急性/慢性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫の手術適応

  • 硬膜外血腫(acute epidural hematoma: AEDH)
  • 急性硬膜下血腫(acute subdural hematoma: ASDH)
  • 慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma: cSDH)

は、いずれも「画像の閾値」と「臨床増悪」で手術適応が判断される代表疾患です。

今回は、救急現場でコンサルトや読影レポートに直結する基準値を中心にまとめました。

手術適応は最終的に脳神経外科が臨床状況(意識、瞳孔、抗血栓薬、併存損傷、年齢、施設体制)を含め総合判断しますので本稿はあくまで迷ったら即コンサルトするための骨格であることを前提とします。

まず押さえる:CTで必ず数値化すべき項目

  • 血腫の最大厚(mm):最厚部で計測する。
  • midline shift(MLS, mm):透明中隔付近などで正中偏位を計測する。
  • (AEDHで重要)推定体積(cm³):可能ならABC/2などで概算する。
  • 基底槽の圧排・ヘルニア徴候:脳槽消失、uncal herniation徴候など。
  • 臨床の推移:GCS/JCSの変化、瞳孔不同、局在徴候(片麻痺・失語など)。

急性硬膜外血腫(AEDH)の手術適応

AEDHは動脈性出血を背景に急速増悪しうるため、一定の閾値を超える場合は「GCSに関わらず」手術適応となる。

手術適応(代表的閾値)

  • 血腫体積 > 30 cm³:患者のGCSに関わらず血腫除去術を行う。

非手術で管理しうる条件(=外れたら手術寄り)

  • 体積 < 30 cm³ かつ 最大厚 < 15 mm かつ MLS < 5 mm
  • かつ GCS > 8、局所神経症候なし
  • 上記を満たす場合、脳神経外科管理下で厳重な神経学的観察と反復CTにより保存的加療も許容される。

重要な身体所見

  • 昏睡(GCS < 9)+瞳孔不同:可能な限り速やかな手術を要する。
  • 症状増悪や血腫増大を示唆する所見があれば、閾値未満でも方針が変わりうる。

急性硬膜下血腫(ASDH)の手術適応

ASDHは脳挫傷などの併存損傷を伴いやすく、減圧の意味合いが強い。基本は「厚さ/正中偏位の閾値」+「臨床増悪」で手術適応を判断する。

手術適応(代表的閾値:GCSに関わらず)

  • 血腫厚 > 10 mm または MLS > 5 mm:GCSに関わらず外科的血腫除去を行う。

昏睡例(GCS < 9)で、閾値未満でも手術を考える条件

  • 急性SDHでGCS < 9の場合、ICPモニタリングを行う。
  • 血腫厚 ≤10 mm かつ MLS ≤5 mmでも、以下のいずれかがあれば血腫除去を考慮する:
    • 受傷〜入院でGCSが2点以上低下
    • 瞳孔不同 または 固定散大
    • ICP > 20 mmHg

慢性硬膜下血腫(cSDH)の手術適応

cSDHは高齢者に多く、症状(歩行障害、認知変化、片麻痺、頭痛、意識障害など)と画像で治療方針を決める。標準術式は穿頭ドレナージ(burr-hole drainage)である。

手術(ドレナージ)を強く考える状況

  • 症候性:片麻痺、失語、歩行障害、意識障害、せん妄/認知機能低下など、cSDHに起因する神経症状がある。
  • 進行・代償不全:症状増悪、反復転倒、けいれん、著明な眠気や意識低下などがある。

画像所見のよく使う目安

  • cSDHでは、血腫厚 > 10 mm または MLS > 5 mmが「臨床的に有意な症状と結びつきやすい」指標としてしばしば用いられる。
  • ただし、無症候でも増大傾向や抗血栓薬内服などがあれば、手術閾値は実臨床で前後しうる。

補足:再発対策・追加治療

近年、再発抑制目的に中硬膜動脈塞栓術(MMA embolization)が「標準治療(手術/非手術)に対する有力な補助療法」として整理されつつある。適応や位置づけは施設・症例で異なるため、脳外科方針に従う。

 

参考文献(出典)

  1. Bullock MR, et al. Surgical management of acute epidural hematomas. Neurosurgery. 2006.
  2. Bullock MR, et al. Surgical management of acute subdural hematomas. Neurosurgery. 2006.
  3. Brain Trauma Foundation. Guidelines for the Surgical Management of Traumatic Brain Injury(EDH/ASDH章). 2006.
  4. Kan P, et al. ARISE I Consensus Statement on the Management of Chronic Subdural Hematoma. Stroke. 2024.

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