先に結論:椎体骨転移と骨粗鬆症による圧迫骨折の見分け方

骨転移による病的骨折 骨粗鬆症による圧迫骨折
椎体の形 後ろの壁が背側にふくらむ(凸) 後ろの壁は保たれ、前がつぶれる(くさび状)
範囲 椎弓根など後方の骨まで及ぶ、椎体全体が置きかわる 椎体内にとどまる
MRI T1強調像で椎体全体〜椎弓根が低信号、硬膜外・傍椎体の腫瘤、拡散強調像で高信号 骨折線に沿った帯状の変化、正常な骨髄(脂肪)が残る、液体の線(fluid sign)
CT 骨の破壊 骨折線、椎体内のガス(vacuum phenomenon)

骨転移は胸腰椎の椎体の後方部分から始まりやすく、椎弓根の破壊(pedicle sign)は転移を強く疑う所見です。がんの既往がある方の新しい圧迫骨折では、転移の可能性をまず考えます。

T2強調像やSTIRで、骨折した終板に接して脳脊髄液のような高信号の線・三角形(fluid sign)が見えるときは、骨粗鬆症などによる良性の骨折に多い所見です。ただし転移でもまれに見られるため、これだけで決めず、形や範囲とあわせて判断します(Baur 2002)。

椎体骨転移の特徴

  • 特に胸腰椎に多い。頸椎の頻度はやや少ない。
  • 転移巣は椎弓などの後方成分よりも椎体に好発する。なかでも椎体の後方にまず転移巣を作り、腫大し、椎弓根など後方成分へ浸潤をする。CTでの検討では、椎体に病変がないまま椎弓根だけが破壊される例はみられず、椎弓根の破壊は椎体病変に続いて起こると報告されています。単純X線写真では椎弓根の破壊が最も目につく所見ですが、椎弓根が転移の初発部位というわけではありません。
症例 70歳代女性 肺癌 骨転移

bonemeta

椎体の後方部分に骨硬化像あり。

それが腫大して椎弓根など後方へ進展していく様子がわかります。

  • 片側あるいは両側椎弓根破壊は椎弓根徴候(pedicle sign)と呼ばれ、転移を強く示唆する所見であるが、これが見られたときには浸潤はかなり広がっている。
症例 70歳代男性 肺癌の多発椎体骨転移

vertebonemeta

Th12にT2WIで低信号の腫瘤性病変あり。

椎体左後方から椎弓根に認めており、骨転移を疑う所見です。

動画でチェックする
なぜ椎体の後方に転移巣を作りやすいか?
  • Batson静脈叢と密に連続するbasivertebral veinは、椎骨への血行性転移の主な経路で、背側に位置する。
  • そのため、椎体の前方よりも後方部分に転移が生じやすい機序となっている。

骨転移のCT所見(溶骨性・造骨性・混合性)

CTでは、骨転移は骨の壊れ方によって3つの型に分けて考えます。原発巣によって出やすい型があり、原発の推定にも役立ちます。

型 CTでの見え方 代表的な原発巣
溶骨性(osteolytic) 骨が溶けて黒く(低吸収に)抜ける。皮質の破壊、骨外への腫瘤 肺癌、腎細胞癌、甲状腺癌、肝細胞癌など
造骨性(osteoblastic) 骨が白く(高吸収に)硬くなる。斑状〜椎体全体の硬化 前立腺癌、乳癌の一部など
混合性(mixed) 溶骨と硬化が混ざる 乳癌、肺癌など
  • CTは骨の壊れ方や骨折の危険を見るのに向いていますが、骨梁が壊れる前の骨髄の中だけの転移は写りにくいことがあります。67論文のメタ解析では、患者ごとの感度はCT 72.9%に対してMRI 90.6%でした(Yang 2011)。
  • CTで椎体を見るときは、骨条件の矢状断(MPR)で椎体の後縁・椎弓根・終板を上から下まで確認すると、小さな溶骨や病的骨折を拾いやすくなります。

転移性骨腫瘍のMRI所見

撮影条件 intensity
T1強調像 low
T2強調像 high-さまざま
STIR/脂肪抑制T2強調像 high(T2WIより捉えやすい)
T1強調像造影Gd 増強

成人の椎体骨髄は多量の脂肪を有しているため、T1強調像では明瞭なコントラストとなるが、T2強調像ではコントラストは一定でなく、腫瘍の区別がつかないこともある。STIR(fsT2WI)の方がまだ捉えやすい。

症例 上記と同じ症例

vertebonemeta1

T1強調像で低信号、T2強調像で淡い低信号、STIRで高信号を示しています。

多発骨転移を疑う所見です。

STIRで高信号を認めた場合、圧迫骨折の場合は新旧の鑑別に用いられます(STIRで高信号を示す圧迫骨折は急性期の圧迫骨折)が、転移の場合は、新旧関係なく高信号を示すので注意が必要です。

鑑別にあたり注意する事

  • 年長者では、椎体骨髄が著明に不均一となることがある。
  • 慢性貧血患者では、骨髄内の鉄の含有量が増加するため、大部分のシークエンスで骨髄は低信号となる。
  • 小児の脊椎は赤色髄によりT1強調像で低信号となるため腫瘍の検出が難しい。T2強調像では、病変が高信号となり、明瞭となる(flip-flop sign)。
  • 骨転移巣と正常赤色髄の鑑別点としては, T1強調像で低信号領域内に複数の高信号域(脂肪に近い)を認める場合には“bull‘s eye sign”と呼ばれ、正常赤色髄を示す所見である。T2強調像で病巣周囲に高信号域を認める場合(halo sign)は、転移を示唆する所見である。

骨粗鬆症に伴う圧迫骨折との鑑別診断

MRIでの鑑別の5ポイントまとめ

病的骨折(転移) 圧迫骨折(機械的)
①椎体背側面の形 背面に凸 直線状
②T1で正常isoと異常lowが混在する場合 椎間板に垂直・平行など 椎間板に平行
③後方要素への進展 高頻度 なし
④周囲への進展 時にあり なし
⑤液体徴候(fluid sign) 稀 高頻度(40%)

椎体背側面の形は、傾向として、転移による病的骨折の場合は背面に凸、骨粗鬆症による機械的な圧迫骨折の場合は、直線状もしくは腹側に凸の傾向があります。

なお、後ろの壁が「全体的になだらかに凸」になるのは悪性に関連する一方、骨折片が一部だけ後ろに出っ張る(局所的な凸・後方への転位)ものは良性側の所見とされています(Thawait 2012)。

左側は肺がんの多発椎体転移であり、椎体の一つが圧迫骨折をきたしています。

背側に凸なのがよくわかります。

一方で右側は骨粗鬆症による機械性の圧迫骨折です。

椎体の形状は基本的に直線的です。もちろん辺縁は背側にも突出していますが、椎体の形状という意味では、背側に凸ではありません。

その点を注意しましょう。表の液体徴候(fluid sign)は、骨折した終板に接して脳脊髄液と同じような信号を示す線状・三角形・限局性の領域です。急性の骨粗鬆症性圧迫骨折では40%(52例中21例)に見られたのに対し、腫瘍性の圧迫骨折では6%(35例中2例)にとどまりました。

化学シフト画像(in-phase/opposed-phase)も鑑別の手がかりになります。正常な骨髄や良性の病変は脂肪を含むため、opposed-phaseで信号が下がります。椎体骨髄の検討では、opposed-phaseでの信号低下は正常椎体で平均58.5%、良性骨折で平均49.3%だったのに対し、転移ではほとんど下がらないか上昇(平均2.8%)していました(Zajick 2005)。ただし値には重なりがあるため、他の所見とあわせて判断します。

fluid sign(液体徴候)とは:骨折線に沿った液体の帯

fluid signは、T2強調像やSTIRで、骨折した終板に接して見える脳脊髄液と同じような信号の領域です。MRI画像上は、線状・三角形・限局した塊状のいずれかの形をとります(Baur 2002)。

見るポイント 内容
場所 骨折した終板に接する(椎体の中心や後方の腫瘤の中ではない)(Baur 2002)
信号 T2強調像・STIRで脳脊髄液と同程度の高信号(Baur 2002)
形 線状が最も多く、三角形、限局した領域もある。87人の検討では、見られた23か所のうち線状16、三角形5、限局性2(Baur 2002)
頻度 急性の骨粗鬆症性圧迫骨折で40%、腫瘍性の圧迫骨折で6%(Baur 2002)
病理 骨壊死・浮腫・線維化が見つかった(Baur 2002)。手術例20人の検討では、fluid signは椎体の骨壊死と有意に関連し、受傷後5か月以内に見られました(Lin 2013)
  • CTの椎体内ガス(vacuum phenomenon)と同じ場所を見ています。CTで椎体内ガスのあった骨粗鬆症性骨折では、MRIでも同じ位置に液体のような信号が90%(27/30か所)でみられました。この液体は仰向けで撮影している間に出現したり増えたりする、姿勢に依存して変わる所見です(Linn 2009)
  • 31研究・1,685人をまとめたメタ解析では、fluid signは「良性の骨折に関連する所見」として、帯状の異常信号や、後ろの壁の一部だけが出っ張る形とともに挙げられました。一方、椎弓根や後方成分への進展、傍椎体や硬膜外の腫瘤、椎体全体の骨髄の置きかわり、後ろの壁がなだらかに全体的に凸になる所見は悪性に関連していました(Thawait 2012)
  • fluid signがないからといって転移とは限りません。骨粗鬆症性骨折でも約6割では見られません(Baur 2002)。逆に転移の骨折でも2/35(6%)で見られています(Baur 2002)。他の所見とあわせて総合的に判断します

fluid signがあれば骨折が新しい、骨粗鬆症性、と単純に決めるのではなく、「骨折線に沿った液体の帯は良性骨折を支持する材料の1つ」と覚えると、誤りが少なくなります。

 

CT(MPR)での鑑別

病的骨折(転移) 圧迫骨折(機械的)
・皮質の破壊・海綿骨の破壊

・終板の破壊

・椎弓根の破壊

・皮質の骨折線・海綿骨の骨折線

・骨硬化

・椎体内ガス(vacuum phenomenon)

その他の鑑別点

以下の場合は転移を考慮

  • 頸椎の病変の場合(骨粗鬆症では稀。)
  • 椎体全体の圧排(骨粗鬆症の圧壊は椎体前方2/3に見られ、後方部分は保たれることが多い。)
  • 椎体全体に硬化像(ivory vertebra):前立腺癌などの造骨性転移、悪性リンパ腫(特にホジキンリンパ腫)、パジェット病など。
その他
  • 胸骨に骨破壊性変化を見た場合には転移を考える必要があり、特に乳癌患者では、骨シンチグラフィで胸骨に単発の病変を認めた場合でも、約76%(34例中26例)が転移であったと報告されている。
  • 長管骨では最初に骨髄腔に転移が生じ、引き続き骨皮質が破壊される。頻度は低いが特徴的な所見としては、栄養血管孔付近の骨皮質に小さな骨透亮像/破壊像を認めることや、骨皮質の表面にクッキーをかじったような骨破壊像を認めること(cookie-bite sign)があり、肺癌が原発巣であることが多い。
骨転移の変わった所見
  • T1WI↓ T2WI↑・・・通常の骨転移
  • T1WI↓ T2WI↓・・・造骨型(前立腺癌、乳癌)
  • T1WI↓ T2WI↑↑・・・mucin産生
  • T1WI↑ T2WI↑・・・悪性黒色腫(メラニン含有による)
  • T1WI→ T2WI↑・・・HCC、RCC(脂肪あるいは出血のためにT1で中等度の信号。)
  • 大きな骨外進展・・・肝細胞癌
  • flow void・・・腎細胞癌

これらを原発巣の推定に役立てる。

骨転移・圧迫骨折でよくある疑問(Q&A)

Q. 骨転移の検査はCTとMRIのどちらがよいですか?

A. 目的によって使い分けます。骨の壊れ方や骨折の危険の評価はCTが得意で、骨髄の中の早い段階の転移を見つけるのはMRIが得意です。メタ解析では、患者ごとの感度はMRI 90.6%、CT 72.9%と報告されています(Yang 2011)。全身を一度に調べるときは骨シンチグラフィやPET-CTも使われます。

Q. 圧迫骨折と言われましたが、骨転移の心配はありますか?

A. 多くの圧迫骨折は骨粗鬆症によるものですが、がんの治療歴がある方、頸椎や上部胸椎の骨折、軽いきっかけもないのに痛みが強くなる場合などは、MRIで転移かどうかを確かめることがあります。背中の痛みが続く、足のしびれや力が入りにくいなどの症状があれば医療機関に相談してください。

Q. fluid signがあれば、転移ではないと言えますか?

A. 言い切れません。fluid signは急性の骨粗鬆症性骨折の40%で見られましたが、腫瘍性の圧迫骨折でも6%(35例中2例)に見られました(Baur 2002)。形、後方成分への進展、傍椎体の腫瘤などもあわせて判断します。

Q. fluid signとCTの椎体内ガス(vacuum phenomenon)は同じものですか?

A. 同じ骨折部の隙間を、CTでは空気、MRIでは液体として見ていることがあります。椎体内ガスのあった骨粗鬆症性骨折の90%で、MRIの同じ位置に液体のような信号がみられました。姿勢によって増減するため、撮影中の体位にも左右されます(Linn 2009)。

参考)藤本肇氏の講義、画像診断,32:51-70,2012

あわせて読みたい:骨転移の放射線治療(緩和照射)と病的骨折リスク

参考文献

  1. Jung HS, Jee WH, McCauley TR, et al. Discrimination of metastatic from acute osteoporotic compression spinal fractures with MR imaging. Radiographics. 2003;23(1):179-87. PubMed
  2. Algra PR, Heimans JJ, Valk J, et al. Do metastases in vertebrae begin in the body or the pedicles? Imaging study in 45 patients. AJR Am J Roentgenol. 1992;158(6):1275-9. PubMed
  3. Baur A, Stäbler A, Arbogast S, et al. Acute osteoporotic and neoplastic vertebral compression fractures: fluid sign at MR imaging. Radiology. 2002;225(3):730-5. PubMed
  4. Schweitzer ME, Levine C, Mitchell DG, et al. Bull’s-eyes and halos: useful MR discriminators of osseous metastases. Radiology. 1993;188(1):249-52. PubMed
  5. Kwai AH, Stomper PC, Kaplan WD. Clinical significance of isolated scintigraphic sternal lesions in patients with breast cancer. J Nucl Med. 1988;29(3):324-8. PubMed
  6. Zajick DC Jr, Morrison WB, Schweitzer ME, et al. Benign and malignant processes: normal values and differentiation with chemical shift MR imaging in vertebral marrow. Radiology. 2005;237(2):590-6. PubMed
  7. Yang HL, Liu T, Wang XM, et al. Diagnosis of bone metastases: a meta-analysis comparing ¹⁸FDG PET, CT, MRI and bone scintigraphy. Eur Radiol. 2011;21(12):2604-17. PubMed
  8. Lin CL, Lin RM, Huang KY, et al. MRI fluid sign is reliable in correlation with osteonecrosis after vertebral fractures: a histopathologic study. Eur Spine J. 2013;22(7):1617-23. PubMed
  9. Linn J, Birkenmaier C, Hoffmann RT, et al. The intravertebral cleft in acute osteoporotic fractures: fluid in magnetic resonance imaging-vacuum in computed tomography? Spine (Phila Pa 1976). 2009;34(2):E88-93. PubMed
  10. Thawait SK, Marcus MA, Morrison WB, et al. Research synthesis: what is the diagnostic performance of magnetic resonance imaging to discriminate benign from malignant vertebral compression fractures? Systematic review and meta-analysis. Spine (Phila Pa 1976). 2012;37(12):E736-44. PubMed

あわせて読みたい:脊椎MRIの読み方|年齢と症状の確認から椎体・椎間板・脊髄・傍脊椎まで見落としを減らす順番

骨盤・脆弱性骨折の関連記事

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →