救急外来で頭痛・意識障害・まひ・頭部外傷の人が来たとき、まず撮られることが多いのが頭部CTです。頭部CTで脳実質とその周りを見るときは、次のようなことに着目します。

  • 高吸収域(出血・石灰化・造影剤)
  • 低吸収域(梗塞・浮腫・腫瘍・白質病変)
  • 腫瘤効果・正中偏位(脳ヘルニアの危険)
  • 脳室・脳槽の大きさ(水頭症)
  • 脳萎縮(年齢相応か、偏りがあるか)
  • 石灰化(生理的か、病的か)
  • 脳の外の液体(硬膜下・硬膜外・くも膜下)

の有無について、まずは順番に見てみましょう。

以下、それぞれの所見で考える主な原因・鑑別と、次に何を見るか・どの検査へ進むかを解説します。頭部CT全体の見る順番は頭部CTの見方まとめ、構造の名前は頭部CTの解剖で確認できます。

先に結論:頭部CTで脳実質を見るときの7つのチェックポイント

  1. 白いところ(高吸収域):急性期の出血か、石灰化か、造影剤か。場所(脳実質・くも膜下腔・硬膜下・硬膜外・脳室)で原因を考える
  2. 黒いところ(低吸収域):血管の支配領域に一致すれば梗塞、白質に指のように広がれば腫瘍や炎症による浮腫、左右対称なら中毒・代謝の病気も考える
  3. 腫瘤効果:脳溝が消えていないか、脳室が押されていないか、正中偏位の程度、脳槽がつぶれていないか
  4. 脳室・脳槽:脳室が大きければ水頭症か萎縮か。脳溝の広がりとの釣り合いを見る
  5. 萎縮:年齢相応か。海馬・前頭葉・小脳・片側など、偏った萎縮がないか
  6. 石灰化:松果体・脈絡叢・淡蒼球などの生理的な石灰化か、腫瘍・感染・代謝の病気による石灰化か
  7. 脳の外:硬膜下・硬膜外の血腫、くも膜下出血。脳槽・脳溝の黒さを確認する

1. 高吸収域(出血・石灰化・造影剤)

脳出血

脳出血のCT画像の経時的変化
脳出血のCTの変化を示した模式図です。発症直後は白い血腫で、数時間から周りに浮腫(黒い縁)が出て数日で最大になり、1週間ほどで血腫の辺縁から低吸収化が始まり、2〜3か月で液化した空洞になります。詳しくは脳出血のCT所見とCT値の記事へ。

急性期の血腫は周りの脳より白く見えます。まず場所を見ます。

血腫の量は、最大径A・それに直交する径B・血腫が写るスライス数×スライス厚Cを掛けて2で割るABC/2法でおおよそ計算できます。118例の検討で、コンピュータで測った値とよく相関し、1分以内で計算できました(Kothari 1996)。詳しくは脳出血の血腫量の計算(ABC/2)を参照してください。血腫の中に濃さの違う部分が渦を巻くように見える所見や、造影CTで血腫の中に造影剤が点状に漏れる所見は、血腫が大きくなる手がかりとされます(swirl signとspot sign)。

MRIとの比較では、急性期の脳出血の検出はCTとMRIでほぼ同等でした(Chalela 2007)。救急で出血の有無を確かめる目的には、CTが役立ちます。

くも膜下出血・硬膜下血腫・硬膜外血腫

  • くも膜下出血:脳槽・シルビウス裂・脳溝が白く埋まる。本来黒いはずの鞍上槽・迂回槽が灰色になっていないかを見ます。頭痛の発症から6時間以内に撮られた953例では、CTはくも膜下出血121例をすべて検出しました(感度100%)(Perry 2011)。見落とさないコツはくも膜下出血のCTと見落とさないポイントへ。脳浮腫などで脳槽が白く見え、出血のように見えるもの(pseudo-SAH)もあります
  • 急性硬膜下血腫:骨の内側に沿った三日月形の高吸収。縫合線を越えて広がります(急性硬膜下血腫)
  • 急性硬膜外血腫:凸レンズ形の高吸収。骨折を伴うことが多く、縫合線で止まります
  • 慢性硬膜下血腫:脳と同じくらい〜低い濃さの三日月形。高齢者の物忘れや歩きにくさの原因になります

出血と紛らわしい高吸収

  • 石灰化:出血より白く、骨に近い濃さになることが多い。ウィンドウを広げると見分けやすくなります(下の「6. 石灰化」へ)
  • 造影剤:血管内治療や造影検査の後には、脳に造影剤が残って白く見えることがあります。造影剤による頭部CTの高吸収を参照してください

2. 低吸収域(梗塞・浮腫・腫瘍・白質病変)

脳梗塞

early CT sign(レンズ核の不明瞭化)
頭部単純CTで、片側のレンズ核の輪郭がぼやけ、外側の皮質と白質の境もわかりにくくなっている早期虚血サインの例です。詳しくはearly CT sign(早期虚血サイン)とはの記事へ。

発症早期の脳梗塞はCTでははっきりしないことが多く、救急で脳卒中が疑われた356例の比較では、急性の脳虚血をCTで指摘できたのは10%、MRIでは46%でした(Chalela 2007)。そのためCTでは、次のようなわずかな変化を探します。

  • レンズ核の輪郭が不明瞭、島皮質のリボンが消える、皮質と白質の境が不明瞭、脳溝が消える
  • 閉塞した動脈が白い:中大脳動脈の中の血栓が白く見えるhyperdense sign(脳梗塞の閉塞動脈の画像診断)

中大脳動脈の領域を10か所に分けて早期虚血の範囲を点数にするASPECTSは、血栓溶解療法を受けた203例で、点数が治療後の機能の回復や症候性の出血と関連していました(Barber 2000)。CTとMRIの見え方の違いは脳梗塞はCTでわかる?MRIとの違いにまとめています。

時間がたった梗塞は、支配血管の領域に一致した境界のはっきりした低吸収になり、最後は脳脊髄液と同じ濃さの空洞と、まわりの脳溝・脳室の拡大が残ります。

浮腫・腫瘍

  • 白質に指のように広がる低吸収:腫瘍や膿瘍のまわりの血管性浮腫。中心に腫瘤があることが多く、造影CT・MRIで評価します(頭部CT・MRIで造影が必要なとき)
  • 皮質と白質の両方を含む低吸収:梗塞などによる細胞性浮腫。血管の領域に一致するかを見ます
  • 脳梗塞に似たもの:低血糖・けいれん後・静脈洞血栓症など、血管の領域に一致しない低吸収は脳梗塞に似た病気を参照してください

左右対称・白質の低吸収

一酸化炭素中毒の淡蒼球の低吸収
引用:Radiopaedia
頭部CTで、両側の淡蒼球が左右対称に低吸収になっている一酸化炭素中毒の例です。詳しくは頭部CTの低吸収域とは?正中・左右対称性病変の救急鑑別疾患の記事へ。

  • 基底核・視床の対称性の低吸収:一酸化炭素中毒・低酸素脳症・代謝の病気など
  • 脳室のまわりの白質の淡い低吸収:高齢者に多い小さな血管の病気による白質病変。年齢とあわせて程度を記載します
  • 小さな点状・線状の低吸収:基底核の下部などの血管周囲腔は、ラクナ梗塞と間違えやすい正常構造です

3. 腫瘤効果・正中偏位・脳ヘルニア

急性硬膜下血腫による正中偏位
引用:Radiopaedia
頭部CT横断像で、左の骨の内側に沿った三日月形の高吸収(急性硬膜下血腫)があり、左の脳室が押しつぶされ、大脳鎌・透明中隔が右へずれています(正中偏位)。詳しくは急性硬膜外血腫・急性硬膜下血腫・慢性硬膜下血腫の手術適応まとめの記事へ。

出血・梗塞・腫瘍・浮腫が大きくなると、まわりの脳が押されます。次の順に確認します。

  • 脳溝が消えていないか(左右で比べる)
  • 脳室が押されていないか、反対側の脳室が広がっていないか(脳室の出口がふさがれた可能性)
  • 正中偏位:透明中隔や松果体が正中からどれだけずれているか
  • 脳槽:鞍上槽・迂回槽・四丘体槽がつぶれていないか

急性の片側の腫瘤24例の検討では、松果体の水平方向のずれが0〜3 mmでは意識は保たれ、3〜4 mmで傾眠、6〜8.5 mmで昏迷、8〜13 mmで昏睡と対応していました(Ropper 1986)。ずれの量は報告書に数字で書いておくと、経過の比較に役立ちます。脳ヘルニアの種類は脳ヘルニアとは?種類と症状、CT画像所見で解説しています。

次に見ること:正中偏位や脳槽の消失があれば、脳外科へ速やかに伝えます。経過を見るためのCTでは、前回と同じ高さで偏位と血腫の大きさを比べます。

4. 脳室・脳槽(水頭症)

Evans indexの測り方
頭部MRI(T2強調像)で、側脳室前角の幅(赤)と頭蓋内腔の幅(青)の比を測るEvans indexの図です。同じ測り方はCTでも使えます。詳しくは正常圧水頭症(iNPH)とは?DESH・Evans indexの記事へ。

脳室が大きいときは、水頭症(髄液がたまって脳室が広がる)か、萎縮(脳が縮んですき間が広がる)かを見分けます。

  • 閉塞性(非交通性)水頭症:脳室のどこかで髄液の通り道がふさがり、そこより上の脳室だけが広がる。中脳水道の狭窄・後頭蓋窩の腫瘍や出血などを探します。髄液の通り道は脳室と髄液の流れ、交通性・非交通性水頭症の違いへ
  • 交通性水頭症:くも膜下出血や髄膜炎のあとなど。4つの脳室すべてが広がります
  • 正常圧水頭症:脳室が大きいのに、頭頂部の脳溝が狭くシルビウス裂が広い、という釣り合いの悪さ(DESH)が手がかりです。歩行障害・認知機能の低下・尿失禁のいずれかがあり、MRIでこの形が見られた100例にシャント手術を行った日本の多施設の前向き研究では、1年後に69%で日常生活の自立度(modified Rankin Scale)が1段階以上改善しました(Hashimoto 2010)

急な水頭症では、側脳室の前角や下角が丸く広がり、脳室のまわりの白質に髄液がしみ出した淡い低吸収が見えることがあります。

5. 脳萎縮

脳は年齢とともに縮み、脳溝や脳室が広がります。読影では「年齢相応か」と偏りがあるかを見ます。

  • 海馬・側頭葉の内側:アルツハイマー型認知症で目立ちます。CTでは評価に限りがあり、MRIの冠状断が向いています(認知症の頭部画像所見まとめ)
  • 片側だけ:古い梗塞・外傷・幼少期の脳の障害など
  • 小脳:アルコール・薬剤・変性疾患など

「萎縮があると言われた」ときの考え方は脳萎縮と言われたら?年齢相応の萎縮と注意したい萎縮にまとめています。

6. 石灰化

頭部CTでは、病気でなくても石灰化がよく見られます。

  • 生理的な石灰化:松果体・脈絡叢・手綱・大脳鎌などの硬膜・淡蒼球。年齢とともに増えます
  • 基底核・小脳歯状核の広い石灰化:副甲状腺機能低下症などの代謝の病気や、特発性の基底核石灰化を考えます
  • 多発する小さな石灰化:有鉤嚢虫症などの感染のあと、結節性硬化症など
  • 腫瘤の中の石灰化:髄膜腫・乏突起膠腫・頭蓋咽頭腫・血管奇形など。造影CT・MRIで評価します

出血との見分け:石灰化は出血より白いことが多く、時間がたっても変わりません。迷うときは以前の画像と比べるか、MRIの磁化率を強調した画像で確認します。

脳の病変が偶然見つかったときの扱い

症状と関係なく、検査で偶然病変が見つかることがあります。一般住民5,800人の頭部MRIを調べたロッテルダム研究では、9.5%に偶発所見があり、多かったのは髄膜腫(2.5%)と脳動脈瘤(2.3%)でした。専門医に紹介された人の多くは、経過観察または初診のみで終わっていました(Bos 2016)。CTでも次の点を記載しておくと、次の一手を決めやすくなります。

  • 腫瘤:大きさ・場所・石灰化・まわりの浮腫の有無。浮腫や腫瘤効果があれば造影MRIへ
  • 脳室の拡大:萎縮との釣り合い、症状(歩行・認知・排尿)の有無
  • 古い梗塞・白質病変:脳卒中の危険因子の管理につなげる

頭痛・まひ・ろれつが回らないなどの症状がある方や、検査で指摘された所見が気になる方は、医療機関で相談してください。

脳実質で見落としやすい場所と、確認のしかた

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
後頭蓋窩(小脳・脳幹) 骨によるアーチファクトで濃さがむらになり、小さな梗塞・出血がわかりにくい ウィンドウを狭めて見る。めまいで小脳梗塞を疑うならMRIを考える(小脳梗塞)
頭頂部(高い位置のスライス) 脳溝が細く、少量の硬膜下血腫やくも膜下出血が骨に紛れる 冠状断で頭頂部の骨の内側を確認する
骨の内側に沿った薄い血腫 標準の脳の条件では骨の白さに埋もれる ウィンドウを広げた条件(硬膜下血腫用)でも見る
鞍上槽・迂回槽・シルビウス裂 少量のくも膜下出血は脳槽が「灰色」になるだけ 左右の脳槽の黒さを比べる。迷えばくも膜下出血の見落とさないポイントへ
左右対称の病変 左右を比べて違いを探す読み方では気づきにくい 基底核・視床・脳幹の濃さを、皮質や白質と比べる
  • ウィンドウを使い分ける:脳の条件・硬膜下血腫を見る広めの条件・骨条件の3つで見ると、見落としが減ります。
  • 以前の画像と比べる:萎縮・石灰化・古い梗塞は、比べるだけで新しい病変かどうかがわかることがあります。

脳実質の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. 頭部CTで異常がないと言われれば、脳梗塞ではないと考えてよいですか?
A. いいえ。発症早期の脳梗塞や、脳幹・小脳の小さな梗塞はCTに写らないことが多く、MRIの拡散強調像のほうが見つけやすい病変です。まひ・しびれ・ろれつが回らないといった症状が続く場合は、医療機関で相談してください。

Q. 頭部CTで「石灰化がある」と書かれていました。病気ですか?
A. 松果体・脈絡叢・淡蒼球などの石灰化は、病気でなくてもよく見られる所見です。石灰化が広い範囲にある、腫瘤の中にある、といった場合は原因を調べます。

Q. 脳室が大きいと言われました。水頭症ですか?
A. 脳が萎縮して脳室が広がって見えることも多く、脳溝の広がりとの釣り合いで見分けます。歩きにくさ・物忘れ・尿もれがそろう場合は正常圧水頭症も考え、MRIなどで評価します。

まとめ

頭部CTの脳実質では、

  • 白いところ:出血か石灰化か造影剤か、場所はどこか
  • 黒いところ:血管の領域に一致する梗塞か、浮腫か、左右対称の病変か
  • 腫瘤効果:脳溝・脳室・正中偏位・脳槽
  • 脳室と脳溝の釣り合い:水頭症か萎縮か
  • 萎縮の偏り、石灰化の分布、脳の外の血腫

の順に見ると、見落としを減らせます。CTで写りにくい病変があることを知り、症状に合わせてMRIへ進むことも大切です。

あわせて読みたい:頭部CTの見方まとめ|高吸収域・低吸収域とは?読影の順番とチェックポイント

あわせて読みたい:頭を打ったときの画像検査|頭部CTが必要なとき・MRIを追加するとき

参考文献

  1. Kothari RU, Brott T, Broderick JP, et al. The ABCs of measuring intracerebral hemorrhage volumes. Stroke. 1996;27(8):1304-5. PubMed
  2. Chalela JA, Kidwell CS, Nentwich LM, et al. Magnetic resonance imaging and computed tomography in emergency assessment of patients with suspected acute stroke: a prospective comparison. Lancet. 2007;369(9558):293-8. PubMed
  3. Perry JJ, Stiell IG, Sivilotti ML, et al. Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study. BMJ. 2011;343:d4277. PubMed
  4. Barber PA, Demchuk AM, Zhang J, et al. Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy. ASPECTS Study Group. Alberta Stroke Programme Early CT Score. Lancet. 2000;355(9216):1670-4. PubMed
  5. Ropper AH. Lateral displacement of the brain and level of consciousness in patients with an acute hemispheral mass. N Engl J Med. 1986;314(15):953-8. PubMed
  6. Hashimoto M, Ishikawa M, Mori E, et al. Diagnosis of idiopathic normal pressure hydrocephalus is supported by MRI-based scheme: a prospective cohort study. Cerebrospinal Fluid Res. 2010;7:18. PubMed
  7. Bos D, Poels MM, Adams HH, et al. Prevalence, Clinical Management, and Natural Course of Incidental Findings on Brain MR Images: The Population-based Rotterdam Scan Study. Radiology. 2016;281(2):507-515. PubMed

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