頭部CTを撮影したけれでも、見方がわからない、読影ができない・・・。

そのような状態ですと、いざという時に、くも膜下出血など重大疾患を見逃す可能性があります。

そこで今回は頭部CTの画像の見方、読影の仕方、チェックするべき点を実際の画像を見ながらわかりやすく解説していきます。

まず検査の目的を確認する。

上肢や下肢の麻痺が出たので、頭のCTを撮影したのか。あるいは、頭を打ったので撮影したのか。単なるスクリーニングなのかで重視して見るべきポイントは異なります。

まずは、なぜ頭部のCTを撮影したのか検査の目的を確認しましょう。

では実際の読影方法を見ていきましょう。

PCやタブレットならば実際の正常画像を見ながら進めてください。

軟部、頭蓋骨、顔面骨、副鼻腔、側頭骨、眼窩、トルコ鞍

脳の実質につい目が行きがちですが、まずは脳実質以外の周辺の構造に異常がないかをチェックしていきましょう。

軟部

頭部の皮下に脂肪腫や粉瘤などを疑う所見や、外傷で撮影されている場合は、高頻度で見られる皮下血腫の有無、皮下に気腫がないかなどをチェックしていきます。

外傷で皮下血腫で見られた場合、そこが外傷のポイントであると予想することができます。

症例 90歳代女性 外傷

頭蓋骨

外傷の場合は骨折線の有無のチェックが必須です。骨折線は頭蓋骨の縫合線と紛らわしいことがあるので注意が必要です。

また、頭部の手術歴がある人では頭蓋骨にその痕が残っていますので、その有無を確認します。

骨を見る場合は、必ず骨条件に変えてから見るようにしましょう。

症例 60歳代男性 交通事故

頭蓋骨に2箇所骨折線を認めています。

副鼻腔・鼻腔

副鼻腔とは、上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞を合わせた腔を指します。ここでは、副鼻腔や鼻腔に粘膜の肥厚がないか(副鼻腔炎や鼻炎の有無)を確認します。

また、特に副鼻腔において、ニボー像を呈する液貯留がある場合、急性副鼻腔炎、外傷の場合は血腫の可能性があります。外傷の場合は、CT値を測定することで血腫が混在していないかや、その周囲に骨折線がないかをチェックしましょう。

症例 30歳代 男性

側頭骨

両側の乳突蜂巣に空気がしっかりあるか(含気が良好であるか)を確認します。

  • 液貯留がある場合→乳突蜂巣炎(慢性中耳炎)
  • ニボー像を有する液貯留がある場合→急性中耳炎や外傷による血腫

の可能性があります。

また中耳の耳小骨周囲などに空気がしっかりあるかをチェックします。軟部陰影を認めた場合は中耳炎の可能性があります。

症例 80歳代女性

眼窩

眼球や周囲の外眼筋を左右差に注意を払いながらチェックします。

外傷の場合は眼球内に血腫がないかや、外眼筋に腫大がないか、骨折線がないかをチェックしましょう。

眼窩底骨折の場合は、横断像よりも冠状断像の方がわかりやすいことが多いので、眼球周囲に外傷のある場合は、冠状断像をチェックしましょう。

症例 60歳代女性

 

トルコ鞍

CTではなかなか難しいところではありますが、大きな腫瘍があった場合に気づけるように、正常ならばどのように見えるのかを知っておく必要があります。

症例 60歳代 男性

脳実質

続いて脳実質をチェックします。

大脳半球だけでなく、小脳、延髄、橋、中脳と撮影した範囲の脳実質をくまなく見ていきます。

この際に注意することは大脳は灰白質(大脳表面、大脳基底核)と白質からなり、

  • 灰白質(大脳表面、大脳基底核):CT値≒40HU
  • 白質:CT値≒35HU

と灰白質の方がCT値が高く、より高吸収(白い!)であるということです。

左右を比較しながら、どこかでこのバランスが崩れているところはないか、本来の濃度よりも高吸収になっていたり、低吸収になっていたりするところはないかをチェックします。

上のように脳の皮質である灰白質の方が白質よりもやや高吸収(白い)ことがわかります。

本来の濃度よりも高吸収(白い)の場合

  • 脳出血
  • 脳腫瘍
  • 石灰化

などの可能性があります。

脳出血の場合

脳出血は急性期のものであれば、非常に高吸収(白い)になりますので、一目瞭然ですが、時間が経過するにつれその吸収値は下がりますので(だんだん白さが失われる)注意が必要です。

出血を見たらその部位をチェックします。多くは高血圧による出血で、被殻、視床、小脳、脳幹部(特に橋)を中心に起こりますが、高血圧のほかアミロイドアンギオパチーが原因となり皮質下に起こることもあります。

症例 50歳代 男性
脳腫瘍の場合

脳腫瘍の中には高吸収を示すものがあります。特に、

  • 悪性リンパ腫
  • 髄芽腫
  • 胚腫

は高吸収を示すことが多いことで知られています。

症例 70歳代 男性

石灰化の場合

石灰化は急性期出血よりもさらに高吸収を示し、一目瞭然です。多くは生理的な石灰化であり、起こりやすい部位をあらかじめ知っておく必要があります。

逆に異常な石灰化をきたすのは、腫瘍に伴う石灰化、慢性硬膜下血腫、結節性硬化症、Sturge-Weber症候群などがあります。

本来の濃度よりも低吸収(黒い)の場合

  • 脳梗塞
  • 脳腫瘍

などの可能性があります。

脳梗塞の場合

脳脊髄液と比較して同じくらいの低吸収域の場合、陳旧性(古い)の梗塞の可能性が高いですが、正常の脳実質と比較して少し低吸収域の場合、特に脳の浮腫を伴っていたり、腫大を伴っている場合は、新しい脳梗塞の可能性があります。急性期脳梗塞のCTにおける変化をearly CT signと言います。

詳細はこちら→脳梗塞はCTでわかるの?MRIの方がよい?

症例 80歳代男性

たとえば上の画像ですと、両側の基底核や左の視床に多数の低吸収域(黒い抜け)を認めます。いずれも古い梗塞(陳旧性脳梗塞)を疑う所見です。

脳腫瘍の場合

また転移性を含めて脳腫瘍を伴い周囲に浮腫性変化を伴っている場合は低吸収域に見えることがあります。(浮腫性変化は低吸収域に見えます。)

放線冠・半卵円中心などの深部白質の低吸収域

脳脊髄液と同じくらい明瞭に低吸収域の場合、陳旧性(古い)の梗塞を疑いますが、淡く低吸収域の場合は、大脳白質病変(慢性虚血性変化など)の可能性が高いです。

症例 70歳代女性

半卵円中心レベル及び放線冠レベルにおいて、深部白質に広範に淡い低吸収域を認めています。
慢性虚血性変化を疑う所見です。

側脳室周囲の低吸収域

PVL(periventricular lucency)と呼ばれます。MRIではT2WIやFLAIR像で同部位に高信号域として認め、PVH(periventricular high intensity)と呼ばれる部位に相当します。

これが起こる原因として、水頭症を伴う場合は、脳室上衣経由で脳脊髄液が脳実質に移行するためと言われています。

正常圧水頭症においても、この所見が見られるもの、脳溝開大のないものは、減圧術が著効すると言われており、チェックする所見の一つと言えます。

症例 70歳代女性

両側の側頭室前角及び後角周囲を中心に淡い低吸収域あり。
PVL(periventricular lucency)を疑う所見です。水頭症は認めていません。

症例 80歳代男性

両側の側頭室前角周囲に淡い低吸収域あり。
PVL(periventricular lucency)を疑う所見です。水頭症は認めていません。

脳室・くも膜下腔

脳室

脳室では、側脳室、第3脳室、第4脳室、中脳水道をチェックしていきます。

  • 不自然に拡張していないか
  • 内部に腫瘍など本来存在しない構造がないか

をチェックしていきます。

脳室が拡張している場合、水頭症をきたしている場合があり、何か閉塞起点となるようなものがないかをチェックします。正常圧水頭症の場合、DESHと呼ばれる形態を示します。DESHとはくも膜下腔のアンバランスさのことで、Disproportionately Enlarged Subarachnoid-space Hydrocephalusの略です。

これは、上の方は脳が詰まっているのに、横側は空いているというアンバランスさのことです。

症例

両側シルビウス裂の脳の萎縮及び開大を認めています。にもかかわらず高位円蓋部は非常に密であり、DESH所見を認めています。正常圧水頭症を疑う所見です。

くも膜下腔

くも膜下腔では小脳橋角槽、鞍上槽(=脳底槽)、シルビウス裂、大脳谷槽(Sylvius谷)、前大脳縦裂、四丘体槽、脚間槽、迂回槽などをチェックしていきます。

ここでのポイントは、くも膜下出血などを疑う高吸収域がないかをチェックすることはもちろん、

  • 左右差の有無。
  • 本来見えるべき脳脊髄液の黒さが保たれているか。

をチェックすることが重要です。特にある程度時間の経過した血腫は高吸収域として描出されないので、後者を意識することが大事です。

また、同時に特に外傷の場合は、硬膜下や硬膜外に血腫がないかをチェックしましょう。

最後に

以上のように系統立って頭部CTを見ていくと見落としが少なくなります。

  1. まず検査の目的を確認する。
  2. 軟部、頭蓋骨、顔面骨、副鼻腔、側頭骨、眼窩、トルコ鞍をチェック。
  3. 脳実質をチェック。
  4. 脳室・くも膜下腔をチェック。

この順番で(慣れてくれば同時に)チェックしていきましょう。

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