脊椎MRIの読み方 見る順番と見落としやすい所

腰椎や頸椎のMRIを読むと、椎間板ヘルニアなど目立つ所見ばかりに目が行ってしまいます。見落としを減らす見る順番はありますか?
あります。脊椎MRIは、ありふれた変性所見が目立つので、そこで満足して画面の端を見なくなるのが一番の落とし穴です。自分なりの決まった順番で、端まで通して見る手順を紹介します。

先に結論:年齢と症状の確認から始め、椎体→椎間板→脊髄→脊椎の外の順に、画像の端まで見る

順番 見るもの ポイント
0 年齢・症状・左右の向き 椎体の正常な信号は年齢で変わる。矢状断の左右の向きは施設で違うので確認する
1〜2 アライメントと椎体の信号 骨病変は造影前のT1強調像で探す
3 椎間板・椎間孔・椎間関節 変性は無症状の人にも多く、症状と合わせて評価する
4〜6 脊髄と脊柱管(矢状断と横断像) T2強調像で脊髄の高信号を探し、病変は硬膜外・硬膜内髄外・髄内に分ける
7 脊椎の外(傍脊椎) 腎・後腹膜・リンパ節など、画像の端の所見を見落とさない

脊椎MRIの読影でつまずきやすい2つの理由

脊椎MRIの読み方は、ほかの断層画像と大きくは変わりません。ただし、次の2点が独特で、注意が必要です。

  • ありふれた変性が目立つ:椎間板の突出や椎体の変性は、検査の目的でもあり、画像で目立ちます。そこだけを見て満足し、ほかの所見に気づかない危険があります。
  • 重要な所見が画像の端にある:たとえば仙骨の中の腫瘤は、矢状断の中央で見つかることはまれで、端にあるのが普通です。

どちらも、「決まった順番で、端まで通して見る」ことで減らせます。脊椎から見て次に脊髄を見る順でも、逆でも構いません。大切なのは、すべてを確認できる自分なりの手順を持つことです。正常な腰椎の見え方は、腰椎MRIの見方(正常解剖)で確認できます。

手順0 年齢と症状を確認する

依頼票の症状(痛み・しびれ・どの高さか・左右のどちらか)を、読む前に頭に入れます。ただし、症状に気を取られすぎると、別の異常を見落とします。読影のはじめに確認したいのは次の3点です。

  • 患者さんの年齢(椎体の正常な信号が年齢で違うため)
  • 症状のある高さと左右(どこに注意を向けるか)
  • 矢状断で、スライスの番号が小さい側が右か左か(施設によって異なり、間違えやすい)

手順1〜2 アライメントと椎体の信号

矢状断で、脊椎の生理的な弯曲が保たれているか、側弯やすべりがないか、圧迫骨折や骨棘がないかを見ます。冠状断がない検査では、位置決めの画像(スカウト)が側弯の目安になります。

椎体の信号は年齢で変わる

椎体の骨髄は、成長とともに、血液をつくる赤色髄から脂肪の多い黄色髄へ置き換わっていきます。そのパターンは年齢で決まっており、読影の前提になります(Ricci 1990)。

年代 T1強調像での椎体 見落としやすい点
小児・若年 赤色髄が多く、筋肉と同程度の低めの信号。乳幼児では造影されることもある 正常でも信号が低く、異常と間違えやすい
成人 脂肪に置き換わり、高信号になる 貧血などで赤色髄が増えると、信号が下がることがある
高齢者 変性で信号がまだらになる どの程度までが正常かは、症例を重ねて身につける

骨の病変(転移、骨髄炎、骨髄腫など)を見落とさないために、造影前のT1強調像を最初に確認します。正常な脂肪髄は高信号なので、そこに低信号の病変があると目立ちます。転移と圧迫骨折の見分けは椎体骨転移のCT・MRI画像診断で解説しています。

終板の変化(Modic分類)

変性した椎間板に接する椎体の終板には、信号の変化がよく見られます。Modicらは、腰椎MRIを撮った474人で、T1低信号・T2高信号を示すtype 1が4%(20人)、T1高信号でT2が等〜軽度高信号のtype 2が16%(77人)に見られ、いずれも椎間板の変性を伴っていたと報告しました。終板の変化を追跡した16人では、type 1の6人中5人が14か月〜3年でtype 2に変わり、type 2の10人は2〜3年のあいだ変わりませんでした。骨髄の変化が連続した流れの中にあることを示しています(Modic 1988)。

症例 60歳代男性 Modic type 2の終板変化

Modic type 2 腰椎T1強調像 矢状断
引用:Radiopaedia(Modic endplate change – type 2)

腰椎のT1強調像(矢状断)です。症例ページでは、L4とL5の終板がT1強調像で高信号を示し、L4-5の椎間板が変性していると記載されています。

Modic type 2 腰椎T2強調像 矢状断
引用:Radiopaedia(Modic endplate change – type 2)

同じ症例のT2強調像(矢状断)です。症例ページでは、L4・L5の終板はT2強調像でも高信号で、STIRでは信号が低下し、脂肪髄への置き換わりを反映したModic type 2の変化と記載されています。

手順3 椎間板・椎間孔・椎間関節

矢状断で、椎間板腔の狭小化や信号の異常、突出・膨隆を見ます。椎間板の突出は、左右とも椎間板が見えなくなる位置まで追います。椎間孔の狭窄や椎間関節も、同時に確認します。

正常な椎間板は、T2強調像で中心部(髄核と線維輪の内側)が高信号で、外側の線維輪が低信号の帯に囲まれています。変性が進むと、水分が減ってT2強調像の信号が下がります。この程度は、T2強調像でグレード1〜5に分ける方法(Pfirrmann分類)が広く使われており、300椎間板・60人の検討で、同じ読影者の一致度(κ=0.84〜0.90)、読影者間の一致度(κ=0.69〜0.81)はいずれも良好でした(Pfirrmann 2001)。

変性は無症状の人にも多い

目立つ変性所見が、そのまま症状の原因とは限りません。症状のない人3,110人を含む33件の報告をまとめた解析では、椎間板変性は20歳で37%、80歳で96%に見られました。椎間板の膨隆は20歳で30%から80歳で84%、突出は29%から43%、線維輪の亀裂は19%から29%と、年齢とともに増えます(Brinjikji 2015)。つまり、変性所見は加齢による変化としてよく見られ、症状や診察の所見と合わせて評価する必要があります。

椎間板の所見を書くときの用語は、北米の学会が合意した文書(version 2.0、2014年)で整理されています(Fardon 2014)。報告書では、用語を揃えて書くと、依頼した医師に正しく伝わります。

手順4〜6 脊髄と脊柱管

脊髄は、T1・T2強調像のどちらでも中間的な信号で、中心の灰白質がT2強調像でやや高信号に見えます。異常な信号(主に高信号)を探すときは、T2強調の矢状断を、スライスごとに上から下まで見ます。矢状断で疑ったら、横断像でも同じ高さで確認します。このため、矢状断を撮った時点で、疑わしい高さの横断像を追加できる体制が理想です。

脊髄の「偽の異常」に注意

  • 脳脊髄液の拍動アーチファクト:心臓や大血管、呼吸の動きで、脊柱管の中に線状・斑状の信号が出ます。高速スピンエコーのT2強調像で目立ち、胸椎の矢状断や、頸椎・胸椎の横断像でよく見られます。撮像面を変えると形が変わるので、血管奇形と区別できます。
  • Gibbs現象:脊髄の中心にT2高信号の線が見え、空洞(脊髄空洞症)と間違えることがあります。

病変の場所を3つに分ける

脊柱管内に異常を見つけたら、病変の主座を3つに分けます。場所が決まると、鑑別が絞れます。

場所 代表的な病気
硬膜外 椎間板ヘルニア、悪性の椎体腫瘍・硬膜外への転移、硬膜外膿瘍・血腫
硬膜内髄外(硬膜と脊髄の間) 神経鞘腫、髄膜腫、播種
髄内(脊髄そのもの) 神経膠腫・上衣腫などの腫瘍、炎症・脱髄、血管性、変性

どの場所でも、炎症性の病気は鑑別に残ります。腫瘍の分類は脊椎・脊髄腫瘍の分類、発熱や強い背部痛があるときに急ぐ病気は脊髄硬膜外膿瘍のMRIにまとめています。造影が必要か迷うときは、症状と臨床の見立てをもとに、主治医と放射線科医で相談します。

脊柱管の中では、硬膜外の静脈叢が強く造影されます。一方、硬膜外の脂肪はT1・T2とも高信号で、造影されません。造影後の画像を読むときに、静脈叢を病変と間違えないようにします。

手順7 脊椎の外を見る

依頼した医師は、脊椎の「中」には注意を払いますが、「外」まで気を配る人は多くありません。放射線科医の役割の1つは、偶然見つかる異常を拾うことです。腎腫瘍、後腹膜のリンパ節腫大、肝臓の腫瘤、気胸などが、脊椎MRIで見つかった例があります。感染性の脊椎炎では、周囲の傍脊椎に炎症が及ぶので、椎体の外の浮腫や膿瘍も確認します。

腰椎MRIで見つかる脊椎以外の所見を調べた16件の報告(19,593人)をまとめた解析では、26.7%の患者さんに脊椎以外の所見が見つかり、臨床的に意味のある所見は5.4%でした。最も多かったのは男性の泌尿生殖器の所見でした(Broadhurst 2023)。画像の端のスライスまで、すべてのコマを通して見ることが大切です。

見落としを減らすチェックリスト

  • 年齢、症状の高さと左右、矢状断の左右の向きを確認したか
  • 椎体の信号を造影前T1で見て、年齢に合うかを確認したか
  • 椎間板のヘルニアだけで終わらず、脊髄・馬尾・神経根を最後まで追ったか
  • T2強調の矢状断で脊髄の高信号を探し、横断像でも確認したか
  • アーチファクト(脳脊髄液の拍動、Gibbs現象)を病変と間違えていないか
  • 病変の場所(硬膜外・硬膜内髄外・髄内)を決めたか
  • 傍脊椎、腎、後腹膜、仙骨まで画像の端を見たか

背中の痛みや脚のしびれ、力が入らない、排尿の異常などの症状がある場合は、医療機関で相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 椎間板ヘルニアがあれば、症状の原因はそれですか?
A. 決められません。症状のない人でも、椎間板の膨隆は20歳で30%、80歳で84%に見られます(Brinjikji 2015)。症状の高さ、左右、診察の所見と合うかを確認してください。

Q. 椎体のT1信号が低いのは異常ですか?
A. 年齢によります。小児や若年では赤色髄が多く、正常でも信号が低めです(Ricci 1990)。成人で信号が下がっているときは、貧血などの正常変異と、骨髄の病変の両方を考えます。

Q. 脊椎MRIでは、いつも造影が要りますか?
A. 変性疾患では、造影を使わずに読影することが多いです。感染・腫瘍・術後の評価などでは造影が役立ちます。必要性は症状と臨床の見立てで決まるので、依頼した医師や検査施設に確認してください。

Q. 脊髄の中に線状の高信号が見えます。空洞でしょうか?
A. Gibbs現象や脳脊髄液の拍動によるアーチファクトの可能性があります。撮像面や撮像条件を変えて形が変わらないか、横断像でも確認します。

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参考文献

  1. Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(4):811-6. PubMed
  2. Fardon DF, Williams AL, Dohring EJ, et al. Lumbar disc nomenclature: version 2.0: Recommendations of the combined task forces of the North American Spine Society, the American Society of Spine Radiology and the American Society of Neuroradiology. Spine J. 2014;14(11):2525-45. PubMed
  3. Broadhurst PJ, Gibbons E, Knowles AE, et al. Prevalence of Incidental Extraspinal Findings on MR Imaging of the Lumbar Spine in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. AJNR Am J Neuroradiol. 2023;45(1):113-118. PubMed
  4. Ricci C, Cova M, Kang YS, et al. Normal age-related patterns of cellular and fatty bone marrow distribution in the axial skeleton: MR imaging study. Radiology. 1990;177(1):83-8. PubMed
  5. Modic MT, Steinberg PM, Ross JS, et al. Degenerative disk disease: assessment of changes in vertebral body marrow with MR imaging. Radiology. 1988;166(1 Pt 1):193-9. PubMed
  6. Pfirrmann CW, Metzdorf A, Zanetti M, et al. Magnetic resonance classification of lumbar intervertebral disc degeneration. Spine (Phila Pa 1976). 2001;26(17):1873-8. PubMed

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