神経根嚢胞(Tarlov cyst、perineural cyst)とは?
- 神経根嚢胞は、髄液成分を含む神経根周囲の嚢胞性病変であり、背根神経節近傍に生じることが多い。名称としては perineural cyst、Tarlov cyst、sacral perineural cyst、nerve root sleeve cyst などが用いられる。特に仙骨神経根、なかでもS2前後に多いことが知られている。
- 多くは無症状で、MRIで偶然発見される。
- 好発部位は仙骨神経根、特にS2付近。
- 内部に神経根を含むことがあり、単なるくも膜嚢胞とは異なる概念である。
- 症候性の場合には腰痛、殿部痛、坐骨神経痛様症状、会陰部症状、膀胱直腸障害などをきたしうる。
- Tarlov cystは稀すぎる病変ではなく、MRIでは約4.6%、メタ解析では約4%前後とされる。一方で、症候性となるのはその一部である。
- 症候性を疑う場合→病変レベルと神経症状の分布が一致する/他に説明しやすい椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄がない/嚢胞が比較的大きく神経孔拡大や骨の圧排性変化を伴う/坐位や立位で増悪する仙骨部痛、radiculopathy、膀胱直腸症状などを伴う場合などがある。
脊柱管内嚢胞の分類(Nabors分類)
脊髄髄膜嚢胞の分類としてNabors分類が広く参照される。Tarlov cystはこのうちType II(神経根を含む硬膜外嚢胞)に相当する。
- Type I:神経根を含まない硬膜外嚢胞
- Type IA:硬膜外くも膜嚢胞
- Type IB:仙骨髄膜瘤など
- Type II:神経根を含む硬膜外嚢胞(Tarlov cyst, perineural cyst)
- Type III:硬膜内嚢胞
実臨床では、画像だけで神経根憩室、perineural cyst、神経根鞘の拡張を完全に峻別できないこともあるが、少なくとも神経根を伴う仙骨部髄液信号の嚢胞性病変として理解しておくと読影上の混乱が少ない。
神経根嚢胞(Tarlov cyst、perineural cyst)のMRI画像所見
- MRIでは髄液と同等信号の嚢胞性病変でT1強調像で低信号、T2強調像で高信号。
- Tarlov cystは仙骨脊柱管内のみならず、神経孔方向へ連続して描出されることが多い。
- 内部あるいは壁在性に神経根成分を認めることがあり、これが単純なくも膜嚢胞や他の嚢胞性病変との鑑別に有用となる。全例で明瞭に見えるわけではないが、薄い索状構造や偏在する神経成分を見つけた場合には診断の後押しとなる。
- 比較的大きな病変では、神経孔の拡大、仙骨のscalloping、周囲骨の圧排性変化を伴うことがある。CTではこうした骨変化の評価がしやすく、MRIで見つけた病変の補助評価として有用である。巨大病変では前仙骨部腫瘤のように見えることもある。
鑑別診断
- くも膜嚢胞:神経根を含まないことが多く、部位や連続性が異なる
- 神経根憩室(meningeal diverticulum):概念上近接し、画像上の明確な区別が難しいことがある
- 髄膜瘤・前仙骨髄膜瘤:巨大病変では鑑別が問題となる
- 嚢胞変性を伴う神経鞘腫:造影効果や充実成分の有無が鑑別点となる
- 前仙骨部のその他の嚢胞性病変:tailgut cyst、epidermoid/dermoid cyst など
鑑別で重要なのは、CSFと同等信号であること、神経孔や神経根との関係、造影効果の有無、骨変化のパターンである。
症例②
仙椎背側に複数のT2WI高信号結節を認めています。
冠状断像で両側S1,2no神経孔の拡大を認め内部に神経の走行を確認することができます。
横断像でも内部に神経を認めていることがわかります。
神経根嚢胞(Tarlov cyst、perineural cyst)を疑う所見です。
動画はこちら
参考文献:
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