
先に結論:急性期は頭部の単純CTが第一。CTで説明のつかない症状が続くときにMRIを足す。子どもは被ばくに配慮して、基準で「撮らなくてよい子」を見分ける
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 最初の検査 | 頭部の単純CT。検査時間が短く、急性の出血や骨折の評価に向く(ACR 2021年版) |
| CTを撮る基準 | 成人はCanadian CT Head Rule、New Orleans Criteria。小児はPECARNの基準。診察で危険な所見があるときに撮り、全員には撮らない |
| MRIを足すとき | CTで説明のつかない神経の症状が続くとき(特に亜急性〜慢性期)。びまん性軸索損傷(DAI)などの小さな損傷を調べる |
| CT血管造影(CTA)など | 血管の損傷が疑われるとき(骨折の位置などから)にCTA。髄液漏が疑われるときは頭蓋底の薄いスライスCT |
| 受診の目安 | 意識がぼんやりする、繰り返す嘔吐、けいれん、手足の力が入らない、耳や鼻から透明な液体、頭痛が強くなる、様子がおかしい |
頭を打ったとき、画像検査はどう決めるのか
頭部外傷の大半は軽症です。急性の頭部外傷のうち75%以上は軽症で、さらにその75%以上は、意識の状態を示すGlasgow Coma Scale(GCS)が正常の15点です。そのため、診療ガイドラインは一般に、全員にCTを撮るのではなく、臨床的な決定ルールに基づいて選んで撮ることを勧めています(ACR 2021年版)。
画像検査は、次の順で考えます。
- 診察(意識の状態、嘔吐、頭痛、年齢、受傷の仕方、骨折を疑う所見、内服薬)で、頭の中の損傷を疑う所見があるかを調べる
- 疑うときは、頭部単純CTで出血・骨折・脳の腫れを急いで調べる
- CTで説明のつかない症状が残るとき、あるいは意識の状態に比べてCTの所見が軽いときに、MRIを追加する
- 骨折や症状から血管の損傷や髄液漏が疑われるときは、CTAや薄いスライスのCTを追加する
成人でCTを撮る基準:Canadian CT Head Rule と New Orleans Criteria
成人の軽い頭部外傷で、CTを撮るかどうかを決める代表的なルールが2つあります。どちらも、診察で調べる項目を点検して、CTが必要な人を見逃さないように作られています。
Canadian CT Head Rule(2001年)
カナダの10施設で、受傷後にGCSが13〜15点だった成人3,121人を調べて作られたルールです。対象のうち、臨床的に重要な脳損傷があった人は8%、脳神経外科的な介入が必要だった人は1%でした(Stiell 2001)。
| 区分 | 項目 | 成績 |
|---|---|---|
| 高リスク | 受傷後2時間たってもGCSが15点にならない、開放性頭蓋骨骨折の疑い、頭蓋底骨折を疑う所見、2回を超える嘔吐、65歳を超える | 手術などの介入が必要になる人を100%拾えた。CTを撮るのは対象の32%で済む |
| 中リスク | 衝突前の健忘が30分を超える、危険な受傷機転 | 臨床的に重要な脳損傷に対する感度は98.4%、特異度は49.6%。CTを撮るのは54% |
New Orleans Criteria(2000年)
GCSが15点で、短い神経学的診察も正常だった軽症の頭部外傷の患者で作られたルールです。CTで異常があった人は、頭痛、嘔吐、60歳を超える、薬物・アルコールの影響、短期記憶の障害、鎖骨より上の外傷の所見、けいれんの7項目のうち、いずれか1つ以上を持っていました。第2段階の909人では、この7項目全体の感度は100%でした(Haydel 2000)。
2つのルールの項目は一部が重なりますが、一致はしません。どちらのルールも、CTを省略してよい人を見分けるための目安であり、診察する医師の判断を置き換えるものではありません。
なぜ最初は「単純CT」なのか
頭部外傷の急性期にCTが第一選択になるのは、検査時間が短く、急性の出血に対する感度が高いためです(ACR 2021年版、ACR小児 2020年版)。急性の頭蓋内出血は、時間との勝負になることがあります。頭蓋骨の骨折も、CTの骨条件でよく分かります。
| 検査 | 急性期の得意なこと | 限界・注意点 |
|---|---|---|
| 頭部単純CT | 急性の出血(硬膜外・硬膜下・くも膜下・脳内)、頭蓋骨骨折、脳の腫れ、脳ヘルニアの所見を短時間で調べる | 小さな脳実質の損傷や、神経線維の損傷(DAI)は見逃されることがある。被ばくがある |
| 頭部MRI | 脳実質の小さな損傷、微小出血、拡散の異常などに強い | 検査に時間がかかり、動けない急性期や小児では扱いにくい。小児では鎮静が必要になることが多い |
| CT血管造影(CTA) | 頸動脈や椎骨動脈など、血管の損傷の評価 | 造影剤を使う。血管の損傷を疑う所見があるときに追加する |
出血の種類と見え方は急性硬膜下血腫とは?急性硬膜外血腫との違い(三日月型・凸レンズ型)、架橋静脈、症状とCT画像のポイントで、手術が検討される大きさの目安は(外傷性)急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫および慢性硬膜下血腫の手術適応まとめで説明しています。外傷では、造影剤を使わない単純CTが基本です。造影の要否は頭部CT・MRIで造影が必要なとき・いらないときにまとめています。
子どもの頭部外傷:PECARNの基準と被ばくへの配慮
子どもは、CTによる放射線の影響を大人より受けやすいため、「撮らなくてよい子」を見分けることが特に大切です。小児の頭部外傷では、ガイドラインも、検証された小児専用のルールで、撮らなくても安全な子を見分けることを勧めています(ACR小児 2020年版)。
PECARNの小児頭部外傷ルール(2009年)
北米の25の救急外来で、受傷後24時間以内に受診した18歳未満の42,412人を調べて作られたルールです。CTを撮ったのは35.3%で、臨床的に重要な脳損傷は0.9%、脳神経外科手術が必要だった子は0.1%でした。年齢によって2つのルールがあり、すべての項目に当てはまらない(低リスク)なら、CTを省略できるとされました(Kuppermann 2009)。
| 年齢 | 低リスクの条件(すべてを満たす) | 低リスク群の成績 |
|---|---|---|
| 2歳未満 | 意識の状態が正常、前頭部以外に頭の腫れ(血腫)がない、意識消失がない(または5秒未満)、重くない受傷の仕方、頭蓋骨の骨折を触れない、保護者から見ていつも通りの様子 | 検証集団で、臨床的に重要な脳損傷の見逃しはなかった(陰性的中率100%) |
| 2歳以上 | 意識の状態が正常、意識消失がない、嘔吐がない、重くない受傷の仕方、頭蓋底骨折を疑う所見がない、強い頭痛がない | 陰性的中率99.95%。いずれのルールでも、脳神経外科手術が必要な子の見逃しはなかった |
研究の目的は、放射線で将来がんになる危険を避けるために、CTが不要な子を見分けることでした(Kuppermann 2009)。
子どもの被ばくをどう考えるか
英国の約18万人の大規模な研究では、小児・若年者の頭部CTなどの累積の放射線量が多いほど、白血病と脳腫瘍が増える関連がありました。ただし、これらのがんはまれなため、1回ごとの絶対的なリスクは小さく、10歳未満では、頭部CT1万回あたり、10年間で白血病と脳腫瘍が各1例ずつ増える計算でした。研究者は、臨床の利益が小さな絶対リスクを上回るときに行い、線量はできるだけ低くし、必要に応じて放射線を使わない検査も考えるべきだとまとめています(Pearce 2012)。
つまり、診察で頭の中の損傷が疑われる子には、被ばくよりも見逃しのリスクが重いのでCTを撮り、低リスクの子には撮らないという考え方です。MRIは放射線を使いませんが、小児では検査時間が長く、動きに弱いため鎮静が必要になることが多く、急性期にすぐ評価する検査としては向かないことがあります(ACR小児 2020年版)。
血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を飲んでいる人
抗凝固薬や抗血小板薬を使っている人は、頭の中で出血が起きやすく、止まりにくいと考えられています。受診のときは、飲んでいる薬(お薬手帳)を医療者に伝えることが大切です。
初回のCTで出血がなかったあと、時間がたってから出血が見つかる「遅発性の頭蓋内出血」についての研究があります。軽い転倒(ほとんどが立った高さからの転倒)の後、初回CTが正常だった抗凝固薬内服者5,289人をまとめたメタ分析では、遅れて出血が見つかった割合は、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)で2.43%、ワルファリンで2.31%でした。遅れて出血した69人のうち86%は臨床的な影響がなく、DOACまたはワルファリンの内服者全体での死亡は0.36%(11/3,051)でした(Puzio 2021)。この報告は、低いエネルギーの外傷で初回CTが正常だった場合に、遅発性出血のリスクが低いことを示しますが、強い外傷や症状があるときは別です。内服している人は、症状の変化があれば再受診し、医師の指示に従ってください。
CTが陰性でも症状が続くとき:MRIを追加する
頭部外傷のあと、頭痛、ふらつき、集中できない、意識がもうろうとするなどの症状が続くのに、CTは正常という場合があります。このとき、MRIはCTで目立たない脳実質の損傷を示すことがあります。MRIは、CTで説明のつかない神経の症状が持続するとき、特に亜急性(3か月未満)から慢性(3か月以上)の時期に役に立つとされます(ACR 2021年版)。
軽症の頭部外傷135人を調べた前向き研究では、受診時のCTが正常だった人の27%で、受傷後約12日の早期MRIに異常が見つかりました。また、MRIで脳挫傷が1か所以上ある、あるいは出血を伴う軸索損傷の病変が4か所以上あることは、3か月後の転帰が悪いことと関連しました(Yuh 2013)。
びまん性軸索損傷(DAI)とMRI
強い回転・剪断(せんだん)力が脳にかかると、神経線維(軸索)が広い範囲で傷つくことがあります。これがびまん性軸索損傷(DAI)です。CTでは小さな出血が少数見える程度か、ほとんど異常がないのに、意識障害が重いことがあります。MRIでは、磁化率強調像(SWI)で微小出血が点状の低信号として写り、FLAIRや拡散強調像で白質の異常が見えることがあります。詳しくはびまん性軸索損傷(DAI)のMRI画像診断|SWI・DWIでの微小出血と好発部位で解説しています。
症例 20歳代男性 びまん性軸索損傷(頭部CT)

引用:Adhikari S, et al. Ann Med Surg (Lond) 2025;87(7):4655-4660 (Figure 1)(CC BY 4.0)
ブランコから転落した20歳代男性の頭部CTです。右の前頭部に小さな高吸収の病変があり(A)、中脳周囲の脳槽にくも膜下出血がありました(B)。症例報告では、来院時のGlasgow Coma Scaleは15点で、その後10〜15点の間を大きく変動したと説明されています。24時間後に撮り直したCTも、初回と変わりませんでした。
同症例 MRIの磁化率強調像(SWI)

引用:Adhikari S, et al. Ann Med Surg (Lond) 2025;87(7):4655-4660 (Figure 3)(CC BY 4.0)
同じ症例の、入院から48時間後のMRI(SWI)です。大脳皮質(A)や脳幹と皮質(B)に、多数の点状の低信号の病変があります。症例報告では、CTの所見が軽いのに意識の状態が変動したため、MRIで重度のDAIと診断されたと説明されています。外傷性くも膜下出血の画像は外傷性くも膜下出血(外傷性SAH)とは?を参照してください。
骨折・血管損傷が疑われるとき:CTAと薄いスライスのCT
頭蓋底の骨折が、頸動脈の通る骨の管(頸動脈管)に及んでいるときなど、骨折の位置から血管の損傷が疑われるときは、頭頸部のCTAを追加して動脈を調べます。頭を打った人の大半では血管の評価は不要ですが、血管の損傷が疑われる所見があるときの追加検査です。髄液が耳や鼻から漏れる疑いがあるときは、頭蓋底の薄いスライスのCTで骨の状態を確認します(ACR 2021年版)。
受診の目安:どんなときに急ぐか
頭を打ったあとに次のような症状があるときは、早く医療機関に相談してください。夜間・休日でも、救急外来や救急相談を考えてください。
- 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い、眠り込んで起こせない
- 吐き気が強く、何度も吐く
- けいれんした
- 手足に力が入らない、しびれる、ろれつが回らない、物が二重に見える
- 頭痛がだんだん強くなる
- 耳や鼻から透明な液体や血が出る、目のまわりや耳の後ろが青くなる
- 抗凝固薬を飲んでいる人、高齢の人が頭を打った
- 乳幼児で、ぐったりしている、いつもと様子が違う、泣きやまない、頭に大きな腫れがある、高いところからの転落
症状がなくても、頭を打った日は、1人にならず、様子の変化に気を付けてください。気になる症状があれば、早めに医療機関へ相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 頭を打って病院へ行きましたが、CTは撮りませんでした。大丈夫でしょうか?
A. 診察でCTが必要となる所見がないと判断された可能性があります。CTの基準は、診察の所見に基づいて、CTの利益が大きい人を選ぶためのものです(Stiell 2001、Haydel 2000、Kuppermann 2009)。帰宅後に症状が出たら、再度受診してください。
Q. MRIのほうが詳しいなら、最初からMRIを撮ればよいのでは?
A. 急性期は、検査時間が短く、出血や骨折を迅速に調べられるCTが中心です。MRIは時間がかかり、動けない状態の人には向きません。MRIは、CTで説明のつかない症状が続くときの補助の検査です(ACR 2021年版)。
Q. 子どものCTは、何度も撮ると危ないですか?
A. 累積の放射線量が多いほど、白血病や脳腫瘍が増える関連が報告されていますが、これらのがんはまれで、1回あたりの絶対的なリスクは小さいとされます(Pearce 2012)。そのため、診察で必要性が高い子にはCTを撮り、低リスクの子には撮らないように、PECARNなどの基準を使います(Kuppermann 2009)。
Q. CTが正常だったのに、頭痛やふらつきが治りません。
A. CTで見えない脳の損傷や、別の原因があるかもしれません。症状が続くときは、主治医に相談してください。MRIで調べることがあります(ACR 2021年版、Yuh 2013)。
あわせて読みたい:症状別・最初に受ける画像検査の早見表
参考文献
- Stiell IG, Wells GA, Vandemheen K, et al. The Canadian CT Head Rule for patients with minor head injury. Lancet. 2001;357(9266):1391-6. PubMed
- Haydel MJ, Preston CA, Mills TJ, et al. Indications for computed tomography in patients with minor head injury. N Engl J Med. 2000;343(2):100-5. PubMed
- Kuppermann N, Holmes JF, Dayan PS, et al. Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma: a prospective cohort study. Lancet. 2009;374(9696):1160-70. PubMed
- Shih RY, Burns J, Ajam AA, et al. ACR Appropriateness Criteria® Head Trauma: 2021 Update. J Am Coll Radiol. 2021;18(5S):S13-S36. PubMed
- Ryan ME, Pruthi S, Desai NK, et al. ACR Appropriateness Criteria® Head Trauma-Child. J Am Coll Radiol. 2020;17(5S):S125-S137. PubMed
- Yuh EL, Mukherjee P, Lingsma HF, et al. Magnetic resonance imaging improves 3-month outcome prediction in mild traumatic brain injury. Ann Neurol. 2013;73(2):224-35. PubMed
- Puzio TJ, Murphy PB, Kregel HR, et al. Delayed Intracranial Hemorrhage after Blunt Head Trauma while on Direct Oral Anticoagulant: Systematic Review and Meta-Analysis. J Am Coll Surg. 2021;232(6):1007-1016.e5. PubMed
- Pearce MS, Salotti JA, Little MP, et al. Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study. Lancet. 2012;380(9840):499-505. PubMed
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