女性の腹痛で撮った腹部CTや、別の目的で撮ったCTの下の方には、子宮と卵巣(付属器)が写ります。婦人科の臓器はエコーやMRIで詳しく見ることが多い一方、救急ではCTで初めて異常が見つかることも少なくありません。CTでは、基本的にどのようなことに着目して読影すればよいのでしょうか?

  • 子宮の大きさ・形(筋腫・腺筋症・人工物)
  • 子宮内膜・子宮の内腔(内膜の厚さ・液体のたまり)
  • 卵巣の嚢胞(生理的な嚢胞か、それ以外か)
  • 付属器の腫瘤(脂肪・石灰化・充実成分)
  • 救急で見る捻転
  • 救急で見る出血(卵巣出血・異所性妊娠)
  • 炎症と静脈(骨盤内炎症性疾患・卵巣静脈血栓)

の有無について、まずは順番に見てみましょう。

以下、それぞれの所見で考える主な原因・鑑別と、次に何を見るか・どの検査へ進むかを解説します。正常の大きさと月経周期での変化は正常卵巣の大きさとMRI画像にまとめています。

先に結論:腹部CTで子宮・卵巣を見るときの7つのチェックポイント

  1. 年齢と妊娠の可能性:閉経前か後か、妊娠反応はどうか。同じ所見でも考える病気と次の検査が変わる
  2. 子宮:大きさと形、筋腫の石灰化、内腔の液体、IUDなどの人工物
  3. 卵巣の嚢胞:閉経前の薄い壁の嚢胞は生理的なものが多い。壁の結節・厚い隔壁・造影される充実成分があれば精査へ
  4. 付属器の腫瘤:脂肪があれば成熟嚢胞性奇形腫。充実性で腹水・腹膜の結節を伴えば卵巣癌や転移を考える
  5. 捻転:腫れた卵巣・腫瘤、太くねじれた茎(whirl sign)、子宮の患側への偏位
  6. 出血:骨盤の高吸収の液体、卵巣のそばの血のかたまり(sentinel clot)、造影剤の漏れ。妊娠反応が陽性なら異所性妊娠を考える
  7. 炎症・静脈:卵管の拡張と壁の造影、骨盤の脂肪織混濁(骨盤内炎症性疾患)、卵巣静脈の中の血栓

1. 子宮の大きさ・形

  • 子宮筋腫:子宮の輪郭を凸凹にする結節。CTでは子宮の筋肉と同じくらいか少し低い濃さで、古い筋腫は粗い石灰化を伴います。種類と変性は子宮筋腫のMRI画像診断のポイントへ。急に大きくなる・中が不規則に壊死しているときは子宮肉腫との区別にMRIを使います
  • 子宮腺筋症:子宮全体がびまん性に大きくなり、CTでは筋腫ほど境界がはっきりしません。詳しくは子宮腺筋症のMRI画像診断へ
  • 子宮の外に出る筋腫:茎のある漿膜下筋腫は卵巣の腫瘤と紛らわしく、ねじれることもあります(漿膜下子宮筋腫の捻転)。子宮との間をつなぐ血管(橋渡しの血管)の有無を見ます
  • 人工物:子宮の中のT字型・Y字型の高吸収はIUDです。子宮の壁を越えていないか、位置を確認します

2. 子宮内膜・子宮の内腔

CTは子宮内膜を詳しく見るのは得意ではありません。造影CTと経腟エコーを比べた259人の研究では、内膜の肥厚を見つける感度は53.1%、特異度は93.5%でした。CTは正常の内膜をおおむね正しく判断できる一方、軽い肥厚は見逃しやすく、横断像で三角形に厚く見えるときは子宮の傾きによることが多いため矢状断で見直すとよいとされています(Grossman 2008)。矢状断で内膜の内側の低吸収の帯どうしを測ると再現性がよく、異常な肥厚を否定する陰性的中率は99.5〜100%でした(Kang 2014)。

  • 内膜が厚く見える:閉経前は月経周期で変わります。閉経後に厚い・不正出血があれば、内膜ポリープ・内膜増殖症・子宮体癌を考えて経腟エコーへ。目安は子宮内膜肥厚は何ミリから?へ
  • 内腔に液体がたまる:子宮留水症・留血症・留膿症。頸部の狭窄(子宮頸癌・放射線治療後・高齢)が背景にあることが多く、頸部も確認します

子宮留膿腫
引用:Radiopaedia(Spontaneous uterine perforation – pyometra)
子宮の内腔が液体で広がり、その一部にガスが見えます。詳しくは子宮留膿腫(子宮留膿症)とは?の記事へ。

3. 卵巣の嚢胞

閉経前の卵巣には、排卵にともなう卵胞嚢胞・黄体嚢胞がよく見られます(機能性嚢胞とは)。CTやMRIで偶然見つかる嚢胞性の付属器腫瘤はほとんどが良性で、壁が滑らかで、充実成分や血流のない液体のたまりが単純性嚢胞の特徴とされています(Wang 2022)。

4. 付属器の腫瘤(脂肪・石灰化・充実成分)

成熟嚢胞性奇形腫
骨盤内の腫瘤の中に、脂肪の低吸収と、縁に沿う石灰化が見えます。詳しくは卵巣の成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)とは?の記事へ。

CTの手がかり 考える病気と見るポイント
脂肪・石灰化(歯)を含む 成熟嚢胞性奇形腫。捻転の原因になりやすい。充実成分が大きいときは悪性転化も考える
充実成分+腹水・腹膜の結節 卵巣癌。大網・横隔膜下・ダグラス窩の播種を探す(卵巣癌のCT・MRI)
両側の充実性腫瘤 転移(胃・大腸など)を考え、消化管の原発巣を探す(Krukenberg腫瘍と転移性卵巣腫瘍)。リンパ腫も鑑別
境界明瞭な充実性で、ゆっくり造影 線維腫・莢膜細胞腫、漿膜下筋腫。MRIのT2強調像で低信号かどうかで絞り込む

卵巣癌の腹膜播種(大網ケーキ)
引用:Radiopaedia(Omental cake from ovarian cancer)
腹壁の内側で、大網が厚い板状の軟部影(大網ケーキ)に置き換わり、腹水も見えます。詳しくは卵巣癌のCT・MRI|腹膜播種の見落としやすい部位の記事へ。

5. 救急で見る捻転

付属器捻転は、卵巣や卵管が血管の茎ごとねじれる病気で、腫瘤(奇形腫など)があると起こりやすくなります。腹痛の女性ではまずエコーが選ばれますが(Brook 2024)、原因がはっきりせずCTが先に撮られることもあります。

  • CTの手がかり:43人の捻転と43人の対照を比べた研究では、子宮が捻転側へ寄ることと、太くなった茎に whirl sign・navel sign・子宮の偏位が伴うことが有意な所見で、後者の組み合わせが最も診断能が高い結果でした(AUC 0.86と0.85)(Lee 2018)
  • 卵巣が腫れている:手術で確かめられた捻転の検討では、CTの報告書が残っていた28件はいずれも、患側の卵巣の腫大・嚢胞・付属器腫瘤を記載していました。著者らは、正常な卵巣がはっきり見えれば捻転は否定的で、卵巣が見えない・異常があるときは捻転の評価を続けるべきとしています(Moore 2009)
  • 腫れた卵巣の辺縁に卵胞が並ぶ・造影が弱い・周りに液体がある所見も手がかりになります。詳しくは卵巣腫瘍茎捻転のCT・MRI画像診断へ

次に見ること:捻転を疑えば婦人科に連絡し、ドプラエコーなどで確認します。卵巣を残せるかは時間との勝負になるため、疑いの段階で伝えることが大切です。

6. 救急で見る出血(卵巣出血・異所性妊娠)

骨盤にたまった液体の濃さを見ます。血液は水より高い濃さで、出血源のそばでは固まって、さらに高い濃さの血のかたまり(sentinel clot)になります。sentinel clotや造影剤の漏れは出血源を示す手がかりで、婦人科では卵巣嚢胞の出血・破裂や異所性妊娠の破裂が原因になります(Lubner 2007)。
卵巣出血
左の卵巣に、高吸収の液面形成(ニボー)が見え、卵巣内の出血が疑われます。詳しくは卵巣出血とは?原因と症状、CT・MRI画像診断のポイントの記事へ。

  • 卵巣出血・嚢胞破裂:卵巣嚢胞の破裂による腹腔内出血の閉経前女性103人の検討では、手術や血管内治療が必要だったのは16%で、出血の量(前後径)、出血が広がる区画の数、造影剤の漏れが治療の必要性と関連していました(Godbe 2022)。量だけでなく広がりも記載します
  • 異所性妊娠:妊娠反応が陽性で子宮の中に胎嚢がなく、付属器の腫瘤や腹腔内の出血があれば疑います。妊娠の可能性があればエコーが先で(Brook 2024, Dick 2025)、CTで見つかったら早く婦人科へ伝えます。詳しくは子宮外妊娠(異所性妊娠)の画像診断へ

7. 炎症と静脈

  • 骨盤内炎症性疾患(PID)・卵管卵巣膿瘍:卵管の拡張と壁の造影、骨盤の脂肪織混濁、卵巣と卵管が一塊になった多房性の膿瘍。肝臓の表面の造影(Fitz-Hugh-Curtis症候群)も手がかりです。MRIはPIDと卵管卵巣膿瘍の診断精度が高いとされています(Dick 2025)。詳しくはPID(骨盤内炎症性疾患)とは?へ。虫垂炎や憩室炎の波及との区別も必要です
  • 卵巣静脈血栓:出産後や骨盤の手術後に、卵巣静脈の中の造影欠損として見えます。右側に多く、下大静脈まで広がっていないかを確認します
  • 卵巣静脈の拡張:骨盤の静脈が太く蛇行していれば骨盤内うっ血症候群を考えます

卵巣静脈血栓
引用:Radiopaedia(Post partum right ovarian vein thrombosis (thrombophlebitis))
冠状断で、右の卵巣静脈の中に造影されない血栓(矢印)が下大静脈に向かって続いています。詳しくは卵巣静脈血栓の症状は?原因は?の記事へ。

偶然見つかったときの扱い

米国放射線学会(ACR)の偶発所見委員会は、CT・MRIで偶然見つかった付属器腫瘤について、閉経前か後かという患者さんの条件と画像の特徴で順に分け、扱いを決める流れ(アルゴリズム)を示しています(Patel 2020)。この提言や、超音波の学会の提言、O-RADSは、平均的なリスクの妊娠していない女性を対象に、不要な経過観察を減らすことを目指しており、使うには腫瘤の全体がよく見えていることが前提です(Wang 2022)。

  • 閉経前の単純な嚢胞:多くは生理的な嚢胞で、追加の検査をしない扱いになることが多い
  • 閉経後の嚢胞・単純でない嚢胞・充実成分のある腫瘤:エコーやMRIでの精査、婦人科への相談につなげる
  • 子宮内膜が厚く見える:CTでの評価には限界があるため(Grossman 2008)、年齢と症状に応じて経腟エコーで確認する

強い下腹部痛、不正出血、妊娠の可能性がある腹痛、発熱が続くなどの気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してください。

子宮・卵巣で見落としやすい場所と、確認のしかた

場所 見落としやすい理由 確認のしかた
卵巣そのもの 腸管と濃さが近く、特に閉経後の小さな卵巣はCTで見つけにくい 卵巣静脈や子宮円索をたどって卵巣を探す。左右の卵巣を見つけたかを意識する
ダグラス窩 少量の血液・膿・播種がたまる一番低い場所で、子宮や直腸と重なる 矢状断で子宮の後ろを確認し、液体の濃さを測る
子宮内膜 横断像では子宮の傾きで厚く見えたり、薄く見えたりする 矢状断で内膜の厚さを見る(Grossman 2008)
子宮から離れた筋腫・付属器 大きな子宮や腫瘤があると卵巣が上の方に押し上げられ、腹部の画像に紛れる 冠状断で骨盤から上腹部までたどる
卵巣静脈 細い静脈の血栓は、横断像では腸管の間の小さな丸に見える 冠状断で腎静脈・下大静脈まで連続して追う

子宮・卵巣の読影でよくある疑問(Q&A)

Q. CTで卵巣に嚢胞があると言われました。心配ですか?
A. 閉経前の女性では、排卵にともなう生理的な嚢胞がよく見られます。偶然見つかる嚢胞性の腫瘤はほとんどが良性とされますが(Wang 2022)、壁の結節や充実成分がある場合、閉経後の場合はエコーやMRIで詳しく調べます。

Q. 腹痛でCTを撮れば、卵巣の捻転は分かりますか?
A. CTでも、腫れた卵巣、太くねじれた茎、子宮の偏位などの手がかりがあります(Lee 2018)。ただし腹痛の女性では、まず血流も見られるエコーが選ばれることが多い検査です(Brook 2024)。

Q. 骨盤に液体がたまっていると言われました。
A. 閉経前の女性では、排卵にともなう少量の液体はよく見られます。量が多い、濃い(血液)、血のかたまりがある、痛みが強いといった場合は、卵巣出血や異所性妊娠などを考えて調べます(Lubner 2007)。

まとめ

子宮・卵巣のCTでは、

  • 年齢・妊娠の可能性を最初に確認する
  • 子宮の形と内腔、内膜は矢状断で見る
  • 卵巣の嚢胞は単純か、充実成分があるか
  • 付属器の腫瘤は脂肪・石灰化・充実成分で分ける
  • 救急では捻転(茎・偏位)と出血(濃さ・sentinel clot)を探す
  • 炎症と卵巣静脈も確認する

の順に見ていくと、救急の所見も偶然の所見も拾いやすくなります。

あわせて読みたい:腹部CTの読み方

参考文献

  1. Grossman J, Ricci ZJ, Rozenblit A, et al. Efficacy of contrast-enhanced CT in assessing the endometrium. AJR Am J Roentgenol. 2008;191(3):664-9. PubMed
  2. Kang SK, Giovanniello G, Kim S, et al. Performance of multidetector CT in the evaluation of the endometrium: Measurement of endometrial thickness and detection of disease. Clin Radiol. 2014;69(11):1123-8. PubMed
  3. Wang PS, Schoeck OG, Horrow MM. Benign-appearing Incidental Adnexal Cysts at US, CT, and MRI: Putting the ACR, O-RADS, and SRU Guidelines All Together. Radiographics. 2022;42(2):609-624. PubMed
  4. Patel MD, Ascher SM, Horrow MM, et al. Management of Incidental Adnexal Findings on CT and MRI: A White Paper of the ACR Incidental Findings Committee. J Am Coll Radiol. 2020;17(2):248-254. PubMed
  5. Lee MS, Moon MH, Woo H, et al. CT findings of adnexal torsion: A matched case-control study. PLoS One. 2018;13(7):e0200190. PubMed
  6. Moore C, Meyers AB, Capotasto J, et al. Prevalence of abnormal CT findings in patients with proven ovarian torsion and a proposed triage schema. Emerg Radiol. 2009;16(2):115-20. PubMed
  7. Lubner M, Menias C, Rucker C, et al. Blood in the belly: CT findings of hemoperitoneum. Radiographics. 2007;27(1):109-25. PubMed
  8. Godbe J, Horowitz JM, Nguyen E, et al. Association of CT findings in patients with hemoperitoneum due to ruptured ovarian cysts with subsequent intervention. Emerg Radiol. 2022;29(5):833-843. PubMed
  9. Expert Panel on GYN and OB Imaging, Brook OR, Dadour JR, et al. ACR Appropriateness Criteria® Acute Pelvic Pain in the Reproductive Age Group: 2023 Update. J Am Coll Radiol. 2024;21(6S):S3-S20. PubMed
  10. Dick EA, Blanco A, De La Hoz Polo M, et al. ESR Essentials: Gynaecological causes of acute pelvic pain in women: a primer for emergent evaluation-practice recommendations by the European Society of Emergency Radiology. Eur Radiol. 2025;35(11):6682-6695. PubMed

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