脊椎の感染症で、化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)という疾患があります。
脊椎が化膿してしまう(=細菌感染して膿を作る)というのはどういう状態で、何が原因になるのでしょうか?
また、どのように診断して、治療を行うのか気になるところです。
そこで、今回は、化膿性脊椎症(英語表記で「pyogenic spondylitis」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
を、図やイラスト、MRI画像を含め、わかりやすく説明したいと思います。
化膿性脊椎症とは?
人の背骨(32〜34個の骨からなる)である脊椎に起こる脊髄炎のことを化膿性脊椎症といいます。
脊椎の骨組織や椎間板に、細菌が侵入したことで炎症が起こる疾患です。
化膿性脊椎症の原因は?
- 黄色ブドウ球菌
- MRSA
- 真菌
などが原因菌となりますが、大半は黄色ブドウ球菌です。
その細菌による感染経路として、そのほとんどは血行感染で、血液中に原因となる菌が侵入して、椎体に逆流することで感染します。
また血行性以外では、手術や検査(開放骨折・穿刺・外科手術など)で直接感染することもあります。
とくに高齢者や術後など、免疫抵抗力が低下した易感染性宿主に増加しています。
そのため、化膿性脊椎炎に感染する人は近年増加傾向です。
化膿性脊椎症の症状は?
- 発熱
- 腰背部痛
- 頸部痛
- 悪寒
- 脊柱の不撓性(ふぎょうせい「屈曲制限」)
- 圧痛
- 運動痛
- 神経症状(麻痺)
などがあります。
発熱や腰背部痛・頸部痛などで発症し、スムーズな動きができなくなっていきます。
症状の進行にともない肉芽組織や膿瘍を形成し、膿瘍が脊柱管内に侵入した場合・椎体破壊によって脊柱管が圧迫された場合、神経症状があらわれることもあります。
また、進行し重篤な状況に陥ると、敗血症を併発し、易感染性宿主の場合命に関わることもあります。
化膿性脊椎症の診断は?
- 血液検査
- 細菌検査
- X線検査、CT検査
- MRI検査
などをおこない診断します。
それぞれについて説明します。
血液検査
- 白血球増多
- 赤沈値亢進
- 炎症反応
がみられます。
その中でも、炎症反応でCRPが陽性となった場合感染症を疑い、細菌検査をおこないます。
細菌検査
原因菌を検出するためにおこなわれる検査です。
通常、血液を培養して菌を検出する血液培養が行われます。
腰椎X線検査・CT検査
- 椎間板腔の狭小化
- 椎体終板の不整像
- 骨融解像
- 椎体の侵食
- 椎体の破壊
を確認することができます。
症例 60歳代男性 腰痛、発熱
腰椎CTでL5/Sに椎体終板の不整、骨の融解像を認めています。
MRI検査
早期に病変を描出する際は、MRIが有用です。
- T1強彫画像で低信号
- T2強調画像で高信号
- STIR像や脂肪抑制併用T2強調像で、 病変部が明瞭な高信号
となります。
また、結核性脊椎炎・転移性脊椎腫瘍との鑑別も重要です。
症例 60歳代男性 腰痛、発熱 上の症例と同一症例
L5/SにT1強調像で低信号、STIRで異常な高信号を認めています。
またMRIでも
- 椎体終板の不整像
- 骨融解像
- 椎体の侵食
- 椎体の破壊
といった様子がわかります。
化膿性脊椎炎と診断され、加療されました。
症例 90歳代 女性 発熱・背部痛
Th12/L1にT1強調像で低信号、STIRで異常な高信号を認めています。
T2強調像ではT2強調像で椎間板に液体貯留を疑う高信号を認めています。
椎体の背側にもやや液体貯留を疑う高信号あり。
化膿性椎体炎及び周囲炎症波及、膿瘍形成と診断されました。
化膿性脊椎症の治療は?
保存療法と手術療法があります。
保存療法
- 局所安静
- 抗菌薬の投与
- 装具療法
により、回復を待ちます。
抗菌薬は、起因薬を特定した後に選択されます。
早期であれば、保存療法で治療できることも多くあります。
しかし、保存療法で回復しない場合や、椎体破壊や麻痺症状があらわれた場合、手術が検討されます。
手術療法
病巣を取り除き、患部の洗浄(除菌)をする必要がありますが、骨破壊が進行している場合には、骨固定術・骨移植が検討されます。
また、手術をおこなった後でも、菌感染に対する管理は重要です。
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P135〜137
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P98・99
参考文献:骨軟部疾患の画像診断 第2版P276・277
参考文献:100%整形外科P197〜204
最後に
- 細菌感染が原因で脊椎に炎症が起こる疾患を化膿性脊椎炎という
- 血行感染が多いが、手術や検査による直接感染が原因
- 発熱・腰背部痛・頸部痛などで発症する
- 血液検査・細菌検査・X線検査・MRI検査により診断される
- 保存療法もしくは、手術療法が選択される
個人差はありますが、一般的に1年ほどの治療期間が必要といわれています。
また、症状が落ち着いてきたと思っても、ムリをすると再び症状があらわれることもありますので、ムリをせず検査で経過をみながら治療を進めることが重要です。
ただし v2rc5239@yahoo.co.jp
化膿性脊椎炎のMRIの画像を多く診て研究したいので、低と重の違いの画像と予後を学びたいです。よろしくお願い申し上げます。