先に結論:Chance骨折とは

  • Chance骨折は、腰ベルトだけのシートベルトをした交通事故などで、体がベルトを支点に前へ強く折れ曲がり、背骨の後ろ側が引き裂かれる(屈曲・伸延損傷)ことで起こる、胸腰椎移行部(Th11〜L2付近)に多い骨折です
  • 骨折線が椎体から椎弓根・棘突起まで水平に背骨を横切るのが特徴で、不安定な骨折です。横断像だけでは見逃しやすいため、CTの矢状断(縦切り)で確認します
  • 腸管・腸間膜の損傷を合併しやすいので、腹部のCT所見(腸管壁の肥厚、腹腔内の液体や空気)もあわせて確認します
  • 圧迫骨折との違い:圧迫骨折は椎体の前方がつぶれ後方は保たれますが、Chance骨折は後方まで裂けます。反る力で前方が裂けるものはリバースチャンス骨折と呼ばれます

※事故のあと背中や腰の強い痛み・お腹の痛みがあるときは、すぐに救急を受診してください。

Chance型骨折/Chance骨折(Chance fracture)

  • 胸腰椎移行部に多い伸延損傷(distraction injury)。
  • 椎体・椎弓根・椎弓を含めた横骨折。middle columnを横断する。現在広く用いられるAOSpine胸腰椎損傷分類では、後方tension bandの断裂を伴うtype Bに分類され、骨を横断する典型的なChance骨折はB1(transosseous)、靱帯・椎間板を通るものはB2に相当します。
  • 典型的にはシートベルト損傷として知られるが、高齢者の軽微な転倒など交通事故以外で起こることもある。
  • シートベルト装着下では、躯幹部の過屈曲と強い腹部圧迫を伴う。
  • 通常の過屈曲損傷では椎体部分を支点として椎体前方に圧迫が加わるが、Chance型骨折ではより前方(シートベルト)を支点とし、脊椎全体に伸延・牽引が加わる。
  • シートベルトで腹部が強く圧迫されるため、同時に腸間膜や腸管(小腸・大腸)の損傷を伴うことがある(腹部の所見も必ず確認する)。屈曲伸延型の胸腰椎骨折53例の検討では、腹腔内臓器損傷を40%に合併し、腸管・腸間膜の損傷が最多であった。また約半数(48%)に椎体後壁の突出を伴う破裂骨折の要素があり、横断像で椎弓根の輪郭が連続スライスで徐々に不明瞭になる「dissolving pedicle sign」(76%)が見逃し防止の手がかりになる。

症例 20歳代男性 

引用:Radiopaedia

L3 椎体には粉砕骨折を認め、骨折線は棘突起にまで及んでいます。

また椎体の骨折による偏位により、重度の脊柱管狭窄を認めています。

Chance型骨折を疑う所見です。

前方を支点に脊椎が強く曲げられ、後方が引き伸ばされる(伸延)力によって、骨折が椎体のみでなく後方成分まで及んでいると考えられます。

チャンス骨折と圧迫骨折・破裂骨折・リバースチャンス骨折の違い

力のかかり方 壊れる部分 画像のポイント
圧迫骨折 前に曲がる力で椎体がつぶれる 椎体の前方が中心。後方の骨・靱帯は保たれる 椎体の前方がくさび状に低くなる
破裂骨折 縦に押しつぶす力 椎体の後壁まで壊れる 骨片が脊柱管へ突出する
チャンス骨折 前方(ベルト)を支点に曲がり、後方が引き伸ばされる(屈曲・伸延) 椎体〜椎弓根〜棘突起が水平に裂ける 矢状断で後方要素の水平な骨折線・棘突起間の開大
リバースチャンス骨折 後ろへ反る力(過伸展・伸延) 前方(椎体前方・前縦靱帯・椎間板)が引き裂かれる 椎体前方や椎間板腔の開大

圧迫骨折は後方の構造が保たれるのに対し、チャンス骨折は後方の骨や靱帯(後方tension band)まで断裂するため不安定です。圧迫骨折に見えても、矢状断で棘突起の間が開いていないか、後方要素に骨折線がないかを確認します。

リバースチャンス骨折(逆チャンス骨折)とは

  • チャンス骨折と逆向き、つまり脊椎が後ろへ強く反らされて前方が裂ける過伸展・伸延損傷を指して使われる呼び名です。AOSpine分類ではtype B3(過伸展損傷)にあたります。
  • 強直性脊椎炎やびまん性特発性骨増殖症(DISH)などで背骨が一本の棒のように硬くなった「強直脊椎」では、軽い外力でも骨折しやすく、最も多い受傷機転が過伸展です(Shah 2019)。過伸展・伸延骨折22例の報告では13例が強直脊椎(DISH 10例、強直性脊椎炎3例)でした(Cirillo 2022)。
  • 強直脊椎は骨折の診断が遅れやすいため、新たな背部痛や外傷があればまずCTを撮り、MRIも積極的に追加することが勧められています(Shah 2019)。

チャンス骨折(Chance骨折)のよくある疑問(Q&A)

Q. チャンス骨折では腹部の損傷はどのくらい合併するか?
A. 胸腰椎の屈曲伸延損傷(チャンス骨折を含む)8研究652例のメタ解析では、腹腔内臓器損傷の合併は36.2%、その手術は29.0%であった。小腸損傷19.2%、大腸損傷10.9%が多く、小児では成人より合併率が高かった(55.8%対23.0%)(Serag 2025)。

Q. お腹のシートベルト痕(seat belt sign)はどう考えるか?
A. 腹部のシートベルト痕は腹部・腰椎の損傷と関連し、上前腸骨棘より上にある場合に関連が強い(陽性尤度比4.2)(Jiang 2019)。シートベルト痕のある小児53例では、腰椎骨折の合併が腸管穿孔の有意な予測因子であった(Paris 2010)。

Q. 交通事故以外でも起こるか?
A. まれだが、82歳の低エネルギー転倒で見逃されていたチャンス骨折の報告がある(Zwolak 2016)。

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参考文献:

  1. 中塚智也, 稲岡努, 北村範子, ほか. 脊椎・脊髄の外傷. 画像診断 37(10):1032-1040, 2017(本記事の参照: P1037)
  2. 稲岡努, 北村範子, 粕谷秀輔, ほか. 脊椎・脊髄損傷. 画像診断 33(14):1587-1597, 2013(本記事の参照: P1593)
  3. すぐ役立つ救急のCT・MRI 改訂第2版 P361
  4. Vaccaro AR, Oner C, Kepler CK, et al. AOSpine thoracolumbar spine injury classification system: fracture description, neurological status, and key modifiers. Spine (Phila Pa 1976). 2013;38(23):2028-37. PubMed
  5. Bernstein MP, Mirvis SE, Shanmuganathan K. Chance-type fractures of the thoracolumbar spine: imaging analysis in 53 patients. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(4):859-68. PubMed
  6. Serag I, Scherer J, Popescu EC, et al. A meta-analysis of the incidence of intra-abdominal injuries associated with thoracic or lumbar flexion-distraction injuries. Injury. 2025;56(6):112337. PubMed
  7. Jiang O, Asha SE, Keady J, et al. Position of the abdominal seat belt sign and its predictive utility for abdominal trauma. Emerg Med Australas. 2019;31(1):112-116. PubMed
  8. Paris C, Brindamour M, Ouimet A, et al. Predictive indicators for bowel injury in pediatric patients who present with a positive seat belt sign after motor vehicle collision. J Pediatr Surg. 2010;45(5):921-4. PubMed
  9. Zwolak P, Kröber M. Chance fracture in an older patient with positive sagittal imbalance and previous lumbar arthrodesis: what can be done? Arch Orthop Trauma Surg. 2016;136(4):453-5. PubMed
  10. Shah NG, Keraliya A, Nunez DB, et al. Injuries to the Rigid Spine: What the Spine Surgeon Wants to Know. Radiographics. 2019;39(2):449-466. PubMed
  11. Cirillo T JI, Gimbernat R M, Farías M I, et al. Hyperextension-distraction fractures in ankylosing and spondylotic spines: injury profile and treatment results. Int Orthop. 2022;46(4):889-895. PubMed

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