした(Wiklund 2024)。横断像だけでなく、矢状断で椎体の高さを上から順に比べるのが対策です
- 圧迫骨折か破裂骨折か:椎体の前だけがつぶれていれば圧迫骨折、後壁まで壊れて骨片が脊柱管に出ていれば破裂骨折です。新しい骨折か古い骨折かはCTだけでは決めにくく、MRIのSTIR像が役立ちます(新しい圧迫骨折と古い圧迫骨折の見分け方)
- 外傷:鈍的外傷で胸腰椎の損傷を調べる検査は、単純X線より感度が高い多列CTが標準とされています(Sixta 2012)。シートベルト損傷では椎体を水平に割るChance骨折と、腸管損傷の合併に注意します
- 病的骨折:骨転移による骨折では、椎弓根まで溶けている、椎体の後ろが外へふくらむ、軟部の塊があるといった所見が手がかりです(椎体骨転移と骨粗鬆症による圧迫骨折の見分け方)
骨盤の骨折

1年半前のCT(左)と比べると、右では左の恥骨と仙骨の両側に骨折を疑う変化(赤丸)が出ています。詳しくは骨盤脆弱性骨折(FFP)のRommens分類の記事へ。
- 骨盤は「輪」で見る:前(恥骨)に骨折があれば、後ろ(仙骨・仙腸関節)にも骨折がないかを探します(骨盤骨折の分類とCT画像所見)
- 高齢者の仙骨の脆弱性骨折:CTでは仙骨翼の海綿骨の硬化として見え、骨折線ははっきりしないこともあります(Rickert 2022)。高エネルギー外傷のない60歳以上の77人の検討では、感度は単純X線28.5%、CT94.2%で、MRIはすべての骨折を描出しました(Yamauchi 2022)。腰痛やお尻の痛みでCTに所見が乏しいときはMRIを考えます。痛む場所と離れた骨折は痛む場所と違うところの骨折にまとめています
3. 溶骨性の病変(骨が溶ける)

CTの骨条件で、肋骨の一部が溶けて骨の輪郭が途切れ、軟部の塊に置き換わっています(矢印)。詳しくは溶骨性骨転移と造骨性骨転移の違いの記事へ。
- 主な原因・鑑別:骨転移(肺癌・腎癌・甲状腺癌など)、多発性骨髄腫、血管腫、良性腫瘍、感染など(溶骨性病変を来す疾患の鑑別)
- 悪性を疑う所見:骨皮質の途切れ、骨の外への軟部の塊、境界がはっきりしない虫食い状の破壊、椎弓根の消失
- 多発性骨髄腫:小さな打ち抜き像が多発します。国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)は、骨病変の評価の最初の画像検査として全身低線量CTの撮り方と読み方の推奨を示しています(Moulopoulos 2018)
- 脊椎の安定性:脊椎転移で骨折や麻痺の危険があるかは、場所・痛み・溶骨か造骨か・アライメント・椎体のつぶれ・後方要素の病変を点数にするSINSという考え方で評価します(Fisher 2010)

第9胸椎に限られた透亮像があり、中に太くなった骨梁が点状(ドット状)に見えます。溶骨性病変に見えても、この形なら良性の椎体血管腫を考えます。詳しくは椎体血管腫のCT・MRI画像所見の記事へ。
4. 造骨性・硬化性の病変(骨が白くなる)

骨盤CTの骨条件で、右腸骨に小さな骨硬化性の病変があり、辺縁に短い棘状の突出(矢印)が見えます。骨島の典型的な形です。詳しくは骨島とは?骨転移との違いの記事へ。
- 主な原因・鑑別:骨島(enostosis)、造骨性骨転移(前立腺癌・乳癌など)、治療後の転移、Paget病、骨折の治りかけなど(造骨性(硬化性)骨病変の鑑別)
- CT値は目安:未治療の造骨性転移と骨島を比べた研究では、平均CT値は骨島1,190HU、転移654HUで、平均885HU・最大1,060HUを基準にすると感度・特異度とも95〜96%でした(Ulano 2016)。ただし生検を受けた患者で骨島以外の良性病変も含めると、同じ基準の感度は大きく下がり、良性と悪性を区別できませんでした(Azar 2021)。CT値は「骨島らしい」の補強にとどめ、形・大きさの変化・がんの既往と合わせて判断します
- 次に見るもの:以前のCTとの比較、骨シンチ、MRI、PET-CTなど(骨シンチの見方と偽陽性)
偶然見つかった骨の病変には、米国骨軟部放射線学会のBone-RADSという考え方があります。CTでは病変が透亮性か硬化性・混合性かで流れが分かれ、「そのままでよい」「別の画像検査」「経過観察」「生検・腫瘍専門への紹介」の4つに振り分けます(Chang 2022)。
5. 変性(椎間板・骨棘・終板)
- 骨棘・椎間板の狭小化・真空現象:加齢による変化です。4つの変化(椎間板・椎体・椎間関節・ルシュカ関節)は変形性脊椎症とは?で図にしています
- シュモール結節:椎間板が終板を押して椎体にくぼみを作るもの。腹部CT2,262人の検討では19%に見られました(Que 2025)。骨転移や骨折と取り違えないようにします
- DISH・強直性脊椎炎:椎体の前を流れるように骨化するのがDISH、仙腸関節炎と竹の節状の脊椎が強直性脊椎炎の特徴です。どちらも背骨が一本の棒のように硬くなり、軽い外傷でも折れやすいため、外傷のCTでは骨折線を丁寧に探します
- 脊椎分離症:椎弓の関節突起間部の途切れ。骨折と区別が必要な癒合不全も含めて椎弓の癒合不全・欠損を参照してください
6. 炎症・感染(化膿性脊椎炎)
椎間板をはさむ上下の椎体の終板が、両方とも不整に壊れているときは、化膿性脊椎炎・椎間板炎を考えます。変性による終板の変化とは、骨の破壊の強さ、傍椎体の軟部の腫れ、腸腰筋の膿瘍があるかで見分けます(化膿性脊椎炎・椎間板炎)。CTで疑ったら、炎症の広がりや硬膜外膿瘍の有無はMRIで評価します。
7. 骨の周囲(脊柱管・傍椎体・仙骨)
- 脊柱管:破裂骨折の骨片、転移の軟部の塊が脊柱管にはみ出していると、脊髄・馬尾の圧迫の危険があります
- 傍椎体・腸腰筋:左右の腸腰筋の太さを比べ、膿瘍・血腫・腫瘍を探します
- 仙骨:仙骨の神経孔が広がっていれば神経根嚢胞(Tarlov嚢胞)、仙骨を壊す腫瘍なら脊索腫なども候補になります
骨で見落としやすい場所と、確認のしかた
| 場所 | 見落としやすい理由 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 椎体の高さ(圧迫骨折) | 横断像では高さの変化が分からない | 矢状断で上から順に高さを比べる(Carberry 2013) |
| 椎弓根・後方要素 | 椎体ばかり見て、後ろの骨を見ない | 横断像で椎弓根の左右差、骨皮質の途切れを確認する |
| 仙骨・仙腸関節 | 腸管ガスや撮影範囲の端で見にくい | 冠状断で仙骨翼の硬化や骨折線を探す |
| 肋骨・胸骨 | 胸部・腹部CTで骨条件に切り替えずに終わる | 骨条件で肋骨を1本ずつ追う |
| 撮影範囲の端 | 上腕骨・大腿骨の近位など、目的外の骨 | 最初と最後の数枚まで骨条件で見る |
- 以前のCTと比べる:新しく出た骨硬化・溶骨、椎体の高さの低下は、比較で初めて気づくことが多い所見です。
- ウィンドウを変える:骨条件だけでなく、軟部条件で骨の外の塊や脊柱管の中を確認します。
脊椎をMRIで見るときの順番は脊椎MRIの読み方、腹部全体の流れは腹部CTの読み方にまとめています。
脊椎・骨盤の骨の読影でよくある疑問(Q&A)
Q. 腹部のCTで「骨粗鬆症の疑い」と書かれていました。
A. CTの椎体のCT値は骨粗鬆症の目安になり、第1腰椎で110HUを基準にすると、骨粗鬆症を見分ける特異度が90%を超えたという報告があります(Pickhardt 2013)。ただし診断は骨密度検査(DXA)などで行うため、主治医に相談してください。
Q. 「骨に白い点がある」と言われました。転移ですか?
A. 多くは骨島という良性のもので、辺縁の棘のような形や、CT値の高さが手がかりです(Ulano 2016)。がんの治療中の方や、以前のCTより大きくなっている場合は、骨シンチやMRIで確かめます。
Q. 背骨の圧迫骨折は、CTで分かりますか?
A. 矢状断で見ると分かることが多いですが、腹部CTでは報告されないことが多いという研究があります(Carberry 2013、Wiklund 2024)。新しい骨折か古い骨折かはMRIが得意です。
まとめ
CTの骨条件で脊椎・骨盤を見るときは、
- 骨の濃さ(第1腰椎のCT値)
- 矢状断での椎体の高さ・後壁、骨盤輪の前後
- 溶骨性病変(骨皮質の途切れ・軟部の塊・椎弓根)
- 造骨性病変(骨島か転移か)
- 変性(骨棘・シュモール結節・DISH)
- 終板の破壊(化膿性脊椎炎)
- 脊柱管・傍椎体・腸腰筋
を順に確認し、必要に応じてMRI・骨シンチ・PET-CT・骨密度検査と組み合わせて判断します。背中や腰の強い痛み、手足のしびれや力の入りにくさ、転んだあとの痛みなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
参考文献
- Pickhardt PJ, Pooler BD, Lauder T, et al. Opportunistic screening for osteoporosis using abdominal computed tomography scans obtained for other indications. Ann Intern Med. 2013;158(8):588-95. PubMed
- Carberry GA, Pooler BD, Binkley N, et al. Unreported vertebral body compression fractures at abdominal multidetector CT. Radiology. 2013;268(1):120-6. PubMed
- Wiklund P, Buchebner D, Geijer M. Vertebral compression fractures at abdominal CT: underdiagnosis, undertreatment, and evaluation of an AI algorithm. J Bone Miner Res. 2024;39(8):1113-1119. PubMed
- Sixta S, Moore FO, Ditillo MF, et al. Screening for thoracolumbar spinal injuries in blunt trauma: an Eastern Association for the Surgery of Trauma practice management guideline. J Trauma Acute Care Surg. 2012;73(5 Suppl 4):S326-32. PubMed
- Rickert MM, Windmueller RA, Ortega CA, et al. Sacral Insufficiency Fractures. JBJS Rev. 2022;10(7). doi:10.2106/JBJS.RVW.22.00005. PubMed
- Yamauchi T, Sharma S, Chandra S, et al. Superiority of MRI for Evaluation of Sacral Insufficiency Fracture. J Clin Med. 2022;11(17):4968. PubMed
- Moulopoulos LA, Koutoulidis V, Hillengass J, et al. Recommendations for acquisition, interpretation and reporting of whole body low dose CT in patients with multiple myeloma and other plasma cell disorders: a report of the IMWG Bone Working Group. Blood Cancer J. 2018;8(10):95. PubMed
- Fisher CG, DiPaola CP, Ryken TC, et al. A novel classification system for spinal instability in neoplastic disease: an evidence-based approach and expert consensus from the Spine Oncology Study Group. Spine (Phila Pa 1976). 2010;35(22):E1221-9. PubMed
- Ulano A, Bredella MA, Burke P, et al. Distinguishing Untreated Osteoblastic Metastases From Enostoses Using CT Attenuation Measurements. AJR Am J Roentgenol. 2016;207(2):362-8. PubMed
- Azar A, Garner HW, Rhodes NG, et al. CT Attenuation Values Do Not Reliably Distinguish Benign Sclerotic Lesions From Osteoblastic Metastases in Patients Undergoing Bone Biopsy. AJR Am J Roentgenol. 2021;216(4):1022-1030. PubMed
- Chang CY, Garner HW, Ahlawat S, et al. Society of Skeletal Radiology- white paper. Guidelines for the diagnostic management of incidental solitary bone lesions on CT and MRI in adults: bone reporting and data system (Bone-RADS). Skeletal Radiol. 2022;51(9):1743-1764. PubMed
- Que Y, Luo X, Xia X, et al. Subtype analysis of Schmorl’s nodes in the lumbar spine and the association with lumbar degeneration: a retrospective evaluation of 2262 abdominal CT scans. Eur Spine J. 2025;34(5):1722-1730. PubMed
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