圧迫骨折と破裂骨折の違いは?なんでも圧迫骨折にしてしまいがちですが、実は異なるものです。
今回は、圧迫骨折と破裂骨折の違いについて図と実際のCT画像を交えてまとめました。
圧迫骨折と破裂骨折の違いは?
圧迫骨折と破裂骨折の違いを知る上で、DenisのThree column theoryを理解することがまずは重要です。
Denisのthree column theoryとは?
- 1983年にDenisにより脊柱を3つの構成要素に分類した、three column theoryが提唱された。
- 椎体を前柱(anterior column)、中央柱(middle column)、後柱(posterior column)の3つに分け、中でも中央柱が重要であり、ここに外傷が及ぶものは不安定骨折と分類した。
- またこれに基づき、胸腰椎損傷を圧迫骨折、破裂骨折、Chance骨折、脱臼骨折の4カテゴリーに分類した。
three column theoryにそれぞれ含まれる解剖
- 前柱:前縦靭帯、椎体前1/2、椎間板前1/2
- 中央柱:椎体後1/2、椎間板後1/2、後縦靭帯
- 後柱:椎間関節、関節包、黄色靭帯、棘突起、棘上・棘間靭帯
圧迫骨折(compression fracture)
- 脊椎の上下方向に外力が加わると、椎体がつぶれて起こる。
- 椎体前方部の骨折で、後方部は温存され、楔型を呈する。
- 骨粗鬆症が基礎にあると起こりやすい。
上のように胸腰椎は前柱・中央柱・後柱の3つの柱(column)に分けられ、これをDenisのThree column theoryと言います。
圧迫骨折はこのうち主に前柱のみが損傷を受け、安定損傷に分類されます。
図のように椎体の後縁の高さは保たれたまま楔状に変形しますが、骨粗鬆症による圧迫骨折の場合は、魚椎様変形、扁平化をきたすことがあります。
破裂骨折(burst fracture)
- 強い外力(墜落や交通外傷)が加わると破裂骨折をきたす。
- 垂直方向(軸方向)に外力が加わって生じる。
- 椎体後方部の皮質骨の破壊、高さの減少、骨折の脊柱管への陥入(椎体後壁の背側突出)、片側または両側の終板の損傷などが見られる。
- 当然、圧迫骨折より不安定であり、圧迫骨折を安定型、破裂骨折は不安定型と呼ばれる。また圧迫骨折がその後、後方に及んで破裂骨折化することもあり。
- Denis分類において前柱(anterior column)および中央柱(middle column)の損傷を伴う不安定型損傷であるため手術の適応となる。
破裂骨折の場合は、前柱だけではなく、中央柱にも損傷が及ぶことが特徴です。
中央柱から遊離した骨片が脊柱管に突出して、脊柱管狭窄をきたすことがあります。
▶︎5つのタイプに分けわれる。
- type A:椎体の上下の終板が骨折し、上下端で骨折が脊柱管に陥入
- type B:上方の椎体終板の骨折。最多。
- type C:下方の椎体終板の骨折
- type D:回旋破裂骨折。椎弓根間距離の拡大、椎体の粉砕、椎弓の垂直骨折。骨片の脊柱管への陥入、椎体後方の高さの減少。
- type E:側方破裂骨折。椎弓根間距離の拡大がある点で、側方圧迫骨折と区別される。
症例 70歳代女性 腰椎L1破裂骨折
L1に水平方向に骨折線あり。椎体背側にまで骨折線はおよび、椎弓には及ばない。
破裂骨折の所見です。
症例 70歳代男性 5mの高さより転落
L3に水平方向及び垂直方向に骨折線あり。骨折の脊柱管への陥入(椎体後壁の背側突出)、片側または両側の終板の損傷が見られます。
椎体後縁(背側)にまで骨折線は及んでいます。
矢状断像では一見、椎弓に骨折線が及んでいないように見えます。
しかし横断像では垂直方向に骨折線が多数あること、及び骨折に伴い脊柱管狭窄が生じていること、さらには左の椎弓にも骨折線があることがわかります。
骨折線はthree column theoryの前柱(anterior column)、中央柱(middle column)、後柱(posterior column)にも及ぶ。
これらから破裂骨折と屈曲伸展損傷の複合型損傷(combined flexion-distruction injury and burst fractture)の所見。
3領域に骨折を認める極めて不安定なタイプです。
ちなみに、後柱と中央柱に損傷を起こした場合、
- 骨性要素のみを損傷するタイプ
- 靭帯要素のみを損傷するタイプ
- 両方の要素を損傷するタイプ
に分けられ、骨性要素のみを損傷するタイプをChance骨折と呼びます。
まとめ
- 椎体腹側部分の骨折→圧迫骨折
- 椎体背側部分の骨折→破裂骨折
- 水平骨折で椎体から椎弓部分にまで骨折線が及ぶ→Chance骨折(屈曲伸展損傷によって起こる)
【脊椎圧迫骨折と破裂骨折の違い】
圧迫骨折が後方成分の骨折や靱帯損傷を伴わない安定型の骨折なのに対して、破裂骨折では椎体後縁にも骨折が及びます。そのため、骨片の脊柱管内への陥入により神経症状を起こすことがあります。#画像診断 pic.twitter.com/xqFP0cTiv0— ごろ~にゃ@画像診断cafe (@radiology_cafe) May 12, 2022
関連記事)
MRI画像と3次元画像が効果的と思われます。