骨盤うっ血症候群(pelvic congestion syndrome)

  • 卵巣静脈は径5〜10mm以上で拡張とされるが、径5mm以上に拡張している頻度は14%と報告されている。
  • 無症候性の卵巣静脈拡張は日常臨床においてしばしば遭遇し、多くは無症状である。
  • 従って、骨盤うっ血症候群は、卵巣静脈拡張に加えて、6ヶ月以上持続する慢性の下腹部痛といった慢性的な下腹部痛、骨盤部痛があって初めて疑う疾患である。
  • 骨盤内静脈は腸骨静脈系や卵巣静脈に還流するが、これらの静脈の弁不全や閉塞による機能不全が原因と考えられている。
  • 立位で増悪し、臥位で軽減する特徴がある。
  • 経産婦の閉経前に発症することが多いが、閉経後に生じることがある。
  • 慢性的な下腹部痛、骨盤部痛を来す疾患には、子宮内膜症子宮腺筋症、骨盤臓器の癒着、骨盤内感染症、間質性膀胱炎、過敏性腸症候群などがあり、骨盤うっ血症候群を疑う場合には、これらを除外する必要がある。つまり、除外診断により疑われる。
  • 治療はIVRにより、両側の卵巣静脈の塞栓もしくは硬化療法が行われる。
  • 確定診断にはIVRにより、症状が軽減することを確認するという診断的治療によりなされる。そのため術前に確定診断をすることは通常できない。

骨盤うっ血症候群(pelvic congestion syndrome)(を疑う)画像所見

  • 子宮周囲の骨盤内静脈の拡張や卵巣静脈(多くは左側)の拡張(最大径5-10mm以上)を認める。
  • IVRによる卵巣静脈造影で逆行性の卵巣静脈、子宮静脈、反対側の骨盤内静脈の描出を認める。これは卵巣静脈の中等度〜高度の停滞があることを示唆する所見。

症例 30歳代女性 月経周期とは関係のない慢性的な下腹部痛

引用:radiopedia

骨盤の左側には顕著な血管分布があり、子宮と卵巣から生じた拡張した曲がりくねった「静脈瘤のような」静脈があり、左卵巣静脈は太く曲がりくねって左腎静脈に流れ込んでいるように見えます。

骨盤うっ血症候群(pelvic congestion syndrome)疑いと診断されました。

症例 60歳代女性 慢性的な下腹部痛

引用:radiopedia

子宮周囲で左優位に骨盤内静脈の拡張、卵巣静脈拡張を認めています。

骨盤うっ血症候群(pelvic congestion syndrome)疑いと診断されました。

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参考文献:

  • 画像診断 Vol.41 No.12 2021 P1276-77
  • 画像診断 Vol.41 No.6 2021 P625-6
  • 画像診断別冊KEY BOOKシリーズ 婦人科MRIアトラス 改訂第2版 P390-1

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