先に結論:骨盤の脆弱性骨折(FFP)とHONDAサイン
- 骨粗鬆症などで弱くなった骨盤が、転倒などの小さな力や日常の負担で折れるものです。高齢の女性に多く、仙骨と恥骨によく起こります。腰・お尻・足の付け根の痛みで「腰痛」と思われていることも少なくありません
- 仙骨の骨折はレントゲンでは写りにくく、CT(骨のふちのずれ・硬化)やMRI(骨髄のむくみ)で見つかることが多いです。両側の仙骨の縦の骨折と横の骨折がつながると、骨シンチでH字形の集積になり、自動車メーカーのロゴに似ていることからHONDA(ホンダ)サインと呼ばれます
- Rommens分類(FFP分類)でⅠ〜Ⅳ型に分け、骨盤の後ろ(仙骨)まで不安定になるほど型が上がり、Ⅲ・Ⅳ型では手術による固定が検討されます
- 恥骨の骨折を見つけたら仙骨も確認します。骨粗しょう症の15人の検討では9人が仙骨と恥骨の両方に骨折がありました(Na 2017)。仙骨の骨折の検出感度はレントゲン28.5%、CT 94.2%で、MRIでは全例が見つかっています(Yamauchi 2022)
※高齢の方が転倒後に腰やお尻の痛みで歩きにくいときは、レントゲンで異常がなくても相談してください。
脆弱性骨盤骨折(Fragility Fractures(insufficiency fracture) of the Pelvis: FFP)
- 脆弱性骨折とは、骨粗鬆症や放射線治療などにより脆弱化した骨に日常的な負荷や軽度の外力が加わることにより発生する骨折。脊椎や、大腿骨頸部、骨盤などで好発する。
- 骨盤では、仙骨、恥骨が好発部位。
- Rommens分類で分類される。
脆弱性骨盤骨折の画像所見
- 仙骨では仙骨翼の縦骨折とS2の横骨折が見られるがレントゲンでの描出は困難。CTやMRIが有用。
- CTでは骨皮質のびらんと硬化性変化。仙腸関節に沿う2本縦線として認めることがある。ただし、CTでも描出が困難なことがある。MRIとCTを比較した検討では、MRIが骨折の99%を検出したのに対しCTは69%にとどまり、MRIが最も感度の高い検査とされる(Cabarrus 2008)。また恥骨の脆弱性骨折がある患者の89.2%で他部位の骨折を合併しており(Cabarrus 2008)、恥骨骨折を見たら仙骨や寛骨臼周囲も確認したい。
- 骨シンチグラフィでは骨折線に沿うH字状の集積を認めるため、自動車メーカーのホンダのロゴのようだということでHonda signと呼ばれる。
- 恥骨では、恥骨結合近傍や上・下枝の縦骨折として認める。恥骨はレントゲンでも描出可能なことがある。


引用:Yamauchi et al. J Clin Med 2022(Figure 8)
57歳女性のH/U型の仙骨脆弱性骨折です。レントゲン正面・側面(A・B)、CT冠状断・矢状断・3DCT・横断像(C〜F)、MRIのT1強調像と脂肪抑制T2強調像(G〜K)を並べたもので、赤矢印が骨折線を示します。(出典:Yamauchi et al. J Clin Med 2022, Figure 8, CC BY 4.0)

引用:Na et al. Hip Pelvis 2017(Figure 2)
73歳女性の骨盤脆弱性骨折です。レントゲン(A)とCT(B)で骨盤の脆弱性骨折がみられ、骨シンチグラフィ(C)では骨盤の脆弱性骨折を示すHonda signがみられます。(出典:Na et al. Hip Pelvis 2017, Figure 2, CC BY-NC 4.0)
Rommens分類

上のようにTypeⅠ〜Ⅳに分類される。
HONDA signはTypeⅣbに相当する骨折。
Rommens分類は、骨盤の後ろ側の骨折の有無とずれ(転位)が片側か両側かで型が上がり、型が上がるほど不安定です(Rommens 2019)。
| 型 | 内容 | 亜型 |
| TypeⅠ | 前方(恥骨・坐骨)の骨折のみ | Ⅰa:片側の恥骨枝骨折 Ⅰb:両側の恥骨枝骨折 |
| TypeⅡ | 後方のずれのない骨折 | Ⅱa:後方のみ Ⅱb:仙骨翼の圧潰+前方骨折 Ⅱc:仙骨・仙腸関節・腸骨後部の骨折+前方骨折 |
| TypeⅢ | 後方の片側にずれのある骨折 | Ⅲa:腸骨後部 Ⅲb:仙腸関節 Ⅲc:仙骨(いずれも前方骨折を伴う) |
| TypeⅣ | 後方の両側にずれのある骨折(最も不安定) | Ⅳa:両側の腸骨後部 Ⅳb:両側の仙骨(U型・H型の仙骨骨折) Ⅳc:後方の不安定な骨折の組み合わせ |
245例ではTypeⅠ18%、TypeⅡ約52%、TypeⅢ10%、TypeⅣ20%で、恥骨骨折を見たら骨盤CTで後ろ側も確認することが勧められています。治療はTypeⅠ・多くのTypeⅡが保存治療、TypeⅢ・Ⅳが手術による固定が基本です(Rommens 2019)。
症例 70歳代 女性

1年半前のCT画像では認めていなかった骨折線を左恥骨及び仙骨の両側に認めています。
脆弱性骨盤骨折(Rommens分類TypeⅣcに相当)を疑う所見です。
この症例を動画解説しました。
脆弱性骨盤骨折の画像の見方(どこを見るか)
読む順番
- 恥骨・坐骨:恥骨上枝・下枝、恥骨結合のそば(恥骨骨折の画像診断)
- 仙骨:仙骨翼の縦の骨折線、S1〜S2の横の骨折線、仙腸関節に沿った硬化
- 寛骨臼のまわりと腸骨:股関節の受け皿の上や前、腸骨の後ろ
- 腰椎:同時に起こった椎体の圧迫骨折がないか
骨折の形:H/U型が多い
60歳以上の77人(平均80.3歳)の仙骨脆弱性骨折をCTで分けた検討では、H/U型40.2%、横骨折型33.7%、λ/T型24.7%、片側の縦骨折型1.3%でした。71.4%は仙骨だけの骨折でしたが、9.1%にほかの背骨の骨折、13.0%にほかの骨盤の骨折を伴っていました(Yamauchi 2022)。仙骨の詳しい見方は仙骨脆弱性骨折の画像診断でも解説しています。
CTとMRIの使い分け
- CTは骨折線の形とずれを見るのに向いていて、Rommens分類の型を決めるのに使います。
- MRIは骨髄のむくみで骨折を見つけるのに向いていて、同じ検討ではMRIのほうがCTより複雑な骨折の形を示した例が65%ありました(Yamauchi 2022)。
- 腰痛として腰椎のMRIを撮るときは、仙骨まで含めた冠状断の脂肪抑制T2強調像を加えると、早い段階で仙骨の骨折を見つけやすいとされます(Yamauchi 2022)。

引用:Na et al. Hip Pelvis 2017(Figure 1)
82歳女性のレントゲン(A)で、左の恥骨上枝・下枝の骨折がみられます。胸腹部のCT(B)では、胸椎・腰椎(T3、T7、L1〜L3)に多発する圧迫骨折があります。(出典:Na et al. Hip Pelvis 2017, Figure 1, CC BY-NC 4.0)
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- 骨折は1か所とは限らない:ストレス骨折は多発することが多く、背景にある原因(骨粗しょう症など)も調べるべきとされます(Tins 2015)。
- 腫瘍に見えることがある:治りかけの脆弱性骨折は、CTの横断像だけでは骨がふくらんで壊れているように見え、悪性の病変とまぎらわしいことがあります。3Dの再構成で左右対称の多発骨折とわかれば、脆弱性骨折と判断しやすくなります(Tins 2015)。がんの治療中の方では椎体骨転移などの骨転移との区別も必要です。
- 股関節の骨折とまぎらわしい:足のつけ根の痛みでは大腿骨頸部骨折や大腿骨転子部骨折も考えます。
- 痛む場所と違うところの骨折:お尻や腰の痛みが仙骨の骨折、足のつけ根の痛みが恥骨の骨折ということがあります(痛む場所と違うところの骨折)。

引用:Tins et al. Insights Imaging 2015(Figure 10)
骨粗しょう症で多発するストレス骨折がある高齢女性の骨盤CTです。横断像(a 矢印)では寛骨臼の前に骨がふくらんだ病変があるように見え、悪性とまぎらわしい所見ですが、3Dの画像(b)では両側の腸骨、右の恥骨、左の恥骨枝に左右ほぼ対称の骨折がみられます。(出典:Tins et al. Insights Imaging 2015, Figure 10, CC BY 4.0)
強い外力による骨盤骨折の全体像は骨盤骨折とは、骨盤輪骨折の画像診断、骨盤骨折の分類を参考にしてください。
骨盤の脆弱性骨折でよくある疑問(Q&A)
Q. 仙骨骨折ではどんな症状が出ますか?
A. 腰・お尻・足の付け根の痛みで、立つ・歩くときに強くなるのが典型です。はっきりした転倒がなくても起こり、腰痛として様子をみられていることもあります。
Q. レントゲンで異常がなくても骨折のことはありますか?
A. あります。仙骨の骨折はX線では写りにくく、MRIが最も見つけやすい検査です(Cabarrus 2008)。
Q. 恥骨骨折と言われました。仙骨も調べたほうがよいですか?
A. 後ろ側の骨折が隠れていることがあるため、骨盤のCTで後ろ側も確認することが勧められています(Rommens 2019)。骨粗しょう症の15人の検討でも、9人は仙骨と恥骨の両方に骨折がありました(Na 2017)。
腰やお尻、足のつけ根の痛みが続くときは、医療機関(整形外科)で相談してください。
- Rommens PM, Hofmann A. Comprehensive classification of fragility fractures of the pelvic ring: Recommendations for surgical treatment. Injury. 2013;44(12):1733-1744. PubMed
- Cabarrus MC, Ambekar A, Lu Y, et al. MRI and CT of insufficiency fractures of the pelvis and the proximal femur. AJR Am J Roentgenol. 2008;191(4):995-1001. PubMed
- Rommens PM, Arand C, Hofmann A, et al. When and how to operate fragility fractures of the pelvis? Indian J Orthop. 2019;53(1):128-137. PubMed
- Yamauchi T, Sharma S, Chandra S, et al. Superiority of MRI for Evaluation of Sacral Insufficiency Fracture. J Clin Med. 2022;11(17):4968. PubMed
- Na WC, Lee SH, Jung S, et al. Pelvic Insufficiency Fracture in Severe Osteoporosis Patient. Hip Pelvis. 2017;29(2):120-126. PubMed
- Tins BJ, Garton M, Cassar-Pullicino VN, et al. Stress fracture of the pelvis and lower limbs including atypical femoral fractures-a review. Insights Imaging. 2015;6(1):97-110. PubMed
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