骨シンチの見方 光る=転移とは限らない・偽陽性と落とし穴

骨シンチで「全身に光っている」と言われました。これは全部転移ということですか?光る場所と光り方で何がわかるのか知りたいです。
骨シンチは「骨が作り変わっている場所」を映す検査なので、光る=転移とは限りません。骨折や関節症でも光りますし、逆に転移でも光らないことがあります。ここでは、光る仕組み、正常の集積、転移の典型像、superscan、flare現象、転移以外の集積、そして集積しにくい病変を整理します。

先に結論:骨シンチは「骨の反応」を見る検査。光り方のパターンと他の画像・臨床情報を合わせて読む

項目 ポイント
何が光るか 骨の代謝(骨を作る反応)が盛んな場所と、血流が多い場所。腫瘍そのものを見ているわけではない
強み・弱み 全身を一度に見られて感度が高い一方、特異度は限られる。骨折・関節症・炎症でも光る
転移の典型 体幹の骨に多発する、形も強さもばらばらな集積
落とし穴 治療後のflare現象、びまん性に光るsuperscan、腎・軟部への集積、溶骨性病変や骨髄中心の病変の見逃し
迷ったとき SPECT/CT、レントゲン・CT・MRIとの対比。骨折や感染を疑うなら三相骨シンチ

骨シンチはなぜ光るのか

骨シンチグラフィでは、骨の主成分(ハイドロキシアパタイト)に結合する放射性医薬品(テクネチウム標識のリン酸化合物)を静脈から注射し、数時間後に全身を撮影します。薬剤は血流が多く、骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きが盛んな場所ほど多く集まります。つまり骨シンチは、腫瘍や骨折の「形」ではなく、そこで起きている骨の反応(代謝)を映す検査です。

この性質から、骨シンチは全身を一度に調べられて感度が高い反面、特異度は一定ではありません。骨シンチは感度が高い一方で特異度は一定でなく、限られることがあるため、正常変異や一般的なパターンを知っておくことで読み違いを減らせる、とまとめられています(Gnanasegaran 2009)。なお、骨転移の基本的な見え方や生理的集積は、先に公開している骨シンチとは?骨転移の見え方と正常の生理的集積、スーパーボーンスキャンでも解説しています。この記事では「光ったけれど転移ではない」ケースや、「見逃しやすい」ケースに重点を置きます。

検査前の水分や排尿、服薬(控える薬があるか)などの準備は、検査施設ごとに異なります。主治医・検査施設の指示に従ってください。

正常でも光る場所

骨シンチを読む第一歩は、「正常でも光る場所」を知ることです。

部位 見え方・理由
腎臓・膀胱 薬剤は尿から排泄されるため、腎臓や膀胱が描出される。膀胱の尿は強く光り、近くの骨盤の評価の邪魔になることがある
骨端(関節に近い部分) 成長期の子どもでは骨端線が強く光る。大人でも関節周囲は比較的集積が高い
肩甲骨下角・仙腸関節・胸鎖関節 骨が厚い、あるいは動きの多い部位で、左右対称に光りやすい
頭蓋骨・椎体・肋骨 海綿骨(骨の中身が詰まった部分)が多く、背景としてやや高めに見える
体表の汚染 尿や汗の付着、注射部位の漏れが、骨に見える点状の「集積」として写ることがある

基本は左右対称かどうかを見ることです。左右対称に光る部位は正常変異のことが多く、非対称で単独の光り方は注意します。

骨転移の典型的な見え方

骨転移は、血流に乗って骨髄に運ばれた腫瘍細胞が、周囲の骨に反応(骨を壊す・骨を作る)を起こすことで光ります。典型的には次のような特徴があります。

特徴 ポイント
多発 複数の骨に散在する。単発の集積より、多発のほうが転移を考えやすい
分布 脊椎、骨盤、肋骨、胸骨、頭蓋骨、大腿骨・上腕骨の近位など、赤色髄(血液を作る骨髄)の多い体幹寄りの骨に多い
形・強さ 大きさや強さがばらばらで、左右非対称
位置 椎体の中に点状に光る。椎体全体が均一に強く光る場合は、圧迫骨折など別の原因も考える

骨シンチは骨転移の検出に広く使われていますが、1か所だけの集積や、関節の近くの集積はよくある変化と区別が難しく、SPECT/CTや他の画像との対比で確かめます。造骨性(硬化性)の骨転移が多い前立腺癌を中心に、骨転移の見え方は造骨性(硬化性)骨病変の鑑別|骨転移・骨島(enostosis)・Paget病などのCT所見と合わせて読むと整理しやすくなります。CTで白い点として見える骨島は、通常は骨シンチで目立たないことが多く、骨島(こっとう)とは?骨転移との違いも参考になります。

superscan(スーパースキャン):転移性と代謝性

骨シンチで、骨全体がびまん性に強く光り、腎臓や膀胱、軟部組織への集積がほとんど見えない像をsuperscan(スーパーボーンスキャン)と呼びます。薬剤が骨にほとんど取り込まれ、尿に出る分が少なくなるためです。

superscanの原因を調べた系統的レビュー(67論文)では、次のようにまとめられています(Kovacsne 2023)。

分類 原因
悪性(転移性) 前立腺癌が最多で、次いで胃癌。頻度は混合がんで1.3%、胃癌で最大2.6%、前立腺癌のコホートでは最大23%と幅がある
良性(代謝性) 骨軟化症と骨フッ素症では全例でsuperscanを認めた。そのほか副甲状腺機能亢進症や腎臓病

見分け方の考え方は次のとおりです。転移性superscanでは、集積が体幹の骨に強く、形が不均一で、四肢の遠位は比較的目立たないことが多い一方、代謝性superscanでは全身の骨が比較的均一に光ることが多く、頭蓋骨や肋骨の軟骨との接合部などに集積が目立つことがあります。ただし、実際には区別が難しい場合があり、血液検査(カルシウム、リン、ALP、PTH、前立腺癌ならPSAなど)と合わせて判断します。「全部光っている」ことが、実は全身の骨の代謝が高い状態を反映していることもあるのです。

症例 70歳代男性 前立腺癌の多発骨転移(superscan)

前立腺癌の多発骨転移 superscan 骨シンチ(Tc-99m MDP) 全身前面像
引用:Radiopaedia(Superscan due to metastatic prostate cancer)

全身の骨に、大きさの異なる多数の局所的な集積があります。症例ページでは、骨転移に一致する多発性の局所集積があり、腎臓への集積が目立たないことからsuperscanと記載されています。

flare現象:治療が効いたのに「悪化」に見える

骨転移の治療(ホルモン療法や分子標的薬、化学療法など)が効き始めると、治療後の最初の骨シンチで集積が強くなったり、新しい集積が出たりすることがあります。これがflare現象です。骨の治癒反応が一時的に強まるために起こり、病気が悪化したのではありません。

前立腺癌のホルモン療法を始めた99例を6週後に再検査した研究では、治療前から明らかな骨転移があった22例のうち9例(41%)でflareが見られました(Cook 2011)。この研究では、治療前の骨シンチで判断に迷う集積があった41例のうち、flareが見られた8例(20%)はいずれも後から骨転移と確認され、flareが転移の裏付けになることも示されています(Cook 2011)。

つまりflareは「悪化」ではなく「反応」の可能性があるため、治療開始から数か月以内の骨シンチで集積が増えたときは、画像だけで増悪と決めつけず、症状・腫瘍マーカー・他の画像での経過を合わせて評価します。これはFDG-PETでも似た注意点があります(FDG-PETの偽陽性|骨転移・リンパ節転移・肝転移に見える集積)。

転移以外で光る:骨シンチの偽陽性

骨シンチは、骨の反応であれば何でも光ります。転移と紛らわしい代表的なものをまとめます。

病態 光り方の特徴 見分けのヒント
骨折(外傷・疲労骨折・圧迫骨折) 治る途中で長く光ることがある。肋骨骨折は肋骨に沿って列状に並ぶことが多い 経過、外傷歴、CT・MRIでの骨折線
変形性関節症 関節の両側に光る。膝では、骨シンチの集積の強さが軟骨変性の程度と関連した(Park 2017) 関節周囲、左右・他関節の対称性、レントゲンでの関節裂隙の狭小化
骨パジェット病 骨全体が一様に強く光ることが多い。好発部位は脊椎・骨盤・頭蓋・大腿骨(Winn 2017) 骨の腫大、ALP高値、レントゲン・CT
骨髄炎・関節炎 病変部が強く光る 炎症反応、三相骨シンチ、MRI
肥大性骨関節症 四肢の長管骨の骨膜に沿って、左右対称に光る ばち指、肺疾患の合併
手術・放射線治療の後 治療部位が一定期間光る 治療歴・照射野との一致
異所性骨化 骨以外の軟部組織に骨ができて光る 外傷・手術歴、CT

骨転移の診断では、骨シンチが陽性でも、他の画像(CT・MRI)で転移を裏付ける所見があるかを確認することが重要です。判断に迷う場合は、骨シンチにSPECT/CTを追加して、集積が骨のどの構造(関節面か、椎体の中か)に一致するかを調べます。

腎臓・軟部組織への集積

骨以外の場所に集積があるときも、意味を考える必要があります。

場所 考えること
腎臓・尿路 通常は排泄経路として描出される。片側の描出不良や拡張は、尿路の閉塞(水腎症)や腎機能の低下を示すことがある。逆に両腎がほとんど見えないときはsuperscanを考える
心臓・筋肉・肺・消化管 透析中の慢性腎臓病で二次性副甲状腺機能亢進症がある63例では、37例(59%)に軟部組織への集積が見られ、部位は心臓(73%)、筋肉(32%)、肺(24%)、消化管(16%)の順でした。軟部組織への集積はリン高値と関連しました(Enevoldsen 2017)
乳腺・腫瘍 乳腺や、石灰化を伴う軟部腫瘍に集積することがある
注射部位 漏れた薬剤が点状に光り、近くの骨と見間違えることがある

透析患者さんなどで骨以外にも広く集積がある場合は、骨転移の評価に加えて、カルシウム・リンの異常や石灰化の存在を示している可能性があります。

溶骨性病変・骨髄中心の病変は光りにくい

骨シンチは骨の「作る反応」を見るため、骨を壊すだけで、骨を作る反応が乏しい病変は光りにくくなります。たとえば多発性骨髄腫では、骨髄腫関連の骨病変に対する骨シンチの感度は高くなく、系統的レビューではMRIの感度0.88、骨シンチの感度0.66、特異度0.83と報告されています(Weng 2014)。ただし、この系統的レビューではMRI・骨シンチ・PETの間に統計学的な有意差は示されておらず、X線を基準にした比較です。

溶骨性の骨転移や、骨髄の中に広がる病変(骨髄腫、一部のリンパ腫、小細胞癌など)は、骨シンチが正常に見えても否定できません。症状(骨の痛み)や血液検査が合わなければ、CT・MRI・PETなどの追加を考えます。溶骨性病変の鑑別は多発性骨髄腫の画像診断も参考にしてください。

三相骨シンチの使いどころ

通常の骨シンチは注射の数時間後に撮りますが、三相骨シンチでは、注射直後から連続して血流相(動脈の血流)、血液プール相(数分後の組織の血液量)、数時間後の骨相(遅延像)の3つの時期を撮ります。炎症や感染では血流相・血液プール相でも強く光り、骨そのものの病変は遅延像で光るため、病変に炎症があるかどうかを区別するのに役立ちます。

三相骨シンチは、レントゲンが正常で骨髄炎が疑われる場合に感度が高く、第一選択となる検査です。そのほか、レントゲンでわかりにくい骨折、疲労骨折、腱付着部障害、反射性交感神経性ジストロフィーなど、スポーツ・労働に関連する障害の評価にも使われます(Sutter 1996)。通常の転移検索(全身骨シンチ)とは目的が違うことを覚えておくと整理しやすいです。

読影のコツとほかの検査との使い分け

  • パターンを見る:単発か多発か、対称か非対称か、体幹か四肢かを最初に確認します。
  • 臨床情報を併せる:原発のがん、治療歴(flareの可能性)、外傷、腎機能、ALP・カルシウム・PSAなどを確認します。
  • SPECT/CTで場所を特定する:集積が椎体の中か、椎間関節か、骨棘か(関節症)を区別できます。
  • 他の検査に広げる:集積が曖昧ならCT・MRI、骨髄を見たいならMRIやPET(FDG-PETの偽陽性も参照)を使います。

気になる症状や検査結果の説明を受けたときは、医療機関で担当医に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 骨シンチで集積があれば、骨転移で確定ですか?
A. 確定ではありません。骨折、関節症、骨パジェット病、炎症など転移以外でも光ります(Gnanasegaran 2009)。パターン、CT・MRIなどの他の画像、腫瘍マーカーや症状と合わせて判断します。

Q. 骨シンチが正常なら、骨転移はないと言えますか?
A. 言い切れません。溶骨性の病変や骨髄の中心の病変は光りにくく、骨髄腫関連の骨病変では骨シンチの感度は0.66でした(Weng 2014)。骨の痛みなどの症状が続くときは、別の検査を検討します。

Q. 治療を始めたあとの骨シンチで、集積が増えていました。悪化ですか?
A. 治療開始後の早い時期は、flare現象で集積が増えることがあります。前立腺癌の研究では、ホルモン療法開始6週後に、転移が明らかだった22例中9例でflareを認めました(Cook 2011)。数か月後の再検査や、他の画像・血液検査と合わせて評価します。

Q. 腎臓が写っていない骨シンチと言われました。
A. 骨に薬剤が多く取り込まれ、尿に出る分が少なかったことを示すsuperscanの可能性があります。転移のほか、骨軟化症や副甲状腺機能亢進症などの代謝性の原因もあるため、血液検査も合わせて調べます(Kovacsne 2023)。

あわせて読みたい:核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ

参考文献

  1. Gnanasegaran G, Cook G, Adamson K, et al. Patterns, variants, artifacts, and pitfalls in conventional radionuclide bone imaging and SPECT/CT. Semin Nucl Med. 2009;39(6):380-95. PubMed
  2. Kovacsne A, Kozon I, Bentestuen M, et al. Frequency of superscan on bone scintigraphy: A systematic review. Clin Physiol Funct Imaging. 2023;43(5):297-304. PubMed
  3. Cook GJ, Venkitaraman R, Sohaib AS, et al. The diagnostic utility of the flare phenomenon on bone scintigraphy in staging prostate cancer. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2011;38(1):7-13. PubMed
  4. Enevoldsen LH, Heaf J, Højgaard L, et al. Increased technetium-99 m hydroxy diphosphonate soft tissue uptake on bone scintigraphy in chronic kidney disease patients with secondary hyperparathyroidism: correlation with hyperphosphataemia. Clin Physiol Funct Imaging. 2017;37(2):131-136. PubMed
  5. Weng WW, Dong MJ, Zhang J, et al. A systematic review of MRI, scintigraphy, FDG-PET and PET/CT for diagnosis of multiple myeloma related bone disease–which is best? Asian Pac J Cancer Prev. 2014;15(22):9879-84. PubMed
  6. Winn N, Lalam R, Cassar-Pullicino V. Imaging of Paget’s disease of bone. Wien Med Wochenschr. 2017;167(1-2):9-17. PubMed
  7. Sutter CW, Shelton DK. Three-phase bone scan in osteomyelitis and other musculoskeletal disorders. Am Fam Physician. 1996;54(5):1639-47. PubMed
  8. Park DY, Jin LH, Min BH, et al. Subchondral bone scan uptake correlates with articular cartilage degeneration in osteoarthritic knees. Int J Rheum Dis. 2017;20(10):1393-1402. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →